チベット文字もじ

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チベット文字もじ
チベット文字もじによる「チベット
類型るいけい: アブギダ
言語げんご: チベット
ゾンカ
ラダック
バルティ
シッキム
モンパ
モンゴル
発明はつめいしゃ: Thonmi Sambhota
時期じき: 7世紀せいき中頃なかごろから
おや文字もじ体系たいけい:
文字もじ体系たいけい:
Unicode範囲はんい: U+0F00–U+0FFF
ISO 15924 コード: Tibt
注意ちゅうい: このページはUnicodeかれた国際こくさい音声おんせい記号きごう (IPA) をふく場合ばあいがあります。
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北京ぺきん雍和みやがくかれた、満州まんしゅう文字もじ漢字かんじ・チベット文字もじモンゴル文字もじみぎから)
メロエ ぜん3世紀せいき
カナダ先住民せんじゅうみん 1840ねん
ちゅうおと 1913ねん

チベット文字もじ(チベットもじ)は、チベットゾンカ表記ひょうきもちいる文字もじである。

概要がいよう[編集へんしゅう]

インドけい表音ひょうおん文字もじであり、ひだりからみぎへとつづる。わずかな変更へんこうくわえてチベットけいしょ言語げんごゾンカバルティなど)や、チベット仏教ぶっきょうれた地域ちいき言語げんごモンゴル)の表記ひょうきにももちいられる。起源きげんは、ふるくはブラーフミー文字もじさかのぼることはたしかだが、ブラーフミー文字もじのどの変種へんしゅ直接ちょくせつ起源きげんとなったかはナーガリー文字もじグプタ文字もじネワール文字もじなど諸説しょせつある。伝承でんしょうによると、7世紀せいき中頃なかごろ吐蕃ソンツェン・ガンポおうがインドへ役人やくにんすうめい派遣はけんし、トンミ・サンボータチベットばん英語えいごばんすうめいインド仏教ぶっきょうそうとともにつくしたとされる。

なが歴史れきして、表記ひょうき発音はつおん乖離かいりきわめてはげしいのも、チベット文字もじ特徴とくちょうえる。そのせいもあって、ラテン文字もじ転写てんしゃする方式ほうしきは、統一とういつされておらず、複数ふくすう方式ほうしき併用へいようされている。(参照さんしょう:「チベットのラテン文字もじ表記ひょうきほう」「ぞうぶんピンおん」「ワイリー方式ほうしき」「チベットのカタカナ表記ひょうきについて」)

文字もじ構成こうせい[編集へんしゅう]

チベット文字もじは、下図したずのように、もと前後ぜんご上下じょうげ補助ほじょてき字母じぼ付加ふかし、それぞれの音節おんせつ発音はつおん表現ひょうげんする。ただし、前後ぜんご上下じょうげもちいられる字母じぼ種類しゅるいかぎられており、またそのだい部分ぶぶん発音はつおんされないため、それほど複雑ふくざつではない。かく音節おんせつは ' (活字かつじではぎゃく三角形さんかっけい )によって区切くぎる。

文字もじ[編集へんしゅう]

もと[編集へんしゅう]

うえから5だんまで(5だん4れつのぞく)は、縦横じゅうおうともに音声おんせいてき特徴とくちょう意味いみをもった配列はいれつになっている。辞書じしょ配列はいれつは、かくだんごとひだりからみぎ方向ほうこうである。かくもと発音はつおんとして、ラサ方言ほうげん発音はつおんしめしている。[1]

単音たんおんぶし声調せいちょうは、高平たかひら調ちょうていたいら調ちょう(※わずかにがるので、ていのぼり調ちょうとも表現ひょうげんされる)を、それぞれあかあお背景はいけいしめした。以下いかの2てん注意ちゅうい

  • だい4れつ(より正確せいかくには鼻音びおん接近せっきんおん)のていたいら調ちょうていのぼり調ちょう)は、ぜん置字おきじうえせっといった先行せんこう子音しいんくと、高平たかひら調ちょうになる。
    (※ぜん置字おきじうえせっしもせっとのわせによる、実際じっさい発音はつおんのまとめはしもじゅつの「表記ひょうき発音はつおん対応たいおう」を参照さんしょう。)
  • 高平たかひら調ちょうていたいら調ちょうていのぼり調ちょう)は、-ག(g)、-གས(gs)、-ད(d)、-བ(b)、-བས(bs)、-ངས(ngs)、-མས(ms)、-ས(s) などの末子まっしおんくと、げられ、それぞれだかくだ調ちょうてい昇降しょうこう調ちょう変化へんかする
    (※くわしくは、しもじゅつの「表記ひょうき発音はつおん対応たいおう」を参照さんしょう。)

