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デモティック

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
デモティック
ロゼッタ・ストーンきざまれたデモティック
類型るいけい: ひょう文字もじ (一部いちぶ文字もじアブジャド性格せいかくつ)
言語げんご: エジプト
時期じき: 紀元前きげんぜん650ねんごろ-紀元きげん5世紀せいき
おや文字もじ体系たいけい:
文字もじ体系たいけい: コプト文字もじ
メロエ文字もじ
Unicode範囲はんい: てなし
ISO 15924 コード: Egyd
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デモティック (Demotic) または民衆みんしゅう文字もじ(みんしゅうもじ)は、古代こだいエジプトエジプト表記ひょうきするのに使つかわれた3種類しゅるい文字もじのうちの1つである。

歴史れきし[編集へんしゅう]

古代こだいエジプトではいしきざむためのヒエログリフせいこく文字もじ)と筆記ひっきようヒエラティック神官しんかん文字もじ)の両方りょうほうならんで発達はったつし、のちにヒエラティックをくずした簡略かんりゃく文字もじであるデモティックがつくられたとかんがえられる。ただし、デモティック書体しょたいいしきざんだものもおおのこっている。

デモティックはふるくは紀元前きげんぜん660ねん使つかわれているのがつかっており、紀元前きげんぜん600ねんには古代こだいエジプトでは標準ひょうじゅんてき書体しょたいとなったとられている。4世紀せいきにはエジプトでもギリシア文字もじもとにしたコプト文字もじ使つかわれており、デモティックはそれ以後いご使つかわれなくなった。

後年こうねんつかっているデモティックの最後さいご使用しようれいは、紀元きげん452ねんフィラエ神殿しんでんかべきざまれたものである。

前期ぜんきデモティック (Early Demotic)[編集へんしゅう]

初期しょきデモティック(ドイツではFrühdemotisch)は、だい25王朝おうちょう後期こうきしもエジプト発展はってんし、とくサッカラセラペウムから出土しゅつどした石碑せきひられる。初期しょきデモティックのテキストは、ほとんどがだい26王朝おうちょうとそのアケメネスあさぞくしゅうだい27王朝おうちょう)の時代じだいかれているため、一般いっぱん紀元前きげんぜん650ねんから紀元前きげんぜん400ねんあいだつくられたとかんがえられている。プサムテク1せいによるエジプトさい統一とういつうえエジプトではデモティックがヒエラティックの後継こうけいとして、とくイアフメス2せい時代じだいには公式こうしき行政ぎょうせい法律ほうりつ文書ぶんしょ使用しようされた。この時期じき、デモティックは行政ぎょうせい文書ぶんしょ法律ほうりつ文書ぶんしょ商業しょうぎょう文書ぶんしょにのみ使用しようされ、ヒエログリフやヒエラティックは宗教しゅうきょう文書ぶんしょ文学ぶんがくにのみ使用しようされた。

中期ちゅうきデモティック (Middle (Ptolemaic) Demotic)[編集へんしゅう]

中期ちゅうきデモティック(紀元前きげんぜん400ねんごろ〜30ねんごろ)は、プトレマイオスあさ使つかわれていた文字もじである。紀元前きげんぜん4世紀せいき以降いこう文学ぶんがく宗教しゅうきょうのテキストに使用しようされるようになり、デモティックの地位ちいたかまった。紀元前きげんぜん3世紀せいきまつには、行政ぎょうせい言語げんごであるコイネー重要じゅうようせいたかまり、デモティックの契約けいやくしょは、当局とうきょく登録とうろくされたことをギリシャしるさないかぎり、その法的ほうてき効力こうりょくをほとんどうしなった。

後期こうきデモティック (Late (Roman) Demotic)[編集へんしゅう]

