第 だい 17族 ぞく 元素 げんそ (だい17ぞくげんそ、仏 ふつ : halogène アロジェーヌ、英 えい : halogen ハロジェン )は周期 しゅうき 表 ひょう において第 だい 17族 ぞく に属 ぞく する元素 げんそ の総称 そうしょう 。フッ素 ふっそ ・塩素 えんそ ・臭素 しゅうそ ・ヨウ素 もと ・アスタチン ・テネシン がこれに分類 ぶんるい される。ただしアスタチンは半減 はんげん 期 き の長 なが いものでも数時間 すうじかん であるため、その化学 かがく 的 てき 性質 せいしつ はヨウ素 もと よりやや陽性 ようせい が高 たか いことがわかっている程度 ていど である。またテネシンは2009年 ねん にはじめて合成 ごうせい されており、証明 しょうめい されていることがさらに少 すく ない。
フッ素 ふっそ 、塩素 えんそ 、臭素 しゅうそ 、ヨウ素 もと は性質 せいしつ がよく似 に ており、アルカリ金属 きんぞく あるいはアルカリ土 ど 類 るい 金属 きんぞく と典型 てんけい 的 てき な塩 しお を形成 けいせい するので、これら元素 げんそ からなる元素 げんそ 族 ぞく を古代 こだい ギリシア語 ご の「塩 しお 」ἅλς háls と、「作 つく る」γεννάω gennáō を合 あ わせ「塩 しお を作 つく るもの」という意味 いみ の「halogen ハロゲン 」と、18世紀 せいき フランス で命名 めいめい された。これらの任意 にんい の元素 げんそ を表 あらわ すために化学 かがく 式 しき 中 なか ではしばしば X と表記 ひょうき される。任意 にんい のハロゲン単体 たんたい を X2 と表 あらわ す。
ハロゲン元素 げんそ 単体 たんたい X2 のサンプル
周期 しゅうき 表 ひょう の一番 いちばん 右側 みぎがわ にある貴 き ガス の左 ひだり 隣 となり の列 れつ に位置 いち する。価 あたい 電子 でんし は最 さい 外 そと 殻 から のs軌道 きどう およびp軌道 きどう にある電子 でんし である(s軌道 きどう は2電子 でんし が占有 せんゆう し、p軌道 きどう は5個 こ の電子 でんし が占有 せんゆう しており一価 いっか の陰 かげ イオン になる)。
フッ素 ふっそ 9 F
塩素 えんそ 17 Cl
臭素 しゅうそ 35 Br
ヨウ素 もと 53 I
アスタチン 85 At
電子 でんし 配置 はいち
[
He
]
2
s
2
2
p
5
{\displaystyle {\ce {[He]{}2s^2{}2p^5}}}
[
Ne
]
3
s
2
3
p
5
{\displaystyle {\ce {[Ne]{}3s^2{}3p^5}}}
[
Ar
]
3
d
10
4
s
2
4
p
5
{\displaystyle {\ce {[Ar]{}3d^{10}{}4s^2{}4p^5}}}
[
Kr
]
4
d
10
5
s
2
5
p
5
{\displaystyle {\ce {[Kr]{}4d^{10}{}5s^2{}5p^5}}}
[
Xe
]
4
f
14
5
d
10
6
s
2
6
p
5
{\displaystyle {\ce {[Xe]{}4f^{14}{}5d^{10}{}6s^2{}6p^5}}}
第 だい 1イオン化 いおんか エネルギー (kJ·mol-1 )
1,681
1,251
1,140
1,008
930
電子 でんし 付加 ふか エンタルピー (kJ·mol-1 )
−328
−349
−325
−295
−270
電子 でんし 親和力 しんわりょく (kJ·mol-1 )
340
365
342
303
298
電気 でんき 陰性 いんせい 度 ど (Allred-Rochow)
4.1
2.83
2.74
2.21
-
イオン半径 はんけい (X- , pm )
133
181
195