なお、母音ぼいんだけのおと表現ひょうげんするには、一番いちばんうしろの無音むおん字母じぼ」を使用しようする。

だい1れつ
- こう
だい2れつ
ゆう - こう
だい3れつ
ゆうごえ[2] - てい
だい4れつ
はな - てい
軟口蓋なんこうがいおん ˉka /k/ ˉkha /kʰ/ ˊkha /kʰ/
(g)
ˊnga /ŋ/
かた口蓋こうがいおん ˉca /t͡ɕ/ ˉcha /t͡ɕʰ/ ˊcha /t͡ɕʰ/
(j)
ˊnya /ɲ/
歯茎はぐきおん ˉta /t/ ˉtha /tʰ/ ˊtha /tʰ/
(d)
ˊna /n/
りょう唇音しんおん ˉpa /p/ ˉpha /pʰ/ ˊpha /pʰ/
(b)
ˊma /m/
やぶおと ˉtsa /t͡s/ ˉtsha /t͡sʰ/ ˊtsha / t͡sʰ/
(dz)
ˊwa /w/
てい ˊsha /ɕ/
(zh)
ˊsa /s/
(z)
ˊa /-/ ˊya /j/
てい/こう ˊra /ɹ/ ˊla /l/ ˉsha /ɕ/ ˉsa /s/
こう ˉha /h/ ˉa /-/  

括弧かっこ()ない表記ひょうきは、子音しいん区別くべつ都合つごうじょう、チベットラテン文字もじこぼし方式ほうしきである「ワイリー方式ほうしき」で採用さいようされている、古典こてん発音はつおん由来ゆらいする表記ひょうき

母音ぼいん記号きごう[編集へんしゅう]

もとのみで /a/あらわすため、4つの母音ぼいん記号きごうがある。

なお、母音ぼいんa /a/, u /u/, o /o/ の3つは、末子まっしおん-ད(d)、-ན(n)、-ལ(l)、-ས(s) のいずれかを後続こうぞくすると、それぞれ ä /ɛ/, ü /y/, ö /ø/変化へんかする。

(※くわしくは、しもじゅつの「表記ひょうき発音はつおん対応たいおう」を参照さんしょう。)

母音ぼいん記号きごう 発音はつおん れいもと母音ぼいん記号きごう
/a/
(/ɛ/ -d, n, l, s)
ཀ༌ ཏ༌ ཨ༌
/i/ ཀི༌ ཏི༌ ཨི༌
/u/
(/y/ -d, n, l, s)
ཀུ༌ ཏུ༌ ཨུ༌
/e/ ཀེ༌ ཏེ༌ ཨེ༌
/o/
(/ø/ -d, n, l, s)
ཀོ༌ ཏོ༌ ཨོ༌

ぜん置字おきじ[編集へんしゅう]

ぜん置字おきじもちいられる文字もじは、(g)、(d)、(b)、(m)、(') の5つ。

基本きほんてきに、しもじゅつうえせっおなはたらき。(m)、(') の2つは、うえせっ(l) とおなじく、だい3れつ子音しいんくと、直前ちょくぜん鼻音びおん挿入そうにゅうするはたらきをする(ぜん鼻音びおん)。

(※うえせっもとしもせっとのわせによる、実際じっさい発音はつおんのまとめはしもじゅつの「表記ひょうき発音はつおん対応たいおう」を参照さんしょう。)

うえせっ[編集へんしゅう]

うえせっは、(r)、(l)、(s) の3つであり、一定いっていもとおよびゆうあしについてゆう頭字かしらじつくる。

だい1れつもとおよびゆうあしについた場合ばあい発音はつおんわらない(※(h) に(l) のうえせっ場合ばあい例外れいがい)。だい3れつではおん (※(l) のうえせっ場合ばあいおおくはそれにくわえて、直前ちょくぜん鼻音びおん挿入そうにゅう)、だい4れつでは声調せいちょう高平たかひらとなる。以下いかひょうすべてのれい

(※ぜん置字おきじもとしもせっとのわせによる、実際じっさい発音はつおんのまとめはしもじゅつの「表記ひょうき発音はつおん対応たいおう」を参照さんしょう。)

