蜜柑みかん (小説しょうせつ)

蜜柑みかん
作者さくしゃ	芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけ
国くに	日本にっぽん
言語げんご	日本語にほんご
ジャンル	短編たんぺん小説しょうせつ、掌編しょうへん小説しょうせつ
発表はっぴょう形態けいたい	雑誌ざっし掲載けいさい
初出しょしゅつ情報じょうほう
初出しょしゅつ	『新潮しんちょう』1919年ねん5月がつ号ごう
初出しょしゅつ時じの題名だいめい	「私わたしの出で偶つた事ごと」
刊本かんぽん情報じょうほう
収録しゅうろく	『影かげ燈籠どうろう』
出版しゅっぱん元もと	春陽しゅんよう堂どう
出版しゅっぱん年月日ねんがっぴ	1920年ねん1月がつ
装幀そうてい	野口のぐち巧たくみ造づくり
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「蜜柑みかん」（みかん）は、大正たいしょう8年ねん（1919年ねん）5月がつに芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけによって『新潮しんちょう』に発表はっぴょうされた短編たんぺん小説しょうせつ（掌編しょうへん小説しょうせつ）。

『新潮しんちょう』に「私わたしの出で遇ぐうつた事ごと」という総そう題だいの下した、「一いち、蜜柑みかん」 「二に、沼地ぬまち」という形かたちで2作さくまとめて掲載けいさいされた。単行たんこう本ほん収録しゅうろくに際さいし総そう題だいが外はずされ、「蜜柑みかん」と「沼地ぬまち」はそれぞれ独立どくりつした短編たんぺんとなった。

概要がいよう

横須賀よこすか駅えきから乗のった汽車きしゃでの「私わたし」と故郷こきょうから奉公ほうこうに行いく娘むすめとのひと時じを、作者さくしゃの体験たいけんをもとに描えがいている。芥川あくたがわは当時とうじ横須賀よこすかの海軍かいぐん機関きかん学校がっこうで英語えいごの教官きょうかんとして勤務きんむしており、下宿げしゅくがある鎌倉かまくらから通勤つうきんする際さいや帰京ききょうする際さいに横須賀よこすか線せんを利用りようしていた。

横須賀よこすか線せん沿ぞいにある吉倉よしくら公園こうえん（横須賀よこすか市し吉倉よしくら町まち1丁目ちょうめ）の一角いっかくには1986年ねんに『蜜柑みかん』の文学ぶんがく碑ひが建たてられ、小説しょうせつの一いち場面ばめんが刻きざまれている。碑いしぶみの両りょう脇わきには、芥川あくたがわの三男さんなんの芥川あくたがわ也寸志やすしと姪めいの芥川あくたがわ瑠璃子るりこが植樹しょくじゅした2本ほんのミカンの木きが植うえられている。また公園こうえんの入口いりくち付近ふきんには蜜柑みかんを抱かかえた姿すがたの少女しょうじょの銅像どうぞうが建たてられている。

作中さくちゅうの記述きじゅつから横須賀よこすか発はつの上のぼり列車れっしゃは2つのトンネルをくぐり抜ぬけている。1つ目めが吉倉よしくらトンネル、2つ目めが長浦ながうらトンネルで、娘むすめが蜜柑みかんを投なげた踏切ふみきりは長浦ながうらトンネルの先さきの「田たの浦うら踏切ふみきり」とされている。

2021年ねんに香港ほんこんの学力がくりょく試験しけん「香港ほんこん中学ちゅうがく文ぶん憑」の中国語ちゅうごくご論文ろんぶん試験しけんで『蜜柑みかん』の翻訳ほんやく版ばん（訳わけ・文ぶん潔いさぎよ若わか）が使用しようされた。日本にっぽんの文学ぶんがく作品さくひんが試験しけんで使用しようされたのは初はじめてだった。

あらすじ

「不可解ふかかいな、下等かとうな、退屈たいくつな」人生じんせいに、「云ゆいようのない疲労ひろうと倦怠けんたい」を感かんじている「私わたし」は、横須賀よこすか駅えきで汽車きしゃが発車はっしゃするのをぼんやりと待まっていた。そこへ発車はっしゃ寸前すんぜんになって、醜みにくい田舎いなか者しゃの娘むすめが飛とび込こんでくる。「私わたし」はこの娘むすめが不可解ふかかいで下等かとうで退屈たいくつな世よの中なかを象徴しょうちょうしているように感かんじ、快こころよく思おもわなかったが、汽車きしゃの走はしっている途中とちゅうでこの娘むすめから見送みおくりの子供こどもたちに向むかって、窓まどから色いろ鮮あざやかな蜜柑みかんを投なげるのを見みて「私わたし」は不可解ふかかいな人生じんせいに対たいする疲労ひろうと倦怠けんたいを僅わずかに忘わすれることができるようになる。

外部がいぶリンク

• 『蜜柑みかん』：新字しんじ旧きゅう仮名かめい - 青空あおぞら文庫ぶんこ
• 『蜜柑みかん』：旧きゅう字じ旧きゅう仮名かめい - 青空あおぞら文庫ぶんこ
• 『蜜柑みかん』：新字しんじ新しん仮名かめい - 青空あおぞら文庫ぶんこ
• 裴崢「蜜柑みかんのぬくもり : 芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけの「蜜柑みかん」について」『教授きょうじゅ学がくの探究たんきゅう』第だい6号ごう、北海道大学ほっかいどうだいがく教育きょういく学部がくぶ教育きょういく方法ほうほう学がく研究けんきゅう室しつ、1988年ねん3月がつ、103-113頁ぺーじ、ISSN 0288-3511、NAID 120000954852。 
• 平岡ひらおか敏夫としお「芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけ「蜜柑みかん」の英訳えいやく講義こうぎ : アメリカ人じん学生がくせいの反応はんのうを中心ちゅうしんに」『文学ぶんがく研究けんきゅう論集ろんしゅう』第だい9号ごう、筑波大学つくばだいがく比較ひかく・理論りろん文学ぶんがく会かい、1992年ねん3月がつ、148(13)-160(1)、ISSN 09158944、NAID 110000539629。 
• 川端かわばた俊英としひで「芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけの『蜜柑みかん』」『国語こくご教育きょういく研究けんきゅう』26上じょう、広島大学ひろしまだいがく教育きょういく学部がくぶ光葉こうよう会かい、1980年ねん11月、259-266頁ぺーじ、doi:10.15027/24077、ISSN 0287-3354、NAID 120000877223。 
• 渡辺わたなべ春美はるみ「文学ぶんがく教材きょうざいの授業じゅぎょう活性かっせい化かの試こころみ : 芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけ「羅生門らしょうもん」の教材きょうざい研究けんきゅう」『国語こくご教育きょういく研究けんきゅう』第だい35号ごう、広島大学ひろしまだいがく教育きょういく学部がくぶ光葉こうよう会かい、1992年ねん3月がつ、12-23頁ぺーじ、doi:10.15027/24345、ISSN 0287-3354、NAID 120000877491。 
• 田島たじま俊郎としお「なぜ蜜柑みかんは「空そらから降ふって来きた」のか : 芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけ『蜜柑みかん』を読よむ」『言語げんご文化ぶんか研究けんきゅう』第だい21号ごう、2013年ねん12月、77-92頁ぺーじ、ISSN 1340-5632、NAID 120005458998。