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ヤマノイモ - Wikipedia

ヤマノイモ

ヤマノイモヤマノイモぞく多年草たねんそう、またそのいも

ヤマノイモやまいも[2]山芋やまいも[3]学名がくめい: Dioscorea japonica)は、ヤマノイモヤマノイモぞくのつるせい多年草たねんそう。または、この植物しょくぶついもとして発達はったつした担根たいのこと。地下ちかしょうじるいもは、ジネンジョウ自然しぜんせい)、ジネンジョ自然薯じねんじょ)、ヤマイモ山芋やまいも)ともよばれ、食用しょくようになり、とろろ粘性ねんせい非常ひじょうたかい。また、ヤマノイモぞく食用しょくようしゅ総称そうしょうヤム(yam)をヤマノイモ、ヤマイモとやくすことがある。

ヤマノイモ
ヤマノイモ
ヤマノイモ
分類ぶんるい
さかい : 植物しょくぶつかい Plantae
階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ Angiosperms
階級かいきゅうなし : たん子葉しようるい Monocots
: ヤマノイモ Dioscoreales
: ヤマノイモ Dioscoreaceae
ぞく : ヤマノイモぞく Dioscorea
たね : ヤマノイモ Dioscorea japonica
学名がくめい
Dioscorea japonica Thunb. (1784)[1]
和名わみょう
ヤマノイモやまいも
英名えいめい
Japanese yam
glutinous yam

名称めいしょう

編集へんしゅう

ふるくは中国ちゅうごく原産げんさんナガイモ意味いみする漢語かんご薯蕷とろろててヤマノイモとくんじた。日本にっぽん特産とくさんで、英名えいめいはジャパニーズ・ヤム(Japanese yam[4]中国ちゅうごく植物しょくぶつめいかんめい)では、日本にっぽん薯蕷とろろ(にほんしょよ)という[5]日本にっぽん原産げんさんたねであり、学名がくめいはディオスコレア・ジャポニカ(Dioscorea japonica)である。

別名べつめいのジネンジョ(自然薯じねんじょ)は、自然しぜんえているいもであるところからついたである[5]日本にっぽんで「いも」といえば、ヤマノイモのことを言葉ことばであったが、人里ひとざと栽培さいばいされるみなみアジア原産げんさんサトイモ普及ふきゅうするにつれて、これにたいしてヤマイモ(山芋やまいも)とよばれるようになったものである[2]地方ちほうにより、キリイモ(きりいも)、トロロイモ、ムカゴイモなどの別名べつめいでもよばれる[6]

はたけつくられる中国ちゅうごく原産げんさんのナガイモ(学名がくめい: Dioscorea polystachya)と一緒いっしょにして「やまいも」とよばれることもあるが、ナガイモとヤマノイモは別種べっしゅ植物しょくぶつであり、本来ほんらい山芋やまいも」といえば日本にっぽん原産げんさんのヤマノイモのほうをした[2]。ナガイモのいち品種ひんしゅにはヤマトイモ(大和芋やまといもがあり、日本にっぽん大和やまと地方ちほうから栽培さいばいひろがったとかんがえられているが、ヤマイモ(ヤマノイモ)とヤマトイモのおとているので混同こんどうしょうじたともかんがえられている[2]

分布ぶんぷ生育せいいく環境かんきょう

編集へんしゅう

日本にっぽん原産げんさんで、北海道ほっかいどう南西なんせい[7]から本州ほんしゅう四国しこく九州きゅうしゅう沖縄おきなわ分布ぶんぷ[8]国外こくがいでは台湾たいわんおよび、朝鮮半島ちょうせんはんとう中国ちゅうごく分布ぶんぷする[9]平地ひらちから山地さんちまでの山野やまのはやしゆかりやぶなどにからみついて自生じせい[10][9][3]里山さとやま林道りんどう沿いや河川かせん沿いの土手どてによくえている。やや湿しめった土壌どじょうこのむが、鬱蒼うっそうとしたはやしなかでは自生じせいしにくくすくない。高山こうざんには分布ぶんぷしない。発育はついく条件じょうけんえば公園こうえんみでも生育せいいくする。

