ヤマノイモ
ヤマノイモ(
ヤマノイモ | |||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]() ヤマノイモ
| |||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||
Dioscorea japonica Thunb. (1784)[1] | |||||||||||||||||||||
ヤマノイモ( | |||||||||||||||||||||
Japanese yam glutinous yam |
名称
分布 と生育 環境
形態 ・生態
-
ムカゴ
-
果実 -
販売 されている自然薯
採取 ・栽培
イモ(担根
むかごの
利用 法
100 gあたりの | |
---|---|
エネルギー | 506 kJ (121 kcal) |
26.7 g | |
2.0 g | |
0.7 g | |
0.11 g | |
0.04 g | |
0.11 g | |
2.8 g | |
ビタミン | |
チアミン (B1) |
(10%) 0.11 mg |
リボフラビン (B2) |
(3%) 0.04 mg |
ナイアシン (B3) |
(4%) 0.6 mg |
パントテン |
(13%) 0.67 mg |
ビタミンB6 |
(14%) 0.18 mg |
(7%) 29 µg | |
ビタミンC |
(18%) 15 mg |
ビタミンE |
(27%) 4.1 mg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(0%) 6 mg |
カリウム |
(12%) 550 mg |
カルシウム |
(1%) 10 mg |
マグネシウム |
(6%) 21 mg |
リン |
(4%) 31 mg |
(6%) 0.8 mg | |
(7%) 0.7 mg | |
(11%) 0.21 mg | |
68.8 g | |
0.6 g | |
1.4 g | |
ビオチン(B7) | 2.4 µg |
0.4 g | |
| |
| |
%は |
食用
むかごは、
- とろろ
- すりおろしてから
白 醤油 や出汁 などを加 えてのばしとろろにするのが代表 的 な調理 法 である。ナガイモのとろろと比較 すると遥 かに粘 り気 が強 い。 - とろろを
伸 ばして麦飯 ないし麦 入 り米飯 にかけた「麦 とろ」があり、東海道 五 十 三 次 の鞠子 宿 (現 、静岡 県 静岡 市 駿河 区 丸子 )の名物 とされたが、鞠子 宿 のとろろ汁 は、自然薯 を味噌 でのばしたものが供 される[19]。岡本 かの子 の随筆 「東海道 五 十 三 次 」にも、丸子 で食 したとろろ汁 について「炊 き立 ての麦飯 の香 ばしい湯気 に神仙 の土 のような匂 いのする自然薯 は落 ち付 いたおいしさがあった」とある[注 1][20][21]。この宿駅 のとろろ汁 の店 は「丁字 屋 」(慶長 元年 (1596年 創業 ))であるとその名 が『東海道 中 膝栗毛 』に明記 されており、この店 は浮世絵 師 の歌川 広重 によっても描 かれている[20]。松尾 芭蕉 に「梅 若菜 、鞠子 宿 のとろろ汁 」という俳句 があり、店 のそばの句碑 は文化 11年 (1814年 )に建 てられたものである[20]。 - とろろ
芋 をすりおろしたものを「山 かけ」と称 し、「まぐろの山 かけ」や「山 かけ蕎麦 」があるが[22][23]、こうした山 かけの料理 や、うどん等 にあえて自然薯 のとろろ使用 をうたった飲食 店 もある[24][25]。また、自然薯 をそば粉 に練 り込 んで打 った自然薯 そばもそば処 で出 されている[注 2][23]。
伝統 料理 芋粥 は、平安 時代 を背景 とする物語 (芥川 龍之介 の小説 『芋粥 』やその原典 『今昔 物語 集 』中 )に登場 するが、これは皮 を剥 き薄切 りにしたヤマノイモを、アマヅラの煮詰 め汁 で炊 いたものであり、現代 のサツマイモ入 りの穀物 粥 であるいわゆる芋粥 とは根本 的 に違 う[26][27]。これは『群 書 類従 』に収録 された鎌倉 時代 の宮中 料理 次第 事典 『厨 事 類 記 』の、菓子 の部類 についてのうちにその調理 法 などが記載 され、文章 は以下 である[28]。
薯 預 粥 ハ ヨキイモヲ皮 ムキテ ウスクヘキ切 <天 > ミセン(味 煎 )ヲワカシテイモヲイルヘシ イタクニルへカラス又 ヨキ甘 葛 煎 ニテニルトキハ アマツラ一 合 ニハ水 二 合 ハカリイレテニル也石 ナへ(石鍋 )ニテニル チヒサキ銀 ノ尺 子 ニテモリテマイラス云々 銀 ノ提 ニ入 テ銀 ノ匙 ヲク(具 )シテマイラスヘシト云々 —厨 事 類 記
