コリャーク人じん

コリャーク

露ろ: коряки
火ひ起おこしをするコリャークの男おとこたち（1905年ねん）
総そう人口じんこう
ロシア 8,743人にん（2002年ねん人口じんこう統計とうけい）
居住きょじゅう地域ちいき
カムチャツカ半島はんとう
言語げんご
コリャーク語ご、ロシア語ご
宗教しゅうきょう
シャーマニズム、ロシア正教会せいきょうかい
関連かんれんする民族みんぞく
チュクチ・カムチャツカ語族ごぞく

コリャーク人じんの居住きょじゅうする地域ちいき

コリャークの女おんなシャーマン（1900年ねんごろ）

コリャーク人じん（コリャークじん。もしくはコリヤーク人じん、コリャク人じん。露ろ: коряки 英えい: Koryak, Koriak）は、ロシア連邦れんぽう極東きょくとうのカムチャツカ地方ちほうの先住民せんじゅうみん族ぞくで、ベべーリング海りんぐかい沿岸えんがん地帯ちたいからアナディリ川がわ流域りゅういき南部なんぶおよびチギリ村むらを南限なんげんとするカムチャツカ半島はんとう極ごく北部ほくぶにかけて居住きょじゅうしている。体からだつきや生活せいかつ習慣しゅうかんなどが極きわめて似にているチュクチ人じんと同系どうけいであるほか、カムチャツカ半島はんとうのイテリメン人じんとはやや遠とおい類縁るいえん関係かんけいにある。

コリャーク人じんは西にしにエヴェン人じん、東ひがしにケレク人じん、北きたにチュクチ人じん、南みなみはカムチャツカ半島はんとうの最さい狭せま部ぶでアレウト人じん領域りょういきに隣接りんせつしている。

コリャーク人じんはおおまかに2つの集団しゅうだんがある。沿岸えんがんに生活せいかつする集団しゅうだんは定住ていじゅうして漁業ぎょぎょうを営いとなんでいるため、「村人むらびと」を意味いみする Nemelan（またはNymylan）と呼よばれ、トナカイ遊牧ゆうぼくを営いとなむ内陸ないりくのコリャーク人じんは、放浪ほうろうがちの「トナカイ長者ちょうじゃ」を意味いみするChauchen（またはChauchven）と呼よばれる。

コリャーク語ご及およびその近きん縁語えんごイテリメン語ごは、言語げんご学がく的てきにチュクチ語ごに非常ひじょうに近ちかく、チュクチ・カムチャツカ語族ごぞくをなす。

語源ごげん

「コリャーク」という語かたりは、チュクチ・カムチャツカ語族ごぞくの同族どうぞく言語げんごで、コリャーク人じんが「トナカイ (kor) とともにある」を意味いみするKorakと呼よばれていたことから来きている。Koryakという語かたりがはじめて記録きろくされるのは、ロシア人じん探検たんけん家か、ステパン・クラシエニンニコフが1775年ねんに記録きろくしたものが最初さいしょである。Korakから派生はせいしたKoryakという名前なまえがロシアの公文書こうぶんしょで使つかわれるようになり、以来いらい一般いっぱん化かした。

起源きげん

コリャーク人じんの起源きげんは未み詳しょうである。更新こうしん世よ後期こうき、ユーラシア大陸たいりくと北きたアメリカ大陸あめりかたいりくは地続じつづきであった。人々ひとびとは現在げんざいコリャーク人じんが居住きょじゅうする地域ちいきを通とおってアメリカ大陸あめりかたいりくへと渡わたっていったのである。氷こおり期きを通つうじて、人々ひとびとはその地域ちいきを通とおって両りょう大陸たいりくへ渡わたった。さまざまな民族みんぞくが氷河期ひょうがき終焉しゅうえん以前いぜんに行いき来きし、そしてコリャークは北きたアメリカからシベリアへの逆ぎゃく移住いじゅうである可能かのう性せいが高たかいとする見解けんかいも示しめされている。文化ぶんかと言語げんごにおいて、ニヴフ人ひととコリャーク人じんには類似るいじ点てんがあるとされる。古代こだいオホーツク人じんとの関連かんれん性せいも指摘してきされている。

歴史れきし

コリャーク人じんはかつて極東きょくとうロシアのより広汎こうはんな地域ちいきを移動いどうしていた。

7世紀せいきごろに北東ほくとうアジアに存在そんざいした流ながれ鬼おに国こくの民みんが640年ねんに唐とうに入貢にゅうこうした際さい、「自分じぶんたちの住すむ地ちより北きたに１ヶ月かげつ行程こうていの先さきに夜叉やしゃという国くにがある」と伝つたえ、その「夜叉やしゃ」が古こコリャーク人じんであるとする見解けんかいがある。ハバロフスク地方ちほうのニヴフ人じん居住きょじゅう域いきと重かさなるまでに拡大かくだいしていた彼かれらの行動こうどう域いきは、エヴェン人じんの登場とうじょうとともに、現在げんざいの地域ちいきへと限定げんていされた。1769年ねんから1770年ねんにかけて、コサックとの交戦こうせんと天然痘てんねんとうの流行りゅうこうのために、1700年ねんに1万まんから1万まん1,000人にんいた人口じんこうは1800年ねんには4,800人にんにまで減少げんしょうした。ソビエト連邦れんぽう政府せいふによってコリャーク自治じち管区かんくが1931年ねんに設もうけられたが、2007年ねん6月1日にちをもって、カムチャツカ地方ちほうに合併がっぺいされた。

