干ひ刈があがた

干ひ刈が あがた（ひかり あがた, 1943年ねん1月がつ25日にち - 1992年ねん9月6日にち）は、日本にっぽんの小説しょうせつ家か。本名ほんみょう：浅井あさい和枝かずえ（旧姓きゅうせい柳やなぎ）。東京とうきょう府ふ（現げん：東京とうきょう都と）出身しゅっしん。

デビュー作さく『樹下じゅかの家族かぞく』（1982年ねん）以降いこう、安保あんぽ闘争とうそう世代せだいの女性じょせいの青春せいしゅん、結婚けっこん、離婚りこん、子育こそだてなど、社会しゃかいや家族かぞくとの関かかわりについて鋭するどい同どう時代じだい性せいを持もって描えがき、読者どくしゃの大おおきな共感きょうかんを得えた。作品さくひんに『ウホッホ探険たんけん隊たい』『ゆっくり東京とうきょう女子じょしマラソン』（1984年ねん）、『黄色きいろい髪かみ』（1987年ねん）など。

両親りょうしんの出身しゅっしん地ちである奄美あまみ群島ぐんとうの郷土きょうど史し研究けんきゅう家かでもあった。

約やく10年ねんほどの作家さっか生活せいかつの後のち、49歳さいで死去しきょ。

講談社こうだんしゃ児童じどう文学ぶんがく新人しんじん賞しょう選考せんこう委員いいんを、1988年ねんから1991年ねんまで務つとめた。

経歴けいれき

東京とうきょう府ふ西多摩にしたま郡ぐん青梅おうめ町まち（現げん：東京とうきょう都と青梅おうめ市し）に生うまれる。東京とうきょう都立とりつ富士ふじ高等こうとう学校がっこう在学ざいがく中ちゅう、高校こうこう新聞しんぶん部ぶ連盟れんめいの呼よびかけで安保あんぽ闘争とうそうのデモや集会しゅうかいに参加さんかする。1962年ねんに早稲田大学わせだだいがく第だい一いち政経学部せいけいがくぶ新聞しんぶん学科がっかに入学にゅうがくするが、翌年よくねん中退ちゅうたい。コピーライターを経へて、1967年ねんから70年ねん頃ごろまで、月刊げっかん誌し『若わかい女性じょせい』に旅行りょこう体験たいけん記きを掲載けいさいするなど、不定期ふていき的てきに雑誌ざっしのライターとして働はたらき、作詞さくし（冷泉れいせん公こう裕ひろし『四よん回戦かいせんボーイ』）なども手てがけた。

1975年ねんに、島尾しまお敏雄としおの呼よびかけで作つくられた「奄美あまみ郷土きょうど研究けんきゅう会かい」の会員かいいんになり、島しま唄うたの採集さいしゅうを始はじめる。1980年ねんに自作じさくの短編たんぺんと詩しに、採集さいしゅうした沖永良部島おきのえらぶしまの島しま唄うたをまとめた『ふりむんコレクション』を自費じひ出版しゅっぱん。1982年ねん『樹下じゅかの家族かぞく』で第だい1回かい海燕うみつばめ新人しんじん文学ぶんがく賞しょうを受賞じゅしょうして商業しょうぎょう誌しデビューし、作家さっか活動かつどうに入はいる。

1990年ねん以後いご入退院にゅうたいいんを繰返くりかえし、1992年ねんに胃癌いがんにより死去しきょ。書斎しょさいからは、収集しゅうしゅうしていた島しま唄うたと奄美あまみ群島ぐんとうの民俗みんぞく関係かんけいの資料しりょうが多数たすう見みつかった。毎年まいとし、命日めいにちに近ちかい9月の土曜日どようびに東京とうきょう都と青梅おうめ市しの宗そう建けん寺てらで、かつての関係かんけい者しゃやファンによるコスモス忌きが催もよおされている。