- ヤマノイモを
利用 した米 粉 の麺類 である薯蕷 麺 は、『日 葡辞書 』(1604年 )に「Ioyomen ジョヨメン」記載 があり[29]、江戸 時代 後期 に塙 保己一 (1821年 没 )が著 した叢書 『続 群 書 類従 』(料理 物語 -飲食 部 )の章 にて「しよよめん(薯蕷 麺 )」を紹介 している。内容 は端 的 に食材 と料理 法 を載 せ、文章 は以下 である。
山 の芋 を細 かにおろし、もち米 の粉 六 分 、うる米 四 分 をこまかにはたき。山 の芋 にてよきころにこね。玉 をちいさうして、きりむぎうち申 ごとくに、うち候 。茹 で加減 は、にまううきあがる時節 。是 も汁 は切 麥 同前 。
現在 は薯蕷 麺 (いもめん)と呼 び、『続 群 書 類従 』同 じくもち米 とうるち米 の粉 、ヤマノイモを原料 とした麺 を言 う[30]。- ヤマノイモは、
薯蕷 饅頭 (じょうよまんじゅう)、かるかん、栗 きんとんなど、和菓子 の材料 にもなる。製菓 用 の粉末 状 の製品 もある。
- その
他 - とろろを
出汁 でのばさずに海苔 に包 んで揚 げる料理 もあり、磯辺 揚 げと呼 ばれている。 - ヤマノイモを
生 のまま短冊 切 りなどの食 べやすい形 に切 って、他 の生 野菜 と共 にサラダにする食 べ方 も現代 では行 われている。断面 に若干 の粘 り気 があり、オクラのような食 感 が楽 しめる。
薬用
『
保存
類似 している植物
ヤマノイモ
ナガイモ
トコロ種
- オニドコロ(
鬼 野老 、学名 :Dioscorea tokoro) - ヒメドコロ(
姫 野老 、学名 :Dioscorea tenuipes)本州 から沖縄 に分布 。山野 の林 縁 に生 える。葉 はハート形 でオニドコロよりも細 い。花期 は夏 で、雄花 ・雌花 ともオニドコロによく似 た淡 緑色 で、雄花 の花序 が垂 れ下 がる。葉 の付 け根 にムカゴは出来 ないが、根茎 は食用 になる。[36]
カシュウイモ
関連 項目
脚注
注釈
出典
- ^
米倉 浩司 ・梶田 忠 (2003-). “Dioscorea japonica Thunb. ヤマノイモ(標準 )”. BG Plants和名 −学名 インデックス(YList). 2023年 9月 16日 閲覧 。 - ^ a b c d e f g h i
吉村 衞 2007, p. 120. - ^ a b c
高野 昭人 監修 世界文化社 編 2006, p. 110. - ^ a b c d e
猪股 慶子 監修 成美 堂 出版 編集 部 編 2012, p. 124. - ^ a b c d e f g h i j k l m
貝津 好 孝 1995, p. 73. - ^ a b c d e f g h
篠原 準 八 2008, p. 108. - ^
北海道 南西 部 桧山 地域 に生育 するヤマノイモの遺伝 的 特性 - ^ a b c d
鈴木 庸夫 ・高橋 冬 ・安 延 尚文 2012, p. 220. - ^ a b c d e
近田 文弘 監修 亀田 龍吉 ・有沢 重雄 著 2010, p. 214. - ^ a b c d e f g h i j k l m n o p
馬場 篤 1996, p. 112. - ^ a b c d e f g h i j
田中 孝治 1995, p. 211. - ^
板木 利隆 『図解 やさしい野菜 づくり』家 の光 協会 、1996年 10月 、257頁 。ISBN 978-4259533946。 - ^ a b c d e f g h i
高野 昭人 監修 世界文化社 編 2006, p. 111. - ^
文部 科学 省 「日本 食品 標準 成分 表 2015年版 (七 訂 )」 - ^
厚生 労働省 「日本人 の食事 摂取 基準 (2015年版 )」 - ^ a b c d
田中 孝治 1995, p. 212. - ^ a b c d
篠原 準 八 2008, p. 109. - ^
団野 源一 「ヤマノイモを生 で食 することができる理由 は生 でんぷんの消化 性 によるものではない」『大阪 青山 大学 紀要 』第 2巻 、大阪 青山 大学 『大阪 青山 大学 紀要 』編集 委員 会 、2009年 3月 、29-31頁 、CRID 1050564288823221632、ISSN 18833543、国立 国会図書館 書誌 ID:10905743。 - ^
