出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「薄雲」(うすぐも)は、『源氏物語』五十四帖の巻名のひとつ。第19帖。巻名は作中で光源氏が藤壺の死を悼んで詠んだ和歌「入り日さす峰にたなびく薄雲はもの思ふ袖に色やまがへる」にちなむ。
光源氏31歳冬から32歳秋の話。
明石の御方は悩みぬいた末、母尼君の説得もあって姫君を源氏に委ねることを決断する。雪の日に源氏が姫君を迎えに訪れ、明石の御方は涙ながらにそれを見送った。二条院では早速盛大な袴着が行われ、紫の上も今は姫君の可愛らしさに魅了されて、明石の御方のことも少しは許す気になるのだった。
翌年、太政大臣(頭中将と葵の上の父)が亡くなり、その後も天変が相次いだ。不安定な政情の中、3月に病に臥していた藤壺が37歳で崩御。源氏は悲嘆のあまり、念誦堂に篭って泣き暮らした。法要が一段落した頃、藤壺の時代から仕えていた夜居の僧が、冷泉帝に帝自身の出生の秘密を密かに告げた。衝撃を受けた帝は、実の父を臣下にしておくのは忍びないと考え源氏に帝位を譲ろうとしたが、源氏は強くそれを退けた。