YB-35 (航空機こうくうき)

YB-35 フライング・ウィング

試験しけん飛行ひこう中ちゅうのYB-35

• 用途ようと：戦略せんりゃく爆撃ばくげき機き
• 製造せいぞう者しゃ：ノースロップ社しゃ
• 運用うんよう者しゃ：アメリカ陸軍りくぐん航空こうくう軍ぐん（アメリカ空軍くうぐん）
• 初はつ飛行ひこう：1946年ねん6月25日にち
• 生産せいさん数すう：XB-35(2機き)、YB-35(13機き)

YB-35（Northrop YB-35） は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの航空機こうくうきメーカーであるノースロップ社しゃが、1940年代ねんだいにアメリカ陸軍りくぐん航空こうくう隊たい向むけに開発かいはつしていたレシプロエンジン爆ばく撃げき機きである。愛称あいしょうはフライング・ウィング（FLYING WING）。

制式せいしき採用さいようはなされず、試作しさくのみに終おわり1949年ねんに開発かいはつ中止ちゅうしされている。

概要がいよう

尾翼びよくや目立めだつ胴体どうたい部ぶがない、主翼しゅよくのみで構成こうせいされた全ぜん翼つばさ機きであり、大型おおがたの全ぜん翼つばさ機きとしては実際じっさいに飛行ひこうした世界せかい最初さいしょの機体きたいであった。

主翼しゅよく部ぶ以外いがいには操縦そうじゅう手しゅキャノピー及および機関きかん部ぶとテイルコーン程度ていどしか突起とっき部ぶが無ない、ほぼ完全かんぜんな全ぜん翼つばさ形状けいじょう機きで、推進すいしん機関きかんは空冷くうれい星ほし型がた28気筒きとうの大型おおがたレシプロエンジン4基きを搭載とうさいし、主翼しゅよく後ご縁えんに4基きのプロペラを推進すいしん式しきに配置はいちしている。

コックピットは機体きたい先端せんたんにあり、乗員じょういん区画くかくは与あずか圧あつ構造こうぞうとなっている。爆ばく弾倉だんそうは各かくエンジンの間あいだと機体きたい中心ちゅうしん部ぶの間あいだ、通常つうじょうの機体きたいであれば内うち翼つばさ部ぶに相当そうとうする区画くかくに設もうけられており、片側かたがわ4箇所かしょ、計けい8箇所かしょが設もうけられていた（ただし、この分散ぶんさん配置はいち設計せっけいのため、搭載とうさいできる爆ばく弾だんのサイズと重量じゅうりょうには制限せいげんがあった）。防御ぼうぎょ兵へい装そうも充実じゅうじつしており、ブローニング AN/M3 12.7mm機関きかん銃じゅうを装備そうびする流線型りゅうせんけい銃じゅう塔とうと銃座じゅうざを4連装れんそう3基き（機体きたい中心ちゅうしん部ぶ上下じょうげ及およびテイルコーン後ご端はし）、連装れんそう4基き（外そと翼つばさ部ぶ左右さゆう上下じょうげ）の計けい7基き20門もん配置はいちし、B-29同様どうように全すべて射撃しゃげき計算けいさん装置そうち付つきのリモコン照準しょうじゅん装置そうちを介かいした遠隔えんかく操縦そうじゅう式しきとなっている。

発展形はってんけいとして推進すいしん装置そうちをジェットエンジン8基きに換かわ装そうしたYB-49も開発かいはつされたが、こちらも試作しさくのみにとどまり、アメリカ軍ぐんは、より一般いっぱん的てきな機体きたい形状けいじょうのコンベアB-36を戦略せんりゃく爆撃ばくげき機きとして採用さいよう・実戦じっせん配備はいびしている。

ただし、レーダーに捕捉ほそくされにくいという全ぜん翼つばさ機きの特徴とくちょうは、後のちにステルス機きとして知しられるB-2 スピリット（1989年ねん初はつ飛行ひこう）開発かいはつの際さいに活用かつようされた。

開発かいはつの経緯けいい

XB-35の前まえに立たつジャック・ノースロップ
頭上ずじょうに見みえる窓まど部分ぶぶんが爆ばく撃げき手しゅ席せき

全ぜん翼つばさ機きの発想はっそうはノースロップ社しゃの創業そうぎょう者しゃであるジャック・ノースロップが追及ついきゅうしていたものであり、彼かれは1930年代ねんだいを通とおして全ぜん翼つばさ機きの製作せいさくに力ちからを注そそいだ。ドイツでもホルテン兄弟きょうだいが同様どうような構想こうそうを練ねっており、同おなじ第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん時ときにホルテン Ho229が開発かいはつされていた。

