うっちゃり

うっちゃりとは相撲すもうの決きまり手しゅの一ひとつである。漢字かんじ表記ひょうきは、「打うっ棄り」あるいは「打だ棄」。

解説かいせつ

体勢たいせいの例れい

土俵どひょう際きわまで寄よせられた、または土俵際どひょうぎわで吊つり出だされそうになった力士りきしが腰こしを落おとし体からだを捻ねじって、相手あいて力士りきしを土俵どひょうの外そとへ投なげるもの。語源ごげんは「捨すてる」を意味いみする「打うち遣やる」から。そのままでは寄より切きられるところを、逆転ぎゃくてんする技わざである。そのため、ぎりぎりで何事なにごとかを逆転ぎゃくてんすることを「うっちゃる」と表現ひょうげんする。あるいは、その寸前すんぜんまで優勢ゆうせいであった側がわの印象いんしょうとして「うっちゃられた」といわれることも多おおい。

土俵際どひょうぎわぎりぎりでその寸前すんぜんまで攻せめ込こまれている状況じょうきょうから出だすものであり、しかも掛かけた側がわも体からだが後うしろに倒たおれながら出だしているので、判定はんていで揉もめることがしばしばある。不十分ふじゅうぶんな場合ばあいは、同体どうたいで取とり直なおしになる場合ばあいもよく見みられる。失敗しっぱいして掛かけた方ほうの体からだが先さきに落おち、行司ぎょうじ差さし違ちがえで負まける場合ばあい（この場合ばあいの決きまり手しゅは寄より倒たおしなどになる）も存在そんざいする。

うっちゃりを決きめるためには相当そうとうの瞬発しゅんぱつ力りょくと勝負しょうぶ強つよさ、そして強靱きょうじんな足腰あしこしが必要ひつようである。

若浪わかのなみ、大だい麒麟きりん、霧島きりしまなど、吊つりや四よつ身みを得意とくいとする力士りきしがこの技わざの使つかい手てで知しられており、また朝あさ潮しおなどアンコ型がたの力士りきしが自分じぶんの太鼓腹たいこばらに相手あいてを乗のせるようにして掛かけることもある。

また、横綱よこづな昇進しょうしん前まえの双葉ふたば山さんは、まだ体からだができ上あがっておらず、うっちゃりで逆転ぎゃくてん勝がちする相撲すもうが毎まい場所ばしょのように見みられたことから「うっちゃり双葉ふたば」のあだ名ながつけられていた。横綱よこづな昇進しょうしん後ごは体からだもでき上あがり、右みぎ四よっつの絶対ぜったい的てきな型かたを完成かんせいさせたことで、うっちゃりはほとんど見みられなくなった。

昭和しょうわ期末きまつから平成へいせいにかけては、「三杉里みすぎさとマジック」など一部いちぶの例外れいがいを除のぞきほとんど見みることが無なくなった。その理由りゆうとしては力士りきしの大型おおがた化かと共ともに、足腰あしこしの弱体じゃくたい化か等とうの懸念けねんがこれに関かんして言いわれることがある。「『うっちゃり』はなぜ消きえたのか」というタイトルの相撲すもう分析ぶんせき書しょまで出版しゅっぱんされた（眞石まいし博之ひろゆき著しる、日本経済新聞社にほんけいざいしんぶんしゃより2000年ねん出版しゅっぱん）。

近年きんねんのうっちゃり

• 2007年ねん5月がつ場所ばしょ
  • 10日とおか目めに寶たから智さとし山さんが高見たかみ盛もりに対たいして決きめている。
• 2008年ねん5月がつ場所ばしょ
  • 中日ちゅうにちに安やす馬うまが若わかノ鵬おおとりに対たいして決きめたうっちゃりは豪快ごうかいに決きまった（あまりに豪快ごうかいなために朝あさ青あお龍りゅうも唸うなった。理事りじ長ちょうの北きたの湖うみも櫓ろ投なげを取とるべきではないかと言いったほどである）。さらに同どう場所ばしょ12日にち目めには栃とちノ心こころが豊ゆたか真ま将しょうに対たいし決きめており、同どう一いち場所ばしょで2度どうっちゃりが見みられたことになる。
• 2009年ねん3月がつ場所ばしょ
  • 3日にち目めに豪ごう栄さかえ道どうが把わ瑠都に対たいして決きめた。
• 2009年ねん7月がつ場所ばしょ
  • 4日にち目めに嘉よしみ風ふうが翔しょう天てん狼おおかみに対たいして審判しんぱんの判定はんてい結果けっかで成功せいこうした。
• 2013年ねん1月がつ場所ばしょ
  • 7日にち目めに栃とちノ心こころが隠岐おきの海うみに対たいして決きめた。
• 2014年ねん5月がつ場所ばしょ
  • 9日にち目めに佐田さたの海うみが北きた太ふとし樹じゅに対たいして決きめた。
• 2015年ねん9月がつ場所ばしょ
  • 6日にち目めに大栄おおえ翔しょうが鏡かがみ桜さくらに対たいして決きめた。
• 2016年ねん5月がつ場所ばしょ
  • 千秋楽せんしゅうらくに白はく鵬ほうが鶴つる竜りゅうに対たいして決きめた。そして白はく鵬ほうは全勝ぜんしょう優勝ゆうしょうした。
• 2016年ねん9月がつ場所ばしょ
  • 9日にち目めに松まつ鳳おおとり山さんが佐田さたの海うみに対たいして決きめた。
• 2017年ねん1月がつ場所ばしょ
  • 初日しょにちに大だい砂嵐すなあらしが千代ちよ皇すめらぎに対たいして決きめた。
• 2018年ねん9月がつ場所ばしょ
  • 初日しょにちに嘉よしみ風ふうが千代ちよ翔しょう馬ばに対たいして決きめた。
• 2019年ねん11月場所ばしょ
  • 11日にち目めに正代しょうだいが佐田さたの海うみに対たいして決きめた。
• 2021年ねん1月がつ場所ばしょ
  • 14日にち目めに照あきら強きょうが琴きん勝かち峰ほうに対たいして決きめた。
• 2021年ねん3月がつ場所ばしょ
  • 11日にち目めに炎ほのお鵬おおとりが佐田さたの海うみに対たいして決きめた。
• 2021年ねん7月がつ場所ばしょ
  • 11日にち目めに千代ちよノ皇すめらぎが妙義みょうぎ龍りゅうに対たいして決きめた。
• 2022年ねん5月がつ場所ばしょ
  • 14日にち目めに若わか元春もとはるが一山ひとやま本ほんに対たいして決きめた。
• 2022年ねん9月がつ場所ばしょ
  • 初日しょにちに若わか元もと春はるが佐田さたの海うみに対たいして決きめた。更さらに3日にち目めには、再ふたたび若わか元もと春はるが宝たから富士ふじに対たいして決きめた。
• 2023年ねん5月がつ場所ばしょ
  • 11日にち目めに若わか元もと春はるが北きた青あお鵬ほうに対たいして決きめた。

関連かんれん項目こうもく

• 大相撲おおずもうの決きまり手しゅ一覧いちらん