216
(〜230)
共有 きょうゆう 結合 けつごう 半径 はんけい (r(X2 )/2, pm)
72
99
114
133
(〜140)
van der Waals半径 はんけい (pm)
147
175
185
198
-
融点 ゆうてん (X2 , K )
40
172.16
265.90
386.75
(575)
沸点 ふってん (X2 , K)
85
239.10
332
458
(610)
解離 かいり エネルギー (X2 , kJ·mol-1 )
155
243
193
151
(〜116)
水 みず 和 わ エネルギー (X- , kJ·mol-1 )
485
350
320
280
(〜277)
還元 かんげん 電位 でんい † E 0 (V)
2.89
1.40
1.10
0.62
(〜0.3)
( ) 内 ない は推定 すいてい 値 ち
↑
X
2
(
aq
)
+
2
e
−
⟶
2
X
−
(
aq
)
{\displaystyle {\ce {(^) X2 (aq) + 2 e^- -> 2 X^- (aq)}}}
第 だい 17族 ぞく 元素 げんそ は、原子 げんし 番号 ばんごう が若 わか いものは非常 ひじょう に反応 はんのう 性 せい に富 と む。特 とく にフッ素 ふっそ は第 だい 一 いち イオン化 いおんか エネルギーが大 おお きい上 うえ 、F−F 間 あいだ の結合 けつごう 距離 きょり が短 みじか く、それぞれの原子 げんし の非 ひ 共有 きょうゆう 電子 でんし 対 たい 同士 どうし が反発 はんぱつ することによって結合 けつごう エネルギーが小 ちい さくなっているために著 いちじる しく反応 はんのう 性 せい が高 たか く、酸化 さんか 剤 ざい としては最 もっと も強 つよ い部類 ぶるい のものである。
塩素 えんそ は水圏 すいけん に大量 たいりょう に存在 そんざい する(クラーク数 すう )が、地殻 ちかく 中 なか の存在 そんざい 比 ひ ではフッ素 ふっそ >塩素 えんそ >臭素 しゅうそ >ヨウ素 もと である。放射 ほうしゃ 性 せい 物質 ぶっしつ であるアスタチンは、既知 きち の最 もっと も長 なが い半減 はんげん 期 き を持 も つ質量 しつりょう 数 すう 210の同位 どうい 体 たい でも8.3時 じ 間 あいだ しかないため、自然 しぜん 環境 かんきょう 中 ちゅう にはほとんど存在 そんざい せず、質量 しつりょう 数 すう 218の同位 どうい 体 たい などがウラン 238 Uの壊変生成 せいせい 物 ぶつ として定常 ていじょう 的 てき に極 ごく 低 てい 濃度 のうど 、存在 そんざい するが確認 かくにん は困難 こんなん である。一般 いっぱん 的 てき に分子 ぶんし 量 りょう の大 おお きなものほどファンデルワールス力 りょく が増大 ぞうだい し、常温 じょうおん 、常 つね 圧 あつ でフッ素 ふっそ は薄 うす 黄色 おうしょく の気体 きたい 、塩素 えんそ は淡 あわ 黄 き 緑色 みどりいろ の気体 きたい 、臭素 しゅうそ は赤褐色 せきかっしょく の液体 えきたい 、ヨウ素 もと は黒 くろ 紫色 むらさきいろ の固体 こたい 、アスタチンは固体 こたい で、ヨウ素 もと 、アスタチンの固体 こたい は金属 きんぞく 光沢 こうたく を持 も つ。
ハロゲン化 か 水素 すいそ の特性 とくせい 一覧 いちらん 表 ひょう
フッ化 か 水素 すいそ HF
塩化 えんか 水素 すいそ HCl
臭 におい 化 か 水素 すいそ HBr
ヨウ化 か 水素 すいそ HI
アスタチン化 か 水素 すいそ HAt
融点 ゆうてん (℃)
−83.5
−114.2
−88.6
−51.0
沸点 ふってん (℃)
19.5
−85.1
−67.1
−35.1
誘電 ゆうでん 率 りつ (液 えき 相 しょう )
