レッセフェール

レッセフェール（仏ふつ: laissez-faire）とは、フランス語ふらんすごで「なすに任まかせよ」の意い。経済けいざい学がくで頻繁ひんぱんに用もちいられており、その場合ばあいは「政府せいふが企業きぎょうや個人こじんの経済けいざい活動かつどうに干渉かんしょうせず市場いちばのはたらきに任まかせること」を指さす。自由じゆう放任ほうにん主義しゅぎ（じゆうほうにんしゅぎ）と一般いっぱんには訳やくされる。

歴史れきし

レッセフェール（自由じゆう放任ほうにん主義しゅぎ）の語かたりを最初さいしょに用もちいたのは、（生産せいさん物ぶつの「流通りゅうつう」を重視じゅうしした）フランスの重じゅう農のう主義しゅぎ者ものである。この用語ようごは（富とみ・貨幣かへいの「蓄積ちくせき」を重視じゅうしした）重じゅう商しょう主義しゅぎに反対はんたいする立場たちばからの「スローガン」として用もちいられた。これを古典こてん派は経済けいざい学がく（古典こてん学派がくは）の祖そであるイギリス（スコットランド）のアダム・スミスが主著しゅちょ『諸しょ国民こくみんの富とみ』（1776年ねん）で体系たいけい化かした。

アダム・スミスがその著書ちょしょにおいて「自由じゆう競争きょうそうによって見みえざる手てが働はたらき、最大さいだいの繁栄はんえいがもたらされる」と主張しゅちょうしたのは有名ゆうめいである。もっとも、アダム・スミスは『諸しょ国民こくみんの富とみ』の中なかで「自由じゆう放任ほうにん」については直接ちょくせつ言及げんきゅうしてはいない。

その後ご、1870年代ねんだいにアルフレッド・マーシャルによって体系たいけい化かされた新しん古典こてん派は経済けいざい学がく（いわゆる新しん古典こてん学派がくは、厳密げんみつにはケンブリッジ学派がくはと言いう）にも自由じゆう放任ほうにん主義しゅぎの考かんがえ方かたは引ひき継つがれた。

自由じゆう放任ほうにん主義しゅぎはジョン・メイナード・ケインズの1926年ねんの著作ちょさく『自由じゆう放任ほうにんの終焉しゅうえん』によって初はじめて否定ひていされたといわれることもあるが、これには強つよい異論いろんもある。

学者がくしゃの見解けんかい

経済けいざい学者がくしゃの橘たちばな木き俊しゅん詔みことのりは「レッセ・フェールは、現代げんだいでも有力ゆうりょくな思想しそうの一ひとつとして生いき続つづけている。市場いちば原理げんり主義しゅぎ・新しん自由じゆう主義しゅぎと呼よばれる思想しそうがそれであり、政府せいふの介入かいにゅうを排はいし、規制きせい緩和かんわ・自由じゆう主義しゅぎによる競争きょうそう促進そくしん政策せいさくが、経済けいざいを強つよくするため必要ひつようと考かんがえた。イギリスのマーガレット・サッチャー、アメリカのロナルド・レーガン、日本にっぽんの小泉こいずみ純一郎じゅんいちろうによる構造こうぞう改革かいかく路線ろせんはこの経済けいざい思想しそうである」と指摘してきしている。

参考さんこう文献ぶんけん

• アダム・スミス　『国富こくふ論ろん』　水田みずた洋ひろし監訳かんやく、杉山すぎやま忠平ちゅうへい訳わけ、岩波書店いわなみしょてん〈岩波いわなみ文庫ぶんこ〉 / 大河内おおこうち一男かずお監訳かんやく、中央公論ちゅうおうこうろん新しん社しゃ〈中公ちゅうこう文庫ぶんこ〉 / 山岡やまおか洋一よういち訳わけ、日本経済新聞にほんけいざいしんぶん出版しゅっぱん社しゃ
• ジョン・メイナード・ケインズ　『自由じゆう放任ほうにんの終焉しゅうえん』　宮崎みやざき義一ぎいち訳わけ、中央公論ちゅうおうこうろん新しん社しゃ〈世界せかいの名著めいちょ〉、1971年ねん。
• ジョーン・ロビンソン　『経済けいざい学がくの考かんがえ方かた』　宮崎みやざき義一ぎいち訳やく、岩波書店いわなみしょてん、1966年ねん。

関連かんれん項目こうもく

• 諸しょ国民こくみんの富とみ
• 古典こてん派は経済けいざい学がく

• リバタリアニズム
• オブジェクティビズム
• 新しん自由じゆう主義しゅぎ - 市場いちば原理げんり主義しゅぎ
• 積極せっきょく的てき不ふ介入かいにゅう
• レバノン - 銀行ぎんこうや金融きんゆう業ぎょうに極力きょくりょく法的ほうてき規制きせいを加くわえない政策せいさくを取とる（そのため、一時いちじ的てきに「中東ちゅうとうの金融きんゆうセンター」と称しょうされた）など、「小ちいさな政府せいふ」を体現たいげんしているように見みえたため、1960年代ねんだいにはレッセフェールのモデル国家こっかとして紹介しょうかいされることがあった。