1984年ねんアメリカグランプリ

 1984年ねんアメリカグランプリ

レース詳細しょうさい
日程にってい	1984年ねんシーズン第だい9戦せん
決勝けっしょう開催かいさい日び	7月がつ8日にち
開催かいさい地ち	ダラス市街地しがいちコース アメリカ テキサス州しゅう ダラス
コース長ちょう	3.901km
レース距離きょり	67周しゅう（261.37km）
決勝けっしょう日び天候てんこう	晴はれ（ドライ）
ポールポジション
ドライバー	ナイジェル・マンセル
タイム	1'37.041
ファステストラップ
ドライバー	ニキ・ラウダ
タイム	1'45.353（Lap 22）
決勝けっしょう順位じゅんい
優勝ゆうしょう	ケケ・ロズベルグ 2:01'22.617
2位い	ルネ・アルヌー
3位い	エリオ・デ・アンジェリス

1984年ねんアメリカグランプリは、1984年ねんF1世界せかい選手権せんしゅけんの第だい9戦せんとして、1984年ねん7月がつ8日にちにアメリカ・ダラスで開催かいさいされた。正式せいしき名称めいしょうはI Stroh's Dallas Grand Prix。しばしばダラスグランプリとも称しょうされる。

概要がいよう

フィンランド人じんのケケ・ロズベルグは激はげしい消耗しょうもう戦せんとなったバトルを生いき残のこり、一いち度どだけの開催かいさいに終おわったダラスグランプリで、ドラマチックで予測よそくも出来できない展開てんかいの結果けっか、このシーズンで唯一ゆいいつの勝利しょうりを挙あげた。このレースは、シーズンを席巻せっけんしたマクラーレンがポイントを獲得かくとくすることができなかった1984年ねんの2レースのうちの一ひとつでホンダエンジンが1967年ねんイタリアグランプリ以来いらいの勝利しょうりを挙あげたレースでもある。ルネ・アルヌーのフェラーリは優勝ゆうしょうしたロズベルグと同どうラップでゴールした唯一ゆいいつのマシンであり、エリオ・デ・アンジェリスはロータスに3位いをもたらした。

このイベントは、ダラスが「世界せかい的てきな都市とし」の地位ちいにあると示しめすための方法ほうほうと考かんがえられた。そして、華氏かし100度ど(約やく摂氏せっし38度ど)を超こえる猛暑もうしょ、週末しゅうまつを通つうじ悪化あっかしてゆく路面ろめん、さらにレースがキャンセルされるという噂うわさにも耐たえた。面白おもしろい狭せまく曲まがりくねったサーキットはテキサス州しゅうフェア・グランドに作つくられた。コース設定せっていにはロングビーチ(アメリカ西にしグランプリ)の主催しゅさい者しゃクリス・プークのヘルプがあり、サーキットには（ロングビーチと同おなじく）2つのヘアピンがあったが、路面ろめんについては特とくにヘルプは無なかった。路面ろめんは予選よせん開始かいし前まえには泡立あわだち始はじめ、数かずラップもすると路面ろめんは剥はがれ始はじめた。

金曜日きんようびの最初さいしょのプラクティスが終おわると、決勝けっしょうを1列れつ目めからスタートすることになるロータスの2人ふたりのドライバー、ナイジェル・マンセルとデ・アンジェリスは、この仮設かせつコースは彼かれらが走はしった中なかで最もっとも荒あれていると語かたった。ネルソン・ピケは、耐たえがたいほどの猛暑もうしょによりコースかドライバーかクルマのどれが最初さいしょに壊こわれるのだろうと語かたった。午後ごごの予選よせんでは、気温きおんは38度どを超こえ、グッドイヤータイヤ装着そうちゃく車しゃが上位じょうい3台だいを占しめた。このアメリカのゴム会社かいしゃにとって、20年間ねんかんのレース活動かつどうで最もっとも高たかい路面ろめん温度おんど、華氏かし150度ど(約やく摂氏せっし65.5度ど)を記録きろくした。

