進化 しんか 論 ろん (しんかろん、英 えい : theory of evolution )とは、生物 せいぶつ が進化 しんか したものだとする提唱 ていしょう 、または進化 しんか に関 かん する様々 さまざま な研究 けんきゅう や議論 ぎろん のことである[ 1] 。
生物 せいぶつ は不変 ふへん のものではなく長期間 ちょうきかん かけて次第 しだい に変化 へんか してきた、という仮説 かせつ (学説 がくせつ )に基 もと づいて、現在 げんざい 見 み られる様々 さまざま な生物 せいぶつ は全 すべ てその過程 かてい のなかで生 う まれてきたとする説明 せつめい や理論 りろん 群 ぐん である。進化 しんか が起 お こっているということを認 みと める判断 はんだん と、進化 しんか のメカニズムを説明 せつめい する理論 りろん という2つの意味 いみ がある。なお、生物 せいぶつ 学 がく における「進化 しんか 」は純粋 じゅんすい に「変化 へんか 」を意味 いみ するものであって「進歩 しんぽ 」を意味 いみ せず、価値 かち 判断 はんだん について中立 ちゅうりつ 的 てき である。
進化 しんか は実証 じっしょう の難 むずか しい現象 げんしょう であるが(現代 げんだい では)生物 せいぶつ 学 がく のあらゆる分野 ぶんや から進化 しんか を裏付 うらづ ける証拠 しょうこ が提出 ていしゅつ されている[ 2] [ 3] [ 4] [ 5] (詳細 しょうさい は、進化 しんか の項目 こうもく も参照 さんしょう のこと)。
初期 しょき の進化 しんか 論 ろん は、ダーウィンの仮説 かせつ に見 み られるように、画期的 かっきてき ではあったが、事実 じじつ かどうか検証 けんしょう するのに必要 ひつよう な証拠 しょうこ が十分 じゅうぶん に無 な いままに主張 しゅちょう されていた面 めん もあった。だが、その後 ご の議論 ぎろん の中 なか で進化 しんか 論 ろん は揉 も まれて改良 かいりょう されつつある。現代 げんだい 的 てき な進化 しんか 論 ろん は単一 たんいつ の理論 りろん ではない。それは適応 てきおう 、種 たね 分化 ぶんか 、遺伝 いでん 的 てき 浮動 ふどう など進化 しんか の様々 さまざま な現象 げんしょう を説明 せつめい し予測 よそく する多 おお くの理論 りろん の総称 そうしょう である。現代 げんだい の進化 しんか 理論 りろん では、「生物 せいぶつ の遺伝 いでん 的 てき 形質 けいしつ が世代 せだい を経 へ る中 なか で変化 へんか していく現象 げんしょう 」だと考 かんが えられている。
本 ほん 項 こう では進化 しんか 思想 しそう 、進化 しんか 理論 りろん 、進化 しんか 生物 せいぶつ 学 がく の歴史 れきし 、社会 しゃかい や宗教 しゅうきょう との関 かか わりについて概説 がいせつ する。
なお、生物 せいぶつ 学 がく において「進化 しんか 論 ろん 」の名称 めいしょう は適切 てきせつ ではないため、「進化 しんか 学 がく 」という名称 めいしょう に変更 へんこう すべきだとの指摘 してき がある[ 6] [ 7] 。
進化 しんか 論 ろん の歴史 れきし
中世 ちゅうせい 以前 いぜん の進化 しんか 思想 しそう
古代 こだい ギリシア の哲学 てつがく 者 しゃ アナクシマンドロス は生命 せいめい は海 うみ の中 なか で発展 はってん し、のちに地上 ちじょう に移住 いじゅう したと主張 しゅちょう した。エンペドクレス は非 ひ 超自然 ちょうしぜん 的 てき な生命 せいめい の誕生 たんじょう を論 ろん じ、後 ご の自然 しぜん 選択 せんたく に類似 るいじ した概念 がいねん を書 か いている。中国 ちゅうごく では荘 そう 子 こ が進化 しんか 思想 しそう を持 も っていた。ジョセフ・ニーダム に拠 よ れば、道教 どうきょう ははっきりと種 たね の不変 ふへん 性 せい を否定 ひてい し、道教 どうきょう の哲学 てつがく 者 しゃ は生物 せいぶつ が異 こと なる環境 かんきょう に応 おう じた異 こと なる特徴 とくちょう を持 も っていると推測 すいそく した。彼 かれ らは自然 しぜん に対 たい して、当時 とうじ の西洋 せいよう の静的 せいてき な視点 してん とは対照 たいしょう 的 てき に「恒常 こうじょう 的 てき な変化 へんか 」を見 み いだした。古代 こだい ローマ の哲学 てつがく 者 しゃ ルクレティウス はギリシアのエピクロス主義 しゅぎ に基 もと づいていかなる超自然 ちょうしぜん 的 てき 干渉 かんしょう もなしで宇宙 うちゅう 、地球 ちきゅう 、生命 せいめい 、人間 にんげん とその社会 しゃかい が発展 はってん すると論 ろん じた。
ローマに受 う け継 つ がれたギリシアの進化 しんか 思想 しそう はロ ろ ーマ帝国 まていこく の没落 ぼつらく と供 きょう に失 うしな われたが、イスラムの科学 かがく 者 しゃ と哲学 てつがく 者 しゃ へ影響 えいきょう を与 あた えた。イスラムの学者 がくしゃ 、哲学 てつがく 者 しゃ で詳細 しょうさい に進化 しんか を推測 すいそく したのは9世紀 せいき のAl-Jahizであった。彼 かれ は生物 せいぶつ の生存 せいぞん のチャンスと環境 かんきょう の影響 えいきょう を考 かんが え、「生存 せいぞん のための努力 どりょく 」を記述 きじゅつ した。Ibn Miskawayhは蒸気 じょうき から水 みず 、鉱物 こうぶつ 、植物 しょくぶつ 、動物 どうぶつ 、そして類人猿 るいじんえん から人 ひと へと進 すす む生命 せいめい の発展 はってん の歴史 れきし を書 か いた。イブン・アル・ハイサム は進化 しんか 論 ろん を称賛 しょうさん する本 ほん を書 か いた。他 た の学者 がくしゃ たちアブー・ライハーン・アル・ビールーニー 、ナスィールッディーン・トゥースィー 、イブン=ハルドゥーン らも進化 しんか 思想 しそう について議論 ぎろん した。彼 かれ らの本 ほん はルネサンス 以降 いこう ラテン語 らてんご に翻訳 ほんやく されてヨーロッパに持 も ち込 こ まれた。
18世紀 せいき -19世紀 せいき 前半 ぜんはん
ルネ・デカルト の機械 きかい 論 ろん は宇宙 うちゅう を機械 きかい のようなものと見 み なす科学 かがく 革命 かくめい を促 うなが した。しかしゴットフリート・ライプニッツ やヨハン・ゴットフリート・ヘルダー のような同 どう 時代 じだい の進化 しんか 思想家 しそうか は進化 しんか を基本 きほん 的 てき に精神 せいしん 的 てき な過程 かてい だと見 み なした。1751年 ねん にピエール・ルイ・モーペルテュイ はより唯物 ゆいぶつ 論 ろん 的 てき な方向 ほうこう へ傾 かたむ いた。彼 かれ は繁殖 はんしょく と世代 せだい 交代 こうたい の間 あいだ に起 お きる自然 しぜん の修正 しゅうせい について書 か いた。これは後 ご の自然 しぜん 選択 せんたく に近 ちか い。18世紀 せいき 後半 こうはん のフランスの自然 しぜん 哲学 てつがく 者 しゃ ビュフォン はいわゆる「種 たね 」は原型 げんけい から分離 ぶんり し環境 かんきょう 要因 よういん によって際 さい だった特徴 とくちょう を持 も ったものだと考 かんが えた。彼 かれ はライオン、ヒョウ、トラ、飼 か い猫 ねこ が祖先 そせん を共有 きょうゆう するかも知 し れず、200種 しゅ のほ乳類 にゅうるい が38の祖先 そせん に由来 ゆらい すると論 ろん じた。彼 かれ はその祖先 そせん は自然 しぜん 発生 はっせい し、内的 ないてき 要因 よういん によって進化 しんか の方向 ほうこう が制限 せいげん されていると考 かんが えた。ジェームズ・バーネット は人 ひと が環境 かんきょう 要因 よういん によって霊長 れいちょう 類 るい から誕生 たんじょう したのではないかと考 かんが えた。チャールズ・ダーウィンの祖父 そふ エラズマス・ダーウィン は1796年 ねん の著書 ちょしょ 『ズーノミア』で全 すべ ての温血動物 おんけつどうぶつ は一 ひと つの生 い きた糸 いと に由来 ゆらい すると書 か いた。1802年 ねん にはすべての生物 せいぶつ は粘土 ねんど から発生 はっせい した有機物 ゆうきぶつ に由来 ゆらい すると述 の べた。また性 せい 選択 せんたく に通 つう じる概念 がいねん にも言及 げんきゅう していた。
ジョルジュ・キュビエ は1796年 ねん に現生 げんなま のゾウと化石 かせき のゾウの違 ちが いを発表 はっぴょう した。彼 かれ はマストドン とマンモス が現生 げんなま のいかなる生物 せいぶつ とも異 こと なると結論 けつろん し、絶滅 ぜつめつ に関 かん する長 なが い議論 ぎろん に終止符 しゅうしふ を打 う った。1788年 ねん にはジェームズ・ハットン が非常 ひじょう に長 なが い間 あいだ 、連続 れんぞく 的 てき に働 はたら く漸進 ぜんしん 的 てき な地質 ちしつ プロセスを詳述 しょうじゅつ した。1811年 ねん にはキュビエとアレクサンドル・ブロンニャール はそれぞれパリ周辺 しゅうへん の地質 ちしつ について研究 けんきゅう を発表 はっぴょう し、地球 ちきゅう の先史 せんし 時代 じだい 研究 けんきゅう の先駆 さきが けとなった。
1840年代 ねんだい までに地球 ちきゅう の膨大 ぼうだい な地質 ちしつ 学 がく 的 てき 時間 じかん は大 おお まかに明 あき らかになっていた。1841年 ねん にジョン・フィリップス は主 おも な動物 どうぶつ 相 しょう に基 もと づいて古生代 こせいだい 、中生代 ちゅうせいだい 、新生代 しんせいだい に区分 くぶん した。このような新 あら たな視点 してん はセジウィックやウィリアム・バックランド のようなイギリスの保守 ほしゅ 的 てき な地質 ちしつ 学者 がくしゃ からも受 う け入 い れられた。しかしキュビエは生命 せいめい の発展 はってん の歴史 れきし を度重 たびかさ なる天変地異 てんぺんちい による生物 せいぶつ 相 しょう の入 い れ替 か えと見 み て天変地異 てんぺんちい 説 せつ を唱 とな えた。さらにその支持 しじ 者 しゃ は天変地異 てんぺんちい に続 つづ く新 あら たな創造 そうぞう によると考 かんが えた。バックランドのようなイギリスの地質 ちしつ 学者 がくしゃ の中 なか の自然 しぜん 神学 しんがく の支持 しじ 者 しゃ はキュビエの激変 げきへん 説 せつ と聖書 せいしょ の洪水 こうずい のエピソードをむすびつけようとした。1830年 ねん から33年 ねん にかけてチャールズ・ライエル は『地質 ちしつ 学 がく 原理 げんり 』を著 あらわ し、激変 げきへん 説 せつ の代替 だいたい 理論 りろん として斉一 せいいつ 説 せつ を提唱 ていしょう した。ライエルは実際 じっさい の地層 ちそう は天変地異 てんぺんちい よりも、現在 げんざい 観察 かんさつ されているような穏 おだ やかな変化 へんか が非常 ひじょう に長 なが い時間 じかん 積 つ み重 かさ なって起 お きたと考 かんが える方 ほう が上手 うま く説明 せつめい できると論 ろん じた。ライエルは進化 しんか に反対 はんたい したが、彼 かれ の斉一 せいいつ 説 せつ と膨大 ぼうだい な地球 ちきゅう の年齢 ねんれい という概念 がいねん はチャールズ・ダーウィンら以降 いこう の進化 しんか 思想家 しそうか に強 つよ く影響 えいきょう した。
