櫓ろ投なげ

櫓ろ投なげ（やぐらなげ）とは、相撲すもうの決きまり手しゅの一ひとつである。

解説かいせつ

相手あいてを吊つり上あげながら膝ひざで相手あいての内股うちまたを跳はね上あげて投なげる技わざ。決きまり手しゅ70手て制定せいてい以前いぜんは上手じょうず櫓ろと下手へた櫓ろで区別くべつした。投なげられる相手あいてが宙ちゅうに浮うき、高たかく上あがるため、豪快ごうかいな決きまり手しゅと称しょうされる。体重たいじゅうが軽かるいとこの技わざがかけられやすい。

大正たいしょう後期こうきから昭和しょうわ初期しょきにかけて活躍かつやくした横綱よこづな常つねノ花はなや昭和しょうわ20年代ねんだい後半こうはんから30年代ねんだい前半ぜんはんにかけて活躍かつやくした関脇せきわけ羽はね嶋しま山さんの得意とくい技わざだった。非常ひじょうに珍めずらしい決きまり手しゅで、戦後せんごには1975年ねん11月場所ばしょ9日にち目めに青葉山あおばやまが福ぶくの花はなに決きめて以降いこう、幕内まくうちの取組とりくみでは長ながらく使つかわれなかったが、2009年ねん7月がつ場所ばしょ13日にち目めに朝あさ青あお龍りゅうが櫓ろ投なげで日馬くさま富士ふじを投なげ飛とばし、34年ねんぶりに櫓ろ投なげの決きまり手しゅがアナウンスされた。その6年ねん半はん後ご、2015年ねん11月場所ばしょ7日にち目めに白はく鵬ほうが隠岐おきの海うみに櫓ろ投なげで勝かっている。

また、2008年ねん5月場所ばしょに、安やす馬ば（のちの日馬くさま富士ふじ）と若わかノ鵬おおとりの取組とりくみで安やす馬ばが若わかノ鵬おおとりをうっちゃりで投なげ飛とばし勝かった際さいに、北きたの湖うみ理事りじ長ちょう（当時とうじ）や初代しょだい若乃花わかのはな、北きたの富士ふじらが「櫓ろ投なげ」と述のべたことがあった。

日本にっぽん大相撲おおずもうトーナメント・第だい三さん十じゅう六ろく回かい大会たいかい3回戦かいせん第だい1試合しあいでは白はく鵬ほうが隆りゅうの山やまに対たいして決きめたが、場内じょうない発表はっぴょうはなぜか掴つかみ投なげであり、白はく鵬ほうも「わかってないな…」と不満ふまんそうに記者きしゃに対たいして漏もらしていた。その後ご、白はく鵬ほうは2015年ねん11月場所ばしょに隠岐おきの海うみに対たいしてこの技わざを決きめ、この時ときは公式こうしき記録きろくも櫓ろ投なげとなった。

因ちなみに1972年ねん3月がつ場所ばしょ11日にち目めに行おこなわれた琴きん櫻さくらと貴たかノ花はなとの対戦たいせんでは琴きん櫻さくらが二に本ほんを差さされながらこの技わざを打うって白星しろぼしを得えている。ところがその琴きん櫻さくらは翌よく12日にち目めの取組とりくみで前まえの山やまに張はり手てで気絶きぜつさせられ、一方いっぽう的てきに下手へた投なげに転ころがって敗やぶれたことで、この一番いちばんが「無気力むきりょく相撲すもう」に該当がいとうすると指摘してきされてしまった。折おりしも大関おおぜき陣じんの無気力むきりょく相撲すもうに対たいする批判ひはんが強つよまっていた中なか、前日ぜんじつと当日とうじつとであまりにも相撲すもう内容ないようが異ことなることが状況じょうきょう証拠しょうことなった形かたちで琴きん櫻さくらと前まえの山やまの両人りょうにんは印象いんしょうを悪わるくしてしまった。特とくに前まえの山やまは12日にち目めまで6勝しょう6敗はいであったところ、13日にち目めから師匠ししょうの高砂たかさごの判断はんだんによって途中とちゅう休場きゅうじょうを喫きっし、この場所ばしょ限かぎりで大関おおぜきの座ざに別わかれを告つげる経緯けいいを辿たどった。

柔道じゅうどうでも使つかわれるが正式せいしきの技わざ名称めいしょうにはない。柔道じゅうどうの書籍しょせきでは1930年ねんの柔道じゅうどう家か尾形おがた源治げんじ著ちょ『柔道じゅうどう神髄しんずい』で紹介しょうかいされている。フロント内股うちまた（ふろんとうちまた）と呼よばれ、内股うちまたに分類ぶんるいされたり、相手あいての後のち帯おびを持もてば帯おび取ど返かえしに分類ぶんるいされたりしている。

関連かんれん項目こうもく

• 大相撲おおずもうの決きまり手しゅ一覧いちらん