うえせっ だい1れつ変化へんかなし) だい3れつおん だい4れつ高平たかひら
(r) རྐ༌ རྐྱ༌ རྟ༌ རྩ༌ རྒ༌ རྒྱ་ རྗ༌ རྡ༌ རྦ༌ རྫ༌ རྔ༌ རྙ༌ རྣ༌ རྨ༌
(l) ལྐ༌ ལྕ༌ ལྟ༌ ལྤ༌ ལྒ༌ ལྗ༌ ལྡ༌ ལྦ༌
直前ちょくぜん鼻音びおん挿入そうにゅう
ལྔ༌
(s) སྐ༌ སྐྱ༌ སྐྲ༌ སྟ༌ སྤ༌ སྤྱ༌ སྤྲ༌ སྩ༌ སྒ༌ སྒྱ༌ སྐྲ༌ སྟ༌ སྦ༌ སྦྱ༌ སྦྲ༌ སྔ༌ སྙ༌ སྣ༌ སྨ༌ སྨྱ༌ སྨྲ༌
  • 例外れいがい: ལྷ༌発音はつおんわり、hla/l̥/である。

しもせっ[編集へんしゅう]

しもせっは、 [] (w)、 [] (')、 [] (y)、 [] (r)、 [] (l) の5つで、一定いっていもとにつきゆうあしつくる。

(※ぜん置字おきじうえせっもととのわせによる、実際じっさい発音はつおんのまとめはしもじゅつの「表記ひょうき発音はつおん対応たいおう」を参照さんしょう。)

  • [] (w) : 発音はつおん変化へんかはない。གྲྭ༌ ཉྭ༌ དྭ༌ རྩྭ༌ ཚྭ༌ ཞྭ༌ ཟྭ༌ རྭ༌ ལྭ༌ ཤྭ༌ ཧྭ༌
  • [] (') : ちょう母音ぼいん
いちれいཀཱ༌ དཱ༌
  • [] (y) : /j/挿入そうにゅう発音はつおん変化へんかするれい以下いか声調せいちょうには変化へんかなし)。
ཀྱ༌ : /c/
ཁྱ༌, གྱ༌ : /cʰ/
པྱ༌ : /tɕ/
ཕྱ༌, བྱ༌ : /tɕʰ/
མྱ༌ : /ɲ/
  • [] (r) : 子音しいん変化へんかゆう声調せいちょうには影響えいきょうしない。
tra/ʈa/ཀྲ་ པྲ་
trha/ʈʰa/ཁྲ་ ཕྲ་ གྲ་ དྲ་ བྲ་
སྲ་:sa (もしくはtra)
ཧྲ་:hra/ʂ/
  • [] (l) : 基本きほんてきに、(k), (g), (b), (r), (s) などにいて、高平たかひら調ちょうされた/l/表現ひょうげん

こう置字おきじ[編集へんしゅう]

こう置字おきじもちいられる文字もじは、(g)、(ng)、(d)、(n)、(b)、(m)、(')、(r)、(l)、(s) の10

(g)、(d)、(s) は/ʔ/(b) は/p/。これら4つは、声調せいちょう変化へんかさせる。

(r) はそのまま発音はつおんされるか、消失しょうしつして母音ぼいん長音ちょうおん(l) は基本きほんてきおとにならず、母音ぼいん口蓋こうがい長音ちょうおん

鼻音びおん(ng)、(n)、(m) は、そのまま発音はつおん。((n) は、直前ちょくぜん母音ぼいんはな母音ぼいんすると解釈かいしゃくされる。)

(')は/ʔ/だが、(i)、(u) などの母音ぼいん記号きごう付加ふかされ(འི('i)、འུ('u))、重母音じゅうぼいん形成けいせいする。(※ただし、འི('i) は発音はつおんされず、直前ちょくぜん母音ぼいん口蓋こうがい長音ちょうおん。)

なお、(d)、(n)、(s)、(l) の4つ (※くわえて、འི('i) )は、直前ちょくぜん母音ぼいん口蓋こうがいするので、口蓋こうがい母音ぼいん a /a/、u /u/、o /o/ の3つを、それぞれ ä /ɛ/、ü /y/、ö /ø/変化へんかさせる。

(※くわしくは、しもじゅつの「表記ひょうき発音はつおん対応たいおう」を参照さんしょう。)