徳力 富吉 郎 『東海道 53次 』保育 社 、1992年 、37頁 。 - ^ a b c
清水 茂雄 「静岡 市 とその周辺 の文学 」『国文学 年次 別 論 文集 国文学 一般 平成 10(1998)年 』、42–43頁 2000年 。 - ^
岡本 かの子 『東海道 五 十 三 次 』1939年 - ^
見 坊 豪紀 「山 かけ」『三省堂 国語 辞典 』、1152頁 1982年 。 - ^ a b
植原 路 郎 『蕎麦 談義 』東京 堂 出版 、1973年 、61頁 。 - ^ 「マグロ
祭 りきょうから都留 」『読売新聞 』2019年 3月 16日 。 - ^ 「
自然薯 の栽培 を10年 前 に始 め自然薯 料理 店 「みや古 」、玉城 町 に」『伊勢 志摩 経済 新聞 』2014年 2月 23日 。 - ^
赤井 達郎 『京 の美術 と芸能 :浄土 から浮世 へ』京都 新聞 出版 センター、1985年 、89頁 。 - ^
谷口 歌子 「′85短歌 セミナ--2-古典 文学 にみる食物 --奈良 ・平安 期 を中心 として」『短歌 研究 』第 42巻 、第 2号 、313頁 、1990年 。 - ^ 『
群 書 類従 厨 事 類 記 』国立 公文書 館 デジタルアーカイブ - ^
林 文子 「『日 葡辞書 』が語 る食 の風景 (1)」『東京女子大学 紀要 論集 』第 58巻 第 2号 、東京女子大学 、2008年 3月 、134頁 、CRID 1050001337659479552、ISSN 04934350。 - ^
歴史 民俗 用語 辞典 「薯蕷 麺 イモメン(imomen)」日外 アソシエーツ 2015年 09月 19日 閲覧 - ^ “
第 十 八 改正 日本 薬局方 ”.厚生 労働省 . p.生薬 -166. 2021年 4月 5日 閲覧 。 - ^ 『
作 りおきおかずで朝 ラクチン!基本 のお弁当 300選 』180頁 。 - ^
自然 毒 のリスクプロファイル:高等 植物 :グロリオサ厚生 労働省 - ^
主婦 の友社 編 『野菜 まるごと大図 鑑 』主婦 の友社 、2011年 2月 20日 、204 - 205頁 。ISBN 978-4-07-273608-1。 - ^
吉村 衞 2007, p. 121. - ^ a b
近田 文弘 監修 亀田 龍吉 ・有沢 重雄 著 2010, p. 215. - ^
鈴木 晋一 『たべもの史話 』小学館 ライブラリー、1999年 、195 - 201頁
参考 文献
板木 利隆 『図解 やさしい野菜 づくり』家 の光 協会 、1996年 10月 、257頁 。ISBN 978-4259533946。猪股 慶子 監修 成美 堂 出版 編集 部 編 『かしこく選 ぶ・おいしく食 べる野菜 まるごと事典 』成美 堂 出版 、2012年 7月 10日 、124 - 125頁 。ISBN 978-4-415-30997-2。貝津 好孝 『日本 の薬草 』小学館 〈小学館 のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年 7月 20日 、73頁 。ISBN 4-09-208016-6。近田 文弘 監修 亀田 龍吉 ・有沢 重雄 著 『花 と葉 で見 わける野草 』小学館 、2010年 4月 10日 、214 - 215頁 。ISBN 978-4-09-208303-5。篠原 準 八 『食 べごろ摘 み草 図鑑 :採取 時期 ・採取 部位 ・調理 方法 がわかる』講談社 、2008年 10月 8日 、108 - 109頁 。ISBN 978-4-06-214355-4。鈴木 庸夫 ・高橋 冬 ・安 延 尚文 『草木 の種子 と果実 』誠 文 堂 新光 社 〈ネイチャーウォッチングガイドブック〉、2012年 9月 28日 、220頁 。ISBN 978-4-416-71219-1。高野 昭人 監修 世界文化社 編 『おいしく食 べる山菜 ・野草 』世界文化社 〈別冊 家庭 画 報 〉、2006年 4月 20日 、110 - 112頁 。ISBN 4-418-06111-8。田中 孝治 『効 きめと使 い方 がひと目 でわかる薬草 健康 法 』講談社 〈ベストライフ〉、1995年 2月 15日 、210 - 212頁 。ISBN 4-06-195372-9。馬場 篤 『薬草 500種 -栽培 から効用 まで』大貫 茂 (写真 )、誠 文 堂 新光 社 、1996年 9月 27日 、112頁 。ISBN 4-416-49618-4。吉村 衞 『おいしく食 べる山野 草 』主婦 と生活社 、2007年 4月 23日 、120 - 121頁 。ISBN 978-4-391-13415-5。