ラマルクの進化 しんか 論 ろん
ジャン=バティスト・ラマルク
ジャン=バティスト・ラマルク は、最初 さいしょ は生物 せいぶつ が進化 しんか するという考 かんが えを認 みと めていなかったが、無 む 脊椎動物 せきついどうぶつ の分類 ぶんるい の研究 けんきゅう を進 すす めるうち、19世紀 せいき になって、生物 せいぶつ は何 なん 度 ど も物質 ぶっしつ から自然 しぜん 発生 はっせい によって生 しょう じると考 かんが え、著書 ちょしょ 『動物 どうぶつ 哲学 てつがく 』で進化 しんか の学説 がくせつ を発表 はっぴょう した。
ラマルクは進化 しんか のしくみについて、使用 しよう ・不 ふ 使用 しよう によって器官 きかん は発達 はったつ もしくは退化 たいか し、そういった獲得 かくとく 形質 けいしつ が遺伝 いでん する。従 したが って非常 ひじょう に長 なが い時間 じかん を経 へ たならば、それは生物 せいぶつ の構造 こうぞう を変化 へんか させる、つまり進化 しんか すると考 かんが えた。ラマルクのこの説 せつ を用 もちい 不用 ふよう 説 せつ と呼 よ ぶが、生物 せいぶつ にとって適切 てきせつ な形質 けいしつ が進化 しんか するという意味 いみ では適応 てきおう 説 せつ と考 かんが えてよい。彼 かれ は、進化 しんか は常 つね に単純 たんじゅん な生物 せいぶつ から複雑 ふくざつ な生物 せいぶつ へと発展 はってん していくような、一定 いってい の方向 ほうこう をもつ必然 ひつぜん 的 てき で目的 もくてき 論 ろん 的 てき な過程 かてい だと考 かんが えた。複雑 ふくざつ な生物 せいぶつ は大昔 おおむかし に発生 はっせい し、単純 たんじゅん な生物 せいぶつ は最近 さいきん に発生 はっせい した途中 とちゅう の段階 だんかい のもので、やがて複雑 ふくざつ な生物 せいぶつ に変化 へんか していくと考 かんが えた。生前 せいぜん 彼 かれ の唱 とな える進化 しんか の機構 きこう には賛同 さんどう が得 え られなかったが、ダーウィンはパンジェネシス という考 かんが えで獲得 かくとく 形質 けいしつ の遺伝 いでん を自説 じせつ に取 と り込 こ もうとしたし、ネオラマルキストを自称 じしょう する科学 かがく 者 しゃ 達 たち は、RNAからDNAの逆 ぎゃく 転写 てんしゃ にその科学 かがく 的 てき な説明 せつめい を与 あた えようとすることが知 し られている。
現在 げんざい ではその説 せつ に否定 ひてい 的 てき な研究 けんきゅう 者 しゃ が多 おお いものの、ラマルクの仮説 かせつ は科学 かがく 的 てき 手続 てつづ きによって検証 けんしょう される最初 さいしょ の進化 しんか 論 ろん であり、そのことに関 かん して異論 いろん をもたれることはない。
ラマルク以降 いこう の進化 しんか 論 ろん
イギリスの解剖 かいぼう 学者 がくしゃ ロバート・グラント はラマルクの「生物 せいぶつ 変移 へんい 論 ろん 」学派 がくは の影響 えいきょう を受 う けた。グラントに影響 えいきょう を与 あた えたもう一人 ひとり 、エティエンヌ・ジョフロワ・サンティレール は様々 さまざま な動物 どうぶつ の解剖 かいぼう 学 がく 的 てき 特徴 とくちょう の相 あい 同性 どうせい やボディプラン の類似 るいじ を論 ろん じ、これはキュビエとの間 あいだ に激 はげ しい論争 ろんそう を引 ひ き起 お こした。グラントは種 たね の変化 へんか と進化 しんか についてエラズマス・ダーウィンとラマルクの考 かんが えを証明 しょうめい するために海洋 かいよう 生物 せいぶつ の解剖 かいぼう 学 がく の研究 けんきゅう を行 おこな い権威 けんい となった。ケンブリッジ大学 けんぶりっじだいがく の若 わか い学生 がくせい であったチャールズ・ダーウィンはグラントに加 くわ わって海洋 かいよう 生物 せいぶつ の調査 ちょうさ を行 おこな った。1826年 ねん に匿名 とくめい の記事 きじ がラマルクの進化 しんか 思想 しそう を称賛 しょうさん した。このとき初 はじ めて現在 げんざい 的 てき な意味 いみ で「進化 しんか 」が使 つか われた。
1844年 ねん にスコットランドの出版 しゅっぱん 業者 ぎょうしゃ ロバート・チェンバース は匿名 とくめい で『創造 そうぞう の自然 しぜん 史 し の痕跡 こんせき 』を出版 しゅっぱん した。これは幅広 はばひろ い関心 かんしん と激 はげ しい論争 ろんそう を引 ひ き起 お こした。この本 ほん は太陽系 たいようけい と地球 ちきゅう の生命 せいめい の進化 しんか を提案 ていあん した。彼 かれ は化石 かせき 記録 きろく が人間 にんげん に繋 つな がる上昇 じょうしょう を示 しめ しており、他 た の動物 どうぶつ は主流 しゅりゅう を外 はず れた枝 えだ だと論 ろん じた。進化 しんか が定 さだ められた法則 ほうそく の発現 はつげん であるとする点 てん でグラントのより過激 かげき な唯物 ゆいぶつ 論 ろん より穏 おだ やかであったが、人間 にんげん を他 た の動物 どうぶつ と結 むす び付 つ けたことは多 おお くの保守 ほしゅ 派 は を激怒 げきど させた。『痕跡 こんせき 』に関 かん する公的 こうてき な議論 ぎろん は進歩 しんぽ 的 てき 進化 しんか 観 かん を含 ふく んでおり、これはダーウィンの認識 にんしき に強 つよ く影響 えいきょう した。キュビエは種 たね が不変 ふへん であると主張 しゅちょう し続 つづ け、ラマルクとサンティレールを攻撃 こうげき した。キュビエの主張 しゅちょう と科学 かがく 的 てき 地位 ちい の高 たか さは「種 たね の不変 ふへん 性 せい 」が科学 かがく 界 かい の主流 しゅりゅう でありつづける助 たす けとなった。
イギリスでは自然 しぜん 神学 しんがく が力 ちから を持 も ち続 つづ けていた。ウィリアム・ペイリー の時計 とけい 職人 しょくにん のアナロジーで有名 ゆうめい な『自然 しぜん 神学 しんがく 』は一部 いちぶ はエラズマス・ダーウィンの種 たね の変化 へんか に対 たい して書 か かれた。地質 ちしつ 学者 がくしゃ は自然 しぜん 神学 しんがく を受 う け入 い れており、バックランドやアダム・セジウィック はラマルク、グラント、『痕跡 こんせき 』の進化 しんか 思想 しそう を攻撃 こうげき した。聖書 せいしょ の地質 ちしつ 学 がく を批判 ひはん したライエルも種 たね は不変 ふへん であると考 かんが えていた。ルイ・アガシー やリチャード・オーウェン のような思想家 しそうか も種 たね は創造 そうぞう 主 ぬし の心 しん を反映 はんえい しており不変 ふへん だと考 かんが えていた。彼 かれ らは化石 かせき 記録 きろく と同様 どうよう に、発生 はっせい パターンの種 たね 間 あいだ の類似 るいじ 性 せい にも気付 きづ いていたが、神 かみ の行為 こうい の一部 いちぶ だと考 かんが えていた。オーウェンは相 あい 同性 どうせい の研究 けんきゅう から神 かみ が創造 そうぞう した「原型 げんけい 」が一連 いちれん の類似 るいじ 種 しゅ を生 う み出 だ すのだと考 かんが えた。ダーウィンはオーウェンの相 あい 同性 どうせい の研究 けんきゅう を自分 じぶん の理論 りろん の発展 はってん に用 もち いた。『痕跡 こんせき 』が引 ひ き起 お こした論争 ろんそう は考 かんが えの性急 せいきゅう な公表 こうひょう を思 おも いとどまらせた。
チャールズ・ダーウィンの進化 しんか 論 ろん
チャールズ・ダーウィン 。自然 しぜん 選択 せんたく による進化 しんか の理論 りろん を提案 ていあん した。
チャールズ・ダーウィン は、1831年 ねん から1836年 ねん にかけてビーグル号 ごう で地球 ちきゅう 一周 いっしゅう する航海 こうかい をおこなった。航海 こうかい 中 ちゅう に各地 かくち の動物 どうぶつ 相 しょう や植物 しょくぶつ 相 しょう の違 ちが いから種 たね の不変 ふへん 性 せい に疑問 ぎもん を感 かん じ、ライエル の『地質 ちしつ 学 がく 原理 げんり 』を読 よ んだ。そして地層 ちそう と同様 どうよう 、動植物 どうしょくぶつ にも変化 へんか があり、大陸 たいりく の変化 へんか によって新 あたら しい生息 せいそく 地 ち が出来 でき 、動物 どうぶつ がその変化 へんか に適応 てきおう したのではないかと思 おも った。1838年 ねん にマルサス の『人口 じんこう 論 ろん 』を読 よ み自然 しぜん 選択 せんたく 説 せつ を思 おも いついたと自伝 じでん には書 か かれている。ハト の品種 ひんしゅ 改良 かいりょう についての研究 けんきゅう でさらに考 かんが えがまとまっていった。
1858年 ねん にアルフレッド・ウォレス がダーウィンに送 おく った手紙 てがみ に自然 しぜん 選択 せんたく 説 せつ と同様 どうよう の理論 りろん が書 か かれていたことに驚 おどろ き、自然 しぜん 選択 せんたく による進化 しんか 理論 りろん を共同 きょうどう で発表 はっぴょう したダーウィンはさらに執筆 しっぴつ 中 ちゅう であった『自然 しぜん 選択 せんたく 』と題 だい された大著 たいちょ の要約 ようやく をまとめ、1859年 ねん 11月24日 にち に『種 たね の起源 きげん 』として出版 しゅっぱん した。
『種 たね の起源 きげん 』のなかでは、現在 げんざい の「進化 しんか 」を指 さ す用語 ようご として、あらかじめ内在 ないざい 的 てき に用意 ようい された構造 こうぞう の展開 てんかい 出現 しゅつげん を意味 いみ する"evolution"ではなく、「変更 へんこう を伴 ともな う由来 ゆらい 」(Descent with modification)という語 かたり を使 つか っている(evolutionの原義 げんぎ については下 した の項目 こうもく を参照 さんしょう のこと)。また自然 しぜん 選択 せんたく (natural selection)、存在 そんざい し続 つづ けるための努力 どりょく (struggle for existence、現在 げんざい では通常 つうじょう 生存 せいぞん 競争 きょうそう と訳 やく される)、そして後 ご の版 はん ではウォレスの提言 ていげん を受 う け入 い れ自然 しぜん 選択 せんたく をわかりやすく説明 せつめい する語 かたり としてハーバート・スペンサー の適者生存 てきしゃせいぞん を使用 しよう した(生存 せいぞん 競争 きょうそう や適者生存 てきしゃせいぞん は誤解 ごかい を招 まね きやすいために近年 きんねん では用 もち いられない)。これらの要因 よういん によって環境 かんきょう に適応 てきおう した形質 けいしつ を獲得 かくとく した種 たね が分岐 ぶんき し、多様 たよう な種 たね が生 しょう じると説明 せつめい した。