さい置字おきじ[編集へんしゅう]

さい置字おきじもちいられる文字もじは、(s) のみ。発音はつおんされず、声調せいちょうげて変化へんかさせる。

(※くわしくは、しもじゅつの「表記ひょうき発音はつおん対応たいおう」を参照さんしょう。)

数字すうじ[編集へんしゅう]

独自どくじ数字すうじっており、アラビア数字すうじ算用さんよう数字すうじ)と同様どうよう使つかかたをする。ただし、アラビア数字すうじ現在げんざいでは多用たようされる。

アラビア数字すうじ 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
チベット数字すうじ

もと判定はんていのしかた[編集へんしゅう]

音節おんせつ複数ふくすうからなる場合ばあいまさしくよむためにはまずどれがもとであるかを判断はんだんしなければならない。母音ぼいん記号きごううえせっしもせっがついているがあれば、それがもとであるとすぐにわかるが、そうでない場合ばあいつぎのようにしておこなわれる。

  1. 文字数もじすうが2文字もじ以内いないなら最初さいしょ文字もじもとである。これは正書法せいしょほうじょう規則きそくで、2番目ばんめ母音ぼいん記号きごううえせっしもせっのないもとで、その文字もじわる場合ばあいうしろに をつけるという規則きそくがあるためである。
  2. 文字数もじすうが4文字もじならば、2番目ばんめ文字もじもとである。
  3. 文字数もじすうが3文字もじのときは判定はんてい困難こんなんである。たとえば、དགས༌ が「dgas」なのか「dags」なのか、つづりから判断はんだんすることができない。

表記ひょうき発音はつおん対応たいおう[編集へんしゅう]

あたま子音しいん[編集へんしゅう]

