ルビー

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ルビー
ルビー
分類ぶんるい 酸化さんか鉱物こうぶつ
化学かがくしき Al2O3
結晶けっしょうけい さんぽうあきらけい
モース硬度こうど 9.0
いろ あか   
比重ひじゅう 3.97 – 4.05
分散ぶんさん 0.018
プロジェクト:鉱物こうぶつPortal:地球ちきゅう科学かがく
テンプレートを表示ひょうじ
ルビー原石げんせき
スタールビー

ルビーえい: Ruby[ˈr.bi]紅玉こうぎょく)は、コランダム鋼玉こうぎょく、Al2O3)の変種へんしゅである。 ダイヤモンド硬度こうどち、赤色あかいろ特徴とくちょうてき宝石ほうせきである。語源ごげんラテン語らてんごで「あか」を意味いみする「ルベウス」 (rubeus) に由来ゆらいする。7がつ誕生石たんじょうせきいし言葉ことばは 「情熱じょうねつ熱情ねつじょう純愛じゅんあい勇気ゆうき自由じゆう」である[1]

天然てんねんルビーは産地さんちアジアかたよっており欧米おうべいではれないうえに、宝石ほうせきにできるうつくしいいしれる産地さんちきわめて限定げんていされている。また3カラットえるおおきないし産出さんしゅつりょうすくないため、かつてはすべての宝石ほうせきちゅうもっと貴重きちょうとされ、ダイヤモンド研磨けんまほう発見はっけんされてからも、火炎かえん溶融ようゆうほうによる人工じんこう合成ごうせい[2]確立かくりつするまでは、ダイヤモンドに宝石ほうせきとしてあつかわれた。

産出さんしゅつ[編集へんしゅう]

ミャンマースリランカタイ王国おうこくベトナムカンボジアタンザニアマダガスカルモザンビークなどが原産地げんさんちである。

なかでもミャンマーでは「ピジョン・ブラッド」(ハト)とばれるさい高級こうきゅうのルビーがられるが、政情せいじょう不安ふあんもあり産出さんしゅつりょうすくなく貴重きちょうである。おもにタイさんの、透明とうめいひく鉄分てつぶんふくんでくろずんでいるものは「ビーフ・ブラッド」(ウシ)とばれ、価格かかくはミャンマーさん半分はんぶんほどであり、発色はっしょくくするために加熱かねつなどの人工じんこう処理しょりがされることもおおい。また、スリランカやベトナムなどで産出さんしゅつされる、ピンクにちかあかのものを「チェリーピンク」とぶが、宝石ほうせきとしての価値かちひくく「ピンクサファイア」と混同こんどうされることもある。

ほかにも、成分せいぶんちゅうルチルはりじょう結晶けっしょうざることにより、反射はんしゃこうほしじょうえるものは「スタールビー」とばれ珍重ちんちょうされている。これを「スター効果こうか」とび、スターサファイアもある。色彩しきさいてきにはあかからはずれるが、インドさん透明とうめいかんのない小豆色あずきいろのサファイアにスター効果こうかあらわれるものがあり「インドスタールビー」とばれる。

ほとんどのルビーは玄武岩げんぶがん変成岩へんせいがん大理石だいりせきなどの岩石がんせきなか存在そんざいする。なが年月としつきあいだにルビーをふくんだ岩石がんせきくずれ、かわながされたものが砂利じゃりどろ一緒いっしょ堆積たいせきしていることがおおい。

日本にっぽん海外かいがい鑑別かんべつしょにおけるピジョンブラッドカラー記載きさいあつか[編集へんしゅう]

現在げんざい日本にっぽん鑑別かんべつしょではミャンマーさん確定かくていしたうえで、一定いっていいろフラッグ不純物ふじゅんぶつられない最高さいこう品質ひんしつのルビーではないと「ピジョンブラッド」と記載きさいできない[3]。もともと「ピジョンブラッド」自体じたいが、イギリスの王室おうしつがミャンマーさんルビーにあたえたいろめいであるため、日本にっぽん鑑別かんべつ業界ぎょうかいはそれをまもっている。

しかし海外かいがいでの鑑別かんべつしょでは産地さんち不問ふもんとされ、一定いってい以上いじょうあかであれば「ピジョンブラッド」と記載きさいされるため、海外かいがい鑑別かんべつしょで「ピジョンブラッド」と記載きさいされている場合ばあいでも、産地さんちはミャンマー以外いがいのルビーであることが多々たたあるので、かなら鑑別かんべつしょかれている産地さんち確認かくにんすることが必要ひつようである。

性質せいしつ特徴とくちょう[編集へんしゅう]

コランダムのなか赤色あかいろしめすものをルビーとび、透明とうめいなものから不透明ふとうめいなものまで存在そんざいする。当然とうぜん透明とうめいかんたかく、インクルージョンすくないもの高価こうかである。