形態けいたい生態せいたい

編集へんしゅう

雌雄しゆうかぶ多年生たねんせいつる植物しょくぶつで、くきあわ緑色みどりいろ他物たぶつからみつき、地上ちじょうは1ねんれる[11][10]くきながびて、まばらに枝分えだわかれをする[11]はふつう対生たいせいするが、まれに互生ごせいし、ちょうたまごがたから三角さんかくじょう披針形ひしんけいで、基部きぶへこんだ細長ほそながいハートがたをしており、なが葉柄ようへいくきにつく[11][10][8]には先端せんたんむかってびる5ほん葉脈ようみゃく目立めだ[2]

花期かきなつ(7 - 9がつごろ)で[6]葉腋ようえきから3 - 5ほん細長ほそなが穂状すいじょう花序かじょして、しろちいさなつぶのような目立めだたないはなける[11][2][9]雌雄しゆうかぶかぶめすかぶがあり、雄花おばな花序かじょ直立ちょくりつし、雌花めばな花序かじょがる[11][10]

果実かじつ蒴果ひらたく、円形えんけいおおきな3まいりょうつばさ)があり、たてながさよりよこはばひろ[11][10]。それぞれのりょうなか種子しゅし1個いっこふくんでいて、じゅくすとかべがれて、ちゅうから扁平へんぺい種子しゅし[10][8]種子しゅしは、周囲しゅういかみのようにうす円形えんけい膜質まくしつつばさがついていて、果実かじつれたときに散布さんぷされる[11][10]めすかぶでは種子しゅしのほかに、葉腋ようえき発生はっせいする球状きゅうじょうである零余子ぬかご(むかご、珠芽しゅが)をつけて栄養えいよう繁殖はんしょくする[10][8]。ムカゴ(たま)は、種類しゅるいによってけるものと、つけないものがある[12]。ムカゴは直径ちょっけい1センチメートルほどの球状きゅうじょうから、おおきなものでながさ3センチメートルほどにたっする場合ばあいがある。

地下ちかには円柱えんちゅうじょう肉質にくしつ担根たいいも)が1ほんあり、自然薯じねんじょ(じねんじょ)ともよばれている[10]トロロイモとしてもられているが、いもとされるなかしろくてやわらかい部分ぶぶんは、植物しょくぶつ学的がくてきには特殊とくしゅ組織そしきで担根たい(たんこんたい)とよび、ヤマノイモぞく特有とくゆうでもくきでもない器官きかんであり[2]くき基部きぶについたえだしたがわ部分ぶぶんびたものである[11]。担根たい地下ちかふかくへとまっすぐにびて[11]いしなどの障害しょうがいぶつがなければながさは1メートルえることもある[13]毎年まいとしはるふたたいただきから発芽はつがして地上ちじょうそだてる栄養えいようげんとなり、成長せいちょうにしたがって担根たい縮小しゅくしょうしてなつまでにはもとのイモはすっかりなくなってそらふくろとなり、あきまでにはふたた栄養えいようたくわえていちまわおおきなあたらしい担根たいえられ更新こうしんされる[6][3]。なお、あきにできるヤマノイモにできるいものようなムカゴも、小型こがたの担根たいである[2]

採取さいしゅ栽培さいばい

編集へんしゅう
 
山芋やまいもはたけ

元来がんらい野生やせい植物しょくぶつであり、晩秋ばんしゅうにできる根茎こんけい食用しょくようとするため、かつてはやまってってくるものだった。ヤマノイモと外観がいかんがよくているたねオニドコロがあり、収穫しゅうかくさい間違まちがうことがある[5]。オニドコロは互生ごせいし、にがくてべられない[5]

イモ(担根たい)は晩秋ばんしゅうになって地上ちじょうれるころ(11 - 1がつ[6])が収穫しゅうかく時期じきである。のこったづる目当めあてにして山芋やまいもさがすが、地上ちじょうれると場所ばしょがわからなくなるので、れるまえ目印めじるしをつけておく[13]いもるにはふかあならねばならないので、なるべく斜面しゃめんところさがす。道具どうぐは、ながくわ[6]、シャベルや移植いしょくゴテのほか[13]ぼういもくわばれる大人おとな背丈せたけほどのてつぼうで、先端せんたんたいらになったようなものを使つかう。づる地面じめんはいんだところを特定とくていし、イモをらないように周辺しゅうへんふかげて、いしなどをのぞきながら注意深ちゅういぶか[6]地中ちちゅうふかがりくねってびるイモは、らずにすまでむずかしさがあり[6]先端せんたんまですにはかなりの根気こんきがいる[13]。うまくせた場合ばあいづるもとはしたるいもはしのこして、あなめるときに一緒いっしょめておけば翌年よくねんいも生育せいいくし、ふたた収穫しゅうかくすることができる。