ダーウィンの説 せつ の重要 じゅうよう な部分 ぶぶん は、自然 しぜん 淘汰 とうた (自然 しぜん 選択 せんたく )説 せつ と呼 よ ばれるものである。それは以下 いか のような形 かたち で説明 せつめい される。
生物 せいぶつ がもつ性質 せいしつ は、同種 どうしゅ であっても個体 こたい 間 あいだ に違 ちが いがあり、そのうちの一部 いちぶ は親 おや から子 こ に伝 つた えられたものである。
環境 かんきょう 収容 しゅうよう 力 りょく は常 つね に生物 せいぶつ の繁殖 はんしょく 力 りょく よりも小 ちい さい。そのため、生 う まれた子 こ のすべてが生存 せいぞん ・繁殖 はんしょく することはなく、性質 せいしつ の違 ちが いに応 おう じて次世代 じせだい に子 こ を残 のこ す期待 きたい 値 ち に差 さ が生 しょう じる。つまり有利 ゆうり な形質 けいしつ を持 も ったものがより多 おお くの子 こ を残 のこ す。
それが保存 ほぞん され蓄積 ちくせき されることによって進化 しんか が起 お こる。
生物 せいぶつ の地理 ちり 的 てき 分布 ぶんぷ や、異性 いせい 間 あいだ に起 お きる選択 せんたく である性 せい 選択 せんたく についても説明 せつめい した。
当時 とうじ は DNA や遺伝 いでん の仕組 しく みについては知 し られていなかったので、変異 へんい の原因 げんいん や遺伝 いでん についてはうまく説明 せつめい できなかった。ダーウィンの遺伝 いでん 理論 りろん はパンジェネシス (パンゲン説 せつ )と呼 よ ばれ、獲得 かくとく 形質 けいしつ の遺伝 いでん や当時 とうじ 主流 しゅりゅう であった融合 ゆうごう 遺伝 いでん を認 みと めていた。また発生 はっせい と進化 しんか を明確 めいかく に区別 くべつ していなかった。
変異 へんい はランダムな物 もの であると考 かんが えた。ここで言 い うランダムとは「規則 きそく 性 せい が全 まった く無 な い」と言 い う意味 いみ ではない。ダーウィンは変異 へんい について確実 かくじつ なことを述 の べられるような知識 ちしき を何 なに も持 も っていなかった。変異 へんい がランダムであるとは、変異 へんい それ自体 じたい には進化 しんか の方向 ほうこう 性 せい を決 き める力 ちから が内在 ないざい しないと言 い う意味 いみ である。
進化 しんか を進歩 しんぽ とは違 ちが うものだと認識 にんしき し、特定 とくてい の方向 ほうこう 性 せい がない偶然 ぐうぜん の変異 へんい による機械 きかい 論 ろん 的 てき なものだとした。
「自然 しぜん は跳躍 ちょうやく しない」という言葉 ことば で、進化 しんか は漸進 ぜんしん 的 てき であると主張 しゅちょう した。これは「進化 しんか は一定 いってい 速度 そくど で進 すす む」事 こと を意味 いみ しない。文字通 もじどお り跳躍 ちょうやく 的 てき な進化 しんか を否定 ひてい するのみである。進化 しんか は小 ちい さな遺伝 いでん 的 てき 変異 へんい の蓄積 ちくせき によって起 お きる。その結果 けっか として、体 からだ 節 ぶし 数 すう の変化 へんか のような大 おお きな形態 けいたい 的 てき 変化 へんか が起 お きる可能 かのう 性 せい はあるが、目 め や脳 のう などが一 いち 世代 せだい でできることはない。
一 ひと つあるいは少数 しょうすう の祖先 そせん 型 がた 生物 せいぶつ から全 ぜん 生物 せいぶつ が誕生 たんじょう した。そして一 ひと つの種 たね が二 ふた つに分 わ かれる過程 かてい を種 たね 分化 ぶんか と呼 よ んだが、種 たね 分化 ぶんか のメカニズムに関 かん しては深 ふか く追求 ついきゅう しなかった。
ダーウィンは、進化 しんか の概念 がいねん を多 おお くの観察 かんさつ 例 れい や実験 じっけん による傍証 ぼうしょう などの実証 じっしょう 的 てき 成果 せいか によって、進化 しんか 論 ろん を仮説 かせつ の段階 だんかい から理論 りろん にまで高 たか めたのである。
ウォレスは性 せい 選択 せんたく 説 せつ を認 みと めず非適応 ひてきおう 的 てき と思 おも われる形質 けいしつ (例 たと えばクジャクの羽 はね )も自然 しぜん 選択 せんたく で説明 せつめい しようと試 こころ みたが、これは現在 げんざい の優良 ゆうりょう 遺伝子 いでんし 説 せつ に近 ちか い説明 せつめい であった。またウォレスは人間 にんげん の高 たか い知性 ちせい や精神 せいしん 的 てき 能力 のうりょく は神 かみ のような超 ちょう 自然 しぜん 的 てき 存在 そんざい の干渉 かんしょう によるものだと考 かんが えた。
自然 しぜん 選択 せんたく 説 せつ の代替 だいたい 理論 りろん
ダーウィンの進化 しんか 理論 りろん は多 おお くの批判 ひはん ・反論 はんろん を受 う けたが、多 おお くの支持 しじ も得 え て次第 しだい に影響 えいきょう を広 ひろ げていった。この影響 えいきょう はその後 ご 、自然 しぜん 科学 かがく の枠外 わくがい にまで広 ひろ がった。しかし進化 しんか を駆動 くどう する原因 げんいん として自然 しぜん 選択 せんたく 説 せつ の承認 しょうにん は時間 じかん がかかった。ジュリアン・ハクスリー はこの時期 じき を「ダーウィンの黄昏 たそがれ 」と呼 よ んだ。19世紀 せいき 後半 こうはん 以降 いこう 、自然 しぜん 選択 せんたく 説 せつ の代替 だいたい 理論 りろん として当時 とうじ 有力 ゆうりょく 視 し された代表 だいひょう 的 てき なものは有神論 ゆうしんろん 的 てき 進化 しんか 論 ろん 、ネオラマルキズム 、定 てい 向 こう 進化 しんか 説 せつ 、跳躍 ちょうやく 説 せつ である。
有神論 ゆうしんろん 的 てき 進化 しんか 論 ろん
有神論 ゆうしんろん 的 てき 進化 しんか 論 ろん は神 かみ が生物 せいぶつ の進化 しんか に介入 かいにゅう したと考 かんが えた。これはアメリカでダーウィンを強 つよ く支持 しじ した植物 しょくぶつ 学者 がくしゃ エイサ・グレイ によって広 ひろ められた。しかしこの考 かんが えは、当時 とうじ 、学問 がくもん 的 てき に非 ひ 生産 せいさん 的 てき とみなされ、1900年 ねん ごろには議論 ぎろん されなくなった。
この考 かんが え方 かた は現代 げんだい のインテリジェント・デザイナー論 ろん に受 う け継 つ がれている。
定 てい 向 こう 進化 しんか 説 せつ
定 てい 向 こう 進化 しんか 説 せつ はより完全 かんぜん な方向 ほうこう に向 む かって直線 ちょくせん 的 てき に生物 せいぶつ が進化 しんか するという概念 がいねん である。この考 かんが えも19世紀 せいき にはかなりの支持 しじ 者 しゃ がおり、アメリカの古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ ヘンリー・フェアフィールド・オズボーン がその代表 だいひょう である。定 てい 向 こう 進化 しんか 説 せつ は特 とく に古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ の間 あいだ で人気 にんき があり、彼 かれ らは20世紀 せいき 半 なか ばまで化石 かせき 記録 きろく が段階 だんかい 的 てき で安定 あんてい した方向 ほうこう 性 せい を示 しめ していると考 かんが えていた。
跳躍 ちょうやく 説 せつ
トマス・ハクスリー
跳躍 ちょうやく 説 せつ は新 あたら しい種 たね が大 おお きな突然変異 とつぜんへんい の結果 けっか として出現 しゅつげん するという考 かんが えである。ダーウィンの強力 きょうりょく な支援 しえん 者 しゃ であったトマス・ハクスリー も「自然 しぜん は飛躍 ひやく しない」というダーウィンの主張 しゅちょう に疑問 ぎもん を呈 てい し、跳躍 ちょうやく 的 てき な進化 しんか を先験的 せんけんてき に排除 はいじょ すべきではないと考 かんが えた。アーガイル公 こう など当時 とうじ の進化 しんか 論 ろん の支持 しじ 者 しゃ の多 おお くも跳躍 ちょうやく 説 せつ を支持 しじ した。ユーゴー・ド・フリース、ウィリアム・ベイトソン、そしてトーマス・ハント・モーガンも経歴 けいれき の初期 しょき には跳躍 ちょうやく 論 ろん 者 しゃ だった。これは突然変異 とつぜんへんい 説 せつ 発見 はっけん の基盤 きばん となった。
20世紀 せいき
遺伝子 いでんし の発見 はっけん と突然変異 とつぜんへんい 説 せつ
1865年 ねん に発表 はっぴょう されたメンデルの法則 ほうそく は、当時 とうじ は重要 じゅうよう 性 せい が全 まった く理解 りかい されなかったが、1900年 ねん に再 さい 発見 はっけん されて広 ひろ い支持 しじ を得 え た。メンデル の遺伝子 いでんし に関 かん する説 せつ では、遺伝子 いでんし は親 おや の生活 せいかつ とは何 なん の関係 かんけい もなく全 まった く変化 へんか せずに子孫 しそん に受 う け渡 わたし されるため、進化 しんか を否定 ひてい する理論 りろん と考 かんが えられた。
突然変異 とつぜんへんい は、ド・フリース によって発見 はっけん された。これによって遺伝 いでん 学 がく からも遺伝子 いでんし に変化 へんか を生 しょう じる可能 かのう 性 せい 、つまり進化 しんか の可能 かのう 性 せい が認 みと められた。しかしド・フリースは自然 しぜん 選択 せんたく とは無関係 むかんけい に突然変異 とつぜんへんい によって新 あたら しい種 たね が生 しょう じ、生 しょう じた種 たね の間 あいだ に自然 しぜん 選択 せんたく が起 お こるという跳躍 ちょうやく 説 せつ の一種 いっしゅ である突然変異 とつぜんへんい 説 せつ を提唱 ていしょう した。
この発見 はっけん は種 たね 内 ない の個体 こたい の量的 りょうてき 形質 けいしつ とその統計 とうけい に関心 かんしん を持 も っていたピアソン 、ウェルドン に代表 だいひょう される生物 せいぶつ 測定 そくてい 学 がく 者 もの と、ド・フリース、ベイトソン に代表 だいひょう される不連続 ふれんぞく 的 てき な変異 へんい を重視 じゅうし するメンデル派 は 遺伝 いでん 学者 がくしゃ の間 あいだ に激 はげ しい対立 たいりつ を引 ひ き起 お こした。
