タマカイ Epinephelus lanceolatus とコガネシマアジງງ Gnathanodon speciosus の群 む れ
海水 かいすい 魚 ぎょ (かいすいぎょ、英 えい : Saltwater fish )は、海水 かいすい 中 なか で生活 せいかつ する魚類 ぎょるい の総称 そうしょう 。海産 かいさん 魚 ぎょ とも呼 よ ばれる。海水 かいすい 魚 ぎょ は2006年 ねん の時点 じてん でおよそ1万 まん 5800種 しゅ が知 し られ、現生 げんなま の魚類 ぎょるい 2万 まん 8000種 しゅ のうち約 やく 56%を占 し めている[1] 。
海水 かいすい 魚 ぎょ とは海 うみ で生活 せいかつ する魚類 ぎょるい の総称 そうしょう で、現生 げんなま 魚類 ぎょるい のおよそ56%、約 やく 1万 まん 5800種 しゅ が含 ふく まれる。最初 さいしょ 期 き の魚類 ぎょるい (無 む 顎 あご 類 るい の仲間 なかま [注釈 ちゅうしゃく 1] )は海 うみ で進化 しんか を遂 と げ、その後 ご の進化 しんか の歴史 れきし において海水 かいすい から淡水 たんすい へ、淡水 たんすい から海水 かいすい への進出 しんしゅつ と適応 てきおう が何 なん 度 ど も繰 く り返 かえ されてきた。現代 げんだい では海水 かいすい 魚 ぎょ は寒帯 かんたい から熱帯 ねったい 、沿岸 えんがん から外洋 がいよう 、表層 ひょうそう から深海 しんかい に至 いた るまで、ほとんどのすべての海域 かいいき に分布 ぶんぷ を広 ひろ げるとともに、漁業 ぎょぎょう 資源 しげん として世界中 せかいじゅう で利用 りよう される重要 じゅうよう な存在 そんざい となっている[2] 。
海水 かいすい は体内 たいない よりも浸透 しんとう 圧 あつ が高 たか いため、海水 かいすい 魚 ぎょ は水分 すいぶん が体外 たいがい に流出 りゅうしゅつ する脱水 だっすい の危機 きき に常 つね にさらされている。最 もっと も原始 げんし 的 てき な脊椎動物 せきついどうぶつ であるヌタウナギ 類 るい は、体液 たいえき の一価 いっか イオン を海水 かいすい と同 どう レベルに順応 じゅんのう させ、サメ ・エイ に代表 だいひょう される軟骨 なんこつ 魚類 ぎょるい は尿素 にょうそ などの窒素 ちっそ 代謝 たいしゃ 物 ぶつ を体内 たいない に蓄積 ちくせき し、浸透 しんとう 圧 あつ を上昇 じょうしょう させることで海水 かいすい への適応 てきおう を果 は たした。そして遅 おく れて出現 しゅつげん した条 じょう 鰭 ひれ 綱 つな のグループは、多量 たりょう の海水 かいすい を飲 の むことで、失 うしな われる水分 すいぶん を補 おぎな い、過剰 かじょう な塩分 えんぶん は塩類 えんるい 細胞 さいぼう と呼 よ ばれる特殊 とくしゅ なイオン輸送 ゆそう 細胞 さいぼう を通 つう じて排出 はいしゅつ する機構 きこう を発達 はったつ させ、現代 げんだい の海洋 かいよう で最 もっと も繁栄 はんえい する魚類 ぎょるい となっている。
環境 かんきょう の変化 へんか に乏 とぼ しく貧 ひん 栄養 えいよう の外洋 がいよう における海水 かいすい 魚 ぎょ は限 かぎ られ、単 たん 一 いち 種 しゅ による大 だい 集団 しゅうだん が構成 こうせい されることも多 おお い
海水 かいすい 魚 ぎょ は陸 ろく に近 ちか い沿岸 えんがん ・河口 かこう 域 いき から遠 とお く離 はな れた外洋 がいよう 、生物 せいぶつ 量 りょう の豊富 ほうふ な藻 も 場 じょう ・サンゴ礁 さんごしょう から岩礁 がんしょう ・砂 すな 泥 どろ 地帯 ちたい にかけて、赤道 あかみち 直下 ちょっか の熱帯 ねったい 域 いき から氷点下 ひょうてんか の南極 なんきょく 海 かい 、さらには太陽光 たいようあきら に恵 めぐ まれた表層 ひょうそう から暗黒 あんこく の深海 しんかい に至 いた るまで、あらゆる海水 かいすい 環境 かんきょう にその分布 ぶんぷ を広 ひろ げている[2] 。成長 せいちょう 段階 だんかい に応 おう じて、または環境 かんきょう や餌 えさ 生物 せいぶつ の季 き 節 ぶし 変動 へんどう に伴 ともな って、それらの間 あいだ を行 い き来 き するものも数多 かずおお い。
海水 かいすい 魚 ぎょ はその分布 ぶんぷ 範囲 はんい に基 もと づいて、外洋 がいよう 表層 ひょうそう 性 せい (Epipelagic)、深海 ふかうみ 漂泳性 せい (Deep pelagic)、深海 ふかうみ 底 そこ 生 せい 性 せい (Deep benthic)、および沿岸 えんがん 性 せい (Littoral)、の4種類 しゅるい に大 おお きく分 わ けられる[3] 。
外洋 がいよう 表層 ひょうそう 性 せい の海水 かいすい 魚 ぎょ は水深 すいしん 200mまでの外洋 がいよう 域 いき で生活 せいかつ するものを指 さ し、その多 おお くが広範 こうはん で世界 せかい 的 てき な分布 ぶんぷ 域 いき をもつが、比較的 ひかくてき 沿岸 えんがん 寄 よ りに暮 く らす種類 しゅるい は限局 げんきょく 的 てき な分布 ぶんぷ を示 しめ す場合 ばあい もある[3] 。他 た のグループに比 くら べ種類 しゅるい は少 すく なく、ニシン目 め ・ダツ目 め およびスズキ目 め のアジ科 か ・サバ科 か など360種 しゅ 程度 ていど が知 し られているに過 す ぎない[3] [4] 。
