炭水車たんすいしゃ

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C59がた炭水車たんすいしゃ

炭水車たんすいしゃ(たんすいしゃ、テンダー)(英語えいご:tender)とは、蒸気じょうき機関きかんしゃ使用しようする燃料ねんりょうみず積載せきさいした車両しゃりょう車両しゃりょうによって大小だいしょう様々さまざまだが、通常つうじょう上部じょうぶ燃料ねんりょう石炭せきたんたきぎ重油じゅうゆ)をみ、下部かぶ水槽すいそうがある。これを装備そうびした機関きかんしゃテンダー機関きかんしゃという。たいしてみずずみともに本体ほんたいむのがタンク機関きかんしゃである(れいC11かたち)。日本にっぽんにおいて蒸気じょうき機関きかんしゃ燃料ねんりょうはほとんど石炭せきたんもちいたので「炭水車たんすいしゃ」のかたり一般いっぱんしているが、テンダーと場合ばあいとくすみすいかぎらず、燃料ねんりょうとしての重油じゅうゆみず積載せきさいする車両しゃりょうや、長距離ちょうきょり補給ほきゅう運行うんこうのためにみずのみを搭載とうさいする水槽すいそうしゃれいミキ20かたち)などもテンダーにふくまれる。

さらに、蒸気じょうき機関きかんによって羽根車はねぐるま駆動くどうするロータリーしき除雪じょせつしゃれいユキ300かたちのちにキ600かたち 1923 - 75ねん)や、クレーン駆動くどうするみさおじゅうしゃソ20 1928 - 66ねんソ30 1936 - 86ねん)のような動力どうりょく燃料ねんりょう必要ひつよう事業じぎょうよう貨車かしゃにも連結れんけつされた。

容量ようりょうによる車両しゃりょう区分くぶん[編集へんしゅう]

日本にっぽん蒸気じょうき機関きかんしゃ[1]において炭水車たんすいしゃ石炭せきたんなど燃料ねんりょうみず積載せきさいりょう区分くぶんされ、12-17かたちといえば石炭せきたん12トンみず17立方りっぽうメートル積載せきさい可能かのうであることをしめす。には、5-10かたち、6-13かたち、6-17かたち、8-20かたち、10-20かたち、10-22かたち、10-25かたち、12-25がたなどがあり、末尾まつび記載きさいのない初期しょきがたやA,Bなどではじまるアルファベットで製造せいぞう区分くぶんされる。D52かたち(1943ねん)に自動じどうきゅうすみ(メカニカルストーカー)の装備そうびこころみられたがたせず、戦後せんごC62かたちはじめて正式せいしき使用しようされ装備そうびしゃにはかたちばんにSがされた(れい:10-22・Sかたち)。

鉄道てつどういん時代じだいのものは容量ようりょうプレートの表示ひょうじ単位たんいフィート(呎)のみでありすみすい区別くべつはなく、度量衡どりょうこう改正かいせい(1921ねん以後いごしんせい改装かいそうからトル法とるほう表示ひょうじとなる。

編成へんせい運用うんよう[編集へんしゅう]

機関きかんしゃおよび動力どうりょくをもつ事業じぎょうしゃたい通常つうじょう固定こてい編成へんせいとなるが、運行うんこう距離きょり勾配こうばいなど線区せんく仕業しわざ条件じょうけんによって通常つうじょうより大型おおがた水槽すいそう必要ひつようとなる場合ばあいや、機関きかんしゃきゅうしゃ廃車はいしゃによって余剰よじょうしゃとなりおこなわれた場合ばあいしんせいとはことなるわせとなる。単純たんじゅん容量ようりょうすため車体しゃたい延長えんちょうしゃだかしても、重量じゅうりょう軌道きどう問題もんだいくわてん車台しゃだいらなくなるなど設備せつび問題もんだいのため運用うんようじょうそうはいかない。えられた炭水車たんすいしゃナンバープレート機関きかんしゃにそろえてわるため外観がいかんじょう判別はんべつむずかしく、こく検査けんさ履歴りれきなどでえを調しらべることになる。

  • C53かたち通常つうじょう12-17がた優等ゆうとう列車れっしゃ運用うんようについたものはD50かたちからてんじた8-20かたちをさらに炭庫たんこ拡大かくだいして長距離ちょうきょり高速こうそく旅客りょかくになった。
  • 先述せんじゅつのユキのうちユキ301に付随ふずいした炭水車たんすいしゃ9300かたち廃止はいしによる余剰よじょう転用てんよう、302は8300かたちから以後いごはD50かたちようの8-20を新造しんぞうしている。当初とうしょ9600かたち初期しょきの2じく2.5t-9m32りょうてたがどちらにせよ容量ようりょう不足ふそくした。このときあまったほかの9m34りょうはミ160水槽すいそうしゃ改造かいぞうされた。

構造こうぞう改造かいぞう[編集へんしゅう]