社会しゃかい

おおよそ6-7家族かぞくで集団しゅうだんを作つくり、首長しゅちょうは支配しはい的てきな主権しゅけんを持もたず、構成こうせい員いんがすべて平等びょうどうである小しょうグループといった体からだをなす。

宗教しゅうきょう

シャーマニズムを媒介ばいかいとして、コリャーク人じんはアニミズム的てき信仰しんこうを持もっている。コリャーク人じんの神話しんわは、最初さいしょの人間にんげんでありコリャーク人じんの守まもり手しゅである Quikil（大だい烏がらすの意味いみ） という超自然ちょうしぜん的てきなシャーマンを中心ちゅうしんとした物語ものがたりである。大だい烏がらすの神話しんわは、トリンギット、ツィムシャン などアメリカ北西ほくせい部ぶの海岸かいがん沿ぞいのアメリカ先住民せんじゅうみんにも見みられる。

環境かんきょう

コリャーク人じんの居住きょじゅう域いきは山やまがちで、ほとんどが北極圏ほっきょくけんのツンドラ地帯ちたいである。オホーツク海かい沿岸えんがんのシェレホフ海岸かいがんの付近ふきんの南部なんぶ地域ちいきには、針葉樹しんようじゅ林はやしがある。北部ほくぶはより寒さむく、数すう種しゅの灌木が生育せいいくするのみだが、トナカイを放牧ほうぼくするのに不足ふそくするほどではない。冬期とうきの平均へいきん気温きおんは−25℃で、短みじかい夏なつには12℃になる。ロシア人じん侵入しんにゅう以前いぜんには、現代げんだいの自治じち管区かんく面積めんせきにほぼ等ひとしい、301,500平方へいほうキロメートルに及およぶ地域ちいきに居住きょじゅうしていた。

ロシア・コサック系けいの大型おおがた植民しょくみん地ちの中なかにおいては、コリャーク人じんは8,743人にんで最大さいだいの少数しょうすう民族みんぞくとなっている。

遺伝子いでんし

コリャーク人じん男性だんせい27人にんを対象たいしょうとしたある調査ちょうさでは、Y染色せんしょく体たい遺伝子いでんしはCが59.3%（27人にん中ちゅう16人にん）（C2-M217の下位かい系統けいとうの一ひとつであるC-M48が9/27 = 33.3％、C-RPSY4(xM48)が7/27 = 25.9％）、次ついでN-Tatが22.2％（27人にん中ちゅう6人にん）、P-M45(xM17, M3)が18.5％（27人にん中ちゅう5人にん）である。

また、マガダン州しゅうセヴェロエヴェンスキー地区ちくのコリャーク人じん男性だんせい12人にんを対象たいしょうとした別べつの調査ちょうさでは、Y染色せんしょく体たいハプログループはC-M325(xM86,P39,P369)が4人にん（33％）、N-L392(xL550,P89,Z1936)が4人にん（33％）、Q-NWT1が2人ふたり（17％）、O-P201(xM7,M134)が1人ひとり（8％）、J-M241が1人ひとり（8％）観察かんさつされた。

参考さんこう文献ぶんけん

• 菊池きくち俊彦としひこ『オホーツクの古代こだい史し』平凡社へいぼんしゃ〈平凡社へいぼんしゃ新書しんしょ〉、2009年ねん10月がつ。ISBN 978-4-582-85491-6。 
• Chaussonnet, Valerie. Native Cultures of Alaska and Siberia. Washington: Artic Studies Center, 1995.
• Friedrich, Paul, and Norma Diamond, eds. Russia and Eurasia/China. Boston: Hall, 1994. Vol. 6 of Encyclopedia of world Cultures. Ed. David Levinson. 9 vols.
• Kolga, Margus. The Red Book of the Peoples of the Russian Empire. Tallinn, Estonia: NGO Red Book, 2001.
• Gall, Timothy L. Worldmark Encyclopedia of Cultures and Daily Life. Detroit: Gale Research, [1998].

読書どくしょ案内あんない

本節ほんぶしは「コリャーク人じん」をさらに詳くわしく知しるための読書どくしょ案内あんないである。

• Kennan, George. Tent Life in Siberia. 1870.
• ———. "Über die Koriaken u. ihnen nähe verwandten Tchouktchen." But. Acad. Sc. St. Petersburg, xii. 99.
• Jochelson, Waldemar. The Koryak. New York: AMS, 1975.
• Jochelson, Vladimir Il'ich, and F. Boas. Religion and Myths of the Koryak Material Culture and Social Organization of the Koryak. New York: [s.n.], 1908.
• Nagayama, Yukari ed. The Magic Rope Koryak Folktale. Kyoto, Japan: ELPR, 2003.

外部がいぶリンク

• Site about the Koryak people