ぜん置字おきじうえせっもとしもせっわせと、発音はつおんあたま子音しいん+声調せいちょう)の対応たいおう関係かんけい一覧いちらん

基本きほんたんあか発音はつおん乖離かいりはげしい表記ひょうき(の中心ちゅうしんてき象徴しょうちょうてき字母じぼ)はみどりしめす。

高平たかひら調ちょうていたいら調ちょうていのぼり調ちょう)は、それぞれあかあお背景はいけいしめす。

文字もじ 発音はつおん カタカナ
(k)、རྐ(rk)、ལྐ(lk)、སྐ(sk)、ཀྭ(kw)、
དཀ(dk)、བཀ(bk)、བརྐ(brk)、བསྐ(bsk)
/ká/
རྒ(rg)、སྒ(sg)、དག(dg)、བག(bg)、
བརྒ(brg)、བསྒ(bsg)
/kà/
ལྒ(lg)、མག(mg)、འག('g) /ŋkà/ ンカ
(kh)、ཁྭ(khw)、མཁ(mkh)、འཁ('kh) /kʰá/
(g)、གྭ(gw) /kʰà/
རྔ(rng)、ལྔ(lng)、སྔ(sng)、དང(dng)、
བརྔ(brng)、བསྔ(bsng)、མང(mng)
/ŋá/ ンガ
(ng) /ŋà/ ンガ
ཀྱ(ky)、རྐྱ(rky)、ལྐྱ(lky)、སྐྱ(sky)、དཀྱ(dky)、
བཀྱ(bky)、བརྐྱ(brky)、བསྐྱ(bsky)
/cá/ チャ
དགྱ(dgy)、བགྱ(bgy)、བརྒྱ(brgy)、བསྒྱ(bsgy) /cà/ チャ
མགྱ(mgy)、འགྱ('gy) /ɲcà/ ンチャ
ཁྱ(khy)、མཁྱ(mkhy)、འཁྱ('khy) /cʰá/ チャ
གྱ(gy) /cʰà/ チャ
(c)、ལྕ(lc)、ཅྭ(cw)、གཅ(gc)、བཅ(bc)、
བྱ(py)、དབྱ(dpy)
/tɕá/ チャ
རྗ(rj)、གཇ(gj)、བརྗ(brj)、དབྱ(dby) /tɕà/ チャ
ལྗ(lj)、མཇ(mj)、འཇ('j)、འབྱ('by) /ɲtɕà/ ンチャ
(ch)、མཆ(mch)、འཆ('ch)、ཕྱ(phy)、འཕྱ('phy) /tɕʰá/ チャ
(j)、བྱ(by) /tɕʰà/ チャ
རྙ(rny)、སྙ(sny)、གཉ(gny)、བརྙ(brny)、
བསྙ(bsny)、མཉ(mny)、ཉྭ(nyw)
/ɲá/ ニャ
(ny)、མྱ(my) /ɲà/ ニャ
(t)、རྟ(rt)、ལྟ(lt)、སྟ(st)、ཏྭ(tw)、གཏ(gt)、
བཏ(bt)、བརྟ(brt)、བལྟ(blt)、བསྟ(bst)、བལྡ(bld)
/tá/
རྡ(rd)、སྡ(sd)、གད(gd)、བད(bd)、
བརྡ(brd)、བསྡ(bsd)
/tà/
ལྠ(lth) /ntá/ ンタ
ལྡ(ld)、མད(md)、འད('d)、ཟླ(zl)、བཟླ(bzl) /ntà/ ンタ
(th)、མཐ(mth)、འཐ('th) /tʰá/
(d)、དྭ(dw) /tʰà/
རྣ(rn)、སྣ(sn)、གན(gn)、བརྣ(brn)、བསྣ(bsn)、
མན(mn)
/ná/
(n) /nà/
(p)、ལྤ(lp)、སྤ(sp)、དཔ(dp) /pá/
རྦ(rb)、སྦ(sb)、སྦྲ(sbr)、དབ(db) /pà/
ལྦ(lb)、འབ('b) /mpà/ ンパ
(ph)、འཕ('ph) /pʰá/
(b) /pʰà/
རྨ(rm)、སྨ(sm)、དམ(dm) /má/
(m), མྲ(mr) /mà/
(ts)、རྩ(rts)、སྩ(sts)、ཙྭ(tsw)、གཙ(gts)、
བཙ(bts)、བརྩ(brts)、བསྩ(bsts)
/tsá/ ツァ
རྫ(rdz)、གཛ(gdz)、བརྫ(brdz) /tsà/ ツァ
མཛ(mdz)、འཛ('dz) /ntsà/ ンツァ
(tsh)、ཚྭ(tshw)、མཚ(mtsh)、འཚ('tsh) /tsʰá/ ツァ
(dz) /tsʰà/ ツァ
ཀྲ(kr)、ཏྲ(tr)、པྲ(pr)、དཀྲ(dkr)、དཔྲ(dpr)、
བཀྲ(bkr)、བསྐྲ(bskr)、བསྲ(bsr)

/ʈá/ (〜/ʈʂá/)

タ (〜ツァ)
(そりした
དགྲ(dgr)、དབྲ(dbr)、བསྒྲ(bsgr)、སྦྲ(sbr)

/ʈà/ (〜/ʈʂà/)

タ (〜ツァ)
(そりした
མགྲ(mgr)、འགྲ('gr)、འདྲ('dr)、འབྲ('br)

/ɳʈà/ (〜/ɳʈʂà/)

ンタ (〜ンツァ)
(そりした

ཁྲ(khr)、ཐྲ(thr)、ཕྲ(phr)、མཁྲ(mkhr)、
འཁྲ('khr)、འཕྲ('phr)

/ʈʰá/ (〜/ʈʂʰá/)

タ (〜ツァ)
(そりした
གྲ(gr)、དྲ(dr)、བྲ(br)、གརྭ(grw)

/ʈʰà/ (〜/ʈʂʰà/)

タ (〜ツァ)
(そりした
(w)、དབ(db) /w/
ཧྲ(hr) /ʂá/ シャ(そりした
(s)、སྲ(sr)、སྭ(sw)、གས(gs)、བས(bs)、
བསྲ(bsr)
/sá/
(z)、ཟྭ(zw)、གཟ(gz)、བཟ(bz) /sà/
((-))、【དབ(db)】 /ʔá/
(') /ʔà/
གཡ(g.y) /já/
(y) /jà/
(r)、རྭ(rw) /rà/
ཀླ(kl)、གླ(gl)、བླ(bl)、རླ(rl)、སླ(sl)、བརླ(brl)、
བསླ(bsl)
/lá/
(l)、ལྭ(lw) /là/
ལྷ(lh) /ɬá/
(h)、ཧྭ(hw) /há/

母音ぼいん末子まっしおん[編集へんしゅう]