83.6 (0 ℃)
9.3 (−95 ℃)
7.0 (−85 ℃)
3.4 (-50 ℃)
H−X 結合 けつごう 解離 かいり エネルギー (kJ·mol−1 )
567
431
366
298
H−X 結合 けつごう 距離 きょり (pm)
92
127
141
161
172
水溶液 すいようえき
フッ化 か 水素 すいそ 酸 さん 弱酸 じゃくさん (pK a = 3.14)
塩酸 えんさん 強酸 きょうさん
臭 におい 化 か 水素 すいそ 酸 さん 強酸 きょうさん
ヨウ化 か 水素 すいそ 酸 さん 強酸 きょうさん
第 だい 17族 ぞく 元素 げんそ の水素 すいそ 化物 ばけもの はハロゲン化 か 水素 すいそ と呼 よ ばれる。水素 すいそ とは1対 たい 1で結合 けつごう する化合 かごう 物 ぶつ しか知 し られておらず、ハロゲン化 か 水素 すいそ 一般 いっぱん を表 あらわ す略号 りゃくごう として HX と書 か き表 あらわ されることが多 おお い。
フッ化 か 水素 すいそ 酸 す 以外 いがい のハロゲン化 か 水素 すいそ は水中 すいちゅう では完全 かんぜん 電離 でんり するものの、その分子 ぶんし 自体 じたい はそれほど強 つよ い極性 きょくせい 物質 ぶっしつ ではない。そして塩化 えんか 水素 すいそ 、臭 におい 化 か 水素 すいそ 、ヨウ化 か 水素 すいそ の水溶液 すいようえき は完全 かんぜん 電離 でんり して強酸 きょうさん 性 せい を示 しめ し、酸 さん の強度 きょうど は HCl < HBr < HI の順 じゅん である。
それに対 たい して、液化 えきか フッ化 か 水素 すいそ は水 みず に相当 そうとう する誘電 ゆうでん 率 りつ と相対 そうたい 的 てき に高 たか い沸点 ふってん を持 も ち、水素 すいそ 結合 けつごう を形成 けいせい する極性 きょくせい 物質 ぶっしつ である点 てん で特徴 とくちょう 的 てき である。また、希薄 きはく 溶液 ようえき であってもフッ化 か 水素 すいそ は水中 すいちゅう で完全 かんぜん 電離 でんり しない。これはイオン半径 はんけい の小 ちい さなものほど水素 すいそ イオン との間 あいだ の静電気 せいでんき 力 りょく が強 つよ くなり、結合 けつごう が強 つよ くなるためである。
酸化 さんか 物 ぶつ ・オキソ酸 さん [ 編集 へんしゅう ]
フッ素 ふっそ 以外 いがい のハロゲン元素 げんそ については酸化 さんか 数 すう として I, III, (IV,) V, VII のいずれかをとり、種々 しゅじゅ の酸化 さんか 物 ぶつ とオキソ酸 さん を形成 けいせい する。しかし、フッ素 ふっそ は酸化 さんか 数 すう として -I しか取 と りえず、他 た のハロゲン元素 げんそ とは化学 かがく 的 てき 性質 せいしつ が異 こと なる面 めん を持 も つ。フッ素 ふっそ と酸素 さんそ の化合 かごう 物 ぶつ はフッ素 ふっそ 酸化 さんか 物 ぶつ と呼 よ ぶよりは酸素 さんそ のフッ化物 ばけもの と呼 よ ぶのが適当 てきとう な性質 せいしつ を有 ゆう し、いわゆるオキソ酸 さん の構造 こうぞう をもつ物質 ぶっしつ は HOF (次 つぎ 亜 あ フッ素 ふっそ 酸 さん )以外 いがい 形成 けいせい しない。
ハロゲン元素 げんそ の酸化 さんか 物 ぶつ を次 つぎ に示 しめ す。
また、ハロゲン元素 げんそ のオキソ酸 さん を次 つぎ に示 しめ す。
ハロゲンの酸化 さんか 数 すう を増 ま すに従 したが いハロゲン元素 げんそ のオキソ酸 さん は次 つぎ の傾向 けいこう を示 しめ す。
熱 ねつ 不安定 ふあんてい 性 せい が減少 げんしょう する
