エメ・ヴィリヨン

エメ・ヴィリヨン Aimé Villion
パリ外国がいこく宣教せんきょう会かい司祭しさい
教会きょうかい	カトリック教会きょうかい パリ外国がいこく宣教せんきょう会かい
聖職せいしょく
司祭しさい叙じょ階かい	1866年ねん5月26日にち
個人こじん情報じょうほう
別名べつめい	アマトス・ビリオン Amatus Villion
出生しゅっしょう	1843年ねん9月2日にち フランス王国おうこく ローヌ県けん チユネー村むら
死去しきょ	1932年ねん4月がつ1日にち 日本にっぽん 大阪おおさか府ふ大阪おおさか市し
国籍こくせき	フランス

アマトス・ビリオン（羅ら：Amatus Villion）ことエメ・ヴィリヨン（仏ふつ：Aimé Villion、1843年ねん9月2日にち - 1932年ねん4月がつ1日にち）はパリ外国がいこく宣教せんきょう会かい所属しょぞくのフランス人じん宣教師せんきょうしである。1868年ねん（明治めいじ元年がんねん）10月がつに来日らいにちし、神戸こうべ・京都きょうと・山口やまぐち・萩はぎ・奈良ならなどで布教ふきょう活動かつどうの傍かたわら、キリシタンの史跡しせきの調査ちょうさ研究けんきゅうに没頭ぼっとうし、記念きねん碑ひを建たてるなど殉教者じゅんきょうしゃの顕彰けんしょうに努つとめた。

主おもな著書ちょしょに『日本にっぽん聖人せいじん 鮮血せんけつ遺書いしょ』、『切支丹きりしたん大名だいみょう史し』、『山口やまぐち公会こうかい史し』、『日本にっぽん仏教ぶっきょう史し』がある。

生涯しょうがい

1843年ねん（天保てんぽう14年ねん）9月がつ2日にち、南みなみフランスのローヌ県けんリヨン近郊きんこうのチユネー村むらにて生うまれる。実家じっかはナポレオン1世せい幕僚ばくりょうの名門めいもん。父親ちちおやは裁判官さいばんかんを勤つとめ、姉あねと4人にん家族かぞく。4歳さいのとき母親ははおやが死亡しぼうし、家族かぞくはリヨンに移うつり住すんだ。

リヨンの聖ひじりヨハネ小学校しょうがっこうを卒業そつぎょう後ご、パリの聖せいスルピス神学校しんがっこうに学まなび、1866年ねん（慶応けいおう2年ねん）5月がつ26日にちに司祭しさい叙じょ階かいされ、同年どうねん6月がつ19日にち、パリ外国がいこく宣教せんきょう会かい海外かいがい派遣はけん宣教師せんきょうしとしてマルセイユ港みなとを出港しゅっこうし、香港ほんこんを経へて1868年ねん（明治めいじ元年がんねん）10月がつ、長崎ながさきに到着とうちゃくした。 しかし、明治めいじ政府せいふのキリスト教きりすときょう禁教きんきょう政策せいさくのため、1870年ねん（明治めいじ3年ねん）には大浦おおうら天主堂てんしゅどうに監禁かんきんされ、信徒しんと発見はっけん以降いこう、明治めいじ政府せいふの迫害はくがいや弾圧だんあつ（浦上うらかみ四よん番ばん崩くずれ）を受うけていた3000人にん以上いじょうの信者しんじゃ達いたるが、名古屋なごや・金沢かなざわ・萩はぎ・津和野つわのなどへ流刑りゅうけいされていくのを見送みおくった。

1871年ねん（明治めいじ4年ねん）11月24日にち、24歳さいの時ときに神戸こうべに入はいり、中ちゅう山手やまてカトリック教会きょうかい第だい2代だい司祭しさいとなる。1875年ねん（明治めいじ8年ねん）、関西かんさい地方ちほうに飢饉ききんが起おこり、極貧ごくひんのため捨すて子ごが続出ぞくしゅつする。「キリスト教きょうの神父しんぷが捨すて子ごの面倒めんどうを見みてくれる」という噂うわさが広ひろがり、教会きょうかいの門前もんぜんには毎日まいにちのように子供こどもが捨すてられた。ヴィリヨンは大量たいりょうの捨すて子ごに対処たいしょ出来できず、横浜よこはまのサンモール修道しゅうどう会かい（現在げんざいの幼おさなきイエス会かい）の修道しゅうどう女おんなに世話せわを頼たのみ、約やく10か月げつの間あいだに65人にんの子供こどもたちを横浜よこはまへ送おくった。さらに神戸こうべにも修道しゅうどう女おんなを派遣はけんするようにベルナール・プティジャンに要請ようせいし、1877年ねん（明治めいじ10年ねん）7月がつ9日にち、ショファイユの幼おさなきイエズス修道しゅうどう会かいの4人にんの修道しゅうどう女おんなが来日らいにちした。