T.H.モーガン は突然変異 とつぜんへんい 説 せつ を確 たし かめようとキイロショウジョウバエ で実験 じっけん を行 おこな った。モーガンの研究 けんきゅう は染色 せんしょく 体 たい 説 せつ の提唱 ていしょう に繋 つな がると同時 どうじ に、突然変異 とつぜんへんい が直接 ちょくせつ に新種 しんしゅ を生 う み出 だ すことはまずないと考 かんが えられるようになった。そして個体 こたい に遺伝 いでん 的 てき 変化 へんか を生 しょう じさせ、自然 しぜん 選択 せんたく が働 はたら く遺伝 いでん 的 てき 多様 たよう 性 せい を増加 ぞうか させる原因 げんいん であることが判明 はんめい した。
集団 しゅうだん 遺伝 いでん 学 がく と総合 そうごう 説 せつ の成立 せいりつ
1930年代 ねんだい に確立 かくりつ された集団 しゅうだん 遺伝 いでん 学 がく は、生物 せいぶつ 測定 そくてい 学 がく とメンデル遺伝 いでん 学 がく の間 あいだ の不一致 ふいっち 、連続 れんぞく 的 てき 形質 けいしつ と不連続 ふれんぞく な遺伝子 いでんし という問題 もんだい を一貫 いっかん して説明 せつめい 可能 かのう であることを示 しめ した。また遺伝子 いでんし 頻度 ひんど の変化 へんか を進化 しんか と考 かんが え、その要因 よういん の説明 せつめい に努力 どりょく が注 そそ がれた。
ロナルド・フィッシャー は生物 せいぶつ 統計 とうけい 学 がく の統計 とうけい 手法 しゅほう と遺伝 いでん 学 がく を結 むす び付 つ けた。J・B・S・ホールデン は実際 じっさい に野外 やがい で自然 しぜん 選択 せんたく が働 はたら いていることを認 みと めた。シーウォル・ライト は遺伝 いでん 的 てき 浮動 ふどう と適応 てきおう 景観 けいかん の概念 がいねん を提唱 ていしょう し、小 しょう 集団 しゅうだん における選択 せんたく 、浮動 ふどう の効果 こうか を調 しら べた。エルンスト・マイヤー は種 しゅ 分化 ぶんか のメカニズムを解明 かいめい し、多 おお くの種 たね 分化 ぶんか は地理 ちり 的 てき に隔離 かくり された個体 こたい 群 ぐん で起 お きると主張 しゅちょう した。
こうした新 あら たな学問 がくもん 分野 ぶんや の確立 かくりつ や研究 けんきゅう の進展 しんてん によって、ダーウィンの自然 しぜん 選択 せんたく 説 せつ を基本 きほん にしつつ、集団 しゅうだん 遺伝 いでん 学 がく 、系統 けいとう 分類 ぶんるい 学 がく 、古 こ 生物 せいぶつ 学 がく 、生物 せいぶつ 地理 ちり 学 がく 、生態 せいたい 学 がく などの成果 せいか を取 と り入 い れて生物 せいぶつ の形質 けいしつ の進化 しんか を説明 せつめい することが主流 しゅりゅう になった。これを総合 そうごう 説 せつ (ネオダーウィニズム )と呼 よ ぶ。
総合 そうごう 説 せつ に関 かか わった生物 せいぶつ 学 がく 者 もの は多 おお く、唱 とな えた説 せつ は少 すこ しずつ異 こと なる。総合 そうごう 説 せつ を批判 ひはん する論者 ろんしゃ は、総合 そうごう 説 せつ の中 なか の特定 とくてい の意見 いけん を総合 そうごう 説 せつ と見 み なして批判 ひはん していることが多 おお い。
ネオ・ラマルキズム
伝統 でんとう 的 てき な総合 そうごう 説 せつ では、生物 せいぶつ の進化 しんか は偶然 ぐうぜん に生 しょう じる突然変異 とつぜんへんい に委 ゆだ ねられており、自然 しぜん 選択 せんたく は有利 ゆうり な突然変異 とつぜんへんい が生 しょう じなければ意味 いみ をなさない。このことに納得 なっとく できない研究 けんきゅう 者 しゃ が、生物 せいぶつ 自身 じしん が進化 しんか の方向 ほうこう を決 き めているはずだという説 せつ を出 だ すことが再三 さいさん あった。特 とく に、長 なが い期間 きかん の変化 へんか を追 お う古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ などにその例 れい が多 おお い。そのような考 かんが えをネオ・ラマルキズム と言 い う。
ネオラマルキズムは獲得 かくとく 形質 けいしつ の遺伝 いでん を進化 しんか の最 もっと も重要 じゅうよう なメカニズムと見 み なし、ダーウィンを批判 ひはん したイギリスの作家 さっか サミュエル・バトラーや、ドイツの生物 せいぶつ 学者 がくしゃ エルンスト・ヘッケル 、アメリカの古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ エドワード・コープ らに支持 しじ された。獲得 かくとく 形質 けいしつ の遺伝 いでん はヘッケルの反復 はんぷく 説 せつ の一部 いちぶ であった。ネオラマルキズムの批判 ひはん 者 しゃ 、例 たと えばアルフレッド・ウォレスとアウグスト・ヴァイスマンは獲得 かくとく 形質 けいしつ の遺伝 いでん の強固 きょうこ な証拠 しょうこ が一 いち 度 ど も提示 ていじ されていないと指摘 してき した。この批判 ひはん にもかかわらず、獲得 かくとく 形質 けいしつ の遺伝 いでん は19世紀 せいき 後半 こうはん から20世紀 せいき 序盤 じょばん でもっとも人気 にんき のある説 せつ のままだった。
定 てい 向 こう 進化 しんか 説 せつ を唱 とな えたアイマー がこの代表 だいひょう である。彼 かれ は化石 かせき の記録 きろく を見 み て、生物 せいぶつ に内在 ないざい する力 ちから が原因 げんいん で、適応 てきおう 的 てき かどうかとは無関係 むかんけい に一定 いってい 方向 ほうこう に進化 しんか が起 お こると主張 しゅちょう した。今西 いまにし 錦司 きんじ の進化 しんか 論 ろん にもその傾向 けいこう がある。
アウグスト・ヴァイスマン は、19世紀 せいき 後半 こうはん に生殖 せいしょく 細胞 さいぼう と体 からだ 細胞 さいぼう を分 わ け、次世代 じせだい に形質 けいしつ を遺伝 いでん させることができるのは生殖 せいしょく 細胞 さいぼう だけで、体 からだ 細胞 さいぼう が獲得 かくとく した形質 けいしつ は遺伝 いでん しないと主張 しゅちょう し、獲得 かくとく 形質 けいしつ の遺伝 いでん を唱 とな えるネオ・ラマルキズムを批判 ひはん した。また、分子 ぶんし 遺伝 いでん 学 がく 的 てき 知識 ちしき からも、こうした説 せつ は否定 ひてい されている。
分子生物学 ぶんしせいぶつがく の登場 とうじょう
20世紀 せいき の半 なか ばには分子生物学 ぶんしせいぶつがく が興隆 こうりゅう した。分子生物学 ぶんしせいぶつがく は遺伝子 いでんし の化学 かがく 的 てき 性質 せいしつ を明 あき らかにし、DNAの配列 はいれつ とそれらが持 も つ遺伝 いでん 的 てき 暗号 あんごう の関連 かんれん を解明 かいめい する道 みち を拓 ひら いた。特 とく にタンパク質 たんぱくしつ 電気 でんき 泳 およげ 動 どう やプロテインシーケンスなどの強力 きょうりょく な技術 ぎじゅつ の発展 はってん が進 すす んだ。1960年代 ねんだい 初頭 しょとう に生化学 せいかがく 者 しゃ ライナス・ポーリング とエミール・ズッカーカンドル は分子 ぶんし 時計 とけい 説 せつ を提唱 ていしょう した。二 ふた つの種 たね の相 あい 同 どう なタンパク質 たんぱくしつ の配列 はいれつ の差異 さい は、二 ふた つの種 たね が分化 ぶんか してからの時間 じかん を示 しめ しているかも知 し れない。1969年 ねん までに木村 きむら 資 し 生 せい やそのほかの分子生物学 ぶんしせいぶつがく 者 しゃ は分子 ぶんし 時計 とけい の理論 りろん 的 てき な基礎 きそ を確立 かくりつ した。そして、少 すく なくとも分子 ぶんし レベルでは、大 だい 部分 ぶぶん の突然変異 とつぜんへんい は有害 ゆうがい でもなく役 やく に立 た ちもせず、遺伝 いでん 的 てき 浮動 ふどう は自然 しぜん 選択 せんたく よりも遺伝子 いでんし 頻度 ひんど の変動 へんどう に重要 じゅうよう な役割 やくわり を果 は たすと主張 しゅちょう した。またこの分野 ぶんや は集団 しゅうだん 遺伝 いでん 学 がく に分子 ぶんし データの利用 りよう をもたらした。
1960年代 ねんだい 初頭 しょとう から、分子生物学 ぶんしせいぶつがく は進化 しんか 生物 せいぶつ 学 がく の伝統 でんとう 的 てき な視点 してん に対 たい する脅威 きょうい と見 み なされた。指導 しどう 的 てき な進化 しんか 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ 、特 とく にエルンスト・マイヤー、テオドシウス・ドブジャンスキー 、G.G.シンプソン らは分子 ぶんし 的 てき なアプローチが、特 とく に自然 しぜん 選択 せんたく との関 かか わりについて(あるいは関 かか わらないことについて)非常 ひじょう に懐疑 かいぎ 的 てき だった。分子 ぶんし 時計 とけい と中立 ちゅうりつ 説 せつ は非常 ひじょう に論争 ろんそう 的 てき で、浮動 ふどう と選択 せんたく の相対 そうたい 的 てき 重要 じゅうよう 性 せい に関 かん する議論 ぎろん は1980年代 ねんだい まで続 つづ いた。
中立 ちゅうりつ 進化 しんか
現在 げんざい はそもそも突然変異 とつぜんへんい と言 い われたゲノム上 じょう の変異 へんい はランダムではなく、DNAの修復 しゅうふく 機構 きこう や複製 ふくせい 機構 きこう に根 ね ざした、方向 ほうこう 性 せい のある変異 へんい であるという理解 りかい がされつつある。例 たと えば大野 おおの 乾 いぬい は複製 ふくせい における遺伝子 いでんし 重複 じゅうふく が進化 しんか に果 は たす役割 やくわり を説 と き、古澤 ふるさわ 満 みつる は岡崎 おかざき フラグメント によるDNA複製 ふくせい において、一方 いっぽう の鎖 くさり は突然変異 とつぜんへんい の確 かく 率 りつ が高 たか いという不 ふ 均衡 きんこう 進化 しんか 論 ろん を唱 とな えるなど知 し られている。また、個体 こたい 数 すう 動態 どうたい の変動 へんどう に伴 ともな う創始 そうし 者 しゃ 効果 こうか やビン首 くび 効果 こうか 、個体 こたい 群 ぐん の周辺 しゅうへん に進化 しんか が起 お きやすいと言 い った生物 せいぶつ の社会 しゃかい 集団 しゅうだん における動的 どうてき 不 ふ 平衡 へいこう に着目 ちゃくもく したものや、スチュアート・カウフマン のように自己 じこ 組織 そしき 化 か による形質 けいしつ 形成 けいせい を重視 じゅうし した説 せつ もある。こういった議論 ぎろん の下敷 したじ きになっているのは、1968年 ねん に発表 はっぴょう された木村 きむら 資 し 生 せい の中立 ちゅうりつ 進化 しんか 説 せつ である。
