雨乞岳あまごいだけ (滋賀しがけん)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
雨乞岳あまごいだけ
鎌ヶ岳からの雨乞岳(中央)、右側のピークが東雨乞岳
鎌ヶ岳かまがだけからの雨乞岳あまごいだけ中央ちゅうおう)、右側みぎがわのピークがひがし雨乞岳あまごいだけ
標高ひょうこう 1,237.67[1] m
所在地しょざいち 日本の旗 日本にっぽん
滋賀しがけんひがし近江おうみ甲賀こうが
位置いち 北緯ほくい3501ふん16びょう 東経とうけい13623ふん03びょう / 北緯ほくい35.02111 東経とうけい136.38417 / 35.02111; 136.38417[2]
山系さんけい 鈴鹿山脈すずかさんみゃく
種類しゅるい 隆起りゅうき
雨乞岳 (滋賀県)の位置(日本内)
雨乞岳 (滋賀県)
プロジェクト やま
テンプレートを表示ひょうじ
ひがし雨乞岳あまごいだけからのぞクマザサおおわれた雨乞岳あまごいだけ山頂さんちょう

雨乞岳あまごいだけ(あまごいだけ)は、滋賀しがけんひがし近江おうみどうけん甲賀こうがさかいにある標高ひょうこう1,238 m鈴鹿山脈すずかさんみゃくやま

概要がいよう[編集へんしゅう]

1968ねん昭和しょうわ43ねん7がつ22にちに、やまいき鈴鹿すずか国定こくてい公園こうえん指定していされた。愛知あいちがわ神崎川かんざきがわ源流げんりゅうやまである[3]別称べっしょうが「白倉しらくらたけし」、「ふじきりだけ[4]鈴鹿山脈すずかさんみゃくだい2の高峰こうほう[5]東側ひがしがわひがし雨乞岳あまごいだけがある。竜ヶ岳りゅうがたけ同様どうよう山頂さんちょう付近ふきんクマザサおおわれたなだらかな山容さんようやまである[6]山頂さんちょうにはクマザサにかこまれたちいさないけ大峠おおとうげさわ)があり[7]ふるくからあめ信仰しんこう対象たいしょうとされ、しも流域りゅういき農民のうみんがこのいけとうはいしていたことが山名やまな由来ゆらいとなっている[5][4][8]。このいけには、モリアオガエル生息せいそくしている[5][7]山腹さんぷく天然てんねんりん針葉樹しんようじゅ植林しょくりんじり[6]アセビクリホンシャクナゲミズナラなどが分布ぶんぷし、ニホンカモシカニホンジカマムシヤマビルなどが生息せいそくしている[4]山頂さんちょう付近ふきんからは、西方せいほう琵琶湖びわこ東方とうほう鈴鹿山脈すずかさんみゃくのぞむことができる。

北東ほくとう山腹さんぷくにあった御池おいけ鉱山こうざんあと最盛さいせい明治めいじ末期まっきごろのやく300にん工夫くふうぎんどうなどを採掘さいくつしていた。

歴史れきし[編集へんしゅう]

北側きたがわのイブネとの鞍部あんぶすぎとうげおよび釈迦ヶ岳しゃかがたけ国見岳くにみだけとの鞍部あんぶたいらとうげ標高ひょうこう 803m)を経由けいゆして、滋賀しがけんひがし近江おうみ甲津畑こうづはた三重みえけん三重みえぐん菰野こものまち千草ちぐさむす山越やまごえ古道ふるみちは「千種ちくさえつ」(千種ちくさ街道かいどう)とばれていた[6][8][9]1570ねんもとかめ元年がんねん)に織田おだ信長のぶなががこの千草せんぐさえつふじきりだに渋川しぶかわ支流しりゅう)を移動いどうするさいに、杉谷すぎたによしじゅうぼう火縄銃ひなわじゅう狙撃そげきされたがなんのがれていたことがられている[8][9]。その周辺しゅうへんに「杉谷すぎたによしじゅうぼうのかくれがん」がある[6]すぎとうげたいらとうげにはかつて茶屋ちゃやがあり武士ぶし商人しょうにん旅人たびびとなどが往来おうらいしていた[8]幕末ばくまつから明治めいじにかけて南側みなみがわ周辺しゅうへん山腹さんぷくの6箇所かしょ鉱山こうざんで、ぎんどうなまりなどが産出さんしゅつされていた[8][10]杉峠すぎとうげ西側にしがわ向山むかいやま鉱山こうざん東側ひがしがわ御池おいけ鉱山こうざんくに鉱山こうざんこうあきら鉱山こうざん大蔵おおくら鉱山こうざんがあった。御池おいけ鉱山こうざん付近ふきんには飯場はんばがあり、明治めいじ末期まっき最盛さいせいには300にんあまりの工夫くふうはたらいていた[8]。その周辺しゅうへんには金山かなやま神社じんじゃこうあきら尋常じんじょう小学校しょうがっこうがあった[11]滋賀しがけんがわでは雨乞あまご信仰しんこう対象たいしょうであり[12]山上さんじょうにあるちいさなれることないいけ大峠おおとうげさわ)でむかし神事しんじおこなわれていた[9]