神戸こうべで7年間ねんかん過すごしたのち、1879年ねん（明治めいじ12年ねん）、ジェル・オーグスト・シャトロン神父しんぷを後任こうにんとして、京都きょうとに入はいる。京都きょうとでは日本人にっぽんじんの心理しんりを知しるため、知ち恩おん院いんに通かよい仏教ぶっきょうを研究けんきゅうしたり、フランス語ふらんすご塾じゅくを開ひらいて青年せいねんにフランス語ふらんすごを教おしえたりしていた。この塾じゅくの生徒せいとには、渋沢しぶさわ栄一えいいち、稲いね畑はた勝太郎かつたろう、林はやし市蔵いちぞうなどがいた。またこの頃ころ、東京とうきょうのフランス公使館こうしかんの隣となりに開ひらかれた和かず仏ふつ学校がっこうで教おしえた事こともあり、その時ときの生徒せいとの中なかには西園寺さいおんじ公望きんもち、原はら敬たかし、松岡まつおか康かん毅あつしなどがいた。ヴィリヨンは京都きょうとに教会きょうかいを建たてようと尽力じんりょくし、1890年ねん（明治めいじ23年ねん）5月がつ1日にちに聖きよしフランシスコ・ザベリオ記念きねん天主堂てんしゅどう（現在げんざいの河原町かわらまち教会きょうかい）が完成かんせいした。

聖せいフランシスコ・ザベリオ記念きねん聖堂せいどう建設けんせつの建設けんせつ用地ようちを購入こうにゅうし、聖堂せいどう建設けんせつ工事こうじがいよいよ着工ちゃっこうされる直前ちょくぜんの1889年ねん（明治めいじ22年ねん）2月がつ、突然とつぜん、山口やまぐちへ転任てんにんを命めいじられ、山口やまぐち教会きょうかいの主任しゅにん司祭しさいとなった。この時期じきに、萩はぎ・津和野つわのの殉教者じゅんきょうしゃの調査ちょうさへ何なん度ども出でかけており、6年ねん後ごの1895年ねん（明治めいじ28年ねん）11月に山口やまぐちの教会きょうかいを他たの若手わかて神父しんぷに任まかせて萩はぎへ転任てんにんした。山口やまぐちでは中原なかはら中也ちゅうやの養やしなえ祖父そふが信者しんじゃであったので、中原なかはら家かとの交流こうりゅうもあった。萩はぎでの布教ふきょう活動かつどうの傍かたわら、キリシタンの史跡しせきを調査ちょうさ研究けんきゅうし、1891年ねん（明治めいじ24年ねん）8月がつには津和野つわのに殉教者じゅんきょうしゃの墓はか「至福しふくの碑いしぶみ」を建たてるなど、各地かくちに多数たすうの石碑せきひを建たてた。またフランシスコ・ザビエルの住すんでいたとされる大道寺だいどうじの遺跡いせきを発見はっけんした。

1924年ねん（大正たいしょう13年ねん）、萩はぎ教会きょうかいはパリ外国がいこく宣教せんきょう会かいからイエズス会かいに移譲いじょうされたため、ヴィリヨンは神戸こうべに引ひき上あげた。翌年よくねんの1925年ねん（大正たいしょう14年ねん）、奈良なら教会きょうかいの主任しゅにん司祭しさいに着任ちゃくにんする。1926年ねん（大正たいしょう15年ねん）10月がつ16日にちには、大道寺だいどうじ跡地あとちに記念きねん碑ひが建たてられ除幕じょまく式しきが行おこなわれた。

1932年ねん（昭和しょうわ7年ねん）に体調たいちょうを崩くずし、「死しに場所ばしょは川口かわぐち教会きょうかいの畳たたみの上うえで」とのヴィリヨンの希望きぼうもあり、旧きゅう川口かわぐち居留きょりゅう地ち（現在げんざいの大阪おおさか市し西にし区く）にあった川口かわぐち天主堂てんしゅどうに移うつされ、同年どうねん4月がつ1日にち、一いち度ども故郷こきょうへ帰国きこくすることなく死去しきょ。

エピソード

• 来日らいにち当時とうじ、ヴィリヨンは日本人にっぽんじんと接せっすることが許ゆるされずに困こまっていた。そこへ若わかき日ひの大隈おおくま重信しげのぶがこっそりと現あらわれ、「西洋せいようの文物ぶんぶつを知しり、研究けんきゅうしたいから書物しょもつを譲ゆずってくれ」と頼たのまれたため、彼かれは喜よろこんで数すう冊さつの書物しょもつを与あたえたという。