母音ぼいん末子まっしおん表記ひょうき発音はつおん対応たいおう関係かんけい一覧いちらん

声調せいちょうげ、変化へんかさせる (高平たかひら調ちょうていたいら調ちょうていのぼり調ちょう)を、こうくだ調ちょうてい昇降しょうこう調ちょうへと変化へんかさせる) (g)、(d)、(b)、(s) の4字母じぼは、むらさき表示ひょうじ

文字もじ 発音はつおん カタカナ
(a) /a/
འུ(a'u) /au/ アウ
(ag)
གས(ags)
/aʔ/
(ang)
(angs)
/aŋ/ アン
(ab)
བས(abs)
/ap/ アプ
(am)
(ams)
/am/ アム
(ar) /aɹ/ アー(アル)
(al)
འི(a'i)
/ɛ/ エ(ー)
(ad)
(as)
/ɛʔ/
(an) /ɛ̃/ エン
(i)
(il)
འི(i'i)
/i/ イ(ー)
ིའུ(i'u)
ེའུ(e'u)
/iu/ イウ
(ig)
གས(igs)
(id)
(is)
/iʔ/
(ing)
(ings)
/iŋ/ イン
(ib)
བས(ibs)
/ip/ イプ
(im)
(ims)
/im/ イム
(ir) /iɹ/ イー(イル)
(in) /ĩ/ イン
(u) /u/
(ug)
གས(ugs)
/uʔ/
(ung)
(ungs)
/uŋ/ ウン
(ub)
བས(ubs)
/up/ ウプ
(um)
(ums)
/um/ ウム
(ur) /u ɹ/ ウー(ウル)
(ul)
འི(u'i)
/y/ ユ(ー)
(ud)
(us)
/yʔ/
(un) /ỹ/ ユン
(e)
(el)
འི(e'i)
/e/ エ(ー)
(eg)
གས(egs)
(ed)
(es)
/eʔ/
(eng)
(engs)
/eŋ/ エン
(eb)
བས(ebs)
/ep/ エプ
(em)
(ems)
/em/ エム
(er) /eɹ/ エー(エル)
(en) /ẽ/ エン
(o) /o/
(og)
གས(ogs)
/oʔ/
(ong)
(ongs)
/oŋ/ オン
(ob)
བས(obs)
/op/ オプ
(om)
(oms)
/om/ オム
(or) /oɹ/ オー(オル)
(ol)
འི(o'i)
/ø/ ウ(ー)
(od)
(os)
/øʔ/
(on) /ø̃/ ウン

音節おんせつ声調せいちょう変化へんか[編集へんしゅう]

音節おんせつ高平たかひら調ちょう

文字もじ声調せいちょうかかわらず、音節おんせつ声調せいちょう高平たかひら調ちょうになる。

音節おんせつおん

文字もじゆうおんであっても、音節おんせつではおんする。

サンスクリットとの対応たいおう[編集へんしゅう]

サンスクリットようこぼしにおける対応たいおう関係かんけいは、以下いかとおり。

(※ここで初出しょしゅつ字母じぼは、背景はいけいをオレンジで表示ひょうじ。)

母音ぼいん[編集へんしゅう]

すんでじゅつとおり、母音ぼいん長音ちょうおんするには、「/ʔ/もちいる。

ai /əi/ や au /əu/ は、e /eː/ や o /oː/こぼしもちいる「/e//o/ を、かさねることで表現ひょうげんする。

文字もじ記号きごう 転写てんしゃ
(IAST)
発音はつおん
(IPA)
文字もじ記号きごう 転写てんしゃ
(IAST)
発音はつおん
(IPA)
チベット文字もじ デーヴァナーガリー チベット文字もじ デーヴァナーガリー
a /ɐ/ or /ə/ ā /ɑː/
ि i /i/ ཱི ī /iː/
u /u/ ཱུ ū /uː/
ྲྀ /ɻ/ /ɻː/
ླྀ /ɭ/ /ɭː/
e /eː/ ai /əi/
o /oː/ au /əu/

子音しいん[編集へんしゅう]