中立 ちゅうりつ 説 せつ は、変異 へんい 自体 じたい は生物 せいぶつ にとって有利 ゆうり なものは少 すく なく、実際 じっさい は生物 せいぶつ にとって有利 ゆうり でも不利 ふり でもない中立 ちゅうりつ 的 てき なものが多 おお いが、それが遺伝 いでん 的 てき 浮動 ふどう によって偶然 ぐうぜん 広 ひろ まることでも進化 しんか (中立 ちゅうりつ 進化 しんか )が起 お こると考 かんが え、適応 てきおう 進化 しんか については自然 しぜん 選択 せんたく が原動力 げんどうりょく になると考 かんが える。モーガン も、中立 ちゅうりつ 説 せつ に似 に た考 かんが えを1932年 ねん に提唱 ていしょう したと言 い われている。
中立 ちゅうりつ 説 せつ は現在 げんざい の進化 しんか 学 がく では非常 ひじょう に重要 じゅうよう な位置 いち を占 し める。例 たと えば種 たね 分化 ぶんか の起 お きた時期 じき を調 しら べる分子 ぶんし 時計 とけい はゲノムの自然 しぜん 選択 せんたく が働 はたら いていない部分 ぶぶん に注目 ちゅうもく するため、中立 ちゅうりつ 説 せつ を理論 りろん 的 てき 根拠 こんきょ としている。近年 きんねん 発達 はったつ した分子生物学 ぶんしせいぶつがく のDNA研究 けんきゅう によって、生物 せいぶつ のDNAに刻 きざ まれている遺伝 いでん 情報 じょうほう の類似 るいじ 性 せい をもとに生物 せいぶつ 進化 しんか の系統 けいとう 図 ず を構築 こうちく する研究 けんきゅう が進 すす められている(分子 ぶんし 系統 けいとう 進化 しんか 学 がく )。
20世紀 せいき 後半 こうはん
遺伝子 いでんし 中心 ちゅうしん の視点 してん
1960年代 ねんだい 中頃 なかごろ に、ジョージ・ウィリアムス は生物 せいぶつ の適応 てきおう を「種 たね の存続 そんぞく のため」と説明 せつめい する立場 たちば を批判 ひはん し、群 ぐん 選択 せんたく 論争 ろんそう を引 ひ き起 お こした。そのような説明 せつめい は進化 しんか における遺伝子 いでんし 中心 ちゅうしん の視点 してん によって置 お き換 か えられ、W.D.ハミルトン 、G.R.プライス 、ジョン・メイナード=スミス らの血縁 けつえん 選択 せんたく 説 せつ に集約 しゅうやく された。この視点 してん はリチャード・ドーキンス の1976年 ねん の影響 えいきょう 力 りょく のある著書 ちょしょ 『利己 りこ 的 てき な遺伝子 いでんし 』で概説 がいせつ された。古典 こてん 的 てき な群 ぐん 選択 せんたく は非常 ひじょう に制限 せいげん された状況 じょうきょう でしか起 お きえないことが示 しめ されたが、その後 ご でより洗練 せんれん された新 あたら しいバージョン(マルチレベル選択 せんたく 説 せつ )が提案 ていあん された。
1973年 ねん にリー・ヴァン・ヴェーレン はルイス・キャロルから引用 いんよう した「赤 あか の女王 じょおう 仮説 かせつ 」を提案 ていあん した。ある種 しゅ の生物 せいぶつ が進化 しんか すれば、それに関 かか わる他 ほか の生物 せいぶつ (特 とく に捕食 ほしょく 者 しゃ や被 ひ 食 しょく 者 しゃ )も対抗 たいこう 適応 てきおう を発達 はったつ させ進化 しんか を続 つづ ける。このような視点 してん は進化 しんか 的 てき 軍拡 ぐんかく 競走 きょうそう と呼 よ ばれる。ハミルトン、ウィリアムズらはこの考 かんが えが有性 ゆうせい 生殖 せいしょく の進化 しんか にも応用 おうよう できるかも知 し れないと考 かんが えた。有性 ゆうせい 生殖 せいしょく によってもたらされる遺伝 いでん 的 てき 多様 たよう 性 せい は、生活 せいかつ 環 たまき が短 みじか く急速 きゅうそく に進化 しんか する寄生 きせい 生物 せいぶつ への抵抗 ていこう を維持 いじ することができ、そのために遺伝子 いでんし 中心 ちゅうしん の視点 してん からは無駄 むだ が多 おお いはずの有性 ゆうせい 生殖 せいしょく は一般 いっぱん 的 てき になりうる。遺伝子 いでんし 中心 ちゅうしん の視点 してん はダーウィンの性 せい 選択 せんたく 説 せつ を甦 よみがえ らせ、近年 きんねん では雌雄 しゆう 間 あいだ の対立 たいりつ 、親子 おやこ の対立 たいりつ 、イントラゲノミックコンフリクトに焦点 しょうてん が当 あ てられている。
社会 しゃかい 生物 せいぶつ 学 がく
W.D.ハミルトンの血縁 けつえん 選択 せんたく の研究 けんきゅう は社会 しゃかい 生物 せいぶつ 学 がく (行動 こうどう 生態 せいたい 学 がく )の登場 とうじょう に寄与 きよ した。利他 りた 的 てき 行動 こうどう の存在 そんざい はダーウィンの時代 じだい から進化 しんか 理論 りろん からは説明 せつめい が困難 こんなん であると考 かんが えられていた。1964年 ねん の論文 ろんぶん はこの問題 もんだい の解決 かいけつ を大 おお きく前進 ぜんしん させた。昆虫 こんちゅう における真 ま 社会 しゃかい 性 せい (繁殖 はんしょく しない個体 こたい の存在 そんざい )だけでなく、様々 さまざま な利他 りた 的 てき 行動 こうどう を血縁 けつえん 選択 せんたく 説 せつ は説明 せつめい できる。利他 りた 的 てき 行動 こうどう を説明 せつめい する理論 りろん はさらに続 つづ いた。そのうちいくつかは(進化 しんか 的 てき に安定 あんてい な戦略 せんりゃく 、互恵 ごけい 的 てき 利他 りた 主義 しゅぎ )はゲーム理論 りろん に由来 ゆらい する。1975年 ねん にE.O.ウィルソン は影響 えいきょう 力 りょく があり、非常 ひじょう に論争 ろんそう 的 てき でもある著作 ちょさく 『社会 しゃかい 生物 せいぶつ 学 がく :新 あら たなる総合 そうごう 』を出版 しゅっぱん した。その本 ほん でウィルソンは進化 しんか 理論 りろん が人間 にんげん も含 ふく む多 おお くの動物 どうぶつ の利他 りた 的 てき な振 ふ る舞 ま いを説明 せつめい できると論 ろん じた。スティーヴン・ジェイ・グールド 、リチャード・ルウォンティン を含 ふく む批判 ひはん 者 しゃ は、社会 しゃかい 生物 せいぶつ 学 がく が人間 にんげん の行動 こうどう に関 かん する遺伝 いでん 的 てき 要因 よういん の影響 えいきょう を誇張 こちょう していると批判 ひはん した。またその主張 しゅちょう はイデオロギー的 てき 偏見 へんけん を含 ふく んでおり科学 かがく ではないと批判 ひはん した。そのような批判 ひはん にもかかわらず社会 しゃかい 生物 せいぶつ 学 がく の研究 けんきゅう は続 つづ いた。1980年代 ねんだい 以降 いこう のダーウィン・メダル とクラフォード賞 しょう 生物 せいぶつ 科学 かがく 部門 ぶもん の受賞 じゅしょう 者 しゃ の半分 はんぶん 以上 いじょう がこの分野 ぶんや の研究 けんきゅう 者 しゃ で占 し められる。
この分野 ぶんや の研究 けんきゅう 者 しゃ の一部 いちぶ は行動 こうどう に関 かか わる遺伝子 いでんし へ目 め を向 む け、分子生物学 ぶんしせいぶつがく との交流 こうりゅう を促 うなが した。その結果 けっか 、生物 せいぶつ の社会 しゃかい 行動 こうどう の分子 ぶんし 的 てき 基盤 きばん を解明 かいめい する分子 ぶんし 生態 せいたい 学 がく という新 あら たな分野 ぶんや の誕生 たんじょう に繋 つな がった。
遺伝子 いでんし の水平 すいへい 遺伝 いでん
細菌 さいきん 学 がく は初期 しょき の進化 しんか 理論 りろん では無視 むし されていた。これは細菌 さいきん 、特 とく に原核 げんかく 生物 せいぶつ での形態 けいたい 的 てき な特徴 とくちょう の欠如 けつじょ と、種 たね 概念 がいねん が十分 じゅうぶん に整 ととの っていなかったことが原因 げんいん であった。現在 げんざい 、進化 しんか の研究 けんきゅう 者 しゃ はよりすぐれた微生物 びせいぶつ 生理学 せいりがく と微生物 びせいぶつ 生態 せいたい 学 がく の理解 りかい を持 も っている。これらの研究 けんきゅう で微生物 びせいぶつ の完全 かんぜん に予想 よそう とは異 こと なるレベルの多様 たよう 性 せい があきらかになっており、それは微生物 びせいぶつ が地球 ちきゅう の生命 せいめい として支配 しはい 的 てき であることを示 しめ している。微生物 びせいぶつ 進化 しんか の研究 けんきゅう で特 とく に重要 じゅうよう な発見 はっけん は1959年 ねん に日本 にっぽん で見 み つかった遺伝子 いでんし の水平 すいへい 伝播 でんぱ である。バクテリアの異 こと なる種 たね 間 あいだ で行 おこな われる遺伝 いでん 物質 ぶっしつ の伝達 でんたつ は薬剤 やくざい 耐 たい 性 せい の進化 しんか の研究 けんきゅう において重要 じゅうよう な役割 やくわり を果 は たした。近年 きんねん ではゲノムに関 かん する理解 りかい が進展 しんてん し、遺伝 いでん 物質 ぶっしつ の水平 すいへい 伝播 でんぱ がすべての生物 せいぶつ の進化 しんか で重要 じゅうよう な役割 やくわり を果 は たしたことが示唆 しさ されている。特 とく に、細胞 さいぼう 小 しょう 器官 きかん の起源 きげん を説明 せつめい する細胞 さいぼう 内 ない 共生 きょうせい 説 せつ の一部 いちぶ として遺伝子 いでんし の水平 すいへい 伝播 でんぱ は真 ま 核 かく 生物 せいぶつ においても重要 じゅうよう なステップであった。
進化 しんか 発生 はっせい 生物 せいぶつ 学 がく
1980年代 ねんだい と1990年代 ねんだい には総合 そうごう 説 せつ は詳細 しょうさい な研究 けんきゅう に注目 ちゅうもく した。進化 しんか 生物 せいぶつ 学 がく への構造 こうぞう 主義 しゅぎ 的 てき な視点 してん はスチュアート・カウフマンやブライアン・グッドウィン のような生物 せいぶつ 学者 がくしゃ からもたらされた。彼 かれ らはサイバネティクス と一般 いっぱん システム理論 りろん からアイディアを取 と り入 い れて、発生 はっせい 過程 かてい における自己 じこ 組織 そしき 化 か 機構 きこう を強調 きょうちょう し、進化 しんか にも直接 ちょくせつ 作用 さよう する要因 よういん であると述 の べた。スティーヴン・ジェイ・グールドは発達 はったつ 過程 かてい における器官 きかん ごとの成長 せいちょう 率 りつ の相対 そうたい 的 てき な差 さ が、進化 しんか における新 あたら しいボディプランの起源 きげん となるのではないかと考 かんが え、初期 しょき の進化 しんか 理論 りろん の概念 がいねん であったヘテロクロニーを甦 よみがえ らせた。遺伝 いでん 学者 がくしゃ リチャード・ルウォンティンはある生物 せいぶつ の適応 てきおう が最初 さいしょ から最後 さいご まで同 おな じ選択 せんたく 圧 あつ の産物 さんぶつ として誕生 たんじょう するのではなく、他 た の適応 てきおう の偶然 ぐうぜん の産物 さんぶつ として誕生 たんじょう することがあるのではないかと考 かんが え1979年 ねん に影響 えいきょう 力 りょく のある論文 ろんぶん を書 か いた。そのような構造 こうぞう の付帯 ふたい 的 てき な変化 へんか を彼 かれ らはスパンドレルと呼 よ んだ。のちにグールドとヴルバはそのような過程 かてい で得 え られる新 あたら しい適応 てきおう 構造 こうぞう を外 そと 適応 てきおう と呼 よ んだ。