深海 ふかうみ 漂泳魚 ぎょ および底 そこ 生魚 なまざかな はいわゆる深海魚 しんかいぎょ と総称 そうしょう されるグループで、いずれも水深 すいしん 200m以深の深海 しんかい に分布 ぶんぷ する。海底 かいてい から離 はな れた中層 ちゅうそう を主 おも な生息 せいそく 域 いき とするものを漂泳魚 ぎょ と呼 よ び、海底 かいてい 付近 ふきん で生活 せいかつ するものが底 そこ 生魚 なまざかな として扱 あつか われる。合 あ わせて約 やく 3,200種 しゅ が知 し られており、漂泳魚 ぎょ は広範 こうはん な分布 ぶんぷ を示 しめ す一方 いっぽう 、底 そこ 生魚 なまざかな の分布 ぶんぷ 範囲 はんい は海底 かいてい 地形 ちけい によってしばしば隔絶 かくぜつ されている[3] 。
沿岸 えんがん 性 せい 海水 かいすい 魚 ぎょ は大陸 たいりく や島嶼 とうしょ の沿岸 えんがん と、水深 すいしん 200mまでの大陸棚 たいりくだな に暮 く らす魚類 ぎょるい が含 ふく まれる[3] 。サンゴ礁 さんごしょう や藻 も 場 じょう を中心 ちゅうしん に著 いちじる しい多様 たよう 性 せい を示 しめ すグループであり、海水 かいすい 魚 ぎょ 全体 ぜんたい の7割 わり 以上 いじょう にあたる約 やく 12,600種 しゅ がこの区分 くぶん に該当 がいとう する[3] 。沿岸 えんがん 域 いき にはスズキ目 め ・カサゴ目 め の仲間 なかま が特 とく に多 おお く、大陸棚 たいりくだな にかけての海底 かいてい にはカレイ目 め ・タラ目 め など水産 すいさん 上 じょう 重要 じゅうよう な分類 ぶんるい 群 ぐん が分布 ぶんぷ している。
隔絶 かくぜつ した環境 かんきょう になりやすい淡水 たんすい 域 いき とは異 こと なり、海 うみ はひとつながりの水圏 すいけん を構成 こうせい している。しかし、水温 すいおん や水圧 すいあつ 、塩分 えんぶん 濃度 のうど などの化学 かがく 的 てき ・物理 ぶつり 学 がく 的 てき 性質 せいしつ によって実際 じっさい にはいくつかの水 みず 塊 かたまり に分割 ぶんかつ され、海水 かいすい 魚 ぎょ の分布 ぶんぷ 様式 ようしき にも影響 えいきょう を与 あた えている[5] 。餌 えさ 生物 せいぶつ の供給 きょうきゅう 量 りょう も重要 じゅうよう な要素 ようそ で、生産 せいさん 性 せい の高 たか い沿岸 えんがん 帯 たい には種類 しゅるい の豊富 ほうふ な魚類 ぎょるい 相 しょう が形成 けいせい される一方 いっぽう 、栄養 えいよう 供給 きょうきゅう の少 すく ない外洋 がいよう における魚 さかな 種 しゅ は乏 とぼ しく、特定 とくてい の種 たね による大 おお きな群 む れ が作 つく られる傾向 けいこう がある[5] 。
沿岸 えんがん 性 せい 海水 かいすい 魚 ぎょ の分布 ぶんぷ 範囲 はんい は、インド太平洋 たいへいよう ・西部 せいぶ 大西 おおにし 洋 ひろし ・東部 とうぶ 太平洋 たいへいよう ・東部 とうぶ 大西洋 たいせいよう の4領域 りょういき に大 おお きく分 わ けることができる[6] 。このほか、地中海 ちちゅうかい と極 きょく 圏 けん の海 うみ を別個 べっこ の区分 くぶん として加 くわ える場合 ばあい もある[6] 。
モルディブ の
海 うみ 。インド
太平洋 たいへいよう は
海水 かいすい 魚 ぎょ が
最 もっと も
繁栄 はんえい する
海 うみ となっており、およそ3,000
種類 しゅるい の
沿岸 えんがん 魚 ぎょ が
分布 ぶんぷ する
カリブ海 かりぶかい 。広大 こうだい なサンゴ礁 さんごしょう を擁 よう するこの海 うみ は、西部 せいぶ 大西洋 たいせいよう において海水 かいすい 魚 ぎょ の多様 たよう 性 せい が最 もっと も顕著 けんちょ な領域 りょういき である
インド太平洋 たいへいよう は南 みなみ アフリカ と紅海 こうかい を西端 せいたん とし、インドネシア ・オーストラリア を経 へ て東 ひがし はハワイ諸島 しょとう ならびにイースター島 とう に至 いた る広大 こうだい な海域 かいいき で、古代 こだい のテチス海 うみ をその起源 きげん としている[6] 。およそ3,000種 しゅ の沿岸 えんがん 魚 ぎょ が生息 せいそく し、キス科 か ・アイゴ科 か (スズキ目 め )はインド太平洋 たいへいよう に特産 とくさん である[6] 。
魚 さかな 種 しゅ の豊富 ほうふ さはフィリピン諸島 しょとう 付近 ふきん で極大 きょくだい となり、マレ まれ ー半島 はんとう ・スマトラ島 すまとらとう 近海 きんかい で第 だい 2のピークを示 しめ す一方 いっぽう 、太平洋 たいへいよう プレート の境界 きょうかい を東 ひがし に超 こ えると多様 たよう 性 せい は激減 げきげん する[6] 。例 れい として、サワラ属 ぞく (サバ科 か )18種 しゅ のうち10種 しゅ がインド太平洋 たいへいよう に分布 ぶんぷ するが、太平洋 たいへいよう プレート上 じょう にこれらの種 たね は生息 せいそく していない[6] 。
西部 せいぶ 大西洋 たいせいよう [ 編集 へんしゅう ]
