立志りっし学舎がくしゃ

立志りっし学舎がくしゃ（りっしがくしゃ）は、板垣いたがき退助たいすけ、片岡かたおか健吉けんきちらによって結成けっせいされた政治せいじ結社けっしゃ立志りっし社しゃが民権みんけん思想しそう普及ふきゅうのために明治めいじ初期しょきに土佐とさに開設かいせつした教育きょういく機関きかん。京都きょうとの「天てん橋はし義よし塾じゅく」などと並ならぶ自由じゆう民権みんけん運動うんどう士族しぞく政せい社しゃの一ひとつ。

概略がいりゃく

発端ほったん

明治めいじ6年ねん（1873年ねん）、征せい韓かん論ろんの結果けっか、西郷さいごう隆盛たかもり、板垣いたがき退助たいすけ、後藤ごとう象二しょうじ郎ろうらは参議さんぎを辞じしたが、政府せいふの対応たいおうに不満ふまんを抱だいた世論せろんの大勢おおぜいはこれを拍手はくしゅ喝采かっさいで迎むかえた。軍人ぐんじん・官僚かんりょうの中なかでも同調どうちょうして官かんを辞じする者ものが600人にん余あまりに上のぼる（明治めいじ六ろく年ねん政変せいへん/征せい韓かん論ろん政変せいへん）。

土佐とさ派は武官ぶかんの辞じ官かん者しゃである片岡かたおか健吉けんきち、山地やまじ元治もとはる、植木うえき枝盛えもり、林はやし有ゆう造づくりらは、山内やまうち容堂ようどうの墓前ぼぜんで結束けっそくを誓ちかい海南かいなん義ぎ社しゃを結成けっせい。また文官ぶんかんの辞じ官かん者しゃたちは銀座ぎんざの倶楽部くらぶに集あつまって幸福こうふく安全あんぜん社しゃを結成けっせい。土佐とさ派ははこの二に派はが合流ごうりゅうして不平ふへい士族しぞくの中心ちゅうしんとしなり、明治めいじ7年ねん（1874年ねん）1月がつ、板垣いたがき退助たいすけを盟主めいしゅとして愛国あいこく公党こうとうを結成けっせいし、『民みん撰せん議院ぎいん設立せつりつ建白けんぱく書しょ』を左ひだり院いんに提出ていしゅつした。しかし、同日どうじつ、海南かいなん義ぎ社しゃの士族しぞくの急進きゅうしん派はが赤坂あかさか喰くえ違たがえで岩倉いわくら具視ともみを襲撃しゅうげき。これが報ほうじられると、却かえって不平ふへい士族しぞくたちの意見いけんは遠とおざけられ、建白けんぱく書しょも時期じき尚早しょうそうとして容いれられなかった。そのため、各人かくじんは国許くにもとに帰かえって国会こっかい開設かいせつのための運動うんどう組織そしきを結成けっせいし尽力じんりょくすることなどを取とり決きめて続々ぞくぞくと帰郷ききょうした。その後ご、江藤えとう新平しんぺいが佐賀さがの乱らんで挙兵きょへいして敗やぶれると片岡かたおかや林はやしを頼たよって土佐とさに逃にげてきたが、土佐とさでもかくまいきれず、3月がつ末まつに甲浦かんのうらで逮捕たいほされた。

結成けっせい

板垣いたがきが高知こうちに帰郷ききょうしたのは3月26日にちで、彼かれを中心ちゅうしんにして4月がつ10日とおかに立志りっし社しゃが結成けっせいされ、士族しぞく授産じゅさんと学校がっこう設立せつりつによる新しん時代じだい教育きょういくを開始かいしした。明治めいじ8年ねん（1875年ねん）2月がつ11日にちの大阪おおさか会議かいぎでの板垣いたがきの参議さんぎ復活ふっかつや後藤ごとうの政府せいふへの復帰ふっきなどを経へて、のち大日本帝国だいにっぽんていこく憲法けんぽうが制定せいていされ帝国ていこく議会ぎかいが開設かいせつされ、さらに日にち露ろ戦争せんそうの結果けっか、不平等ふびょうどう条約じょうやくが改正かいせいされると自由じゆう民権みんけん運動うんどうの理念りねんが成就じょうじゅされ、充実じゅうじつした成果せいかを表あらわした。