作品さくひん

女性じょせいの解放かいほう、あるいは社会しゃかい進出しんしゅつとともに、離婚りこん、シングルマザー、家庭かていの崩壊ほうかいといったテーマが表層ひょうそう化かしたことを、文学ぶんがくという形かたちで受うけ止とめた作品さくひん群ぐんを生うみ出だした。これを情念じょうねんの世界せかいに密接みっせつした女流じょりゅう文学ぶんがくと対比たいひして、磯田いそだ光一こういちは『ゆっくり東京とうきょう女子じょしマラソン』の解説かいせつで「昭和しょうわの女流じょりゅう文学ぶんがくが拒絶きょぜつし続つづけたものから成なり立たっている」と評ひょうした。

初期しょきの代表だいひょう作さく『ウホッホ探険たんけん隊たい』で主人公しゅじんこうの息子むすこが言いう「僕ぼくたちは探険たんけん隊たいみたいだね。離婚りこんていう、日本にっぽんではまだ未知みち（注ちゅう：原文げんぶんママ）の領域りょういきを探険たんけんするために、それぞれの役やくをしているの」という台詞せりふが象徴しょうちょうするように、時代じだいの変化へんかに伴ともなう新あたらしい生いき方かたを、日常にちじょう性せいの中なかの言葉ことばとリアリティで描えがき出だしたところに、新鮮しんせんな文学ぶんがく感覚かんかくを見出みいだされた。

受賞じゅしょう歴れき等とう

• 1982年ねん「樹下じゅかの家族かぞく」 海燕うみつばめ新人しんじん文学ぶんがく賞しょう
• 1983年ねん「ウホッホ探険たんけん隊たい」 芥川賞あくたがわしょう候補こうほ
• 1984年ねん「ゆっくり東京とうきょう女子じょしマラソン」「入江いりえの宴うたげ」 芥川賞あくたがわしょう候補こうほ
• 1985年ねん『ゆっくり東京とうきょう女子じょしマラソン』 芸術げいじゅつ選奨せんしょう新人しんじん賞しょう
• 1986年ねん『しずかにわたすこがねのゆびわ』 野間のま文芸ぶんげい新人しんじん賞しょう
• 1986年ねん「ホーム・パーティー」 芥川賞あくたがわしょう候補こうほ
• 1988年ねん『黄色きいろい髪かみ』 山本やまもと周五郎しゅうごろう賞しょう候補こうほ
• 1990年ねん『ウォークinチャコールグレイ』 山本やまもと周五郎しゅうごろう賞しょう候補こうほ

単行本たんこうぼん

小説しょうせつ

• 『ふりむんコレクション』自費じひ出版しゅっぱん 1980年ねん
• 『樹下じゅかの家族かぞく』福武書店ふくたけしょてん 1983年ねん　「樹下じゅかの家族かぞく/島しま唄うた」文庫ぶんこ、「樹下じゅかの家族かぞく」朝日あさひ文庫ぶんこ
• 『ウホッホ探険たんけん隊たい』福武書店ふくたけしょてん 1984年ねん のち文庫ぶんこ、朝日あさひ文庫ぶんこ、河出かわで文庫ぶんこ
• 『ゆっくり東京とうきょう女子じょしマラソン』福武書店ふくたけしょてん 1984年ねん　のち文庫ぶんこ、朝日あさひ文庫ぶんこ　　
• 『ワンルーム』福武書店ふくたけしょてん 1985年ねん　のち文庫ぶんこ　
• 『しずかにわたすこがねのゆびわ』福武書店ふくたけしょてん 1986年ねん　のち文庫ぶんこ　
• 『黄色きいろい髪かみ』朝日新聞社あさひしんぶんしゃ 1987年ねん　のち文庫ぶんこ　
• 『ビッグ・フットの大おおきな靴くつ』河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ 1987年ねん
• 『ホーム・パーティー』新潮社しんちょうしゃ 1987年ねん　のち文庫ぶんこ　
• 『十じゅう一いち歳さいの自転車じてんしゃ—物ぶつは物ものにして物ものにあらず物語ものがたり』集英社しゅうえいしゃ 1988年ねん　のち文庫ぶんこ　
• 『アンモナイトをさがしにゆこう』福武書店ふくたけしょてん 1989年ねん　のち文庫ぶんこ　
• 『窓まどの下したの天あまの川がわ』新潮社しんちょうしゃ 1989年ねん
• 『借かりたハンカチ—物ぶつは物ものにして物ものにあらず物語ものがたり』集英社しゅうえいしゃ 1989年ねん　のち文庫ぶんこ　
• 『ウォークinチャコールグレイ』講談社こうだんしゃ 1990年ねん　のち文庫ぶんこ　
• 『ラスト・シーン』河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ 1991年ねん
• 『野菊のぎくとバイエル』集英社しゅうえいしゃ 1992年ねん　のち文庫ぶんこ　
• 『名残なごりのコスモス』河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ 1992年ねん
• 『干ひ刈があがたの世界せかい』全ぜん6巻かん　河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ

1 樹下じゅかの家族かぞく 1998

2 ウホッホ探険たんけん隊たい 1998

3 ワンルーム 1998

4 しずかにわたすこがねのゆびわ 1999

5 ホーム・パーティー 1999

6 黄色きいろい髪かみ 1999

エッセイ・ノンフィクション

• 『女おんなコドモの風景ふうけい』文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう 1987年ねん
• 『40代だいはややこ思惟しいいそが恣意しい』ユック舎しゃ 1988年ねん
• 『1日にちだけのナイチンゲール—43人にんの看護かんご婦ふ体験たいけん記き<ことば篇へん>』弓立ゆだち社しゃ 1990年ねん （立花たちばな隆たかし、立松たてまつ和平わへい、千倉ちくら真理まりと共著きょうちょ）
• 『どこかヘンな三角さんかく関係かんけい』新潮社しんちょうしゃ 1991年ねん

翻訳ほんやく

• ジェイン・アン・フィリップス他た『80年代ねんだいアメリカ女性じょせい作家さっか短たん編集へんしゅう』斎藤さいとう英治えいじ共とも訳やく　新潮社しんちょうしゃ 1989年ねん
• ローリー・ムーア『セルフ・ヘルプ 新あたらしいアメリカの小説しょうせつ』白水しろみず社しゃ 1989年ねん（斎藤さいとう英治えいじと共とも訳やく）
• 『堤つつみ中納言ちゅうなごん物語ものがたり・うつほ物語ものがたり』講談社こうだんしゃ 1992年ねん（津島つしま佑子ゆうこと共著きょうちょ）

映像えいぞう化か等とう作品さくひん

映画えいが

• 『ウホッホ探険たんけん隊たい』 根岸ねぎし吉太郎よしたろう監督かんとく 東宝とうほう 1986年ねん

テレビドラマ

• 『ゆっくり東京とうきょう女子じょしマラソン』 TBS 1984年ねん（番組ばんぐみ名めいは『風ふうにむかってマイウェイ』）
• 『黄色きいろい髪かみ』 NHK 1989年ねん

ラジオドラマ

• 『プラネタリウム』 TBS 1984年ねん
• 『ウホッホ探険たんけん隊たい』 NHK 1985年ねん

関連かんれん書籍しょせき

• コスモス会かい 編へん『干ひ刈があがたの文学ぶんがく世界せかい』鼎かなえ書房しょぼう、2004年ねん。ISBN 4907846290。 
• 小沢おざわ美智恵みちえ『響ひびけ、わたしを呼よぶ声こえ 勇気ゆうきの人ひと干ひ刈があがた』八千代やちよ出版しゅっぱん、2010年ねん。ISBN 9784842915296。 

外部がいぶリンク

• 干ひ刈があがた資料しりょう館かん[1]