西部 せいぶ 大西洋 たいせいよう は南北 なんぼく アメリカ大陸 あめりかたいりく の東岸 とうがん からメキシコ湾 わん ・カリブ海 かりぶかい を含 ふく み、アセンション島 とう ・セントヘレナ島 とう に至 いた る海域 かいいき である。西 にし インド諸島 しょとう のサンゴ礁 さんごしょう が多様 たよう な海洋 かいよう 生物 せいぶつ を育 はぐく み、海水 かいすい 魚 ぎょ は約 やく 1,200種 しゅ が知 し られている[6] 。アマゾン川 あまぞんがわ から流入 りゅうにゅう する大量 たいりょう の淡水 たんすい によって、沿岸 えんがん のサンゴ礁 さんごしょう 魚類 ぎょるい の分布 ぶんぷ は南北 なんぼく に分断 ぶんだん されている[6] 。
東部 とうぶ 太平洋 たいへいよう [ 編集 へんしゅう ]
東部 とうぶ 太平洋 たいへいよう の魚類 ぎょるい 相 しょう は、西部 せいぶ 太平洋 たいへいよう と比 くら べ貧弱 ひんじゃく である。アメリカ大陸 あめりかたいりく との間 あいだ に横 よこ たわる広大 こうだい な外洋 がいよう が障壁 しょうへき となり、西部 せいぶ 太平洋 たいへいよう の島嶼 とうしょ に分布 ぶんぷ する沿岸 えんがん 魚 ぎょ の86%はこの壁 かべ を超 こ えることができていない[6] 。300万 まん 年 ねん 前 まえ にパナマ地峡 ちきょう が閉 と じられるまで大西洋 たいせいよう と互 たが いに交流 こうりゅう していたため、東部 とうぶ 太平洋 たいへいよう に分布 ぶんぷ する沿岸 えんがん 魚 ぎょ はむしろ西部 せいぶ 大西洋 たいせいよう と共通 きょうつう するものが多 おお い[6] 。同 おな じグループの魚類 ぎょるい が分断 ぶんだん 後 ご に別個 べっこ の進化 しんか を遂 と げた例 れい も知 し られ、ガマアンコウ科 か (ガマアンコウ目 め )のイサリビガマアンコウ亜 あ 科 か ・フチガマアンコウ亜 あ 科 か は、それぞれ東部 とうぶ 太平洋 たいへいよう ・西部 せいぶ 大西洋 たいせいよう に特 とく 化 か した一群 いちぐん である[6] 。現在 げんざい のパナマ運河 うんが は淡水 たんすい のガトゥン湖 こ を経由 けいゆ するため、後述 こうじゅつ のスエズ運河 うんが とは異 こと なり海水 かいすい 魚 ぎょ の連絡 れんらく 通路 つうろ としては機能 きのう していない[6] 。
東部 とうぶ 大西洋 たいせいよう [ 編集 へんしゅう ]
東部 とうぶ 大西洋 たいせいよう の沿岸 えんがん 性 せい 魚類 ぎょるい は約 やく 500種 しゅ で、東部 とうぶ 太平洋 たいへいよう よりもさらに少 すく なく、熱帯 ねったい 性 せい 魚類 ぎょるい の分布 ぶんぷ はギニア湾 わん 周辺 しゅうへん のごく狭 せま い海域 かいいき に限 かぎ られる[6] 。この地域 ちいき で多様 たよう 性 せい を示 しめ すグループは、タイ科 か など数 かず 科 か にとどまる[6] 。サンゴ礁 さんごしょう も非常 ひじょう に少 すく なく、コンゴ川 がわ ・ニジェール川 がわ ・ヴォルタ川 がわ など複数 ふくすう の大 だい 河川 かせん から淡水 たんすい が流入 りゅうにゅう することが一因 いちいん と考 かんが えられている[6] 。
コチ科 か の1種 しゅ (Papilloculiceps longiceps )。本来 ほんらい は紅海 こうかい とインド洋 いんどよう に生息 せいそく する底 そこ 生魚 なまざかな だが、スエズ運河 うんが を介 かい して地中海 ちちゅうかい に分布 ぶんぷ を広 ひろ げている
ノトテニア科 か の1種 しゅ (Trematomus bernacchii )。ノトテニア亜 あ 目 め は低 てい 水温 すいおん への適応 てきおう が著 いちじる しいグループで、50種 しゅ 余 あま りが所属 しょぞく する本科 ほんか 魚類 ぎょるい のほぼすべてが南極 なんきょく 海 かい とその周辺 しゅうへん に固有 こゆう である
地中海 ちちゅうかい における沿岸 えんがん 魚 ぎょ の分布 ぶんぷ は東部 とうぶ 大西洋 たいせいよう と類似 るいじ し、およそ540種 しゅ が知 し られている[6] 。600万 まん 年 ねん 前 まえ に起 お きたメッシニアン塩分 えんぶん 危機 きき (Messinian salinity crisis )における大 だい 旱魃 かんばつ により、地中海 ちちゅうかい の海水 かいすい 魚 ぎょ はほぼ全滅 ぜんめつ した。530万 まん 年 ねん 前 まえ には再 ふたた び大西洋 たいせいよう と連絡 れんらく したが、ジブラルタル海峡 かいきょう の低 てい 水温 すいおん が熱帯 ねったい 性 せい 魚類 ぎょるい の流入 りゅうにゅう を阻害 そがい したものと考 かんが えられている[6] 。
1869年 ねん に開通 かいつう したスエズ運河 うんが は、塩分 えんぶん 濃度 のうど の高 たか いグレートビター湖 こ によって海水 かいすい 魚 ぎょ の移入 いにゅう を防 ふせ いでいた。しかし同 どう 湖 みずうみ の塩分 えんぶん 濃度 のうど は運河 うんが の運用 うんよう に伴 ともな って次第 しだい に低下 ていか し、1931年 ねん には16種 しゅ 、2006年 ねん には68種 しゅ の海水 かいすい 魚 ぎょ が紅海 こうかい から地中海 ちちゅうかい に流入 りゅうにゅう していることが確認 かくにん されている[6] 。この移入 いにゅう はレセップス移動 いどう (Lessepsian migration )と呼 よ ばれ、基本 きほん 的 てき には紅海 こうかい から地中海 ちちゅうかい への一方 いっぽう 通行 つうこう となっている。紅海 こうかい の生物 せいぶつ 環境 かんきょう は飽和 ほうわ 状態 じょうたい で新規 しんき 参入 さんにゅう の余地 よち が少 すく ないこと、広範囲 こうはんい な環境 かんきょう に適応 てきおう できる魚 さかな 種 しゅ が紅海 こうかい の方 ほう に多 おお いことがその理由 りゆう として挙 あ げられている[6] 。