登山とざん[編集へんしゅう]

登山とざんルート[編集へんしゅう]

かく方面ほうめんから登山とざんどう開設かいせつされている[3][4][6][7][13]整備せいびじょうきょうにより、クマザサなどのヤブであるきにくい場合ばあいがある。甲津畑こうづはたからのルートなどでは夏期かきヤマビルあらわれる[8]1964ねん昭和しょうわ39ねん)から34年間ねんかん近畿日本鉄道きんきにほんてつどう朝日新聞社あさひしんぶんしゃおよ名古屋なごやテレビ中心ちゅうしんとなり鈴鹿すずかセブンマウンテン登山とざん大会たいかいはじまり、その一座いちざであった[14]登山とざんどう周辺しゅうへんではアザミ、アセビ、イワカガミイワウチワキランソウスミレセンブリツルアリドオシMitchella undulata)、ツルリンドウトリカブト、ホンシャクナゲ、ママコナマムシグサリンドウなどのはなられる。周辺しゅうへん尾根おねひがし雨乞岳あまごいだけ山頂さんちょうなどからは琵琶湖びわこ周辺しゅうへん鈴鹿山脈すずかさんみゃく山並やまなみを見渡みわたすことができる[3]ひがし雨乞岳あまごいだけ雨乞岳あまごいだけ比較ひかくして開放かいほうてき見晴みはらしが[4]。コクイたに沿いのコクイたに出合であいからクラたに区間くかんではみちまよいによる遭難そうなん多発たはつしていて、滋賀しがけん警察けいさつひがし近江おうみ山岳さんがく遭難そうなん対策たいさく協議きょうぎかいによる注意ちゅうい標識ひょうしき設置せっちされている[15]

国道こくどう477ごう武平たけひらトンネル西にしにある雨乞岳あまごいだけ登山とざんこう
  • 武平ぶへいトンネルからのルート - 国道こくどう477ごう鈴鹿すずかスカイライン)の武平ぶへいトンネル西にし登山とざんこうからクラたにひがし雨乞岳あまごいだけ経由けいゆするルート
  • いねだにからのルート - 国道こくどう477ごういねたに登山とざんこうからひがし雨乞岳あまごいだけ経由けいゆするルート
  • 朝明あさけ渓谷けいこくからのルート - 朝明あさけ渓谷けいこくからひらとうげ杉峠すぎとうげ経由けいゆするルート
  • 甲津畑こうづはたからのルート - 甲津畑こうづはたから林道りんどうすすみツルベたに出合であい杉峠すぎとうげ経由けいゆするルート、蓮如れんにょ上人しょうにん旧跡きゅうせきがある[6]
  • 綿向山わたむきやまからのルート - 綿向山わたむきやま方面ほうめんからのイハイガだけ大峠おおとうげ清水しみずあたま経由けいゆする縦走じゅうそうルート

その、ダイジョウ、イブネなどからのバリエーションルートがある。  

山小屋やまごや[編集へんしゅう]

地理ちり[編集へんしゅう]

鈴鹿山脈すずかさんみゃくだい2の高峰こうほうで、甲賀こうが最高峰さいこうほうである。

周辺しゅうへんやま[編集へんしゅう]