マ帝国まていこくのエジプト支配しはいはじまって以来いらい、デモティックは次第しだい公的こうてきでは使つかわれなくなった。後期こうきデモティック(紀元前きげんぜん30ねんごろ紀元きげん452ねんとく紀元きげん1〜2世紀せいき)にはおおくの文学ぶんがくてきテキストがかれていたが、2世紀せいきまつ急速きゅうそく減少げんしょうした。ラテン語らてんご帝国ていこく西部せいぶ言語げんご駆逐くちくしたのとは対照たいしょうてきに、ギリシャがデモティックにわることはなかった[1]。その、デモティックはごく一部いちぶオストラコン、ギリシャテキスト、ミイラのラベル、落書らくがきなどに使つかわれただけであった。後年こうねんつかっているデモティックの最後さいご使用しようれいは、紀元きげん452ねんフィラエ神殿しんでんかべきざまれた落書らくがきで、452ねん12月12にち日付ひづけがつけられている。本文ほんぶんは「ペトシリスの息子むすこペティセ」とだけかれており、ペティセがだれであったかは不明ふめいである[2]

たんこぼし[編集へんしゅう]

ヒエログリフの前身ぜんしんである文字もじ体系たいけい同様どうように、デモティックもたん、つまり「アルファベット」の文字もじセットをち、個々ここ音素おんそ表現ひょうげんすることができた。たんはデモティックのなかでも頻繁ひんぱん使用しようされ、文章ぶんしょうちゅうぜん文字もじのうち3ぶんの1から2ぶんの1をめており、とくおおくの外来がいらいたんかれている[3]後期こうき(ローマ時代じだい)のテキストでは、たんはより頻繁ひんぱん使つかわれている[4]

つぎひょうは、たんこぼしもととなったヒエログリフ、そこから派生はせいしたコプト文字もじ、および使用しようじょう注意ちゅういてんしめした一覧いちらんである[3][4][5]

こぼし デモティック ヒエログリフ[5] コプト文字もじ 備考びこう
A
ほとん語頭ごとう使用しようされるが、まれに語末ごまつ使用しようされる。
語頭ごとうでは使用しようされない。
ı͗ or or
i
語頭ごとうでのみ使用しようされる。
e
Wi
ı͗ またはかたりちゅうe をあらわす。
aA
Y1 a
通常つうじょう文字もじ上下じょうげかれていないときに使つかう。
a
通常つうじょう横長よこなが文字もじしたくときに使つかう。
通常つうじょう横長よこなが文字もじうえくときに使つかう。
y
Wii
w or
wA
かたりちゅうまたは語末ごまつ使用しようされる。
or
w
語頭ごとう子音しいんとして使用しようされる。
Z3
複数ふくすうがたまたは3人称にんしょう複数ふくすう接辞せつじw として使用しようされる。
b
Z1
H_SPACE
bA
相互そうご置換ちかん可能かのう
Wb
p or
p
1個いっこ字形じけい派生はせいである2字形じけいほとんわった。
f or
f
ϥ
m or
m
相互そうご置換ちかん可能かのう。2字形じけい1個いっこ字形じけい派生はせい
n
n
W nw
通常つうじょう文字もじ上下じょうげかれていないときに使つかうが、前置詞ぜんちし nぞくかく接辞せつじ n としては使つかわれない。
n
[注釈ちゅうしゃく 1] 通常つうじょう文字もじ上下じょうげかれているときに使つかう。
r
rw
r子音しいんとして保持ほじされ、おと変化へんかによってうしなわれないときに使用しようする通常つうじょうがた
or
r
コプト ⲉ に対応たいおうする母音ぼいんとして使用しようされ、相互そうご置換ちかん可能かのう前置詞ぜんちし r のような子音しいんうしなわれることによりしょうじることもある。語頭ごとうおん ı͗ の付加ふか使つかうこともある。
or
A2i
l
Z1rw
h
h
[注釈ちゅうしゃく 1]
or
H
[注釈ちゅうしゃく 1] 相互そうご置換ちかん可能かのう
or
bH
Y1
ϩ, [注釈ちゅうしゃく 1]
x
[注釈ちゅうしゃく 1], [注釈ちゅうしゃく 1]
or
x
y
M12
ϧ 通常つうじょう文字もじ上下じょうげかれていないときに使つかう。
X
通常つうじょう文字もじ上下じょうげかれているときに使つかう。
s
s
通常つうじょう文字もじ上下じょうげかれていないときに使つかう。
Z5
Y1
Z1Aa18
しばしば固有名詞こゆうめいしやギリシャからの借用しゃくよう使用しようされる。エジプト固有こゆう語頭ごとうには使用しようされない。
or
z
通常つうじょう横長よこなが文字もじしたくときに使つかう。
通常つうじょう横長よこなが文字もじうえくときに使つかう。
or or
ts
代名詞だいめいしとして使用しよう
š or
SA
ϣ, [注釈ちゅうしゃく 1] 通常つうじょう文字もじ上下じょうげかれていないときに使つかう。2字形じけい1個いっこ字形じけい派生はせい
S
[注釈ちゅうしゃく 1] 通常つうじょう文字もじ上下じょうげかれているときに使つかう。
q
q
[注釈ちゅうしゃく 1]
k
k
ϭ しばしば横線おうせんしたかれる。
Z1kA
本来ほんらいは2 kꜣ 。後代こうだいのテキストではしばしば q として使用しようされる。
g or
g
[注釈ちゅうしゃく 1]
t or or
t
D37
t
ϯ[注釈ちゅうしゃく 2] 動詞どうし ḏjあたえる)以外いがいではあまり使つかわれない。
d
n
t
or
iti
相互そうご置換ちかん可能かのう実際じっさい発音はつおんされる語末ごまつtあらわし、女性じょせい接尾せつび無音むおん t とは区別くべつされる。
ti
D51
D40
本来ほんらい動詞どうし ṯꜣjる)の表記ひょうきであったが、時々ときどき表音ひょうおんてき使用しようされる。
ADA
[注釈ちゅうしゃく 1] 相互そうご置換ちかん可能かのう。コブラの字形じけいまれ
DA
ϫ, [注釈ちゅうしゃく 1]
D
  1. ^ a b c d e f g h i j k l コプトのテキストにのみ出現しゅつげんする。
  2. ^ あるいは、 ϯごう可能かのうせいがある。[6]