土曜日どようびに行おこなわれたルノーの有名人ゆうめいじんレース終了しゅうりょう後ご、スターリング・モスはVIPスイートで元もとアメリカ大統領だいとうりょうのジミー・カーターに自己じこ紹介しょうかいした。「大統領だいとうりょうと握手あくしゅするのは初はじめてです」と述のべたモスに対たいし、カーターは自身じしんが大だいのレースファンで、すぐにモスと分わかったと明あかした。

決勝けっしょうはアメリカ国内こくないのテレビ中継ちゅうけいの都合つごう、ヨーロッパとの時差じさ関係かんけいなどで日曜日にちようびの午前ごぜん11時じにスタートすると予定よていされた。これは通常つうじょうよりも3時じ間あいだも早はやいものである。猛暑もうしょのため、ウォームアップは午前ごぜん7時じに開始かいしするとされた。これは、ウィリアムズのジャック・ラフィットには明あきらかに早はやすぎるようで、彼かれはパジャマ姿すがたでサーキットに現あらわれた。ウォームアップは遅延ちえんの後のちキャンセルされた。これは土曜日どようびに行おこなわれたカナディアン-アメリカン・チャレンジカップのレースで路面ろめんがひどく荒あれてしまったことによる。路面ろめんは徹夜てつやで補修ほしゅうされ、スタートの30分ふん前まえまで続つづけられた。ニキ・ラウダとアラン・プロストは各かくドライバーに働はたらきかけ、レースのボイコットを呼よびかけた。しかし、ロズベルグはレースの開催かいさいを強つよく主張しゅちょうした

ロズベルグは傘かさの下したに腰こしを下おろし「何なにを大騒おおさわぎしているのか分わからないね」と言いった。煙草たばこに火ひをつけ肩かたをすくめ、「いくら議論ぎろんし文句もんくを並ならべても、スタート時刻じこくにはそれをすべて畳たたんでいつも通とおりレースをするだけさ。ここまでレースの準備じゅんびも済すんでいるのだし。路面ろめんがあろうが無なかろうが、分わかっているだろう、僕ぼくらはレースをする。」

「同郷どうきょうの新人しんじん」アイルトン・セナと争あらそう、ネルソン・ピケ。

ロズベルグは正ただしかった。バーニー・エクレストンは90000人にんのファンと、世界中せかいじゅうの数すう百ひゃく万まんにのぼる視聴しちょう者しゃを失望しつぼうさせないことを決定けっていし、ラリー・ハグマン(TVドラマ「ダラス」シリーズの'J.R.'を演えんじた俳優はいゆう)がグリーンフラッグを振ふってスタートのパレードラップがスタートした。

マンセルは初はつのポールポジションから後続こうぞくをリードし、レースのほぼ半分はんぶんまで誰だれも前まえに出ださせなかった。デレック・ワーウィックはミスファイアに見舞みまわれたデ・アンジェリスを抜ぬき、何なん度どかマンセルに並ならびかけたが抜ぬくことはできなかった。11周しゅう目め、ワーウィックはやり過すぎてマンセルのロータスの前まえでスピンしてタイヤウォールに当あたり、レースを終おえた。次ついでラウダがマンセルに挑いどむが、ラウダはミスファイアが直なおったアンジェリスに抜ぬき返がえされた。

先頭せんとうの5台だい（マンセル、デ・アンジェリス、ラウダ、ロズベルグ、プロスト）が一団いちだんとなっていた。14周しゅう目めにロズベルグがラウダを抜ぬいて3位いに上あがり、2台だいのロータスに迫せまって行いった。18周しゅう目めにロズベルグはデ・アンジェリスを抜ぬき、左右さゆうにマシンを振ふりながらマンセルに襲おそい掛かかって観客かんきゃくを興奮こうふんさせた。予選よせんを4位いで通過つうかしたアルヌーはグリッドからスタートすることができず、後方こうほうからレースを開始かいしした。1周しゅう目め終了しゅうりょう時じまでにアルヌーは7台だいを抜ぬいており、アルヌーとピケは先頭せんとうグループに接近せっきんしていた。

ロズベルグは、ラウダとデ・アンジェリスを抜ぬいていたプロストと一時いちじ的てきに順位じゅんいを入いれ替かえたが抜ぬき返がえし、最終さいしゅう的てきにはマンセルの大おおきなミスを誘さそい、リードを奪うばうことに成功せいこうした。マンセルのフロントタイヤは急速きゅうそくに減へり、その後ご3周しゅうで更さらにポジションを3つ落おとして38周しゅう目めにピットインした。ピケはウォールにヒットして9台だい目めのリタイアとなり、アルヌーは5位いまで上あがってきた。