雨乞岳あまごいだけ山頂さんちょう直下ちょっかきたからのぞ北側きたがわ展望てんぼう北側きたがわびるすぎとうげあたまとの鞍部あんぶすぎとうげがある。中央ちゅうおうのなだらかなやまはイブネ。その背後はいご鈴鹿山脈すずかさんみゃくしゅ稜線りょうせん山並やまなみ、右側みぎがわから釈迦ヶ岳しゃかがたけ竜ヶ岳りゅうがたけ藤原ふじわらたけし御池おいけたけし霊仙山れいせんざん御池岳おいけがたけ霊仙山れいせんざんあいだ最奥さいおう伊吹山いぶきやまのぞめる。

鈴鹿山脈すずかさんみゃくしゅ稜線りょうせんにある御在所岳ございしょだけから西にしびる尾根おねぐんかい尾根おね)にある[6]尾根おね西方せいほう綿向山わたむきやま北方ほっぽう水谷みずたにたけし(カクレグラ)の尾根おねおよびイブネ・銚子ちょうしこうなどの尾根おねびる。山頂さんちょうの1.2 kmひがし標高ひょうこう1,073 mのなな人山ひとやまがある。

山容さんよう 山名やまな 標高ひょうこう
(m)[1][2]
三角さんかくてん等級とうきゅう
基準きじゅんてんめい[1]
雨乞岳あまごいだけからの
方角ほうがく距離きょり(km)
備考びこう
釈迦ヶ岳しゃかがたけ 1,091.89  さんとう
釈迦ヶ岳しゃかがたけ
北東ほくとう 7.2
御在所岳ございしょだけ 1,212 一等いっとう)「御在所山ございしょさん
(1209.37 m)
ひがし 3.2 日本にっぽん百名山ひゃくめいざん
1209.37m
一等いっとう三角さんかくてん
イブネ[17] 1,160 きた北東ほくとう 1.7
ひがし雨乞岳あまごいだけ 1,226[4] 東北東とうほくとう 0.4 ひろたいらな山頂さんちょう
雨乞岳あまごいだけ 1,237.67  さんとう
雨乞岳あまごいだけ
0 鈴鹿山脈すずかさんみゃくだい2高峰こうほう
綿向山わたむきやま 1,110 西南せいなん西にし 3.9
鎌ヶ岳かまがだけ 1,161 東南東とうなんとう 4.0

源流げんりゅう河川かせん[編集へんしゅう]

源流げんりゅうとなる以下いか河川かせんは、琵琶湖びわこながれる[18]

周辺しゅうへんとうげ[編集へんしゅう]

北側きたがわすぎとうげあたまとの鞍部あんぶ杉峠すぎとうげふるくは「千種ちくさえつ」の山越やまごえ古道ふるみちであった。

周辺しゅうへんには以下いかとうげがある。

  • 佐目さめとうげ(イブネと杉峠すぎとうげあたまとの鞍部あんぶ
  • 杉峠すぎとうげ杉峠すぎとうげあたま雨乞岳あまごいだけとの鞍部あんぶ標高ひょうこう1,042 m) - すぎ古木ふるき一本いっぽんのこ古道ふるみち千種ちくさえつかよっていて、現在げんざい登山とざんどうとなっている。
  • 大峠おおとうげ清水しみずあたまとイハイガだけとの鞍部あんぶ
  • 武平峠ぶへいとうげ御在所岳ございしょだけ鎌ヶ岳かまがだけとの鞍部あんぶ標高ひょうこう877 m)

交通こうつう・アクセス[編集へんしゅう]