発生 はっせい に関 かん する分子 ぶんし 的 てき なデータは1980年代 ねんだい から90年代 ねんだい にかけて急速 きゅうそく に蓄積 ちくせき された。それは動物 どうぶつ の形態 けいたい 的 てき 多様 たよう 性 せい が動物 どうぶつ 種 しゅ ごとに異 こと なったタンパク質 たんぱくしつ によってもたらされるのではなく、多 おお くの動物 どうぶつ 種 しゅ で共通 きょうつう したわずかな一連 いちれん のタンパク質 たんぱくしつ によって起 お こされていることを明 あき らかにした。それらのタンパク質 たんぱくしつ は発生 はっせい 的 てき な「ツールキット」として知 し られるようになった。このような視点 してん が系統 けいとう 発生 はっせい 学 がく 、古 こ 生物 せいぶつ 学 がく 、比較 ひかく 発生 はっせい 学 がく に影響 えいきょう を与 あた え、進化 しんか 発生 はっせい 生物 せいぶつ 学 がく (エボ-デボ)と言 い う新 あら たな分野 ぶんや を生 う み出 だ した。この分野 ぶんや は現在 げんざい 表現 ひょうげん 型 がた と発達 はったつ 的 てき な可塑 かそ 性 せい に注目 ちゅうもく している。
例 たと えばカンブリア爆発 ばくはつ の基礎 きそ 的 てき な動物 どうぶつ のボディプランの登場 とうじょう は、部分 ぶぶん 的 てき には環境 かんきょう の変化 へんか に伴 ともな って起 お きた細胞 さいぼう 同士 どうし の固有 こゆう の組織 そしき 化 か が原因 げんいん で、そのあとの自然 しぜん 選択 せんたく によって定着 ていちゃく したかも知 し れないと示唆 しさ された。このようなアイディアは複数 ふくすう の著者 ちょしゃ によって論文 ろんぶん 集 しゅう 『Origination of Organismal Form』として出版 しゅっぱん された。
進化 しんか 理論 りろん の発展 はってん
ダーウィンが提案 ていあん した進化 しんか 理論 りろん の中 なか で、共通 きょうつう 祖先 そせん からの進化 しんか 、集団 しゅうだん 内 ない の変異 へんい の変化 へんか によって生 しょう じる進化 しんか 、種 たね 分化 ぶんか と分岐 ぶんき による生物 せいぶつ 多様 たよう 性 せい 、適応 てきおう 進化 しんか における自然 しぜん 選択 せんたく の役割 やくわり は現在 げんざい の進化 しんか 学 がく においても揺 ゆ るぎのない枠組 わくぐ みとなっている。一方 いっぽう 20世紀 せいき 中盤 ちゅうばん に進化 しんか 学 がく に加 くわ わった中立 ちゅうりつ 説 せつ は分岐 ぶんき 系統 けいとう 学 がく に新 あら たな証拠 しょうこ を提供 ていきょう し、自然 しぜん 選択 せんたく の働 はたら かないランダムな進化 しんか 過程 かてい のメカニズムを明 あき らかにしようとしている。
現在 げんざい 、集団 しゅうだん 遺伝 いでん 学 がく 、生態 せいたい 学 がく 、生物 せいぶつ 地理 ちり 学 がく 、古 こ 生物 せいぶつ 学 がく などの総合 そうごう 的 てき な分野 ぶんや として発展 はってん してきた進化 しんか 学 がく は、さらに、分子生物学 ぶんしせいぶつがく 、進化 しんか ゲノム学 がく (Evolutionary Genomics)、進化 しんか 医学 いがく など、様々 さまざま な分野 ぶんや の進展 しんてん を取 と り込 こ みながら、確立 かくりつ された科学 かがく の一 いち 分野 ぶんや として発展 はってん している。近年 きんねん 、発表 はっぴょう される様々 さまざま な報告 ほうこく や機構 きこう の提唱 ていしょう などは、基本 きほん 的 てき にダーウィンの考 かんが えた大 おお まかな進化 しんか の枠組 わくぐ みを基盤 きばん として、さらに発展 はってん させる方向 ほうこう に進 すす んでいる。
しかし、一部 いちぶ の学者 がくしゃ はダーウィニズムやネオダーウィニズムを原理 げんり 主義 しゅぎ であると考 かんが えており、科学 かがく ではないと言 い う見解 けんかい がある。[ 8]
「進化 しんか 」「evolution」という語 かたり
英語 えいご の evolution という語 かたり は元来 がんらい ラテン語 らてんご 起原 きげん で、内側 うちがわ に巻 ま き込 こ んでおいたものを外側 そとがわ に展開 てんかい することを意味 いみ しており、現在 げんざい でも「展開 てんかい 」の意味 いみ で使 つか われる。最初 さいしょ にこの概念 がいねん が生物 せいぶつ 学 がく に援用 えんよう されたのは、発生 はっせい 学 がく の前 ぜん 成 なり 説 せつ においてであり、個体 こたい 発生 はっせい に際 さい して「あらかじめ用意 ようい された個体 こたい の構造 こうぞう が展開 てんかい 生成 せいせい する」プロセスを指 さ していた。今日 きょう の日本語 にほんご で「進化 しんか 」と翻訳 ほんやく されるような系統 けいとう 発生 はっせい のプロセスを指 さ す語 かたり としての evolution は、個体 こたい 発生 はっせい のこの概念 がいねん を系統 けいとう 発生 はっせい に対 たい して援用 えんよう したものである。みずからの進化 しんか 論 ろん において定 さだ められた方向 ほうこう への「進歩 しんぽ 」を意図 いと していなかったチャールズ・ダーウィンは、当初 とうしょ かれ自身 じしん はこの語 かたり を積極 せっきょく 的 てき に採用 さいよう していない。
19世紀 せいき 頃 ころ は、進化 しんか は進歩 しんぽ と同義 どうぎ であった。その頃 ころ のヨーロッパ ではフランス革命 かくめい や啓蒙 けいもう 思想 しそう などの普及 ふきゅう によって、人間 にんげん 社会 しゃかい が発展 はってん のさなかであり、多 おお くの人 ひと がそれが生物 せいぶつ の進化 しんか と同 おな じものであると主張 しゅちょう していた。それは神 かみ による創造 そうぞう の原点 げんてん こそが最高 さいこう の状態 じょうたい で、歴史 れきし のプロセスはそこからの堕落 だらく による神 かみ からの離反 りはん であるととらえるキリスト教 きりすときょう 的 てき 生命 せいめい 史観 しかん のもたらす不安 ふあん からの救済 きゅうさい 思想 しそう でもあった。
進化 しんか 論 ろん は優生 ゆうせい 学 がく に利用 りよう されてきた。進化 しんか 論 ろん を引用 いんよう して「最 もっと も強 つよ い者 もの でも最 もっと も賢 かしこ い者 もの でもなく、変化 へんか できる者 もの が優 すぐ れている」というような俗説 ぞくせつ が広 ひろ められているが、実際 じっさい には1963年 ねん にアメリカの経営 けいえい 学者 がくしゃ レオン・メギンソンが、ダーウィンの『種 たね の起源 きげん 』を読 よ んだ感想 かんそう を論文 ろんぶん の中 なか に書 か いたものである[ 9] 。
20世紀 せいき 後半 こうはん には、社会 しゃかい 的 てき 、文化 ぶんか 的 てき 変化 へんか が進歩 しんぽ と厳密 げんみつ に同義 どうぎ であるという考 かんが え方 かた は多 おお くの社会 しゃかい 科学 かがく 者 しゃ から受 う け入 い れられないものとなっている。また現在 げんざい では一般 いっぱん 的 てき に、ダーウィンの進化 しんか の説明 せつめい の解釈 かいしゃく についても、生物 せいぶつ の変化 へんか は進歩 しんぽ とは異 こと なるものとして捉 とら えられている。
19世紀 せいき 以降 いこう は、進化 しんか と言 い った時 とき は、社会 しゃかい や文化 ぶんか のそれでなく、生物 せいぶつ の進化 しんか を指 さ す。この生物 せいぶつ の進化 しんか とは、ある生物 せいぶつ の集団 しゅうだん がある世代 せだい から次 つぎ の世代 せだい に代 か わるときのアリル頻度 ひんど の変化 へんか を意味 いみ する。それは、簡単 かんたん に言 い えば、すなわちチャールズ・ダーウィンの自然 しぜん 選択 せんたく のアイデアに基 もと づく種 たね の進化 しんか 論 ろん そのものでもある。「進化 しんか 」は、単 たん に事実 じじつ を記述 きじゅつ する語 かたり に過 す ぎないのであって、それ自体 じたい が価値 かち 判断 はんだん を含 ふく むわけでなく、その意味 いみ で「進歩 しんぽ 」とは異 こと なるのである。にもかかわらず、進化 しんか と進歩 しんぽ の混同 こんどう 、事実 じじつ と規範 きはん の混同 こんどう はしばしば見 み られ、後述 こうじゅつ するソーシャル・ダーウィニズムもその誤解 ごかい の産物 さんぶつ であった。
現在 げんざい の日本 にっぽん において、一般 いっぱん 的 てき に「進化 しんか 」という言葉 ことば が使 つか われている場合 ばあい 、学術 がくじゅつ 的 てき に厳密 げんみつ な「進化 しんか 」ではなく「進歩 しんぽ ・グレードアップ」というニュアンスで用 もち いられ、本来 ほんらい の「進化 しんか 」もそうであるかのように誤解 ごかい されている。俗流 ぞくりゅう 進化 しんか 論 ろん が広 ひろ まっていることから⽇本⼈間⾏動進化 しんか 学会 がっかい は2020年 ねん に「『⾃然の状態 じょうたい 』を、『あるべき状態 じょうたい だ』もしくは『望 のぞ ましい状態 じょうたい だ』とする⾃然主義 しゅぎ 的 てき 誤謬 ごびゅう 」とする声明 せいめい を出 だ した[ 10] 。
進化 しんか 論 ろん と自然 しぜん 科学 かがく
情報 じょうほう 科学 かがく ・情報 じょうほう 工学 こうがく ・数学 すうがく ・電子 でんし 工学 こうがく
医学 いがく ・精神 せいしん 医学 いがく
地球 ちきゅう 科学 かがく ・地 ち 史学 しがく
進化 しんか 論 ろん と人文 じんぶん 社会 しゃかい 科学 かがく
社会 しゃかい 進化 しんか 論 ろん