プロストは49周しゅう目めにロズベルグからトップを奪うばい、すぐに7.5秒びょうのリードを奪うばった。レースの行方ゆくえはこれで確定かくていしたかと思おもわれたが、8周しゅう後ごには驚おどろくことにプロストもウォールに当あたりホイールのリムを傷いためたことでレースを終おえた。ロズベルグはトップを引ひき継つぎ、素晴すばらしいレースを見みせたアルヌーに対たいして10秒びょうのリードを持もっていた。特製とくせいのヘルメットとスーツの冷却れいきゃくシステムにも助たすけられ、2時じ間あいだルールにより予定よていの68周しゅうよりも1周しゅう少すくなくなったこのレースで、ウィリアムズにとってシーズン唯一ゆいいつの勝利しょうりを獲得かくとくした。

デ・アンジェリスは、2台だい目めのウィリアムズに乗のるラフィットに対たいして充分じゅうぶんな差さをつけて最終さいしゅう的てきに3位いで戻もどってきた。デ・アンジェリスのチームメイト、マンセルは最終さいしゅうコーナーでウォールに当あたりドライブシャフトを壊こわし、惰性だせいで進すすみ停止ていしした。観客かんきゃくの声援せいえんによりマンセルはマシンを押おし始はじめた。しかしフィニッシュラインに到達とうたつする前まえに疲労ひろう困憊こんぱい、熱中ねっちゅう症しょうにより倒たおれてしまった。マンセルはオゼッラのピエルカルロ・ギンザーニにかわされ、3周しゅう遅おくれの6位いとして扱あつかわれた。

順位じゅんい

予選よせん

順位じゅんい	No	ドライバー	コンストラクター	タイム	差さ
1	12	ナイジェル・マンセル	ロータス・ルノー	1'37.041	—
2	11	エリオ・デ・アンジェリス	ロータス・ルノー	1'37.635	+0.594
3	16	デレック・ワーウィック	ルノー	1'37.708	+0.667
4	28	ルネ・アルヌー	フェラーリ	1'37.785	+0.744
5	8	ニキ・ラウダ	マクラーレン・TAG	1'37.987	+0.946
6	19	アイルトン・セナ	トールマン・ハート	1'38.256	+1.215
7	7	アラン・プロスト	マクラーレン・TAG	1'38.544	+1.503
8	6	ケケ・ロズベルグ	ウィリアムズ・ホンダ	1'38.767	+1.726
9	27	ミケーレ・アルボレート	フェラーリ	1'38.793	+1.752
10	15	パトリック・タンベイ	ルノー	1'38.907	+1.866
11	2	コラード・ファビ	ブラバム・BMW	1'38.960	+1.919
12	1	ネルソン・ピケ	ブラバム・BMW	1'39.439	+2.398
13	14	マンフレッド・ヴィンケルホック	ATS・BMW	1'39.860	+2.189
14	23	エディ・チーバー	アルファロメオ	1'39.911	+2.870
15	20	ジョニー・チェコット	トールマン・ハート	1'40.027	+2.986
16	26	アンドレア・デ・チェザリス	リジェ・ルノー	1'40.095	+3.054
17	4	ステファン・ベロフ	ティレル・フォード	1'40.336	+3.295
18	24	ピエルカルロ・ギンザーニ	オゼッラ・アルファロメオ	1'41.176	+4.135
19	25	フランソワ・エスノー	リジェ・ルノー	1'41.303	+4.262
20	18	ティエリー・ブーツェン	アロウズ・BMW	1'41.318	+4.277
21	22	リカルド・パトレーゼ	アルファロメオ	1'41.328	+4.287
22	17	マルク・スレール	アロウズ・BMW	1'42.592	+5.551
23	21	ヒューブ・ロテンガッター	スピリット・ハート	1'43.084	+6.043
24	9	フィリップ・アリオー	RAM・ハート	1'43.222	+6.181
25	5	ジャック・ラフィット	ウィリアムズ・ホンダ	1'43.304	+6.263
26	10	ジョナサン・パーマー	RAM・ハート	1'44.676	+7.635
DNQ	3	マーティン・ブランドル	ティレル・フォード	2'31.960	+54.919