雨乞岳あまごいだけ周辺しゅうへん風景ふうけい[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c 基準きじゅんてん成果せいかとう閲覧えつらんサービス”. 国土こくど地理ちりいん. 2012ねん9がつ22にち閲覧えつらん
  2. ^ a b 日本にっぽんおも山岳さんがく標高ひょうこう滋賀しがけん”. 国土こくど地理ちりいん. 2012ねん9がつ22にち閲覧えつらん
  3. ^ a b c 名古屋なごや周辺しゅうへんやま (2010)、356-357ぺーじ
  4. ^ a b c d e f しん日本にっぽん山岳さんがく (2005)、1247-1248ぺーじ
  5. ^ a b c d コンサイス日本にっぽん山名やまな辞典じてん (1992)、24ぺーじ
  6. ^ a b c d e f g 鈴鹿すずかやま 万能ばんのうガイド (2006)、58-61ぺーじ
  7. ^ a b c 日本にっぽんやま1000 (1992)、541ぺーじ
  8. ^ a b c d e f g 滋賀しがけんやま (1995)、98-99ぺーじ
  9. ^ a b c 鈴鹿すずかあるく (1995)、100-104ぺーじ
  10. ^ あかねのもりづくり構想こうそう” (PDF). 滋賀しがけん. pp. 1. 2012ねん9がつ23にち閲覧えつらん
  11. ^ 永源寺えいげんじ地区ちくまちづくり協議きょうぎかい御池おいけ鉱山こうざん旧跡きゅうせき現地げんち案内あんないばん
  12. ^ こころにのこ滋賀しが風景ふうけい雨乞岳あまごいだけ”. 滋賀しがけん. 2012ねん9がつ23にち閲覧えつらん
  13. ^ 地図ちずある鈴鹿すずかやま (2003)、200-203ぺーじ
  14. ^ 鈴鹿すずかあるく (1995)、56-57ぺーじ
  15. ^ 警察けいさつ山岳さんがく救助きゅうじょ活動かつどうについて”. 滋賀しがけん警察けいさつ (2008ねん11月18にち). 2012ねん9がつ23にち閲覧えつらん
  16. ^ やま溪谷けいこく2011ねん1がつごう付録ふろくやま便利べんり手帳てちょう2011)』やま溪谷社けいこくしゃ、2010ねん12月、178ぺーじASIN B004DPEH6Gぺーじ 
  17. ^ たけぎょうノート イブネ https://web.archive.org/web/20091228010229/http://www.geocities.jp/tokaigakko/page-69.ibune2.htm
  18. ^ a b 御在所ございしょ霊仙りょうぜん伊吹いぶき昭文社しょうぶんしゃやま高原こうげん地図ちず2011年版ねんばん〉、2011ねん2がつISBN 9784398757845 
  19. ^ 滋賀しがけん甲賀こうが土木どぼく事務所じむしょ

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 西尾にしお寿一ひさいち御在所山ございしょさん釈迦ヶ岳しゃかがたけ雨乞岳あまごいだけ銚子ちょうしこうほか』ナカニシヤ出版しゅっぱん鈴鹿すずかやまたに4〉、1990ねん2がつISBN 4888481113 
  • 日本にっぽんやま1000』やま溪谷社けいこくしゃやまけいカラー名鑑めいかん〉、1992ねん8がつISBN 4635090256 
  • 徳久とくひさだまゆう編集へんしゅうへん『コンサイス日本にっぽん山名やまな辞典じてん三省堂さんせいどう、1992ねん10がつISBN 4-385-15403-1 
  • 片岡かたおか浜子はまこさわはら道則みちのり山本やまもと武人たけひと米田よねだみのる滋賀しがけんやまやま溪谷社けいこくしゃぶんけん登山とざんガイド〉、1995ねん5がつ15にちISBN 463502184X 
  • 吉住よしずみ友一ともかず笠井かさい道男みちお鈴鹿すずかあるく』やま溪谷社けいこくしゃ〈フルカラー特選とくせんガイド〉、1995ねん11月。ISBN 4635170845 
  • 西内にしうち正弘まさひろ地図ちずある鈴鹿すずかやま ハイキング100せん中日新聞社ちゅうにちしんぶんしゃ、2003ねん9がつISBN 4806204641 
  • 西内にしうち正弘まさひろ鈴鹿すずかやま 万能ばんのうガイド』中日新聞社ちゅうにちしんぶんしゃ、2006ねん9がつISBN 4-8062-0526-5 
  • 日本にっぽん山岳さんがくかい へんしん日本にっぽん山岳さんがく』ナカニシヤ出版しゅっぱん、2005ねん11月。ISBN 4-779-50000-1 
  • あずか日出夫ひでお改訂かいてい新版しんぱん 名古屋なごや周辺しゅうへんやまやま溪谷社けいこくしゃ、2010ねん7がつISBN 9784635180177 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]