むかご採取さいしゅ時期じきあき(9 - 11月ごろ)で、じゅくすとれただけでつるからちるので、帽子ぼうしなどをざらにして採取さいしゅする[6]

現在げんざいではむかごの状態じょうたいからはたけ栽培さいばいされており、流通りゅうつうしているのは栽培さいばいものがおおい。収穫しゅうかくしやすいように、細長ほそなが塩化えんかビニールパイプやなみばんシートを使つかって栽培さいばいしている。なお、天然てんねんのもの(自然しぜんせい自然薯じねんじょ)は、行為こういそのものがやま斜面しゃめん崩壊ほうかい助長じょちょうすることとう理由りゆうから、山芋やまいもりが禁止きんしされている場合ばあいがある。

利用りようほう

編集へんしゅう
じねんじょ 塊根かいこん せい[14]
100 gあたりの栄養えいよう
エネルギー 506 kJ (121 kcal)
26.7 g
食物しょくもつ繊維せんい 2.0 g
0.7 g
飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん 0.11 g
一価いっか飽和ほうわ 0.04 g
あたい飽和ほうわ 0.11 g
2.8 g
ビタミン
チアミン (B1)
(10%)
0.11 mg
リボフラビン (B2)
(3%)
0.04 mg
ナイアシン (B3)
(4%)
0.6 mg
パントテンさん (B5)
(13%)
0.67 mg
ビタミンB6
(14%)
0.18 mg
葉酸ようさん (B9)
(7%)
29 µg
ビタミンC
(18%)
15 mg
ビタミンE
(27%)
4.1 mg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
6 mg
カリウム
(12%)
550 mg
カルシウム
(1%)
10 mg
マグネシウム
(6%)
21 mg
リン
(4%)
31 mg
鉄分てつぶん
(6%)
0.8 mg
亜鉛あえん
(7%)
0.7 mg
どう
(11%)
0.21 mg
成分せいぶん
水分すいぶん 68.8 g
水溶すいようせい食物しょくもつ繊維せんい 0.6 g
不溶性ふようせい食物しょくもつ繊維せんい 1.4 g
ビオチン(B7 2.4 µg
有機ゆうきさん 0.4 g

ビタミンEはαあるふぁ─トコフェロールのみをしめした[15]廃棄はいき部位ぶい表層ひょうそうおよびひげ
%はアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける
成人せいじん栄養えいよう摂取せっしゅ目標もくひょう (RDI割合わりあい

おも地下ちか出来できながいイモの部分ぶぶん食用しょくようにし、ムカゴも食用しょくようにする[9]根茎こんけいいも)とされる担根たいは、むかしから滋養じよう強壮きょうそうがつくとして食用しょくよう薬用やくよう利用りようされており、根茎こんけいにはデンプン粘液質ねんえきしつムチレージアミラーゼ(ジアスターゼ)、マンニットコリンアルギニンアミノ酸あみのさんサポニンなどがふくまれている[16]根茎こんけいしるはだにつくとかゆみをかんじるときがあるが、根茎こんけいふくまれるサポニンによってはだ刺激しげきされるためで、アレルギー体質たいしつひとつよかんじるときがある[16]。ムチンは、たんぱくしつ吸収きゅうしゅううながして、血糖けっとう上昇じょうしょう抑制よくせいし、コレステロール低下ていかにも効果こうかがある[4]栄養素えいようそとしてはビタミンBぐんビタミンCカリウム食物しょくもつ繊維せんいふく[4]

食用しょくよう

編集へんしゅう

地中ちちゅうながびるいも(担根たい)をすりつぶしてとろろにして食用しょくようにする[17]自生じせいするものは自然薯じねんじょ(じねんじょ)とよばれ、栽培さいばいしゅナガイモながいも)よりモチモチしたしょくかんねばりがつよ[17]。すりおろしたイモを海苔のりいてあぶらげた磯辺いそべき、あら千切せんぎりにしてサラダてんぷらにする[13]