速度 そくど 論 ろん 的 てき な酸化 さんか 作用 さよう が減少 げんしょう する
酸 さん の強 つよ さが増大 ぞうだい する
名称 めいしょう が似 に るが、過 か ハロゲン酸 さん は過 か 酸 さん ではなく通常 つうじょう の最高 さいこう 酸化 さんか 状態 じょうたい のオキソ酸 さん である。
ハロゲン間 あいだ 化合 かごう 物 ぶつ [ 編集 へんしゅう ]
また、異 こと なるハロゲン元素 げんそ が結合 けつごう した化合 かごう 物 ぶつ を形成 けいせい し、それらはハロゲン間 あいだ 化合 かごう 物 ぶつ と呼 よ ばれる。
代表 だいひょう 的 てき なものに、以下 いか のものが知 し られている。
また、複数 ふくすう のハロゲン元素 げんそ が結合 けつごう してイオン となったものをポリハロゲン化物 ばけもの イオン (陰 かげ イオンの場合 ばあい )、ポリハロゲニウムイオン (陽 ひ イオンの場合 ばあい )と呼 よ ぶ。ハロゲンアニオンはハロゲン単体 たんたい と結合 けつごう して ICl2 − , BrF4 − , I3 − , I5 − , I7 − などを生成 せいせい することが知 し られている。またハロゲン間 あいだ 化合 かごう 物 ぶつ の溶融 ようゆう 物 ぶつ は電気 でんき 伝導 でんどう 性 せい を示 しめ すものがあり、それらは自己 じこ イオン化 いおんか によりポリハロゲニウムイオン が生成 せいせい している。
3
IX
↽
−
−
⇀
(
I
−
X
−
I
)
+
+
IX
2
−
(
X
=
Cl
,
B
)
{\displaystyle {\ce {3IX <=> (I-X-I)^+ + IX2^- (X = Cl, B)}}}
なお、ハロゲン間 あいだ 化合 かごう 物 ぶつ は消防 しょうぼう 法 ほう 第 だい 2条 じょう 第 だい 7項 こう 及 およ び別表 べっぴょう 第 だい 一 いち 第 だい 6類 るい 4号 ごう 、危険 きけん 物 ぶつ の規制 きせい に関 かん する政令 せいれい 第 だい 1条 じょう により危険 きけん 物 ぶつ 第 だい 6類 るい に指定 してい されている。
有機 ゆうき ハロゲン化物 ばけもの [ 編集 へんしゅう ]
有機 ゆうき ハロゲン化物 ばけもの とは、狭義 きょうぎ ではハロゲン化 か アルキル 、ハロゲン化 か アリール など、炭化 たんか 水素 すいそ の水素 すいそ がハロゲン原子 げんし で置 お き換 か わった化合 かごう 物 ぶつ を指 さ す。広義 こうぎ ではハロゲンを含 ふく む有機 ゆうき 化合 かごう 物 ぶつ を意味 いみ し、ハロゲン化 か アシルやハロゲン酸 さん を含 ふく む。
有機 ゆうき ハロゲン化物 ばけもの に含 ふく まれる炭素 たんそ -ハロゲン結合 けつごう はハロゲンの高 たか い電気 でんき 陰性 いんせい 度 ど のために分極 ぶんきょく している。そのため、炭素 たんそ 原子 げんし を陰 かげ イオンなど求 もとめ 核 かく 剤 ざい が攻撃 こうげき しやすい。しかしながら、ハロゲン化 か アリールなど sp2 炭素 たんそ にハロゲンが結 むす びついた基質 きしつ においては、立体 りったい 的 てき な要因 よういん によりこのような反応 はんのう が起 お こりにくい。詳細 しょうさい は 求 もとめ 核 かく 置換 ちかん 反応 はんのう 、芳香 ほうこう 族 ぞく 求 もとめ 核 かく 置換 ちかん 反応 はんのう を参照 さんしょう 。
鉱物 こうぶつ 学 がく において、金属 きんぞく 元素 げんそ とハロゲン元素 げんそ とが結合 けつごう している鉱物 こうぶつ をハロゲン化 か 鉱物 こうぶつ (ハロゲンかこうぶつ、英 えい : halide mineral )という。岩塩 がんえん (NaCl)、蛍 ぼたる 石 せき (CaF2 ) などがある。