19世紀 せいき 後半 こうはん にハーバート・スペンサーは自然 しぜん 選択 せんたく 説 せつ を社会 しゃかい に適用 てきよう して、最適 さいてき 者 しゃ 生存 せいぞん によって社会 しゃかい は理想 りそう 的 てき な状態 じょうたい へと発達 はったつ していくという社会 しゃかい 進化 しんか 論 ろん を唱 とな え、ヘッケル は国家 こっか 間 あいだ の競争 きょうそう により、社会 しゃかい が発達 はったつ していくという社会 しゃかい 進化 しんか 論 ろん を唱 とな えた。スペンサーは生物 せいぶつ は下等 かとう から高等 こうとう へと進歩 しんぽ していくというラマルクを高 たか く評価 ひょうか していたと言 い われており、進化 しんか に目的 もくてき や方向 ほうこう 性 せい はないと考 かんが えるダーウィニズム ではないと思 おも われる。その主張 しゅちょう は優生 ゆうせい 学 がく とも異 こと なる。その例 れい によくあげられるナチズム は進化 しんか 論 ろん の原理 げんり 原則 げんそく とは対立 たいりつ しており、関連付 かんれんづ けるのは不可能 ふかのう である。
以下 いか のナチズムの主張 しゅちょう は進化 しんか 論 ろん とは全 まった く相容 あいい れない。
人為 じんい 的 てき に他 た 民族 みんぞく を絶滅 ぜつめつ し、固定 こてい 化 か する→分化 ぶんか 、多様 たよう 性 せい や変異 へんい の否定 ひてい
優等 ゆうとう 人種 じんしゅ であるアーリア人 じん と劣等 れっとう 人種 じんしゅ であるユダヤ人 じん の生殖 せいしょく では前者 ぜんしゃ の形質 けいしつ が後者 こうしゃ に劣 おと ってしまう→適者生存 てきしゃせいぞん の否定 ひてい
進化 しんか の原動力 げんどうりょく は意志 いし →適応 てきおう や順応 じゅんのう などの否定 ひてい
20世紀 せいき 後半 こうはん には、エドワード・オズボーン・ウィルソン がその著作 ちょさく 『社会 しゃかい 生物 せいぶつ 学 がく 』(1975)のなかで、進化 しんか 論 ろん 的 てき 社会 しゃかい 生物 せいぶつ 学 がく が将来 しょうらい 、人間 にんげん についての社会 しゃかい 科学 かがく に大 おお きな影響 えいきょう を及 およ ぼすだろうという展望 てんぼう を述 の べて、大 だい 論争 ろんそう をひきおこした。その初期 しょき の批判 ひはん のなかには、ウィルソンや社会 しゃかい 生物 せいぶつ 学 がく の主張 しゅちょう をナチズムにむすびつけたものもみられたが、論争 ろんそう を通 つう じて、そうした批判 ひはん は誤解 ごかい にもとづくものであることが次第 しだい にあきらかになった。この論争 ろんそう の経緯 けいい については、社会 しゃかい 学者 がくしゃ ウリカ・セーゲルストローレがその著作 ちょさく 『真理 しんり の擁護 ようご 者 しゃ たち』(邦訳 ほうやく 『社会 しゃかい 生物 せいぶつ 学 がく 論争 ろんそう 史 し 』)のなかで詳細 しょうさい かつバランスよくまとめている。
進化 しんか 論 ろん と宗教 しゅうきょう
創造 そうぞう 論 ろん は聖書 せいしょ やクルアーン といった経典 きょうてん 内 ない の創造 そうぞう 主 ぬし による創造 そうぞう を主張 しゅちょう する。創造 そうぞう 論 ろん については多 おお くの説 せつ があるため、項目 こうもく 参照 さんしょう のこと。
「生物 せいぶつ は進化 しんか する」というテーゼは現在 げんざい では学会 がっかい で科学 かがく 的 てき 仮説 かせつ として受 う け入 い れられているが、宗教 しゅうきょう や国 くに によっては信仰 しんこう 的 てき 、社会 しゃかい 的 てき に受 う け入 い れられているとは限 かぎ らず、アメリカには進化 しんか 論 ろん 裁判 さいばん の例 れい がある。アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく の南部 なんぶ などいくつかの州 しゅう では、プロテスタント の一部 いちぶ に根強 ねづよ い聖書 せいしょ 主義 しゅぎ の立場 たちば から進化 しんか 論 ろん が否定 ひてい されている。ケンタッキー州 しゅう には、進化 しんか 論 ろん を否定 ひてい する創造 そうぞう 博物館 はくぶつかん が建 た てられている。
カトリック教会 きょうかい では1996年 ねん 10月にローマ教皇 きょうこう ヨハネ・パウロ2世 せい が、「進化 しんか 論 ろん は仮説 かせつ 以上 いじょう のもので、肉体 にくたい の進化 しんか 論 ろん は認 みと めるが、人間 にんげん の魂 たましい は神 かみ に創造 そうぞう されたもの」だと述 の べた。つまり、人間 にんげん の精神 せいしん 活動 かつどう の源泉 げんせん たる魂 たましい の出現 しゅつげん は、進化 しんか 論 ろん 的 てき 過程 かてい とは関係 かんけい ないとする限定 げんてい つきで、進化 しんか 論 ろん をキリスト教 きょう と矛盾 むじゅん しないものと認 みと めた。1950年 ねん の回 かい 勅 みことのり 「フマニ・ゲネリス 」(en:Humani generis )でも、生物 せいぶつ としての肉体 にくたい の起源 きげん の研究 けんきゅう である限 かぎ りは許容 きょよう されているが、この回 かい 勅 みことのり の時点 じてん では、進化 しんか 論 ろん は未 み 証明 しょうめい の学説 がくせつ とされ否定 ひてい 的 てき に扱 あつか われており、進化 しんか 論 ろん を既 すで に実証 じっしょう されたものとして扱 あつか う立場 たちば が批判 ひはん されている[ 11] [ 12] 。1958年 ねん に刊行 かんこう されたフランシスコ会 かい 訳 やく 『創世 そうせい 記 き 』の解説 かいせつ では、進化 しんか 論 ろん が誤 あやま りであることが明 あき らかになった、という記述 きじゅつ がなされている[ 13] 。その後 ご ヨハネ・パウロ2世 せい の次 つぎ の教皇 きょうこう ベネディクト16世 せい は「進化 しんか 論 ろん は全 すべ ての問 と いに答 こた えていない」と否定 ひてい 的 てき な認識 にんしき を示 しめ した。しかしさらに次 つぎ の教皇 きょうこう フランシスコは「神 かみ は、自然 しぜん の法則 ほうそく に従 したが って進化 しんか するように生物 せいぶつ を創造 そうぞう した」と進化 しんか 論 ろん は創造 そうぞう 論 ろん と矛盾 むじゅん しない見解 けんかい を示 しめ した[ 14] 。
近年 きんねん アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく のいくつかの州 しゅう において、創造 そうぞう 論 ろん が明確 めいかく に学校 がっこう 教育 きょういく に持 も ち込 こ まれようとしている。1980年代 ねんだい には裁判 さいばん で創造 そうぞう 論 ろん の理科 りか 教育 きょういく への持 も ち込 こ みを禁 きん ずる判決 はんけつ が出 だ された。そのために、「神 かみ による創造 そうぞう を科学 かがく 的 てき に解明 かいめい する」運動 うんどう が創造 そうぞう 科学 かがく として湧 わ き上 あ がった。しかし創造 そうぞう 科学 かがく も創造 そうぞう 論 ろん と同様 どうよう に科学 かがく ではなく宗教 しゅうきょう であるという連邦 れんぽう 裁判所 さいばんしょ の判決 はんけつ が下 くだ された。
米 べい 世論 せろん 調査 ちょうさ 企業 きぎょう ギャラップ(Gallup)が2010年 ねん 2月 がつ 11日 にち に発表 はっぴょう した調査 ちょうさ 結果 けっか によると、進化 しんか 論 ろん を信 しん じていると答 こた えた米国 べいこく 人 じん は40%であり、過去 かこ 10年間 ねんかん に行 おこな われた調査 ちょうさ においても、44-47%の人 ひと が、神 かみ が過去 かこ 1万 まん 年 ねん ほどの間 あいだ に、人間 にんげん を現在 げんざい のような形 かたち で創造 そうぞう したと信 しん じていると答 こた えている。
その後 ご 、創造 そうぞう 科学 かがく 運動 うんどう は、宇宙 うちゅう や生命 せいめい を設計 せっけい し創造 そうぞう した存在 そんざい を認 みと めるインテリジェント・デザイン 説 せつ (ID説 せつ )を公 おおやけ 教育 きょういく に取 と り入 い れようとする動 うご きがある。インテリジェント・デザインでは、極 きわ めて精妙 せいみょう な生物 せいぶつ の細胞 さいぼう や器官 きかん のしくみを例 れい に挙 あ げて、「複雑 ふくざつ な細胞 さいぼう からなる生体 せいたい 組織 そしき が進化 しんか によってひとりでにできあがったとは考 かんが えられない。従 したが って創造 そうぞう に際 さい しては『高度 こうど な知性 ちせい 』によるデザインが必要 ひつよう であった」といった主張 しゅちょう がなされている。また創造 そうぞう 科学 かがく と同様 どうよう に創造 そうぞう 論 ろん に科学 かがく 的 てき 根拠 こんきょ を持 も たせようと試 こころ みているが、運動 うんどう の中心 ちゅうしん は「くさび戦術 せんじゅつ 」と呼 よ ばれるものである。これはインテリジェント・デザインの科学 かがく 的 てき 妥当 だとう 性 せい を立証 りっしょう するのではなく、進化 しんか 論 ろん の不十分 ふじゅうぶん な点 てん 、まだ説明 せつめい できない生物 せいぶつ の現象 げんしょう を強調 きょうちょう する。ジョージ・W・ブッシュ は「平等 びょうどう のために進化 しんか 論 ろん のみならずインテリジェント・デザインも学校 がっこう の理科 りか の時間 じかん に教 おし えるべきだ」と述 の べたが、翌日 よくじつ 報道 ほうどう 官 かん が撤回 てっかい した。2005年 ねん 11月、カンザス州 しゅう 教育 きょういく 委員 いいん 会 かい は多数決 たすうけつ の結果 けっか ID説 せつ の立場 たちば を採 と り、進化 しんか 論 ろん を「問題 もんだい の多 おお い理論 りろん 」として教 おし える科学 かがく 教育 きょういく 基準 きじゅん を採決 さいけつ した。この決定 けってい にあたり、ID説 せつ を支持 しじ する創造 そうぞう 科学 かがく 者 しゃ たちを批判 ひはん するために作 つく られたパロディ「空 そら 飛 と ぶスパゲッティ・モンスター教団 きょうだん 」が登場 とうじょう し、ネット世論 せろん を大 おお いに沸 わ かせた。インテリジェント・デザインはペンシルベニア州 しゅう ドーバー学区 がっく における裁判 さいばん で、宗教 しゅうきょう であり科学 かがく ではないと指摘 してき された。
保守 ほしゅ 的 てき なイスラム教 いすらむきょう でも進化 しんか 論 ろん は否定 ひてい される。イスラーム原理 げんり 主義 しゅぎ の方針 ほうしん をとるアラブ イスラーム学院 がくいん のウェブサイトには進化 しんか 論 ろん を否定 ひてい する文章 ぶんしょう が掲載 けいさい されている[ 15] 。実態 じったい は変態 へんたい に近 ちか いと言 い えるポケットモンスター の進化 しんか もハラーム 扱 あつか いを受 う け、カードを交換 こうかん して収集 しゅうしゅう するポケモンカードゲームの遊 あそ び方 かた がイスラムで禁 きん じられる賭博 とばく にあたるとされたことも併 あわ せて、保守 ほしゅ 的 てき なイスラム諸国 しょこく ではポケモンのゲームやグッズの販売 はんばい 制限 せいげん が行 おこな われるに至 いた った。詳 くわ しくはポケットモンスター#関連 かんれん 事件 じけん ・批判 ひはん の「イスラム諸国 しょこく 」の欄 らん を参照 さんしょう 。トルコ のエルドアン政権 せいけん は2017年 ねん 、公立 こうりつ 学校 がっこう の義務 ぎむ 教育 きょういく 課程 かてい で進化 しんか 論 ろん を教 おし えないことを決 き めた。「進化 しんか 論 ろん の理解 りかい には哲学 てつがく 的 てき な素養 そよう が必要 ひつよう で、児童 じどう ・生徒 せいと には難 むずか し過 す ぎる」との理由 りゆう を挙 あ げているが、世俗 せぞく 主義 しゅぎ 者 もの からは批判 ひはん が出 で ている[ 16] 。