教授きょうじゅ陣じん

教員きょういんには慶應義塾けいおうぎじゅくを卒業そつぎょうした江口えぐち高こう邦くに（徳富とくとみ蘇峰そほうの従兄弟いとこ）と深間ふかま内ない基もと（ジョン・スチュアート・ミルの『男女だんじょ同権どうけん論ろん』訳者やくしゃ）^[1]、矢部やべ善蔵ぜんぞうを迎むかえ、次ついで土佐とさ藩はん藩校はんこう教授きょうじゅだった塚原つかはら周造しゅうぞう、久米くめ弘行ひろゆき、森もり春吉はるきちが駆かけつけ、慶應義塾けいおうぎじゅくと同おなじカリキュラムが組くまれ、フランソワ・ピエール・ギヨーム・ギゾーの文明ぶんめい史し、高水準こうすいじゅんの政治せいじ学がく、経済けいざい学がく、歴史れきし学がく、地理ちり学がくなどを教授きょうじゅした。明治めいじ10年ねんには永田ながた一二かずじ、吉良きら亨とおる、明治めいじ11年ねんには門野もんの幾いく之これ進しん、城じょう泉いずみ太郎たろうが赴任ふにんした。特徴とくちょう的てきなのは、法律ほうりつ研究所けんきゅうじょや新聞しんぶん縦覧じゅうらん所しょを置おいて『高知新聞こうちしんぶん』を発行はっこうするなど多様たような教育きょういくを行おこなっていた事ことである。

明治めいじ16年ねん(1883年ねん)に立志りっし社しゃの解散かいさんに伴ともない閉鎖へいさされたが、板垣いたがき退助たいすけの嫡男ちゃくなん・板垣いたがき鉾ぼこ太郎たろうの手てによって、明治めいじ20年ねん5月がつ、山田やまだ平左衛門へいざえもんを校長こうちょうとして種崎たねざきに泰平たいへい学校がっこうが設立せつりつされ、教育きょういく方針ほうしんが引ひき継つがれた。

その後ご

板垣いたがき鉾ぼこ太郎たろうの建たてた泰平たいへい学校がっこうは経営けいえい難なんにより閉校へいこう。しかし、立志りっし学舎がくしゃのあった場所ばしょの一ひとつである板垣いたがき退助たいすけ旧きゅう邸やしき(現げん・高野寺たかのじ)に、頭山とうやま満みつるらの尽力じんりょくにより、昭和しょうわ12年ねん4月がつ6日にち『板垣いたがき会館かいかん』が建たてられ、民権みんけん論ろんの研究けんきゅうなどが復活ふっかつ^[2]。昭和しょうわ20年ねん(1945年ねん)7月がつ4日にちの高知こうち大だい空襲くうしゅうで罹災りさいするまで継続けいぞくした。その後ご、平成へいせい11年ねん、東京とうきょう都と墨田すみだ区く太平たいへいに、立志りっし学舎がくしゃの理念りねんを引ひき継つぐ形かたちで立志りっし舎しゃ高等こうとう学校がっこうが創立そうりつされ現在げんざいに至いたっている^[3]。

場所ばしょの変遷へんせん

高知こうち県けん高知こうち市し九反田くたんだの開成かいせい館かんにあった立志りっし学舎がくしゃは、明治めいじ9年ねん(1876年ねん)、板垣いたがき退助たいすけ(乾いぬい家か)の旧きゅう邸やしきを譲ゆずり受うけ高知こうち市し中島なかじま町まち(現げん・高野寺たかのじ)へ移うつった^[4]。この立志りっし学舎がくしゃは慶應義塾けいおうぎじゅくから教員きょういんを招聘しょうへいし、英学えいがくを中心ちゅうしんとした教育きょういくを行おこない「関西かんさいの慶應義塾けいおうぎじゅく」とも呼称こしょうされた^[5]。

門下生もんかせい

補註ほちゅう

^ 福島ふくしま県けん「深間ふかま内ない基もと」慶應義塾けいおうぎじゅく
^ 『板垣いたがき精神せいしん』
^ 学校がっこう法人ほうじん立志りっし舎しゃ高等こうとう学校がっこう
^ この頃ころの板垣いたがき退助たいすけの家いえは高知こうち市し潮江しおえ新田しんでん
^ 『自由じゆうのともしび』第だい76号ごう(2014年ねん3月がつ)

参考さんこう文献ぶんけん

[1] 福島ふくしま県けん「深間ふかま内ない基もと」慶應義塾けいおうぎじゅく

[2] 『板垣いたがき精神せいしん』

[3] 学校がっこう法人ほうじん立志りっし舎しゃ高等こうとう学校がっこう

[4] この頃ころの板垣いたがき退助たいすけの家いえは高知こうち市し潮江しおえ新田しんでん

[5] 『自由じゆうのともしび』第だい76号ごう(2014年ねん3月がつ)

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