極 きょく 圏 けん の海 うみ は水温 すいおん が氷点下 ひょうてんか に達 たっ することさえある過酷 かこく な環境 かんきょう であるが、北極 ほっきょく 海 かい および南極 なんきょく 海 かい の沿岸 えんがん ・大陸棚 たいりくだな にはそれぞれ289種 しゅ 、252種 しゅ の海水 かいすい 魚 ぎょ が分布 ぶんぷ している[6] 。合計 ごうけい 72科 か 214属 ぞく のうち、北極 ほっきょく 海 かい ・南極 なんきょく 海 かい の両方 りょうほう に分布 ぶんぷ するのは10科 か 12属 ぞく に過 す ぎず、魚類 ぎょるい 相 しょう の姿 すがた は互 たが いに異 こと なっている[6] 。
北極圏 ほっきょくけん とその周辺 しゅうへん を含 ふく む北緯 ほくい 60度 ど 以北 いほく に分布 ぶんぷ する海水 かいすい 魚 ぎょ (96科 か 416種 しゅ )のうち、ゲンゲ科 か ・カジカ科 か ・サケ科 か ・タラ目 め ・カレイ目 め ・軟骨 なんこつ 魚類 ぎょるい の6グループがおよそ6割 わり を占 し める[6] 。これらの仲間 なかま の多 おお くは北 きた 太平洋 たいへいよう ・北大西洋 きたたいせいよう にまたがる分布 ぶんぷ 域 いき をもつのに対 たい し、南極 なんきょく 海 かい 周辺 しゅうへん の海水 かいすい 魚 ぎょ は地域 ちいき 性 せい が強 つよ いものが多 おお い[6] 。実際 じっさい に、南極 なんきょく 近海 きんかい に分布 ぶんぷ する13科 か 174種 しゅ のうち、88%は南極 なんきょく 海 かい 固有 こゆう である[6] 。スズキ目 め ノトテニア亜 あ 目 め は南極 なんきょく の魚類 ぎょるい の代表 だいひょう 的 てき 存在 そんざい であり、南極 なんきょく 海 かい における種 たね 数 すう の55%、個体 こたい 数 すう では90%を同 どう 亜 あ 目 め の魚類 ぎょるい が占 し めている[6] 。
南北 なんぼく に細長 ほそなが い日本 にっぽん 列島 れっとう 周辺 しゅうへん の海底 かいてい 地形 ちけい は極 きわ めて複雑 ふくざつ で、多様 たよう な生息 せいそく 環境 かんきょう を数多 かずおお くの亜寒帯 あかんたい 性 せい ・温帯 おんたい 性 せい ・亜熱帯 あねったい 性 せい 海水 かいすい 魚 ぎょ に提供 ていきょう している。また、太平洋 たいへいよう 岸 がん の沖合 おきあい でぶつかり合 あ う二 ふた つの海流 かいりゅう (親潮 おやしお と黒潮 くろしお )は、外洋 がいよう から多数 たすう の回遊 かいゆう 魚 ぎょ を迎 むか え入 い れるとともに、寒帯 かんたい および熱 ねつ 帯域 たいいき に住 す む海水 かいすい 魚 ぎょ の流入 りゅうにゅう をもたらしている[2] 。日本 にっぽん 産 さん の海水 かいすい 魚 ぎょ は3,500種 しゅ を超 こ えるとみられており[7] 、新 あら たな種 たね の報告 ほうこく も年々 ねんねん 増加 ぞうか している[8] 。一方 いっぽう 、日本 にっぽん 産 さん 淡水魚 たんすいぎょ は200種 しゅ 前後 ぜんこう が知 し られ、海産 かいさん 種 しゅ と比較 ひかく して著 いちじる しく少 すく ない[注釈 ちゅうしゃく 2] 。南 みなみ 日本 にっぽん に分布 ぶんぷ する海水 かいすい 魚 ぎょ の多 おお くは、生物 せいぶつ 地理 ちり 学 がく 的 てき にインド太平洋 たいへいよう 系 けい の影響 えいきょう を受 う けている[5] 。
水揚 みずあ げされるニシン の仲間 なかま 。海水 かいすい 魚 ぎょ は世界 せかい で年間 ねんかん 6千 せん 万 まん トン以上 いじょう が漁獲 ぎょかく され、重要 じゅうよう な水産 すいさん 資源 しげん となっている
世界 せかい の多 おお くの地域 ちいき で、海水 かいすい 魚 ぎょ は重要 じゅうよう な水産 すいさん 資源 しげん として利用 りよう される。国際 こくさい 連合 れんごう 食糧 しょくりょう 農業 のうぎょう 機関 きかん (FAO)の統計 とうけい [9] によれば、世界 せかい の魚類 ぎょるい 総 そう 生産 せいさん 量 りょう およそ1億 おく トン(2006年 ねん )のうち、3分 ぶん の2以上 いじょう に当 あ たる約 やく 6800万 まん トンが海水 かいすい 魚 ぎょ である。特 とく に南北 なんぼく アメリカ ・ヨーロッパ ・オセアニア の各 かく 地域 ちいき では生産 せいさん 量 りょう の大半 たいはん を海水 かいすい 魚 ぎょ が占 し め、淡水 たんすい 漁業 ぎょぎょう の10倍 ばい 以上 いじょう の規模 きぼ をもつ。アジア ・アフリカ 地域 ちいき でも海水 かいすい 魚 ぎょ の漁獲 ぎょかく 量 りょう は淡水魚 たんすいぎょ のそれを上回 うわまわ るが、両 りょう 地域 ちいき では大河 たいが や大 おお きな湖沼 こしょう の辺 あたり 縁 えん で伝統 でんとう 的 てき に淡水 たんすい 漁業 ぎょぎょう が盛 さか んで、近年 きんねん は内 うち 水面 すいめん 養殖 ようしょく 業 ぎょう が著 いちじる しく発達 はったつ していることもあり、その差 さ は欧米 おうべい ほど大 おお きくない[注釈 ちゅうしゃく 3] 。