大西洋たいせいよう渡洋とよう爆撃ばくげき機き構想こうそう

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくが第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんに参戦さんせんする直前ちょくぜんの1941年ねん4月がつ11日にちに、アメリカ陸軍りくぐん航空こうくう隊たい(USAAC)は欧州おうしゅう戦線せんせんの悪化あっかに備そなえ、大西洋たいせいようを横断おうだんして作戦さくせん行動こうどうの可能かのうな爆撃ばくげき機きの構想こうそうを国内こくないの各かく航空機こうくうきメーカーに提示ていじした。

これは

• 最高さいこう速度そくど450マイル毎時まいじ (720 km/h)、巡航じゅんこう速度そくど275マイル毎時まいじ (443 km/h)、運用うんよう高度こうど45,000フィート (14,000 m)で高度こうど25,000フィート (7,600 m)における最大さいだい航続こうぞく距離きょり12,000マイル (19,000 km)

という、当時とうじとしては野心やしん的てきなものであったが、それ故ゆえに短期たんき的てきには実現じつげん困難こんなんであると再考さいこうされ、1941年ねん8月がつ19日にちには

• 最大さいだい航続こうぞく距離きょりは10,000マイル (16,000 km)、10,000ポンド (4.5 t)の爆ばく弾だんを搭載とうさいした際さいの戦闘せんとう行動こうどう半径はんけいが4,000マイル (6,400 km)、巡航じゅんこう速度そくどは240–300マイル毎時まいじ (390–480 km/h)、運用うんよう高度こうど40,000フィート (12,000 m)

へと引ひき下さげられた。

このような長距離ちょうきょり爆撃ばくげき機きを陸軍りくぐん航空こうくう隊たいが必要ひつようとしたのは、仮かりに欧州おうしゅう戦線せんせんでイギリスが敗北はいぼくした場合ばあい、アメリカ本土ほんどから枢軸すうじく国こく側がわを爆撃ばくげきするために、大西おおにし洋ひろしの両りょう岸きしを往復おうふく飛行ひこうできる爆ばく撃げき機きが要求ようきゅうされるためであった。また、40,000フィート（約やく12,200 m）という最大さいだい上昇じょうしょう限界げんかい高度こうどは、当時とうじの迎撃げいげき戦闘せんとう機きでは到達とうたつできない高度こうどであることから設計せっけい要求ようきゅうに含ふくまれていた。

ノースロップ社しゃでは、この要求ようきゅう仕様しようをかねてより構想こうそうしていた全ぜん翼つばさ機きを実現じつげんする機会きかいと考かんがえ、大型おおがたの翼つばさだけの構造こうぞうを持もつ長距離ちょうきょり爆撃ばくげき機きを提案ていあんした。ノースロップの提出ていしゅつした設計せっけい案あんでは「全ぜん翼つばさ構造こうぞうとすれば、理論りろん上じょうでは通常つうじょう形式けいしきの爆ばく撃げき機きよりも速度そくどが速はやく搭載とうさい量りょうも多おおく、そして使用しようする金属きんぞく材料ざいりょうが少すくないために安やすく製作せいさくできる」とされていた。軍ぐんはこの案あんに対たいして大おおきな興味きょうみを示しめして採用さいようし、"XB-35"の仮かり制式せいしき名めいを与あたえ、1941年ねん11月22日にちに同社どうしゃに対たいして開発かいはつ契約けいやくを締結ていけつした。更さらに、軍ぐんは2機き目めの試作しさく機きを製作せいさくするオプションを1942年ねん1月がつ2日にちに行使こうしした。1機き目めは1943年ねん11月に引ひき渡わたされる計画けいかくであった。

N-9M（復元ふくげん機き）

ノースロップの設計せっけい陣じんは1942年ねん前半ぜんはんからXB-35の設計せっけいを開始かいしした。しかし、このような航空機こうくうきの製作せいさくは史上しじょう初はじめてのため、XB-35を設計せっけいするためにデータを蒐集しゅうしゅうする3分ぶんの1スケールの実験じっけん機き、N-9Mを製作せいさくするところから開始かいしされた。N-9Mは1942年ねん12月に初はつ飛行ひこうしている。