コランダムは不純物ふじゅんぶつ金属きんぞくイオン)のちがいでいろわる。不純物ふじゅんぶつとしてクロムが1%ほど混入こんにゅうすると、赤色あかいろのルビーになる。てつチタン混入こんにゅうすると青色あおいろサファイアとなり、クロムが0.1%しかざっていないうす赤色あかいろのものを「ピンクサファイア」とぶ(ルビーの発色はっしょく機構きこう色素しきそ参照さんしょう)。このクロムの含有がんゆう割合わりあい1%以内いないという微妙びみょうなバランスが、自然しぜんかいにおいて非常ひじょうまれ状況じょうきょうでしかこらないため、天然てんねんルビーが貴重きちょうとされるのである。なお、クロムがえるにつれ色合いろあいはあかからくろっぽくなり、価値かちがってゆく。さらに5%をえると、エメリー英語えいごばんという灰色はいいろ工業こうぎょうよう研磨けんまざいになり、価値かち激減げきげんする。

した写真しゃしんのように、ルビーは赤色あかいろ成分せいぶん一切いっさいふくまない緑色みどりいろ光源こうげんにおいてもあかひかことができる(レーザー完全かんぜん単色たんしょくこうである)。これは、ルビーちゅうに0.1%ふくまれるCr3+むらさきおよび緑色みどりいろこう吸収きゅうしゅうし、そのエネルギーを赤色あかいろ発光はっこうとして再度さいど放出ほうしゅつする性質せいしつによる[4]

用途ようと加工かこうほう[編集へんしゅう]

腕時計うでどけいなかいし(ルビー)

たか硬度こうどこう切削せっさくせい磨耗まもうしにくい性質せいしつ)をゆうし、さらにせい摩擦まさつちいさいことから、レコードはりや、トラックボールのボールけ、腕時計うでどけいといった小型こがた精密せいみつ機械きかい軸受じくうけなどに利用りようされる。こうコストのためおも高級こうきゅう採用さいようされる。

また、かつては合成ごうせいルビーが固体こたいレーザー素子そしルビーレーザー」としてもちいられた。

歴史れきし[編集へんしゅう]

古代こだい[編集へんしゅう]

ルビーの歴史れきしは、古代こだいには青銅器せいどうき時代じだいにまでさかのぼる。古代こだいギリシアでは「アンスラックス」(古代こだいギリシア: ἄνθραξ、「石炭せきたん」の)、ローマでは「カルブンクルス」(ラテン語らてんご: carbunculus)とばれていた。

インドでもふるくからルビーがあったようで、ヒンドゥーきょう聖典せいてんリグ・ヴェーダ』に名前なまえている。

中世ちゅうせい[編集へんしゅう]

ルビーの使つかわれはじめたのは中世ちゅうせいからであるが、11世紀せいきキリスト教きりすときょう司教しきょうマルボドゥスあらわした中世ちゅうせい代表だいひょうてき鉱物こうぶつである『いしについて』では、ダイヤモンドやサファイア、エメラルドなどにくらべて記述きじゅつすくない。

また、アラビアペルシアでは、ルビーに病気びょうきなおちからがあるとしんじられていた。インドでもルビー秘薬ひやくとしてもちいられたことがある。

近代きんだい[編集へんしゅう]

ヨーロッパ史上しじょう最大さいだいのルビーとされるものは、1777ねんサンクトペテルブルクおとずれたスウェーデンおうグスタフ3せいが、ロシアエカチェリーナ女帝にょていおくったルビーで、小型こがた鶏卵けいらん程度ていどおおきさで完全かんぜん透明とうめいであった。このいしロシア革命かくめい以前いぜん皇帝こうていかんむりかざられていたが、革命かくめい以降いこう行方ゆくえはわかっていない。

ルビーとサファイアがおな成分せいぶんであることがかったのは1783ねんで、ロメ・ド・リール英語えいごばんというフランスじんによる。

1902ねん、フランスの化学かがくしゃであるオーギュスト・ヴィクトル・ルイ・ベルヌーイ英語えいごばんにより、商業しょうぎょうよう宝石ほうせきとしてははじめて人工じんこう合成ごうせいほう開発かいはつ発表はっぴょうされた。この合成ごうせいほうは「ベルヌーイほう」とばれる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ ルビーにめられた意味いみとは”. きょうセラ オードリー odolly. 2023ねん10がつ4にち閲覧えつらん
  2. ^ 大石おおいし修治しゅうじ, 手嶋てじま勝弥かつや, 宮本みやもとあきら, 宮坂みやさかあきら, 鈴木すずきたかししんルビー結晶けっしょう酸化さんかモリブデンけいフラックス成長せいちょう」『化学かがく教育きょういくだい54かんだい6ごう日本にっぽん学会がっかい、2006ねん、356-358ぺーじdoi:10.20665/kakyoshi.54.6_356ISSN 0386-2151NAID 110008906857 
  3. ^ ピジョンブラッドとは?”. morisruby.com. 2023ねん10がつ4にち閲覧えつらん
  4. ^ Red Ruby - Causes of Color

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

派生はせい

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

  • Ruby (英語えいご), MinDat.org, 2011ねん7がつ28にち閲覧えつらん 英語えいご