日本 にっぽん の魚類 ぎょるい 生産 せいさん は圧倒的 あっとうてき に海水 かいすい 魚 ぎょ に依存 いぞん しており、2006年 ねん の魚類 ぎょるい 総 そう 生産 せいさん 量 りょう 377万 まん トンのうち、実 じつ に92%に当 あ たる345万 まん トンが海水 かいすい 魚 ぎょ で、淡水魚 たんすいぎょ は8千 せん トン余 あま りに過 す ぎない[注釈 ちゅうしゃく 4] 。この傾向 けいこう は1950年代 ねんだい 以降 いこう 一貫 いっかん して続 つづ いている。同 おな じアジア地域 ちいき でも国 くに によって傾向 けいこう はさまざまで、韓国 かんこく やフィリピン では日本 にっぽん と同様 どうよう に海水 かいすい 魚 ぎょ の生産 せいさん 量 りょう が淡水 たんすい 産 さん 種 しゅ を大 おお きく上回 うわまわ る一方 いっぽう 、中国 ちゅうごく やインド では2000年代 ねんだい 以降 いこう 淡水魚 たんすいぎょ の漁獲 ぎょかく の方 ほう が多 おお くなっている。
魚類 ぎょるい の進化 しんか の歴史 れきし の中 なか で、海水 かいすい への適応 てきおう は決 けっ して一方 いっぽう 通行 つうこう のものではない。カンブリア紀 き 以降 いこう 、魚類 ぎょるい が多様 たよう な種 たね 分化 ぶんか を遂 と げる過程 かてい で、淡水 たんすい から海水 かいすい へ、あるいは逆 ぎゃく に海水 かいすい から淡水 たんすい への進出 しんしゅつ ・適応 てきおう が何 なん 度 ど も繰 く り返 かえ されてきた。現在 げんざい 海水 かいすい または淡水 たんすい に限定 げんてい して分布 ぶんぷ する種類 しゅるい も、遠 とお い将来 しょうらい には再 ふたた び異 こと なる環境 かんきょう に適応 てきおう し得 え る可能 かのう 性 せい をもつと考 かんが えられている[10] 。
ヌタウナギ 類 るい は現生 げんなま の脊椎動物 せきついどうぶつ として最 もっと も原始 げんし 的 てき なグループで、その祖先 そせん (最初 さいしょ の脊椎動物 せきついどうぶつ )は海 うみ で進化 しんか を遂 と げたと推測 すいそく されている[10] 。やや遅 おく れて出現 しゅつげん したヤツメウナギ 類 るい は淡水 たんすい に進出 しんしゅつ し、現生 げんなま 種 しゅ は一般 いっぱん 的 てき な硬骨魚 こうこつぎょ 類 るい と類似 るいじ した浸透 しんとう 圧 あつ 調節 ちょうせつ 機構 きこう を獲得 かくとく している。古生代 こせいだい デボン紀 き に淡水 たんすい 域 いき で分化 ぶんか した軟骨 なんこつ 魚類 ぎょるい は、やがて独自 どくじ の尿素 にょうそ 代謝 たいしゃ 機構 きこう を身 み につけて海水 かいすい への適応 てきおう を果 は たした。その多 おお くはサメ・エイ類 るい として海洋 かいよう で繁栄 はんえい した一方 いっぽう 、一部 いちぶ の種類 しゅるい は再 ふたた び淡水 たんすい での生活 せいかつ に戻 もど っている(いわゆる淡水 たんすい エイ )。
初期 しょき の硬骨魚 こうこつぎょ 類 るい は淡水 たんすい 域 いき で進化 しんか し、デボン紀 き には肉 にく 鰭 ひれ 類 るい と条 じょう 鰭 ひれ 類 るい に分 わ かれた。前者 ぜんしゃ のうちシーラカンス 類 るい は、軟骨 なんこつ 魚類 ぎょるい と同様 どうよう の尿素 にょうそ による浸透 しんとう 圧 あつ 調節 ちょうせつ 機構 きこう を得 え て海水 かいすい に進出 しんしゅつ している。肉 にく 鰭 ひれ 類 るい は多 おお くの四肢 しし 動物 どうぶつ の祖先 そせん と考 かんが えられており、尿素 にょうそ を利用 りよう した浸透 しんとう 圧 あつ 調節 ちょうせつ や水分 すいぶん 保持 ほじ のメカニズムは、その後 ご に出現 しゅつげん した多 おお くの陸上 りくじょう 脊椎動物 せきついどうぶつ にも引 ひ き継 つ がれている。
チョウザメ など初期 しょき の条 じょう 鰭 ひれ 類 るい は淡水 たんすい で進化 しんか したが、遅 おく れて出現 しゅつげん した真 ま 骨 ほね 類 るい は塩類 えんるい 細胞 さいぼう と呼 よ ばれる特殊 とくしゅ な細胞 さいぼう を分化 ぶんか させることによって海水 かいすい 環境 かんきょう に適応 てきおう し、中生代 ちゅうせいだい ジュラ紀 じゅらき には海 うみ に進出 しんしゅつ している。真 ま 骨 ほね 類 るい は白 はく 亜紀 あき 以降 いこう 、海 うみ 水域 すいいき で急激 きゅうげき な種 たね 分化 ぶんか を遂 と げ、現代 げんだい の水圏 すいけん で最 もっと も繁栄 はんえい した魚類 ぎょるい となっている。
海水 かいすい への適応 てきおう [ 編集 へんしゅう ]
魚類 ぎょるい の主 おも な腹腔 ふくこう 内 ない 臓器 ぞうき 。このうち消化 しょうか 管 かん ・腎臓 じんぞう ・鰓 えら は、海水 かいすい 環境 かんきょう への適応 てきおう において特 とく に重要 じゅうよう な役割 やくわり を果 は たす。1 肝臓 かんぞう 、2 胃 い 、3 腸管 ちょうかん 、4 心臓 しんぞう 、5 浮 う き袋 ぶくろ 、6 腎臓 じんぞう 、7 精巣 せいそう 、8 尿 にょう 管 かん 、9 精巣 せいそう 輸出 ゆしゅつ 管 かん 、10 膀胱 ぼうこう 、11 鰓 えら