こうして完成かんせいしたXB-35では操縦そうじゅう席せきは翼つばさに埋うめ込こまれ、機体きたい構造こうぞうはアルコア社しゃが開発かいはつした新型しんがたのアルミニウム合金ごうきんで製作せいさくされることになった。通常つうじょうの飛行機ひこうきがもつ方向ほうこう舵かじ（ラダー）をもたないため、左右さゆうの翼つばさ端はしに、上下じょうげに割われるように開ひらくフラップ（スプリット・フラップ）を備そなえていた。片方かたがたのみを作動さどうさせると左右さゆうの抗力こうりょく差さでヨーイング・モーメントを発生はっせいし、左右さゆうへの首くび振ふり運動うんどうを制御せいぎょできる。R4360 レシプロエンジン（3000馬力ばりき）を4基きを翼つばさの前ぜん縁えん内ないに設置せっちし、延長えんちょう軸じくを通つうじて後方こうほうの2重じゅう反転はんてんプロペラを駆動くどうした。最大さいだい速度そくどは時速じそく629kmの発揮はっきが可能かのうで、爆ばく弾だんは全すべて機体きたい内ないの爆ばく弾倉だんそうに搭載とうさいし、最大さいだい23.2ｔまでの積載せきさいが可能かのうだった。航続こうぞく距離きょりも爆ばく弾だん7.3ｔを搭載とうさいした場合ばあいであれば1万まん3120kmを達成たっせいできた。機内きないは全ぜん翼つばさ化かされた機体きたい形状けいじょうのためにレイアウトの制約せいやくが緩ゆるく、操縦そうじゅう席せき区画くかくは従来じゅうらいの機体きたいに比くらべて広ひろい空間くうかんを確保かくほしていた。主しゅ操縦そうじゅう席せきは機体きたい上面うわつらにバブルキャノピーを設もうけ、広ひろい視界しかいを確保かくほしている。乗員じょういん区画くかくは全面ぜんめん的てきに与あずか圧おされており、中央ちゅうおう部ぶには乗員じょういん用ようの食堂しょくどう、交代こうたい要員よういんの仮眠かみん室しつが設もうけられていた。防御ぼうぎょ兵へい装そうのうち銃じゅう塔とうはすべて引ひき込こみ式しきとし、空気くうき抵抗ていこうを抑おさえている。

B-35は初はつ飛行ひこうを待またず1942年ねん9月がつ30日にちには前ぜん量産りょうさん型がた"YB-35"が13機き発注はっちゅうされ、1943年ねん6月がつには量産りょうさん型がたとなるB-35Bを200機き生産せいさんする契約けいやくがなされている。しかし、XB-35は様々さまざまな技術ぎじゅつ的てき困難こんなんにぶつかり、開発かいはつは予定よていより遅おくれた。ノースロップに大型おおがた機きの生産せいさん設備せつびがないため、実際じっさいの生産せいさんはマーチン社しゃが担当たんとうすることまで決きまっていたが、実用じつよう化かに時間じかんが掛かかること、そして当初とうしょの予想よそうよりも速度そくどが出でず航続こうぞく距離きょりも短みじかいなど性能せいのうの不足ふそくが予想よそうされた。大戦たいせん終結しゅうけつの見込みこみとジェットエンジンの発展はってん・プロペラ機きの旧式きゅうしき化かがあいまって、量産りょうさん計画けいかくは中止ちゅうしされたが、全ぜん翼つばさ機きという概念がいねん自体じたいには注目ちゅうもくされ、研究けんきゅう目的もくてきのみのために計画けいかくは継続けいぞくされた。結局けっきょく試作しさく機きが完成かんせいしたのは1945年ねん7月がつで、初はつ飛行ひこうに成功せいこうしたのは戦争せんそうが終おわった翌年よくねん1946年ねんの初夏しょかのことであった。

なお、“大西洋たいせいよう横断おうだん爆撃ばくげき機き”構想こうそうには他たにコンベア社しゃとボーイング社しゃも参加さんかしていたが、最終さいしゅう的てきにはコンベアのB-36が採用さいようされた。ボーイング案あんは双そう胴どう機きであったが、早々そうそうに不ふ採用さいようとなり、設計せっけいすら行おこなわれなかった。また、この構想こうそうの要求ようきゅう仕様しようにあった“10,000ポンド(ten-thousand Pounds)の爆ばく弾だんを積つんで10,000マイル(ten-thousand miles)”を飛行ひこうできる”というところから、この計画けいかくにより誕生たんじょうした爆ばく撃げき機きには "ten-ten-Bombers"（テンテンボマー）もしくは"10×10 Bombers"という通称つうしょうが生うまれ、B-36爆撃ばくげき機きの通称つうしょうともなった。以後いごも "ten-ten-Bombers(10×10 Bombers)"の名なはアメリカ戦略せんりゃく空軍くうぐんの装備そうびする長距離ちょうきょり戦略せんりゃく爆撃ばくげき機きの通称つうしょうとして用もちいられることになる。