デモティックのエジプト[編集へんしゅう]

デモティックというかたりは、この文字もじもちいてかれた、しんエジプト後期こうき段階だんかい場合ばあいもある。デモティックによるエジプトは、そのあらわれたコプト非常ひじょうちかいものである。当初とうしょ、デモティックでかれたエジプト表現ひょうげんは、それまで使用しようされていた常套句じょうとうくおおふくまれるなど、当時とうじ人々ひとびと日常にちじょう特徴とくちょうおおゆうしていたものとおもわれる。しかし、デモティックの使用しよう次第しだい文学ぶんがく宗教しゅうきょう文書ぶんしょなどの日常にちじょうてき分野ぶんやかぎられてくるようになると、デモティックによるエジプト人工じんこうてき性格せいかくびるようになり、当時とうじ日常にちじょうからの乖離かいりおおきくなっていった。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Haywood, John (2000). Historical atlas of the classical world, 500 BC–AD 600. Barnes & Noble Books. p. 28. ISBN 978-0-7607-1973-2. "However, Greek did not take over as completely as Latin did in the west and there remained large communities of Demotic...and Aramaic speakers" 
  2. ^ Cruz-Uribe, Eugene (2018). “The Last Demotic Inscription”. Hieratic, Demotic, and Greek Studies and Text Editions: Of Making Many Books There Is No End. Festschrift in Honour of Sven P. Vleeming. Leiden. pp. 6–8. ISBN 978-9-0043-4571-3 
  3. ^ a b Clarysse, Willy (1994) Demotic for Papyrologists: A First Acquaintance, pages 96–98.
  4. ^ a b Johnson, Janet H. (1986). Thus Wrote ꜥOnchsheshonqy: An Introductory Grammar of Demotic. Studies in Ancient Oriental Civilization, No. 45. Chicago: The Oriental Institute. pp. 2–4 
  5. ^ a b The Demotic Palaeographical Database Project (DPDP)”. 129.206.5.162. 2022ねん4がつ12にち閲覧えつらん
  6. ^ Quack (2017). “How the Coptic Script Came About”. Greek Influence on Egyptian-Coptic: Contact-Induced Change in an Ancient African Language. Widmaier Verlag. p. 75. https://www.academia.edu/42127007. "It has normally been claimed that it derives from the form of the infinitive ti in Demotic, but the actual forms do not fit well; and furthermore it is a point of some concern that this sign never turns up in any ‘Old Coptic’ text (where we always have ⲧⲓ for this sound sequence). For this reason the proposal by Kasser that it is actually a ligature of t and i seems to me quite convincing." 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]