源氏 六 十 三 首 之 歌
『
概要
[発見 の経緯
[特色
[巻 名 及 びその並 べ方 の特色
[- 「
若菜 」を上下 2帖 として数 えている。 - 「
雲 隠 」を1帖 として数 えている
ため「
といった
『
内容
[- 1・
桐 壺 (な)「なれぬれはたつに契 つ聲 をつて露 のかこと言 の葉 にをく」 - 2・帚木(も)「もみちはヽきヽの
梢 におりかへて錦 をあらふ秋 の山 かせ」 - 3・
空蝉 (あ)「あちきかき木 の下露 の侍 るヽは鳴 空蝉 のなみたなりけり」 - 4・
夕顔 (み)「みたもなをみるまくほしきゆふかほの花 になれにし人 の振舞 」 - 5・
若紫 (た)「たつねきてゆかりをとへはむさし野 の若紫 の露 ははかなし」 - 6・
末摘花 (ふ)「ふみわくる山路 の露 にヽほひきて末摘花 の色 にひさしく」 - 7・
紅葉 賀 (つ)「つきの夜 はもみちの風 にたなひきて錦 をしける小野 の山里 」 - 8・
花 宴 (あ)「あたにちる花 のゑんをはむすはすしと春 の別 は扨もかなしき」 - 9・
葵 (み)「みしめなわかけてそいのるあふひ草 神 のめくみを□む」 - 10・
賢 木 (た)「たふけもとの神 の社 の榊 葉 に白木 錦 かけてみそきせんとや」 - 11・
花 散 里 (ふ)「ふくをくる風 をたよりのしるへにて花 ちる里 を尋 ねてそとふ」 - 12・
須磨 (つ)「つきにねぬ須磨 の浦 人 なれぬるか磯辺 にたかく寄 波 の音 」 - 13・
明石 (あ)「あきの夜 の月影 きえてあかしかに砂 に白 く露 そ置 そふ」 - 14・
澪標 (み)「みほさき道 共 いわしみほつくし露 のて渡 る松 の浦 かせ」 - 15・
蓬生 (た)「たれも又 あわれとや見 し蓬生 の露 の置 野 ののへにやすらひ」 - 16・
関屋 (ふ)「ふしのねのすそのは晴 て清見 潟 岩屋 に月 の影 はやとしつ」 - 17・
絵合 (つ)「つれて行 雲井 の鶴 の一 つかひ聲 あわせたる暮 のさひしさ」 - 18・
松風 (あ)「あたる迄 その香 そしるき山 里 の松 かせかよふ宿 のこふはい」 - 19・
薄 雲 (み)「見 わたせは花 は尾上 に顕 てうす雲 はるヽををちの山里 本 」 - 20・
朝顔 (た)「たえみするを哀 とそみる朝 かほの日影 を待 て露 にしかかふ」 - 21・
少女 (ふ)「ふくる夜 の月 に余波 の乙女子 か真木 の下戸 もさヽぬかり庵 」 - 22・
玉鬘 (つ)「つゆは玉 かつらき山 にみたれけりまたき色 付 嵐 吹つヽ」 - 23・
初音 (あ)「あかすたヽ五月 そ鳴 けや蜀魂 心尽 しに侍 し初音 を」 - 24・
胡蝶 (み)「見 えわかす小 蝶 は花 にたくひつヽ桜 ちりしく庭 の遠方 」 - 25・
蛍 (た)「たちわたるほたるのかけのうつろひて水 に光 のまさる玉 の井 」 - 26・
常夏 (ふ)「ふしなれてとこなつかしき移 香 をいつ迄 いもか袖 ににほひし」 - 27・
篝火 (つ)「月見 れはたまきの桜 ちりかヽり光 やみかく風 や行 岸 覧 」 - 28・
野分 (あ)「あさきをのなかれのわきてひさしきは冰のむすふ冬 の川 」 - 29・
行幸 (み)「みかりはの狩場 のみのヽ御幸 に千代 ふる里 誰 か行 らん」 - 30・
藤袴 (た)「たれか又 来 てもたとらむ藤 はかまほころひにける心 をかまし」 - 31・
真木 柱 (ふ)「ふちまきは白波 立 て宇治川 の河 霧 ふかく見渡 すをや」 - 32・
梅枝 (つ)「月影 のかすめる宿 の梅 かえはおほろけあらぬ人 そきて問 」 - 33・
藤 裏 葉 (あ)「あら磯 のきしへの岩 に咲 藤 のうら葉 を浪 のあらふかわさる」 - 34・
若菜 上 (み)「みよしのヽ芳野 の草 もたえせぬは老 せぬ身 にも若菜 摘也」 - 35・
若菜 下 (た)「たちわたる霞 はかなしはかなくも飛 きえて行 鴈 のひとつら」 - 36・
柏木 (ふ)「ふる里 に初 雁 金 のきてなかしはきは露 吹秋かせそふくたつ」 - 37・
横笛 (つ)「つてにふく少 小夜 更 方 の横笛 の音 の身 にしむ独 りねの床 」 - 38・
鈴虫 (あ)「秋 の雨 しくるヽのへにすヽむしの声 ふりすてヽ夜 もすから鳴 」 - 39・
夕 霧 (み)「道 もみえすすゑもはるかの夕 霧 に分 まこり散 よはぬ秋 の山野 へ」 - 40・
御法 (た)「たくひなき弥 陀の御法 のふねうけてかの岸 ちかくいつか渡 らん」 - 41・
幻 (ふ)「ふして見 る夢 まほろしの世 中 におとろかぬ身 の程 もはつかし」 - 42・
雲 隠 (つ)「月 かけの夜半 いく度 かわるらんあきはひまなく雲 かくれして」 - 43・
匂 宮 (あ)「あたにちる花 の香 にほふ深 山路 にやすらふほとに暮 ぬ春 の日 」 - 44・
竹 河 (み)「水上 はなかれひさしき竹川 の水 にも千 世 の色 や見 るらむ」 - 45・