一見いっけんおなじような一様いちようくろ直方体ちょくほうたいであるが車体しゃたいちょうだけでなく、リベットてと溶接ようせつ構造こうぞう側面そくめんから炭庫たんこがこじょうえんりょうかたきの形状けいじょう炭庫たんこ側板そくばん嵩上かさあげされ炭庫たんこ水槽すいそう容積ようせき比率ひりつわっている)、配管はいかん台車だいしゃ尾灯びとう後進こうしんぜんあきらとうクレーン金具かなぐなどに個々ここ差異さいられる。また、C55かたち2しゃなどながれ線形せんけい機関きかんしゃわせて上部じょうぶをカバーでおおったもの、C56かたちられる後進こうしん視界しかい確保かくほ必要ひつようから両側りょうがわおおきくいたもの、資材しざいだい用材ようざいもちいた戦時せんじ設計せっけい、それから発展はってんしたたいわく(プランクレス)の船底ふなそこがたのように、基本きほん形状けいじょうにもいくつかの分類ぶんるいがある。

  • D51かたち戦時せんじせいには10-20がたたいわくなしの船底ふなそこ量産りょうさんされ、C59かたち後期こうきやC62がたの10-22かたちには確立かくりつしたぜん溶接ようせつ船底ふなそこがたられる。

炭水車たんすいしゃしゃとの以外いがいにも製造せいぞう様々さまざま改造かいぞうけることがあり、石炭せきたん搭載とうさいりょうやす炭庫たんこ拡大かくだいれい: C62 38)、運転うんてん環境かんきょう改善かいぜん牽引けんいん定数ていすう向上こうじょうなどを目的もくてきとした重油じゅうゆタンク(れい:D51 427)や自動じどうきゅうすみ装置そうち追加ついか装備そうびおもにゅうかわ作業さぎょう逆行ぎゃっこう運転うんてん使用しようされる機関きかんしゃほどこされた炭庫たんこ水槽すいそう両側りょうがわ改造かいぞう構内こうないよう9600かたちられる。とつがた背面はいめんになる)などが代表だいひょうてきれいである。

  • C53かたち付随ふずいだった12-17かたちは40t糖蜜とうみつ輸送ゆそうタンクしゃとして2りょういちくみタキ1600かたち改造かいぞう(1949ねん)。
  • C51かたち鉄道てつどういん18900かたち)のうち東京とうきょう名古屋なごやあいだ優等ゆうとう運用うんようについたものは標準ひょうじゅん装備そうびの17m3をC52の20m3後期こうきがたかわそう水量すいりょうぞう、さらに30t水槽すいそうしゃミキ20かたち)を増結ぞうけつするため配管はいかんほろ改造かいぞうほどこした。
  • C59 127号機ごうきよう重油じゅうゆせんもえ改造かいぞうけたためテンダーもおおきくことなる。

世界せかい炭水車たんすいしゃ(テンダー)[編集へんしゅう]

「テンダー」(Tender) というかたりそのものは蒸気じょうきよう炭水車たんすいしゃ限定げんていされない。機関きかん動力どうりょく支援しえんしたり伝達でんたつして主力しゅりょく次位じい連結れんけつする、そうじておぎなえつとむしゃといえる役割やくわりをもつ貨車かしゃ全般ぜんぱんしている。増結ぞうけつよう水槽すいそうしゃ燃料ねんりょうしゃディーゼル緩急かんきゅうしゃなどもふくむ。これらを区別くべつするさいには、狭義きょうぎの「炭水車たんすいしゃ」を「コール・テンダー」(coal tender)、水槽すいそうしゃを「ウォーター・テンダー」(water tender)とぶなど、それぞれの特性とくせい限定げんていした呼称こしょうもちいられる。

ホエール・バック・テンダー[編集へんしゅう]

燃油ねんゆ後方こうほうみず前方ぜんぽうはいした半円はんえんとうタンクしゃ。「くじら」「かめこう」「ローフ(かたまり)」とばれる。サザン・パシフィック鉄道てつどうなど。

除雪じょせつばんけたほぼヴァンダ-ビルドがたのディーゼルよう油槽ゆそうしゃなどが残存ざんそんしている。CRI&P鉄道てつどう

ブレーキ・テンダー[編集へんしゅう]

イギリスの東北とうほくでは、1960年代ねんだいにブレーキテンダーが導入どうにゅうされていた。牽引けんいんりょく向上こうじょうにより列車れっしゃ重量じゅうりょう一方いっぽうで、軽量けいりょうされたディーゼル機関きかんしゃ制動せいどうりょくすため、機関きかんしゃ前方ぜんぽうに1りょうから2りょう無蓋むがいしゃ使用しようされた。機関きかんしゃ連動れんどうする自動じどうブレーキをそなえ、じゅうによる制動せいどうりょく増加ぞうかのため35はん - 37はんtの鋼鉄こうてつクズをんでいる。東北とうほく山地さんちくだりの制動せいどうりょくもとめたものだが、のち南部なんぶでも運用うんようされたさい機関きかんしゃ後方こうほう配置はいちされた。

ロング・ハウル・テンダー[編集へんしゅう]