海水 かいすい には塩化 えんか ナトリウム などの無機 むき 塩類 えんるい がさまざまな濃度 のうど で溶 と け込 こ んでおり、その浸透 しんとう 圧 あつ は1,000mOsm(ミリオスモル)に達 たっ し、淡水 たんすい (0.1-1mOsm)よりもはるかに高 たか い[11] 。この高 こう 浸透 しんとう 圧 あつ 環境 かんきょう に対 たい し、海水 かいすい 魚 ぎょ は大 おお きく分 わ けて3種類 しゅるい の方法 ほうほう で適応 てきおう している。すなわち、ヌタウナギなどにみられる浸透 しんとう 圧 あつ 順応 じゅんのう 型 がた 、軟骨 なんこつ 魚類 ぎょるい ・肉 にく 鰭 ひれ 類 るい による尿素 にょうそ を利用 りよう した浸透 しんとう 圧 あつ 調節 ちょうせつ 、そして真 ま 骨 ほね 類 るい における塩類 えんるい 細胞 さいぼう を用 もち いたイオン排出 はいしゅつ 機構 きこう である。
塩水 えんすい に対 たい する魚類 ぎょるい の適応 てきおう 範囲 はんい はさまざまで、幅広 はばひろ い塩分 えんぶん 濃度 のうど に対応 たいおう できる魚類 ぎょるい を広 こう 塩性 えんせい 魚 ぎょ (euryhaline fishes)、特定 とくてい の塩 しお 濃度 のうど 環境 かんきょう 下 か でないと生 い きられないものを狭 せま 塩性 えんせい 魚 ぎょ (stenohaline fishes)と呼 よ ぶ[10] 。ウナギ ・サケ のような回遊 かいゆう 魚 ぎょ は広 こう 塩性 えんせい 魚 ぎょ の代表 だいひょう であり、河口 かこう 域 いき など塩分 えんぶん 濃度 のうど の変化 へんか が大 おお きい海域 かいいき に住 す む海水 かいすい 魚 ぎょ にも広 こう 塩性 えんせい を示 しめ すものが多 おお い。狭 せま 塩性 えんせい の海水 かいすい 魚 ぎょ としては、マグロ など外洋 がいよう 性 せい の魚類 ぎょるい が多 おお く該当 がいとう する。一部 いちぶ の広 こう 塩性 えんせい 魚 ぎょ は塩分 えんぶん を薄 うす めた水 みず に徐々 じょじょ に慣 な らすことで、淡水魚 たんすいぎょ と同 おな じ水槽 すいそう で飼育 しいく することも可能 かのう である。
広 こう 塩性 えんせい 生物 せいぶつ の例 れい として、魚類 ぎょるい では、マハゼ 、ウグイ 、スズキ 、ウナギ 、クロダイ 、そのほかの動物 どうぶつ では、ゴカイ 、マガキ 、モクズガニ などがあげられる。
最 もっと も原始 げんし 的 てき な海水 かいすい 魚 ぎょ であるヌタウナギ 類 るい の体液 たいえき の浸透 しんとう 圧 あつ 濃度 のうど は、海水 かいすい とほぼ等 ひと しくなっている。ナトリウムイオン や塩化 えんか 物 ぶつ イオン といった一価 いっか イオンの濃度 のうど が海水 かいすい とほとんど変 か わらないためで、より原始 げんし 的 てき な多 おお くの海産 かいさん 無 む 脊椎動物 せきついどうぶつ と共通 きょうつう する特徴 とくちょう である[10] 。細胞 さいぼう 外 がい 液 えき のナトリウムイオンが上昇 じょうしょう すると過 か 分極 ぶんきょく が引 ひ き起 お こされ、細胞 さいぼう 活動 かつどう の障害 しょうがい を来 きた す恐 おそ れがあるが、ヌタウナギ類 るい がこれをどのように防 ふせ いでいるかは不明 ふめい である[11] 。
軟骨 なんこつ 魚 ぎょ 綱 つな ・肉 にく 鰭 ひれ 綱 つな [ 編集 へんしゅう ]
ホホジロザメ (Carcharodon carcharias )。尿素 にょうそ を利用 りよう する浸透 しんとう 圧 あつ 調節 ちょうせつ 機構 きこう を身 み に付 つ け、硬骨魚 こうこつぎょ 類 るい に先駆 さきが けて海水 かいすい に進出 しんしゅつ した軟骨 なんこつ 魚類 ぎょるい は、現代 げんだい の海洋 かいよう 生態 せいたい 系 けい において食物 しょくもつ 連鎖 れんさ の上位 じょうい に位置 いち する存在 そんざい となっている
軟骨 なんこつ 魚類 ぎょるい (サメ ・エイ ・ギンザメ の仲間 なかま )と肉 にく 鰭 ひれ 類 るい はヌタウナギ類 るい とは異 こと なり、体液 たいえき の一価 いっか イオン濃度 のうど は海水 かいすい の半分 はんぶん 程度 ていど に抑 おさ えられている[10] 。彼 かれ らは窒素 ちっそ 代謝 たいしゃ 物 ぶつ (尿素 にょうそ とメチルアミン 類 るい )を体内 たいない に蓄積 ちくせき することで、体液 たいえき の浸透 しんとう 圧 あつ を海水 かいすい とほぼ同 おな じかわずかに高 たか いレベルに保 たも ち、生理 せいり 的 てき 脱水 だっすい を防 ふせ いでいる。尿素 にょうそ は主 おも に肝臓 かんぞう で合成 ごうせい され、排出 はいしゅつ の大 だい 部分 ぶぶん は鰓 えら で行 おこな われる[12] 。
尿素 にょうそ 保持 ほじ の機構 きこう