試験しけん飛行ひこう

1946年ねん6月25日にち、ミューロック乾いぬい湖こにおいて、XB-35 1号機ごうきが45分間ふんかんの初はつ飛行ひこうを行おこなったが、その後ご、様々さまざまな問題もんだい点てんが明あきらかになった。結局けっきょく、1号機ごうきは19回かい、2号機ごうきはわずかに8回かい飛行ひこうした後のち、いずれも地上ちじょうにとどめおかれることとなった。この間あいだにギアボックスの不具合ふぐあいへの対応たいおうとしてプロペラが2重じゅう反転はんてんプロペラから通常つうじょうのものへと換かわ装そうされていたが、これによって振動しんどうが発生はっせいするとともに性能せいのうが大おおきく低下ていかした。また、複雑ふくざつに入いり組くんだ排気はいき系統けいとうの整備せいびには困難こんなんが伴ともなった。わずか2年間ねんかん使用しようしただけであったエンジンには、既すでに金属きんぞく疲労ひろうの兆候ちょうこうが見みられた。

計画けいかくの中止ちゅうしと発展はってん型がた

XB-35は2機き、YB-35は13機き生産せいさんされている。YB-35は1948年ねん5月がつ28日にちに初はつ飛行ひこうした。しかし、振動しんどう問題もんだい等とうの技術ぎじゅつ上じょうの困難こんなんや、1945年ねんからは、すでにジェットエンジン換かわ装そう型がたのYB-49の開発かいはつが開始かいしされていたこともあり、1949年ねん5月に開発かいはつ計画けいかくは中止ちゅうしされた。

YB-35のエンジンを8基きのアリソン J35-A-5 ターボジェットエンジン（推力すいりょく 4,000 lbf(17.79 kN）に変更へんこうし、エンジン収容しゅうよう部ぶの左右さゆうに小型こがたの垂直すいちょく安定あんてい板ばんを追加ついかした発展はってん型がたのYB-49は1947年ねんに初はつ飛行ひこうし、良好りょうこうな性能せいのうなど全ぜん翼つばさ機きの有望ゆうぼう性せいを垣間見かいまみることができたが、飛行ひこうが不安定ふあんていになる欠陥けっかんがあった。そのうえYB-49の1機きが墜落ついらくして搭乗とうじょう者しゃ全員ぜんいんが殉職じゅんしょくする事故じこまで発生はっせいした。これはプロペラ機きとしての設計せっけいのままで翼つばさを再さい設計せっけいすることなくジェット化かしたため、それによる弊害へいがいが生しょうじたといわれている。

詳細しょうさいは「YB-49 (航空機こうくうき)」を参照さんしょう

YB-49と同様どうようの機体きたいにエンジンをアリソン J35-A-19(英語えいご版ばん) ターボジェットエンジン（推力すいりょく 5,000 lbf(22.24 kN）とし、エンジン配置はいちを翼つばさ内ない4基き（左右さゆう2基きずつ）＋翼下よくか2基き（懸垂けんすい式しき）に変更へんこうした"YRB-49A”も開発かいはつされて30機きが発注はっちゅうされたもののキャンセルされ、YB-35A 3番ばん機きからの改造かいぞうにより製作せいさくされた1機きが総計そうけい13回かいの試験しけん飛行ひこうを行おこなったのみに終おわった。1949年ねんにはエンジンをターボジェット6基き（翼つばさ内ない左右さゆうそれぞれに2基き、および翼下よくか左右さゆうに懸垂けんすい式しき1基き、合計ごうけい6基き）とした上うえに加くわえて2基き（左右さゆう1基きずつ）の ノースロップ XT37 “ターボダイン(Turbodyne)”(英語えいご版ばん) ターボプロップエンジン（軸じく出力しゅつりょく 2,400 馬力ばりき(1,800 kW) ）とし、二に重じゅう反転はんてんプロペラを装備そうびした試験しけん機き、"EB-35B"も開発かいはつされ、やはりYB-35Aからの改造かいぞうによって1機きが製作せいさくされたが、こちらは1950年ねんに地上ちじょう試験しけんが行おこなわれたのみに終おわっている。