むかごは、おも加熱かねつ調理ちょうりして塩茹しおゆでや、すこ塩味しおあじをつけてみにして食用しょくようにするが[2]生食なましょくもできる。そのままの状態じょうたいだとカリカリというしょくかんたのしめ、すりおろすといも同様どうようつよねばりがある。むかごは、時間じかんをかけてよくでたあとにしおったり、フライパンで塩焼しおやきにしてべられていて、とろろいも同様どうよう滋養じよう強壮きょうそうによいといわれている[11][17]。むかごをべい一緒いっしょいた「むかごめし」は風味ふうみゆたかで、日本にっぽん料理りょうりでしばしば高級こうきゅう料理りょうりでもある[17]あぶらいた唐揚からあにしても[13]

生食なましょく可能かのう理由りゆうはヤマノイモが多量たりょうふく消化しょうか酵素こうそアミラーゼがデンプンの消化しょうか促進そくしんするためといわれている[4]。ただし近年きんねん研究けんきゅうでは、これを否定ひていする研究けんきゅう発表はっぴょうもなされている[18]

とろろ
すりおろしてからしろ醤油じょうゆ出汁だしなどをくわえてのばしとろろにするのが代表だいひょうてき調理ちょうりほうである。ナガイモのとろろと比較ひかくするとはるかにねばつよい。
とろろをばして麦飯むぎめしないしむぎ米飯べいはんにかけた「むぎとろ」があり、東海道とうかいどうじゅうさん鞠子まりこ宿やどげん静岡しずおかけん静岡しずおか駿河するが丸子まるこ)の名物めいぶつとされたが、鞠子まりこ宿やどのとろろじるは、自然薯じねんじょ味噌みそでのばしたものがきょうされる[19]岡本おかもとかの随筆ずいひつ東海道とうかいどうじゅうさん」にも、丸子まりこしょくしたとろろじるについて「ての麦飯むぎめしこうばしい湯気ゆげ神仙しんせんのようなにおいのする自然薯じねんじょいたおいしさがあった」とある[ちゅう 1][20][21]。この宿駅しゅくえきのとろろじるみせは「丁字ていじ」(慶長けいちょう元年がんねん1596ねん創業そうぎょう))であるとその東海道とうかいどうちゅう膝栗毛ひざくりげ明記めいきされており、このみせ浮世絵うきよえ歌川うたがわ広重ひろしげによってもえがかれている[20]松尾まつお芭蕉ばしょうに「うめ若菜わかな鞠子まりこ宿やどのとろろじる」という俳句はいくがあり、みせのそばの句碑くひ文化ぶんか11ねん1814ねん)にてられたものである[20]
とろろいもをすりおろしたものを「やまかけ」としょうし、「まぐろのやまかけ」や「やまかけ蕎麦そば」があるが[22][23]、こうしたやまかけの料理りょうりや、うどんとうにあえて自然薯じねんじょのとろろ使用しようをうたった飲食いんしょくてんもある[24][25]。また、自然薯じねんじょをそばんでった自然薯じねんじょそばもそばしょされている[ちゅう 2][23]
伝統でんとう料理りょうり
芋粥いもがゆは、平安へいあん時代じだい背景はいけいとする物語ものがたり芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけ小説しょうせつ芋粥いもがゆやその原典げんてん今昔こんじゃく物語ものがたりしゅうちゅう)に登場とうじょうするが、これはかわ薄切うすぎりにしたヤマノイモを、アマヅラ煮詰につじるいたものであり、現代げんだいサツマイモりの穀物こくもつかゆであるいわゆる芋粥いもがゆとは根本こんぽんてきちが[26][27]。これは『ぐんしょ類従るいじゅう』に収録しゅうろくされた鎌倉かまくら時代ときよ宮中きゅうちゅう料理りょうり次第しだい事典じてんくりやごとるい』の、菓子かし部類ぶるいについてのうちにその調理ちょうりほうなどが記載きさいされ、文章ぶんしょう以下いかである[28]
いもあずかかゆハ ヨキイモヲかわムキテ ウスクヘキきり <てん> ミセン(あじせんじ)ヲワカシテイモヲイルヘシ イタクニルへカラス またヨキあまかずらせんじニテニルトキハ アマツラいちごうニハすいごうハカリイレテニル也 せきナへ(石鍋いしなべ)ニテニル チヒサキぎんしゃくニテモリテマイラス云々うんぬん ぎんつつみにゅうぎんさじヲク()シテマイラスヘシト云々うんぬん
くりやごとるい
ヤマノイモを利用りようしたべい麺類めんるいである薯蕷とろろめんは、『にち葡辞しょ』(1604ねん)に「Ioyomen ジョヨメン」記載きさいがあり[29]江戸えど時代じだい後期こうきはなわ保己一ほきいち(1821ねんぼつ)があらわした叢書そうしょぞくぐんしょ類従るいじゅう』(料理りょうり物語ものがたり - 飲食いんしょく)のしょうにて「しよよめん(薯蕷とろろめん)」を紹介しょうかいしている。内容ないようはしてき食材しょくざい料理りょうりほうせ、文章ぶんしょう以下いかである。
やまいもこまかにおろし、もちまいこなろくふん、うるこめよんふんをこまかにはたき。やまいもにてよきころにこね。たまをちいさうして、きりむぎうちさるごとくに、うちこう加減かげんは、にまううきあがる時節じせつしるきりむぎ同前どうぜん
はなわ保己一ほきいちぞくぐんしょ類従るいじゅう
現在げんざい薯蕷とろろめん(いもめん)とび、『つづけぐんしょ類従るいじゅうおなじくもちまいうるちまいこな、ヤマノイモを原料げんりょうとしためん[30]
ヤマノイモは、薯蕷とろろ饅頭まんじゅう(じょうよまんじゅう)、かるかんぐりきんとんなど、和菓子わがし材料ざいりょうにもなる。製菓せいかよう粉末ふんまつじょう製品せいひんもある。
その
とろろを出汁だしでのばさずに海苔のりつつんでげる料理りょうりもあり、磯辺いそべばれている。
ヤマノイモをなまのまま短冊たんざくりなどのべやすいかたちって、なま野菜やさいともにサラダにするかた現代げんだいではおこなわれている。断面だんめん若干じゃっかんねばがあり、オクラのようなしょくかんたのしめる。