軟骨 なんこつ 魚類 ぎょるい の体液 たいえき の浸透 しんとう 圧 あつ は海水 かいすい よりもやや高 たか めに維持 いじ されるため脱水 だっすい の危険 きけん はないが、逆 ぎゃく に鰓 えら や体 からだ 表 ひょう を通 つう じて、水分 すいぶん が海水 かいすい から常時 じょうじ 流入 りゅうにゅう する。このため、軟骨 なんこつ 魚類 ぎょるい は淡水魚 たんすいぎょ ほどではないが、他 た の海水 かいすい 魚 ぎょ と比 くら べて多量 たりょう の尿 にょう を出 だ す。軟骨 なんこつ 魚類 ぎょるい にとって腎臓 じんぞう は、尿 にょう 中 ちゅう への尿素 にょうそ の流出 りゅうしゅつ を抑 おさ え、体内 たいない の浸透 しんとう 圧 あつ を保持 ほじ するための重要 じゅうよう な器官 きかん であり、その構造 こうぞう は非常 ひじょう に複雑 ふくざつ となっている[12] 。彼 かれ らの尿 にょう 細管 さいかん は哺乳類 ほにゅうるい よりも多 おお い4度 ど のループ構造 こうぞう を通 つう じて低 てい 尿素 にょうそ 環境 かんきょう を作 つく り出 だ し、集合 しゅうごう 管 かん の手前 てまえ で尿素 にょうそ を再 さい 吸収 きゅうしゅう する。
直腸 ちょくちょう 腺 せん
海水 かいすい とともに流入 りゅうにゅう する過剰 かじょう な塩類 えんるい を体外 たいがい に排出 はいしゅつ するために、軟骨 なんこつ 魚類 ぎょるい は直腸 ちょくちょう 腺 せん (rectal gland)と呼 よ ばれる器官 きかん をもつ。条 じょう 鰭 ひれ 類 るい で発達 はったつ している塩類 えんるい 細胞 さいぼう (後述 こうじゅつ )は軟骨 なんこつ 魚類 ぎょるい の鰓 えら にも存在 そんざい するが、塩分 えんぶん 排出 はいしゅつ の機能 きのう はほとんど担 にな っていない[12] 。直腸 ちょくちょう 腺 せん は鳥類 ちょうるい ・爬虫類 はちゅうるい の塩類 えんるい 腺 せん と似 に た器官 きかん で、塩分 えんぶん のみを排泄 はいせつ することに特 とく 化 か している。
条 じょう 鰭 ひれ 綱 つな ・頭 とう 甲 きのえ 綱 つな [ 編集 へんしゅう ]
条 じょう 鰭 ひれ 綱 つな (現生 げんなま の硬骨魚 こうこつぎょ 類 るい の大 だい 部分 ぶぶん )および頭 あたま 甲 きのえ 綱 つな (ヤツメウナギ の仲間 なかま )に属 ぞく する魚類 ぎょるい では、体液 たいえき の一価 いっか イオン濃度 のうど は海水 かいすい の3分 ぶん の1程度 ていど に抑 おさ えられ、浸透 しんとう 圧 あつ 濃度 のうど も同様 どうよう に低 ひく いままである(約 やく 300mOsm)[10] 。このため、粘膜 ねんまく や鰓 えら を通 つう じて水分 すいぶん が海水 かいすい 中 ちゅう に漏出 ろうしゅつ し、脱水 だっすい に陥 おちい る危険 きけん を常 つね に抱 かか えることになる。
条 じょう 鰭 ひれ 綱 つな の海水 かいすい 魚 ぎょ は多量 たりょう の海水 かいすい を飲 の むことで、失 うしな われる水分 すいぶん の補給 ほきゅう を行 おこな っている[13] 。海水 かいすい と同時 どうじ に取 と り込 こ まれる塩化 えんか ナトリウムなどの余分 よぶん な塩類 えんるい は、濃縮 のうしゅく した上 うえ で鰓 えら および腎臓 じんぞう を通 つう じて体外 たいがい に排出 はいしゅつ することで、体内 たいない の浸透 しんとう 圧 あつ を一定 いってい に保 たも っている。飲 の み込 こ んだ海水 かいすい 中 ちゅう に含 ふく まれる塩類 えんるい は消化 しょうか 管 かん から吸収 きゅうしゅう され、ナトリウムイオン・塩化 えんか 物 ぶつ イオンなど一価 いっか イオンは鰓 えら から、マグネシウムイオン など二 に 価 か イオンは主 おも に腎臓 じんぞう から尿 にょう として排出 はいしゅつ される。これら条 じょう 鰭 ひれ 類 るい の浸透 しんとう 圧 あつ 調節 ちょうせつ には、間 あいだ 腎 じん (副腎 ふくじん に相当 そうとう する器官 きかん )から分泌 ぶんぴつ されるコルチゾール などのホルモン が重要 じゅうよう な役割 やくわり を果 は たしている。
鰓 えら からの排出 はいしゅつ
塩類 えんるい 細胞 さいぼう の電子 でんし 顕微鏡 けんびきょう 写真 しゃしん 。多数 たすう のミトコンドリア をもつことから、mitochondria-rich cellとも呼 よ ばれる
消化 しょうか 管 かん から吸収 きゅうしゅう された一価 いっか イオンの排出 はいしゅつ は、主 おも に鰓 えら に存在 そんざい する塩類 えんるい 細胞 さいぼう (chloride cell)によって行 おこな われる。塩類 えんるい 細胞 さいぼう は淡水魚 たんすいぎょ にも存在 そんざい するが、海水 かいすい 魚 ぎょ のそれとは形態 けいたい および機能 きのう がともに異 こと なる[14] 。海水 かいすい 魚 ぎょ の塩類 えんるい 細胞 さいぼう は鰓 えら の一 いち 次 じ 鰓 えら 弁 べん に並 なら び、大型 おおがた であるのに対 たい し、淡水魚 たんすいぎょ では比較的 ひかくてき 小 ちい さく、二 に 次 じ 鰓 えら 弁 べん にも多 おお く存在 そんざい する。サケなどの回遊 かいゆう 魚 ぎょ では、塩類 えんるい 細胞 さいぼう は海水 かいすい 型 がた ・淡水 たんすい 型 がた の両方 りょうほう に、相互 そうご に移行 いこう することが可能 かのう となっている。