製造せいぞうされたXB-35の各かく機きはいずれも計画けいかく中止ちゅうし後ご、1949年ねん8月がつにスクラップにされた。YB-35の最初さいしょの8機きはXB-35と同おなじ仕様しようで生産せいさんされ、このうち2機きが後のちにYB-49へと改造かいぞうされた。後期こうき生産せいさんの5機きは改良かいりょうされた仕様しようで生産せいさんされ、YB-35Aと呼よばれた。このうちの1機き(S/N 42-102376)は後のちにYRB-49Aへと改造かいぞうされ、また別べつの1機き(S/N 42-102378)はEB-35Bに改造かいぞうされた後のちに1950年ねん3月がつに解体かいたい処分しょぶんされた。結局けっきょく、YB-35のうちで飛行ひこうしたのは最初さいしょの1機きのみで、改造かいぞうされなかったものはいずれも部品ぶひん取とりに使用しようされるなどした。

• 
  YB-49
• 
  YRB-49A
• 
  EB-35Bの模型もけい

なお、B-35・B-49の両りょう計画けいかくの中止ちゅうしをめぐり長年ながねんに渡わたって陰謀いんぼう論ろんが唱となえられている。これは空軍くうぐん長官ちょうかんスチュアート・シミントン(Stuart Symington)がノースロップに対たいして政府せいふの影響えいきょう下かにあるコンベアとの合併がっぺいを強要きょうようしたものの拒否きょひされたため、意趣いしゅ返がえしとして中止ちゅうしにしたというもので、ジャック・ノースロップ自身じしんが事実じじつであったと証言しょうげんしたため、陰謀いんぼうが現実げんじつにあったとされた。

詳細しょうさいは「YB-49_(航空機こうくうき)#計画けいかく中止ちゅうしに関かんする陰謀いんぼう論ろん」を参照さんしょう

実際じっさいには、当時とうじの核かく戦略せんりゃくの要求ようきゅうに適合てきごうしなかった（当時とうじの核かく爆ばく弾だんでは大おおき過すぎて搭載とうさい出来できなかった）等とうの理由りゆうで中止ちゅうしになったとされている。全ぜん翼つばさ機きはその独特どくとくの特性とくせいから設計せっけいには困難こんなんが多おおく、飛行ひこう制御せいぎょもパイロットの能力のうりょくだけでは難むずかしいものがあった。コンピューターでの計算けいさんによるシミュレーションが行おこなえない開発かいはつ当時とうじでは実際じっさいに飛行ひこうさせる他ほかには風洞ふうどうを用もちいた試験しけん以外いがいでは空そら力りょく特性とくせいや飛行ひこう特性とくせいを把握はあくする方法ほうほうがない上うえ、飛行ひこう制御せいぎょにも機械きかい的てき補助ほじょ装置そうちの他ほかには初歩しょほ的てきな電気でんき的てき制御せいぎょ以外いがいに手段しゅだんがなく、当時とうじの技術ぎじゅつでは完全かんぜんな実用じつよう性せいを持もつ全ぜん翼つばさ機きを開発かいはつ・運用うんようすることには困難こんなんが大おおきかった。

後のちに開発かいはつされたB-2 爆撃ばくげき機きは、ステルス性能せいのう追求ついきゅうの点てんも含ふくめて全面ぜんめん的てきにコンピューターを用もちいた設計せっけいが行おこなわれており、飛行ひこうに関かんしてもフライ・バイ・ワイヤを利用りようしてコンピュータによる操縦そうじゅう補助ほじょを受うけている。これらの技術ぎじゅつの発達はったつにより、B-35/49で果はたし得えなかった“大型おおがた全ぜん翼つばさ機きの問題もんだいなき実用じつよう化か”が数すう十じゅう年ねんの時ときを経へて果はたされることになる。