決勝けっしょう

順位じゅんい	No.	ドライバー	コンストラクタ	周回しゅうかい	タイム/リタイヤ	グリッド	ポイント
1	6	ケケ・ロズベルグ	ウィリアムズ・ホンダ	67	2:01:22.617	8	9
2	28	ルネ・アルヌー	フェラーリ	67	+ 22.464	4	6
3	11	エリオ・デ・アンジェリス	ロータス・ルノー	66	+1 Lap	2	4
4	5	ジャック・ラフィット	ウィリアムズ・ホンダ	65	+2 Laps	24	3
5	24	ピエルカルロ・ギンザーニ	オゼッラ・アルファロメオ	65	+2 Laps	18	2
6	12	ナイジェル・マンセル	ロータス・ルノー	64	ギアボックス	1	1
7	2	コラード・ファビ	ブラバム・BMW	64	+3 Laps	11
8	14	マンフレッド・ヴィンケルホック	ATS・BMW	64	+3 Laps	13
Ret	8	ニキ・ラウダ	マクラーレン・TAG	60	スピン	5
Ret	7	アラン・プロスト	マクラーレン・TAG	56	スピン	7
Ret	18	ティエリー・ブーツェン	アロウズ・BMW	55	スピンオフ	20
Ret	27	ミケーレ・アルボレート	フェラーリ	54	スピン	9
Ret	17	マルク・スレール	アロウズ・BMW	54	スピン	22
Ret	19	アイルトン・セナ	トールマン・ハート	47	クラッチ	6
Ret	10	ジョナサン・パーマー	RAM・ハート	46	電気でんき系けい	25
Ret	1	ネルソン・ピケ	ブラバム・BMW	45	スピン	12
Ret	15	パトリック・タンベイ	ルノー	25	スピン	10
Ret	20	ジョニー・チェコット	トールマン・ハート	25	スピン	15
Ret	26	アンドレア・デ・チェザリス	リジェ・ルノー	15	スピン	16
Ret	21	ヒューブ・ロテンガッター	スピリット・ハート	15	燃料ねんりょう漏もれ	23
Ret	22	リカルド・パトレーゼ	アルファロメオ	12	スピン	21
Ret	16	デレック・ワーウィック	ルノー	10	スピン	3
DSQ	4	ステファン・ベロフ	ティレル・フォード	9	失格しっかく	17
Ret	23	エディ・チーバー	アルファロメオ	8	スピン	14
Ret	25	フランソワ・エスノー	リジェ・ルノー	0	アクシデント	19
DNS	9	フィリップ・アリオー*	RAM・ハート
DNQ	3	マーティン・ブランドル	ティレル・フォード

• フィリップ・アリオーは土曜日どようびのクラッシュにより決勝けっしょうに不ふ出走しゅっそう (Autocourse 1984-85)
• リザルトは、特とくに明記めいきの無ない限かぎりF1公式こうしきサイト“The Official Formula 1 website”. 2008年ねん6月がつ12日にち閲覧えつらん。およびAutocourse 1984-1985より。

ノート

• 最もっとも高たかい気温きおんで行おこなわれたF1レースのうちの一ひとつ。 At rolloff, 気温きおんは華氏かし104度ど(約やく摂氏せっし40度ど)となり、これは1955年ねんアルゼンチングランプリ、2005年ねんバーレーングランプリに匹敵ひってきする。

参照さんしょう

• Rob Walker (October, 1984). "1st Dallas Grand Prix: Cool Keke". Road & Track, 178-182.
• Mike S. Lang (1992). Grand Prix!: Race-by-race account of Formula 1 World Championship motor racing. Volume 4: 1981 to 1984. Haynes Publishing Group. ISBN 0-85429-733-2

前まえ戦せん 1984年ねんアメリカ東ひがしグランプリ	FIA F1世界せかい選手権せんしゅけん 1984年ねんシーズン	次つぎ戦せん 1984年ねんイギリスグランプリ
	アメリカグランプリ	次回じかい開催かいさい 1985年ねんアメリカグランプリ