塩類 えんるい 細胞 さいぼう の基底 きてい 側 がわ (血管 けっかん 側 がわ )の細胞 さいぼう 膜 まく には多 おお くの管状 かんじょう のくぼみが存在 そんざい し、細胞 さいぼう の表面積 ひょうめんせき を著 いちじる しく拡大 かくだい させている。この部分 ぶぶん には多数 たすう の膜 まく 輸送 ゆそう 体 たい (特 とく にNa+/K+-ATPアーゼ )が配置 はいち され、血管 けっかん からの塩類 えんるい の取 と り込 こ みが活発 かっぱつ に行 おこな われる。細胞 さいぼう の頭頂 とうちょう 側 がわ は海水 かいすい に面 めん し、塩化 えんか 物 ぶつ イオンの排出 はいしゅつ の場 ば となっている。塩類 えんるい 細胞 さいぼう の周囲 しゅうい にはアクセサリー細胞 さいぼう と呼 よ ばれる特殊 とくしゅ な細胞 さいぼう が並 なら び、ナトリウムイオンはこれら2種 しゅ の細胞 さいぼう の間隙 かんげき から排出 はいしゅつ される。
腎臓 じんぞう からの排出 はいしゅつ
多 おお くの脊椎動物 せきついどうぶつ にとって、腎臓 じんぞう は尿 にょう の生成 せいせい と排出 はいしゅつ 、イオン類 るい の再 さい 吸収 きゅうしゅう を司 つかさど る重要 じゅうよう な器官 きかん であるが、水分 すいぶん が常 つね に漏出 ろうしゅつ する環境 かんきょう にある条 じょう 鰭 ひれ 類 るい の海水 かいすい 魚 ぎょ は、大量 たいりょう の尿 にょう を出 だ す淡水魚 たんすいぎょ とは対照 たいしょう 的 てき にごく少量 しょうりょう の尿 にょう しか排泄 はいせつ しない。海水 かいすい 魚 ぎょ の腎臓 じんぞう の主 しゅ たる役目 やくめ は、微量 びりょう な尿 にょう を通 つう じて二 に 価 か イオンを排出 はいしゅつ することで、糸 いと 球体 きゅうたい や遠 とお 位 くらい 尿 にょう 細管 さいかん の役割 やくわり は相対 そうたい 的 てき に低 ひく く、これらの小 しょう 器官 きかん を欠 か く魚類 ぎょるい もいる。
淡水魚 たんすいぎょ は尿素 にょうそ を多量 たりょう の尿 にょう とともに排泄 はいせつ するが、条 じょう 鰭 ひれ 類 るい では尿素 にょうそ は水分 すいぶん とともに近 きん 位 い 尿 にょう 細管 さいかん で再 さい 吸収 きゅうしゅう され、鰓 えら の塩類 えんるい 細胞 さいぼう を通 つう じて排出 はいしゅつ される。尿素 にょうそ を残 のこ したままでは尿 にょう の浸透 しんとう 圧 あつ が高 たか まり、水分 すいぶん 再 さい 吸収 きゅうしゅう の効率 こうりつ が低下 ていか するためと推測 すいそく されている[14] 。
海水 かいすい 魚 ぎょ の多 おお くは体外 たいがい 受精 じゅせい による繁殖 はんしょく を行 おこな い、産 う み出 だ された卵 たまご は海中 かいちゅう で胚 はい 発生 はっせい する。このため、海水 かいすい 魚 ぎょ は上述 じょうじゅつ のような浸透 しんとう 圧 あつ 調節 ちょうせつ 器官 きかん の形成 けいせい が完了 かんりょう するまで、すなわち卵 たまご や仔 こ 魚 ぎょ の時点 じてん で海水 かいすい への適応 てきおう 能力 のうりょく をもたなければならないことになる。
海水 かいすい 魚 ぎょ の精子 せいし が海水 かいすい 中 ちゅう に放出 ほうしゅつ されると、高 たか い浸透 しんとう 圧 あつ に刺激 しげき を受 う けた精子 せいし の内部 ないぶ でカルシウムイオン 濃度 のうど の上昇 じょうしょう が起 お こり、精子 せいし の運動 うんどう が活発 かっぱつ 化 か する[10] 。淡水魚 たんすいぎょ の場合 ばあい では逆 ぎゃく で、低 てい 浸透 しんとう 圧 あつ が精子 せいし の運動 うんどう の引 ひ き金 がね になる。
受精 じゅせい 直後 ちょくご から発生 はっせい の最初 さいしょ 期 き において、海水 かいすい 中 ちゅう の塩類 えんるい からどのように保護 ほご されているか、そのメカニズムははっきりわかっていない。ある程度 ていど 卵 たまご 割 わり が進 すす んだ段階 だんかい では、卵黄 らんおう 嚢 の表面 ひょうめん に塩類 えんるい 細胞 さいぼう が出現 しゅつげん することから、器官 きかん 形成 けいせい が完了 かんりょう するまでの浸透 しんとう 圧 あつ 調節 ちょうせつ に関 かか わっているとみられている[10] 。
^ 無 む 顎 あご 類 るい は厳密 げんみつ な意味 いみ での魚類 ぎょるい ではないが、広義 こうぎ の魚類 ぎょるい として扱 あつか われることが多 おお く(『魚 さかな 学 がく 入門 にゅうもん 』 p.1)、本稿 ほんこう でもこれに倣 なら う。
^ 二 に 次 じ 淡水魚 たんすいぎょ の区分 くぶん と、回遊 かいゆう 魚 ぎょ ・外来 がいらい 魚 ぎょ の位置付 いちづ けによって数値 すうち は異 こと なる。
^ 2006年 ねん のFAO統計 とうけい 資料 しりょう によれば、アジア:3200万 まん トン/2900万 まん トン(海水 かいすい 魚 ぎょ /淡水魚 たんすいぎょ )、アフリカ:460万 まん トン/280万 まん トン。
^ FAO統計 とうけい 資料 しりょう による。残 のこ る30万 まん トンはサケ類 るい など回遊 かいゆう 魚 ぎょ が該当 がいとう する。
^ 『Fishes of the World Fourth Edition』 pp.11-14
^ a b c 『日本 にっぽん の海水 かいすい 魚 ぎょ 』 pp.14-18「魚 さかな とは」執筆 しっぴつ 者 しゃ :岡村 おかむら 収 おさむ
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