なお、イスラム系 けい 新 しん 宗教 しゅうきょう バハイ教 きょう のアブドゥル・バハー も書簡 しょかん の中 なか で進化 しんか 論 ろん を否定 ひてい している[ 17] 。
エホバの証人 しょうにん も明確 めいかく に進化 しんか 論 ろん を否定 ひてい している。
創造 そうぞう 論 ろん においては、生物 せいぶつ の遺伝 いでん による変化 へんか は認 みと められている。たとえば、色 いろ の黒 くろ い人 ひと からは黒 くろ い子供 こども が生 う まれ、背 せ の高 たか い人 ひと の子供 こども は背 せ が高 たか くなることが多 おお いとか、トラ とライオン は共通 きょうつう の先祖 せんぞ を持 も ち、一方 いっぽう は縞 しま のある個体 こたい 群 ぐん に分 わ かれ、一方 いっぽう はたてがみをもつ個体 こたい 群 ぐん に分 わ かれたので、両者 りょうしゃ は姿 すがた が似 に ており、先祖 せんぞ は同 おな じであろうとか、その程度 ていど の考 かんが え方 かた は認 みと めている。(つまり創造 そうぞう 説 せつ を取 と るが、現生 げんなま の生物 せいぶつ 数 すう 百 ひゃく 万 まん 種 しゅ が一 いち 度 ど に創造 そうぞう されたのではなく、ある程度 ていど は共通 きょうつう の先祖 せんぞ にさかのぼりうるとしているのである。エホバの証人 しょうにん は、全 すべ ての陸上 りくじょう 生物 せいぶつ はノア の時代 じだい の大 だい 洪水 こうずい によって全 すべ て滅 ほろ びたと信 しん じており、ノアの箱 はこ 舟 ぶね に乗 の せられた一 ひと つがいずつのみが生 い き残 のこ ったと信 しん じている。その場合 ばあい 、哺乳類 ほにゅうるい だけでも4000種 しゅ 以上 いじょう もある、全 すべ ての陸上 りくじょう 動物 どうぶつ を一 いち 種類 しゅるい ずつ、大型 おおがた タンカー程度 ていど の大 おお きさの箱 はこ 舟 ぶね に乗 の せることなど、物理 ぶつり 的 てき に不可能 ふかのう である。よって、すべての種 たね を一 いち つがいずつ乗 の せたのではなく、ある程度 ていど の共通 きょうつう の先祖 せんぞ にあたる動物 どうぶつ たち数 すう 百 ひゃく 種 しゅ を一 いち つがいずつ乗 の せたのであるとしていて、現生 げんなま 動物 どうぶつ はそれらの子孫 しそん たちであるとしている。ただしその場合 ばあい 、たかだか5000年 ねん のうちに任意 にんい の数 すう 百 ひゃく 種 しゅ 一 いち つがいずつの動物 どうぶつ たちが、現在 げんざい 見 み られるだけの多様 たよう 性 せい と個体 こたい 数 すう に増 ふ えていることになり、むしろ進化 しんか 論 ろん 者 しゃ 以上 いじょう に、速 はや い速度 そくど での種 たね の変化 へんか を支持 しじ している事 こと になる。)ただしそのような変化 へんか は「進化 しんか 」ではないとし、例 たと えば、魚類 ぎょるい が両生類 りょうせいるい に、爬虫類 はちゅうるい が鳥類 ちょうるい になるといった構造 こうぞう 器官 きかん が根本 こんぽん から変 か わるような進化 しんか は否定 ひてい している。(ただし、そのような変化 へんか と進化 しんか の境界 きょうかい 線 せん は明確 めいかく にはしていない。)
法輪 ほうりん 功 こう では、進化 しんか 論 ろん 否定 ひてい が中国共産党 ちゅうごくきょうさんとう 批判 ひはん と結 むす びつけて展開 てんかい されており「大 だい 紀元 きげん 時報 じほう 」には進化 しんか 論 ろん を否定 ひてい する記事 きじ が掲載 けいさい されている[ 18] 。
このようにアブラハム系 けい を中心 ちゅうしん として諸 しょ 宗教 しゅうきょう からの反対 はんたい を受 う けてきた歴史 れきし のある進化 しんか 論 ろん であるが、オカルト やニューエイジ の分野 ぶんや では教義 きょうぎ そのものへの取 と り込 こ みが行 おこな われてきた。意識 いしき や霊的 れいてき 性質 せいしつ (霊 れい 性 せい )の進歩 しんぽ ・向上 こうじょう を「進化 しんか 」と呼称 こしょう する のが代表 だいひょう 的 てき な例 れい である。ルドルフ・シュタイナー [ 19] やブラヴァツキー夫人 ふじん のように、著書 ちょしょ のなかで神秘 しんぴ 学 がく 的 てき な教義 きょうぎ に基 もと づいた人類 じんるい 進化 しんか の過程 かてい を記 しる した人物 じんぶつ もいる[ 20] 。
生物 せいぶつ 学者 がくしゃ の中 なか には敬虔 けいけん な信仰 しんこう を持 も つものもおり、その一部 いちぶ は生物 せいぶつ の進化 しんか を神 かみ の創造 そうぞう の過程 かてい と見 み なしている。この中 なか には遺伝 いでん 学者 がくしゃ テオドシウス・ドブジャンスキー、現代 げんだい では分子生物学 ぶんしせいぶつがく 者 しゃ フランシス・コリンズ などが挙 あ げられる。また他 た の一部 いちぶ は理 り 神 かみ 論 ろん を信 しん じ、生物 せいぶつ の進化 しんか と信仰 しんこう を両立 りょうりつ させている。
進化 しんか 論 ろん の学説 がくせつ ・概念 がいねん
脚注 きゃくちゅう
^ 『岩波 いわなみ 生物 せいぶつ 学 がく 辞典 じてん 第 だい 4版 はん 』
^ リドレー, マーク 著 しる 、松永 まつなが 俊男 としお 、野田 のだ 春彦 はるひこ 、岸 きし 由 ゆかり 二 に 訳 やく 「だれが進化 しんか を疑 うたが うのか」、チャーファス, ジェレミー編 へん 編 へん 『生物 せいぶつ の進化 しんか 最近 さいきん の話題 わだい 』倍 ばい 風 ふう 館 かん 〈ライフサイエンス教養 きょうよう 叢書 そうしょ 9〉、1984年 ねん (原著 げんちょ 1982年 ねん )。ISBN 4563039276 。
^ Ridley, Mark (2004). Evolution . Blackwell Publishing. ISBN 1405103450
^ Barton,Nikolas H., Briggs,Derek E.G. , Eisen,Jonathan A., Goldstein,David B. & Patel,Nipam H. 著 ちょ 、宮田 みやた 隆 たかし 、星山 ほしやま 大介 だいすけ 訳 やく 『進化 しんか 分子 ぶんし ・個体 こたい ・生態 せいたい 系 けい 』メディカル・サイエンス・インターナショナル、2009年 ねん (原著 げんちょ 2007年 ねん )。ISBN 9784895926218 。
^ ドーキンス, リチャード 著 しる 、垂水 たるみ 雄二 ゆうじ 訳 やく 『進化 しんか の存在 そんざい 証明 しょうめい 』早川書房 はやかわしょぼう 、2009年 ねん (原著 げんちょ 2009年 ねん )。ISBN 9784152090904 。
^ 2003年 ねん 11月 がつ 号 ごう 『科学 かがく 』1月 がつ 号 ごう 巻頭 かんとう 言 ごと 石川 いしかわ 統 みつる (放送大学 ほうそうだいがく (生物 せいぶつ 学 がく )・東京 とうきょう 大学 だいがく 名誉 めいよ 教授 きょうじゅ )
^ シリーズ進化 しんか 学 がく ・編者 へんしゃ の言葉 ことば 岩波書店 いわなみしょてん
^ 養老 ようろう 孟司 たけし 、茂木 もき 健一郎 けんいちろう 「原理 げんり 主義 しゅぎ を超 こ えて」『スルメを見 み てイカがわかるか!』角川書店 かどかわしょてん 、2003年 ねん 、p.100-124頁 ぺーじ 。
^ 自民 じみん Twitter炎上 えんじょう で注目 ちゅうもく 「ダーウィンの進化 しんか 論 ろん 」とは:東京 とうきょう 新聞 しんぶん TOKYO Web
^ 「ダーウィンの進化 しんか 論 ろん 」に関 かん して流布 るふ する⾔説についての声明 せいめい ⽇本⼈間⾏動進化 しんか 学会 がっかい
^ 『フマニ・ジェネリス』 (聖 せい ピオ十 じゅう 世 せい 会 かい による訳 わけ 、副題 ふくだい やセクション名 めい の部分 ぶぶん は原文 げんぶん にはない)
^ バチカン公式 こうしき サイト内 ない の英語 えいご 版 ばん テキスト
^ フランシスコ会 かい 訳 やく 聖書 せいしょ 「創世 そうせい 記 き 」(1958年 ねん 12月発行 はっこう )に付 ふ された 創世 そうせい 記 き 解説 かいせつ には「しかしながら、科学 かがく 者 しゃ の考 かんが え出 だ す「歴史 れきし 」は、往々 おうおう にして誤 あやま っていることがある。特 とく に人間 にんげん の進化 しんか については、後 のち に誤 あやま りであることが判明 はんめい した。」とある
^ 「神 かみ は生物 せいぶつ を進化 しんか するよう造 つく った」 現 げん ロ ろ ーマ法王 まほうおう も肯定 こうてい 朝日新聞 あさひしんぶん 2014年 ねん 10月 がつ 30日 にち 12時 じ 32分 ふん
^ イスラームは、進化 しんか 論 ろん についてどう考 かんが えているのでしょうか?
^ “トルコの学校 がっこう 、消 き える「進化 しんか 論 ろん 」 反 はん イスラムだから?世俗 せぞく 派 は は反発 はんぱつ ” . 『朝日新聞 あさひしんぶん 』朝刊 ちょうかん . (2017年 ねん 7月 がつ 24日 にち ). http://www.asahi.com/articles/DA3S13052560.html
^ 第 だい 四 よん 部 ぶ 人間 にんげん の起源 きげん と能力 のうりょく と状態 じょうたい について
^ 【党 とう 文化 ぶんか の解体 かいたい 】第 だい 2章 しょう (16)「進化 しんか 論 ろん の注入 ちゅうにゅう は、無 む 神 かみ 論 ろん と闘争 とうそう 哲学 てつがく の普及 ふきゅう のため」
^ 高橋 たかはし 巖 いわお 訳 わけ 『アカシャ年代 ねんだい 記 き より』国書刊行会 こくしょかんこうかい 、1994年 ねん
^ 大田 おおた 俊寛 としひろ 『現代 げんだい オカルトの根源 こんげん - 霊 れい 性 せい 進化 しんか 論 ろん の光 ひかり と闇 やみ 』筑摩書房 ちくましょぼう 〈ちくま新書 しんしょ 〉、2013年 ねん 。ISBN 978-4-480-06725-8 。
関連 かんれん 項目 こうもく