薬用やくよう

編集へんしゅう

古事記こじき』(712ねん)や『日本書紀にほんしょき』(720ねん)の時代じだいから薬用やくようとして使つかわれていたとみられている[4]

かわをむいて天日てんじつ乾燥かんそうした担根たい根茎こんけい)は、野山のやまやく(のさんやく)または土山つちやまやく(どさんやく)としょうされ、生薬きぐすりになる[5]やまやく(さんやく)は本来ほんらい中国ちゅうごく原産げんさん栽培さいばいされるナガイモ通称つうしょう:トロロイモ)のかんめいであるが[5]、ヤマノイモまたはナガイモの担根たい生薬きぐすりにしたものもこうばれており[10]栽培さいばいしゅ同様どうようもちいられる[10]。これは日本にっぽん薬局方やっきょくほう収録しゅうろくされており[31]滋養じよう強壮きょうそうとめとめ作用さようがあり、ちょうえんによる下痢げりめ、夜尿症やにょうしょうしき尿にょう寝汗ねあせせき喘息ぜんそく腰痛ようつう効用こうようがあるといわれており[5][10]薬効やっこうはナガイモ(やまやく)もおなじである[5]漢方かんぽうでは滋養じよう強壮きょうそう目的もくてき処方しょほうされ[13]はちあじ地黄じおうまる(はちみじおうがん)、六味ろくみまる(ろくみがん)などのかん方方かたがたざい使つかわれる。生薬きぐすりにする根茎こんけいは、あきにヤマノイモのへんしてから冬季とうきにかけて根茎こんけいって、あたま部分ぶぶんって水洗みずあらいし、たけべらでかわって、ながさ10センチメートルくらいにり、天日てんじつ乾燥かんそうして調整ちょうせいされる[5][10]

民間みんかん療法りょうほうでは、乾燥かんそうした根茎こんけい1にちりょう3 - 10グラムみず400 ccで4ぶんの3になるまでせんじ、3かいけて服用ふくようする用法ようほうられる[5][10]。また、生食なましょくしても同様どうよう薬効やっこう期待きたいできる[5]せき喘息ぜんそくにはたんれにくくカラせきひとによいとされ[5]せい根茎こんけいをすりろして、砂糖さとうくわえて熱湯ねっとうそそいで[10]寝汗ねあせ夜尿症やにょうしょうに、せいのイモをアルミホイルでつつきにし、毎日まいにちべると効果こうかがあるといわれる[13]ものするひとや、のあるひとへの服用ふくよう禁忌きんきとされている[5]滋養じよう強壮きょうそうには根茎こんけいをそのまま生食なましょくするか、やま薬酒やくしゅをつくって就寝しゅうしんまえに1にちさかずき1はい飲用いんようする[16]やま薬酒やくしゅは、やまやくこまかくくだいて200グラムあたりホワイトリカー1.8リットルみ、2 - 3かげつ冷暗所れいあんしょ保存ほぞんしておいてから、してつくられる[16]