諸しょ元もと（YB-35）

XB-35の機首きしゅ部ぶ
単たん輪わ式しきの前ぜん脚あしのほかに、ピトー管かんや空気くうき取とり入いれ口こう、ブレードアンテナなどが見みえる

左ひだり下方かほうから見みたXB-35
翼つばさ端はしのスプリット・フラップがわかる

• 乗員じょういん：9名めい（機長きちょう兼けん主しゅ操縦そうじゅう士し、副ふく操縦そうじゅう士し、機関きかん士し、航法こうほう士し、無線むせん通信つうしん士し、兵へい装そう担当たんとう士官しかん（爆ばく撃げき照準しょうじゅん手しゅ）、機銃きじゅう手しゅ（上方かみがた/下方かほうおよび後方こうほう担当たんとう）
• 全長ぜんちょう：16.2 m
• 全幅ぜんぷく：52.2 m
• 高たかさ：6.2 m
• 翼つばさ面積めんせき：370 m²
• 胴体どうたい厚あつし：2.9 m
• 機体きたい重量じゅうりょう：54,432 kg
• 最大さいだい離陸りりく重量じゅうりょう：95,000 kg
• エンジン：プラット&ホイットニー R-4360-17 / R-4360-21 空冷くうれい星ほし型がた28気筒きとうレシプロエンジン 計けい 4基き

出力しゅつりょく 3,000 hp (2,200 kW) × 4

• 最大さいだい速度そくど：629 km/h
• 航続こうぞく距離きょり：13,120 km ※爆ばく弾だん搭載とうさい量りょう 16,000 lb (7,258 kg)における数値すうち
• 最大さいだい上昇じょうしょう高度こうど：12,100 m（39,700フィート）
• 上昇じょうしょう率りつ：625 ft/min（3.2 m/s）
• 武装ぶそう：ブローニング AN/M3 12.7mm機関きかん銃じゅう 20門もん
• 爆ばく弾だん：52,200 lb(23,678 kg) ※最大さいだい値ち

登場とうじょう作品さくひん

小説しょうせつ

『シャングリ・ラ』

第だい13話わ「飛行ひこう少女しょうじょ」で主人公しゅじんこう、北条ほうじょう國子くにこが超ちょう高層こうそう都市としアトラスに行いくために「コードネームKG」にYB-35のような航空機こうくうきに搭乗とうじょうし、軍ぐんの擬態ぎたい戦闘せんとう機きに撃墜げきついされた。

『スカイクロラ』

ロストック空軍くうぐんが大だい規模きぼ攻撃こうげきのために部隊ぶたい集結しゅうけつした際さいに、“填はま鷲わし（テンガ）”という名称めいしょうのYB-35に類似るいじした機体きたいが爆ばく撃げき機きとして複数ふくすう機き登場とうじょうしている。

ゲーム

『ストライカーズ1945』

敵てき機きとして多数たすう登場とうじょう。続編ぞくへんの『ストライカーズ1945II』ではF5Uフライングパンケーキのサポートアタック（ボム）「B-35援護えんご編隊へんたい」として登場とうじょう。2機きのYB-35が画面がめん下部かぶから出現しゅつげんし、援護えんご攻撃こうげきを行おこなうとともに防弾ぼうだん壁かべの役割やくわりを果はたす。自じ機きとしては選択せんたくできない。

『Party Animals』

ステージの一ひとつとして、YB-35に類似るいじした航空機こうくうきが登場とうじょう。高空こうくうの翼つばさ面めんでキャラクターの動物どうぶつたちが大だい乱闘らんとうを行おこなう。翼つばさ面めんから転落てんらくするとダウンとなる。時間じかんが経過けいかするにつれ翼つばさ端はしが凍結とうけつして滑すべりやすくなる他ほか、機体きたいが傾斜けいしゃするようになり、キャラクターの転落てんらくを誘発ゆうはつする。

映画えいが

『トランスフォーマー/最後さいごの騎士きし王おう』

主人公しゅじんこう達たちがイギリスへ移動いどうする際さいに搭乗とうじょう。YB-49のような垂直すいちょく尾翼びよくが取とり付つけられている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 『世界せかいの傑作けっさく機き No125 コンベアB-36ピースメーカー』 (ISBN 978-4893191601) 文ぶん林はやし堂どう：刊かん 2008年ねん
• Graham M. Simons：著ちょ 『Northrop Flying Wings』 Pen & Sword Aviation：刊かん 2013年ねん

関連かんれん項目こうもく

• YB-49 （YB-35をジェットエンジンに換かわ装そうした機体きたい）
• 爆ばく撃げき機き一覧いちらん

外部がいぶリンク

• NORTHROP XB-35 (National Museum of the USAF)
  • USAF Museum XB-35 ※web.archive.org によるアーカイブ版ばん
• NORTHROP YB-35 (National Museum of the USAF)
  • USAF Museum YB-35 ※web.archive.org によるアーカイブ版ばん
• Encyclopedia of American Aircraft※2021年ねん4月がつ15日にち現在げんざいリンク切きれ
• 全ぜん翼つばさ機きの世界せかい