ゆうごえゆうおんは、「/h/したせっすることで表現ひょうげんする。

そりしたおんには、歯音しおんこすおと字母じぼ左右さゆう反転はんてんさせた字母じぼもちいる。

無声音むせいおん 有声音ゆうせいおん 鼻音びおん
おん ゆうおん おん ゆうおん
軟口蓋なんこうがいおん // k(a) /k(ə)/ // kh(a) /kʰ(ə)/ // g(a) /ɡ(ə)/ གྷ // gh(a) /ɡʱ(ə)/ // (a) /ŋ(ə)/
かた口蓋こうがいおん () // c(a) /c(ə)/ () // ch(a) /cʰ(ə)/ () // j(a) /ɟ(ə)/ ཛྷ (ཇྷ) // jh(a) /ɟʱ(ə)/ // ñ(a) /ɲ(ə)/
そりしたおん // (a) /ʈ(ə)/ // ṭh(a) /ʈʰ(ə)/ // (a) /ɖ(ə)/ ཌྷ // ḍh(a) /ɖʱ(ə)/ // (a) /ɳ(ə)/
歯音しおん // t(a) /t̪(ə)/ // th(a) /t̪ʰ(ə)/ // d(a) /d̪(ə)/ དྷ // dh(a) /d̪ʱ(ə)/ // n(a) /n(ə)/
唇音しんおん // p(a) /p(ə)/ // ph(a) /pʰ(ə)/ // b(a) /b(ə)/ བྷ // bh(a) /bʱ(ə)/ // m(a) /m(ə)/
接近せっきんおん // y(a) /j(ə)/ // r(a) /r(ə)/ // l(a) /l(ə)/ // v(a) /ʋ(ə)/
こすおと摩擦音まさつおん // ś(a) /ɕ(ə)/ // (a) /ʂ(ə)/ // s(a) /s(ə)/ // h(a) /ɦ(ə)/

記号きごうるい[編集へんしゅう]

コンピュータ[編集へんしゅう]

チベット文字もじのUnicode[編集へんしゅう]

チベット文字もじもちいるUnicodeは、U+0F00 から U+0FFF である。文字もじ数字すうじ句読点くとうてん宗教しゅうきょうじょう特殊とくしゅ記号きごうふくむ。当初とうしょUnicode 1.0ではべつ符号ふごう位置いち収録しゅうろくされていた[3]が、1993ねん一時いちじてき削除さくじょされ、1996ねんのUnicode 2.0で現行げんこう符号ふごう位置いち収録しゅうろくされた。

U+ 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
0F00
0F10  ༘  ༙
0F20
0F30  ༵  ༷  ༼  ༽  ༾  ༿
0F40 གྷ ཌྷ
0F50 དྷ བྷ ཛྷ
0F60 ཀྵ
0F70  ཱ  ི  ཱི  ུ  ཱུ  ྲྀ  ཷ  ླྀ  ཹ  ེ  ཻ  ོ  ཽ  ཾ ཿ
0F80  ྀ  ཱྀ  ྂ  ྃ  ྄  ྆  ྇  ྈ
0F90  ྐ  ྑ  ྒ  ྒྷ  ྔ  ྕ  ྖ  ྗ  ྙ  ྚ  ྛ  ྜ  ྜྷ  ྞ  ྟ
0FA0  ྠ  ྡ  ྡྷ  ྣ  ྤ  ྥ  ྦ  ྦྷ  ྨ  ྩ  ྪ  ྫ  ྫྷ  ྭ  ྮ  ྯ
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表示ひょうじ入力にゅうりょく環境かんきょう[編集へんしゅう]

コンピュータ環境かんきょうにおけるチベット文字もじあつかいは、MacintoshではSystem 7漢字かんじTalk 7)以降いこう、WindowsではWindows 98以降いこうのバージョンにおいて、入力にゅうりょく表示ひょうじ、チベット文字もじ・ラテン文字もじ相互そうごのテキスト変換へんかんかく機能きのうととのった、実用じつよう可能かのう環境かんきょう提供ていきょうされるようになった。iOSでも4.2以降いこう入力にゅうりょく環境かんきょうととのえられた。

キーボード[編集へんしゅう]

Windows(チベット-中国ちゅうごく/PRCばん[編集へんしゅう]

Windowsのチベットキーボード(中国ちゅうごく/PRC)の配列はいれつ以下いかとおり。

赤字あかじ部分ぶぶんは「みぎAlt+Shift」で入力にゅうりょくみどり部分ぶぶんは★しるししめしたキーをして入力にゅうりょく

Windows(ゾンカ-ブータンばん[編集へんしゅう]