• ショファイユの幼おさなきイエズス修道しゅうどう会かいの修道しゅうどう女おんなが来日らいにちした時とき、港みなとへ駆かけつけたヴィリヨンは、波止場はとばへ近ちかづく船ふねの甲板かんぱんに立たつ4人にんの修道しゅうどう女おんなを見みて、嬉うれしくて人目ひとめもはばからず大だい泣なきしたという。彼かれの修道しゅうどう女おんなと共ともに汚きたない嬰児えいじを洗あらい、女おんなの子この髪かみを梳すいてやる姿すがたは、当時とうじ、キリシタン迫害はくがいの余韻よいんの冷さめやらぬ人々ひとびとを驚おどろかせた。

• ヴィリヨンは55歳さいの時ときから70歳さいまでの間あいだ、延のべ4頭とうの馬うまに乗のって布教ふきょう活動かつどうを行おこなった。最初さいしょの馬うまは「ギーギー」と名付なづけて可愛かわいがり、15年間ねんかん連つれ添そった。この馬うまが死しんだ時とき、蹄を加工かこうしてインク壺つぼを作つくり愛用あいようしていた。またある時とき、3頭とう目めの馬うまに鞍くらを置おいたところ、背中せなかに傷きずがあったらしく暴あばれだし、ヴィリヨンの左ひだりの耳みみたぶを食くい千せん切きってしまった。

• 萩はぎ教会きょうかいを引ひき上あげる時とき、無常むじょうを感かんじ、自分じぶんの一切いっさいは終おわったと思おもい、祭服さいふくや宝石ほうせきを散ちりばめた聖ひじり杯はいなど、持もち物ものを全すべてを人ひとに与あたえてしまった。しかし、神戸こうべでの隠居いんきょ生活せいかつは苦痛くつうに感かんじたらしく「どんな小ちいさな教会きょうかいでもいいですから、私わたしに一ひとつ教会きょうかいを与あたえてください。死しぬまで働はたらきたいのです」と当時とうじの大阪おおさか司教しきょうに頼たのみ、奈良なら教会きょうかいへ着任ちゃくにんとなった。

主おもな著作ちょさく

• 日本にっぽん聖人せいじん 鮮血せんけつ遺書いしょ
• 切支丹きりしたん大名だいみょう史し
• 山口やまぐち公会こうかい史し
• 日本にっぽん仏教ぶっきょう史し
• 山口やまぐち大道寺だいどうじ跡あとの発見はっけんと裁許さいきょ状じょうに就て

関連かんれん項目こうもく

• 殉教じゅんきょう血ち史し 日本にっぽん二に十じゅう六ろく聖人せいじん - 『日本にっぽん聖人せいじん 鮮血せんけつ遺書いしょ』が原作げんさくとなった。
• 大道寺だいどうじ
• パリ外国がいこく宣教せんきょう会かい
• ショファイユの幼おさなきイエズス修道しゅうどう会かい

参考さんこう文献ぶんけん

• 神戸こうべ新聞しんぶん出版しゅっぱんセンター（編集へんしゅう・制作せいさく） 編へん『兵庫ひょうご県けん大だい百科ひゃっか事典じてん (下巻げかん)』神戸こうべ新聞しんぶん出版しゅっぱんセンター、1983年ねん。ISBN 978-4875211006。 
• 『ビリヨン神父しんぷの生涯しょうがい』 大空おおぞら社しゃ 狩谷かりや平司へいじ 著ちょ（1939年ねん）ISBN 978-4872365269
• 『偉大いだいなるヴィリヨン神父しんぷ―ヴィリヨン神父しんぷにまねびて』 山崎やまざき忠雄ただお 著ちょ（1965年ねん）
• 『ビリオン神父しんぷ―現代げんだい日本にっぽんカトリックの柱石ちゅうせき 慶応けいおう・明治めいじ・大正たいしょう・昭和しょうわ史しを背景はいけいに』 中央ちゅうおう出版しゅっぱん社しゃ 池田いけだ敏雄としお 著ちょ （1965年ねん）
• 『今いま、ビリオン神父しんぷを追おう―幕末ばくまつから昭和しょうわまで (Siesta Books)』 アガリ総合そうごう研究所けんきゅうじょ ホセ・パラシオス 著ちょ（2003年ねん）ISBN 978-4901151108
• 『人物じんぶつによる日本にっぽんカトリック教会きょうかい史し-聖職せいしょく者しゃおよび信徒しんと-75名めい伝でん』中央ちゅうおう出版しゅっぱん社しゃ 池田いけだ敏雄としお 著ちょ（1968年ねん）
• 『来日らいにち西洋せいよう人じん事典じてん〔増補ぞうほ改訂かいてい普及ふきゅう版ばん〕』日外にちがいアソシエーツ 武内たけうち 博ひろし 著ちょ（1995年ねん）
• 『無償むしょうの愛あいに生いきて―130年ねん前まえのシスターの挑戦ちょうせん』 講談社こうだんしゃ 村田むらた初子はつこ 著ちょ（2010年ねん）

外部がいぶリンク

• 萩はぎカトリック教会きょうかい - ウェイバックマシン（2002年ねん4月がつ14日にちアーカイブ分ぶん）