紅梅 (た)「たヽこふるこふはひ香 にも源 そ深 とそ念仏 にそみてこくらくのそら」 - 46・
橋 姫 (ふ)「ふたつなき身 をすててはてヽむは玉 の法 を尋 し程 の久 しさ」 - 47・
椎本 (つ)「つるに又木 葉 ちりしく椎 か本 に通 嵐 の音 そひさしき」 - 48・
総角 (あ)「あま人 にちきりむすひしあけ巻 のとけぬは猶 も浦 久 し」 - 49・
早蕨 (み)「見 し人 の契 たえせぬさわらひのおりおりことをとふそうれしき」 - 50・
宿木 (た)「たれかみし軒端 の梅 のやとりきて月 に霞 て花 にしたかふ」 - 51・
東屋 (ふ)「ふりくらすよそ人 つらし東屋 のしくにかひなきぬるヽすみの香 」 - 52・
浮舟 (つ)「つりをたれおきにたヽよふ浮舟 の浮ねをそする淀 の岩 岸 」 - 53・
蜻蛉 (あ)「あたにおく露 のうき身 はかけろふの有 かなきかの世 を厭 はヽや」 - 54・
手 習(み)「みのりせし書 かわめたる手 ならひのうき世 の中 のおもひ出 と云 」 - 55・
夢 浮橋 (た)「玉 つきをかけて小路 に見 し夢 のうき橋 といらし夜半 の初 雁 」
- 56・サムシロ(つ)「
月 の吹風さむしろを打 ちはらひ幾 嵐 のゝうらみきつらん」 - 57・
巣 守 (あ)「あわれ也軒端 の竹 に鶯 の巣 守 と成 し得 るかい子 は」 - 58・
八 橋 (み)「三河 には雲 手 に水 のながるれは八 橋 かけて賑 はしけ也」 - 59・さしくし?(た)「たまかつらかけておもひしさしくらに
我 黒 かみのも泪 するらめ - 60・
花見 ?(ほ)「おとをへて君 にかたみの文 なれは涙 なかるゝ水茎 の跡 」 - 61・
嵯峨野 (と)「[8]としをへて山 さかのほるおいうとのとるやつまもこりはてぬかな」 - 62・
山路 の露 ?(け)「けさみれは小菊 かのへの秋風 に玉 ちる露 の数 もしられす」
翻刻
[今井 源 衛 「『源 氏 のゆふだすき』と『源氏 六 十 三 首 之 歌 』」九州大学 国語 国文 学会 『語 文 研究 』第 25号 (1968年 (昭和 43年 )3月 )のち『王朝 文学 の研究 』角川書店 、1970年 (昭和 45年 )。及 び『今井 源 衛 著作 集 第 4巻 源氏物語 文献 考 』笠間 書院 、2003年 (平成 15年 )9月 、pp.. 302-313。 ISBN 4-305-60083-8
脚注
[- ^ この
他 に、長歌 の中 に順 に巻 名 を詠 み込 んでいくタイプや、短歌 の中 に詠 み込 んでいくが1首 ごとに1巻 ずつではないタイプなどがある。 - ^
今井 源 衛 「流出 した島原 松平 文庫 旧 蔵本 」日本 古典 文 学会 編 「日本 古典 文学 会 会報 第 121号 」日本 古典 文学 会 、1990年 (平成 2年 )7月 。のち『古典 ライブラリー 2紫 林 残照 国文学 やぶにらみ続 』笠間 書院 、1993年 (平成 5年 )10月 。 ISBN 4-305-60032-3 および『今井 源 衛 著作 集 第 12巻 評論 ・随想 』笠間 書院 、2007年 (平成 19年 )10月 、pp.. 139-141。 ISBN 978-4-305-60091-2 - ^
通常 は「雲 隠 」を1帖 として数 えているときは「若菜 」を上下 合 わせて1帖 として数 え、「若菜 」を上下 2帖 として別々 に数 えているときには「雲 隠 」を1帖 として数 えないようにして、いずれも「夢 浮橋 」が第 54帖 目 になるようになっている。 - ^ 『
源氏物語 表白 』などもそうなっている。 - ^
青 表紙 本 の代表 的 な写本 の一 つである大島本 などもそうなっている。 - ^ この「
五 十 よまき」が「54巻 」なのか「五 十 余 巻 」なのかについてはさまざまな見解 が存在 する。また現在 一般 的 な『更級 日記 』の本文 は全 て「五 十 よまき」となっているが、「五 十 四 巻 」とする異 文 も存在 する。 - ^
青 表紙 本 については『明月 記 』の記述 から、河内 本 については『水源 抄 』の巻数 と伝 えられるものから - ^
冒頭 は「岩 かかたみの文 なれは涙 なかるゝ」で始 まるが一 つ前 の句 の混入 であると見 られる。
関連 項目
[参考 文献
[今井 源 衛 「源氏物語 の研究 書 -松平 文庫 調査 余録 」「谷崎 潤一郎 訳 源氏物語 愛蔵 版 巻 4付録 」中央公論社 、1962年 (昭和 37年 )2月 。のち『今井 源 衛 著作 集 第 12巻 評論 ・随想 』笠間 書院 、2007年 (平成 19年 )10月 、pp.. 101-104。 ISBN 978-4-305-60091-2- 「
源氏 六 十 三 首 之 歌 」伊井 春樹 編 『源氏物語 注釈 書 ・享受 史 事典 』東京 堂 出版 、2001年 (平成 13年 )9月 15日 、pp. 337-338。 ISBN 4-490-10591-6