ペンシルバニア鉄道てつどう (PRR) に代表だいひょうされる長距離ちょうきょりようテンダー。すっぽりとくるんだ外装がいそうささえる4じく+4じくごうてっ印象いんしょう。42.5t、19,200ガロンの180-P-84がた連結れんけつしゃT1かたちなど)、ながれ線形せんけいのこS1かたちもちい 250-P-84かたち 24t-24,230ガロンのほか、アッチソン・トピカ&サンタフェ鉄道てつどう (AT&SF) の2900かたち随伴ずいはんのものでは重油じゅうゆ7000ガロン-みず24,500ガロンを積載せきさいした。

センチピード・テンダー[編集へんしゅう]

ユニオン・パシフィック鉄道てつどう大型おおがたせいビッグ・ボーイ随伴ずいはんする。またおなじくアメリカン・ロコモティブ(アルコ)せいのチャレンジャーがたFEF系列けいれつなど大型おおがたまれる。

だい容積ようせきささぬし高速こうそく運転うんてんしたがうため7じく14りんそなえる。驚異きょういてきなのはむくろたいよりも名前なまえ由来ゆらいである台車だいしゃぐんで、さい前列ぜんれつ2じくボギー4りん旋回せんかいよこどうするのにつづ固定こてい後方こうほう5じく曲線きょくせん沿うため次々つぎつぎたいわくないよこ可動かどうにより追従ついしょうしていくてんにある。容量ようりょうは28-90に相当そうとうする。

そとはこ構造こうぞううちじゅん円筒えんとうタンクによるペデスタル・フレームである。25-C-1(25,000ガロン 円筒えんとうがた)と25-C-2以降いこう形状けいじょうがややことなる。

ヴァンダービルト・テンダー[編集へんしゅう]

みなみアフリカ国鉄こくてつ25かたちようふくすい装備そうび炭水車たんすいしゃ

鉄道てつどうおうまごであり発明はつめいとしてもらしたヴァンダービルト3せい発案はつあんしたシリンドリカル(円筒えんとう貨車かしゃのテンダー。つつじょうタンクの機関きかんしゃがわはこじょう炭庫たんこがある。すみすいだけでなく重油じゅうゆ併燃のためにオイルタンクをそなえたすみあぶらしゃとしても、容量ようりょうおとるが円筒えんとうがたタンクの強度きょうどはこがたくら軽量けいりょう安価あんか構造こうぞうからながさに余裕よゆうがあるアメリカ大陸あめりかたいりく大型おおがた高速こうそく蒸気じょうき採用さいようされた。

ふくすい装備そうびしゃ[編集へんしゅう]

みなみアフリカ国鉄こくてつ25かたち ヘンシェル・ウント・ゾーンせい 1950 - 92ねん渇水かっすいきびしいみなみアフリカの乾燥かんそう地帯ちたいのさらに高原こうげん走破そうはするため、排出はいしゅつした蒸気じょうきさい循環じゅんかんする装備そうび(コンデンシング)を炭水車たんすいしゃそなえている。水槽すいそう容量ようりょう40t(10,500ガロン)3じくボギーのNCがたふくすいをのせたCがた容量ようりょう20tながらタービン・ファンをむため車両しゃりょうちょうは18mにおよび、みず消費しょうひを40%におさえるのとえに700馬力ばりき損失そんしつするが機関きかんしゃはなおも110km/hをたもつ。

なお鉄道てつどう作業さぎょうきょく3920かたちのコンデンシングはふくすい装置そうちとはことなる。

蒸気じょうきタービン駆動くどう炭水車たんすいしゃ[編集へんしゅう]

ドイツ国鉄こくてつT38かたち3255号機ごうきよう蒸気じょうきタービン炭水車たんすいしゃ ぜん台車だいしゃにロッドがえる

ヘンシェル・ウント・ゾーンせい1B2 'T16 1926-27 - 60ねん。この車両しゃりょう上述じょうじゅつふくすいタービンの前身ぜんしんのひとつであるドイツ国鉄こくてつT38かたち3255ごうようふくすい炭水車たんすいしゃだがタービン駆動くどう動輪どうりんをもち機能きのうりょくももつ。後進こうしんタービンもそなえたが機能きのうには不十分ふじゅうぶんなまま使用しよういたらず後進こうしんほんがわ動力どうりょくのみによる。3送風そうふうタービンをまわ真鍮しんちゅうかん噴霧ふんむしたみずによる空冷くうれいねつ交換こうかんとおった蒸気じょうきは、おくあつ凝集ぎょうしゅうみずもどだつあぶらフィルタでされてから水槽すいそう循環じゅんかんする。

備考びこう[編集へんしゅう]

  1. ^ 機関きかんしゃ形式けいしき改号かいごう鉄道てつどう組織そしき変遷へんせんについてれておく。1928ねん昭和しょうわ3ねん)に8900のように鉄道てつどういんせい4けたであったものがD50のようにどうじくすうとテンダー10 - 49、ゆう50 - 99の鉄道てつどうしょうせいとなった。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]