晩秋ばんしゅうからふゆげたなまいもは、こおらせない程度ていど保存ほぞんし、随時ずいじ使用しようする[10]かわをむき、せんり、輪切わぎりなどを使つかいやすいおおきさにり、すいにつけてから水気みずけをふきり、冷凍れいとう保存ほぞんぶくろにいれて保存ほぞんする。保存ほぞん期間きかんは2週間しゅうかん[32]

類似るいじしている植物しょくぶつ

編集へんしゅう

ヤマノイモ植物しょくぶつトコロたねなど野生やせいしゅすうしゅあり、いずれもよくている。むかごつくるものもあるが、食用しょくようにならないものもある。

高知こうちけんでは2006ねん平成へいせい18ねん)に、静岡しずおかけんでは2007ねん平成へいせい19ねん)に、ユリ鑑賞かんしょうよう植物しょくぶつグロリオサ球根きゅうこんをヤマイモと間違まちがえてべ、死亡しぼうする事故じここっている[33]ユリ鑑賞かんしょうよう植物しょくぶつのグロリオサは、かたちていないが、球根きゅうこん形状けいじょうているのが特徴とくちょうである。

中国ちゅうごく原産げんさん17世紀せいき日本にっぽん移入いにゅうされたとされるナガイモ(D. batatas)のことをヤマイモとぶことがある[34]栽培さいばいされるヤマノイモによく植物しょくぶつで、野生やせいしてくき葉柄ようへい紫色むらさきいろになった個体こたいは、ヤマノイモとの見分みわけはむずかしい[9]。ナガイモとおなじようなかた可能かのうなため混同こんどうして店舗てんぽられるが、あくまで同属どうぞく別種べっしゅであり、風味ふうみにもおおきなちがいがある。

トコロしゅ

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  • オニドコロおに野老ところ学名がくめいDioscorea tokoro
    別名べつめいトコロ。北海道ほっかいどうから九州きゅうしゅう分布ぶんぷはやしゆかりえ、ヤマノイモによくているが、はハートがた互生ごせいするので区別くべつがつく[13]花期かきなつで、雄花おばな雌花めばなとも緑色みどりいろはなへんひらき、雄花おばな花序かじょがる。にムカゴは出来できず、地下ちかいもふとくならずにがくて食用しょくようにならない[35][36]
  • ヒメドコロひめ野老ところ学名がくめいDioscorea tenuipes
    本州ほんしゅうから沖縄おきなわ分布ぶんぷ山野さんやはやしゆかりえる。はハートがたでオニドコロよりもほそい。花期かきなつで、雄花おばな雌花めばなともオニドコロによくあわ緑色みどりいろで、雄花おばな花序かじょがる。にムカゴは出来できないが、根茎こんけい食用しょくようになる。[36]

カシュウイモ

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別名べつめいニガカシュウ何首烏かしゅう、Dioscorea bulbifera)。名前なまえかたまり薬用やくようの「何首烏かしゅう」にていることからついた。はハートがたおおきく、デコボコしたおおぶりのむかごがつくが、日本にっぽん野生やせいしゅにが有毒ゆうどく食用しょくようにならない。しかし苦味にがみどくのない品種ひんしゅもあり、ヤマイモほどおおきくはならずねばりもないが食用しょくようできる。むかごがすうひゃくグラムにも肥大ひだいする「Air potato(空中くうちゅうのイモ)」とばれる食用しょくよう品種ひんしゅもあり、日本にっぽんでも「宇宙うちゅうイモ」という名前なまえ一部いちぶ栽培さいばいされている。

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ あえて薬味やくみあおのりをふりかけなかった、とも描写びょうしゃされている。
  2. ^ 箱根はこねはつはななど。

出典しゅってん

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  1. ^ 米倉よねくら浩司こうじ梶田かじたただし (2003-). “Dioscorea japonica Thunb. ヤマノイモ(標準ひょうじゅん”. BG Plants 和名わみょう学名がくめいインデックス(YList). 2023ねん9がつ16にち閲覧えつらん
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