Windowsのチベット文字もじ入力にゅうりょくかんしては、上記じょうき中国ちゅうごく策定さくていのチベットキーボードよりも、ブータン策定さくていした以下いかゾンカキーボードのほうが、合理ごうりてき配列はいれつ入力にゅうりょく方式ほうしきになっており、入力にゅうりょくしやすい。Windows 8てんでまだデフォルトでまれていないので、政府せいふけいサイトからインストールする必要ひつようがある。

赤字あかじ部分ぶぶんは「みぎAlt」で入力にゅうりょく詳細しょうさいこちら

Windows(Tise-ワイリー方式ほうしき[編集へんしゅう]

Windowsではそのに、Tise英語えいごばん (ティセ、公式こうしきサイト)というフリーソフトを利用りようすることで、チベットのラテン文字もじこぼし方式ほうしきであるワイリー方式ほうしきでチベット文字もじ入力にゅうりょくすることができる。

利用りよう方法ほうほう簡単かんたんで、Tiseを起動きどうさせたうえで、「Shift+スペースキー」で入力にゅうりょく切替きりかえをするだけで、入力にゅうりょく可能かのうになる。

(ちなみに、Tise(ティセ)とはカイラスやま別名べつめいである。)

iOS(標準ひょうじゅん搭載とうさいキーボード)[編集へんしゅう]

iOSiPhoneiPad)に標準ひょうじゅん搭載とうさいされているチベットキーボードのレイアウトは、以下いかとおり。

左上ひだりうえのキーは、「文字もじたてみ」全般ぜんぱん使用しようする。左下ひだりしたキーをして移行いこうする「数字すうじ記号きごうモード」では、かく記号きごうキー」を長押なげししすることで、「関連かんれんする記号きごうるい」を入力にゅうりょくできる。

Gboard(Androidよう[編集へんしゅう]

Gboardのチベットキーボード(2020ねん4がつ現在げんざいAndroidのみに対応たいおう)のレイアウトは、以下いかとおり。

左上ひだりうえのキーを長押なげししすることで、その記号きごうるい入力にゅうりょくできる。

検索けんさくサービス[編集へんしゅう]

チベット文字もじ検索けんさくサービスとしては、くもぞう英語えいごばん(Yongzin、公式こうしきサイト)というサービスが中国ちゅうごく運営うんえいされている。

その[編集へんしゅう]

  • チベット文字もじからの派生はせい文字もじとして、モンゴルなど、もと言語げんご記録きろくするのにもちいられたパスパ文字もじつくられた。
  • 吐蕃統治とうちした、8世紀せいきから9世紀せいきにかけての敦煌とんこうなど中国ちゅうごく西北せいほくでは、中国ちゅうごく表記ひょうきするのにも使用しようされた。かず千種ちくさ必要ひつよう漢字かんじよりも学習がくしゅう容易よういなため、かなりひろもちいられたが、声調せいちょう表記ひょうきしないという不完全ふかんぜんさと、くに文字もじとしての権威けんい問題もんだいから、かん民族みんぞく統治とうちにもどると、徐々じょじょ使用しようされなくなった。
  • チベット文字もじには、ウチェンたいウメーたい種類しゅるいがあり、ウチェンたい活字かつじたいのような書体しょたいで、印刷物いんさつぶつはウチェンたいかれていることが普通ふつう手書てがきのときは、ウメーたいという筆記ひっきたい使つかう。ウメーはなに種類しゅるいもある。

脚注きゃくちゅう出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ ほしいずみ, ケルサン・タウワ (2017). ニューエクスプレス チベット. 白水しろみずしゃ. p. 22 
  2. ^ 有声音ゆうせいおんという分類ぶんるいは、あくまでもチベット文字もじ成立せいりつ当時とうじ古典こてんでのはなしであり、名目めいもくてきなもの。子音しいん区別くべつする都合つごうじょうワイリー方式ほうしきなどのラテン文字もじ転写てんしゃ方式ほうしきにも便宜べんぎてき採用さいようされている。現代げんだいでは、これらの子音しいんは(てい声調せいちょうびた)無声むせいゆうおんである。つまり、現代げんだいチベット(ラサ方言ほうげん)には、(中国ちゅうごく普通ふつうばなし)や朝鮮ちょうせんなどとおなじく)形式けいしきてきには有声音ゆうせいおん存在そんざいしない。ただし、カタカナ表記ひょうき場合ばあい、「デプンてら」(Drepung)のように、ラテン文字もじ表記ひょうききずられて濁音だくおんこんじることもよくある。
  3. ^ Block-by-block charts, Unicode 1.0

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]