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バブル経済けいざい

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バブルから転送てんそう

バブル経済けいざい(バブルけいざい、Economic bubble)とは、おおむ不動産ふどうさん株式かぶしきをはじめとした時価じか資産しさん価格かかくが、投機とうきによって経済けいざい成長せいちょう以上いじょうのペースで高騰こうとうして実体じったい経済けいざいから大幅おおはばにかけはなれ、それ以上いじょう投機とうきによってもささえきれなくなるまでの経済けいざい状態じょうたい[† 1][† 2]。バブルは英語えいごで「あわ、あぶく」を意味いみする。おおくの場合ばあい信用しんよう膨張ぼうちょうともなっており[1]投機とうき停止ていしすると一転いってんして信用しんよう収縮しゅうしゅくおちいる。

ナスダック総合そうごう指数しすう企業きぎょう利益りえき比較ひかく(1971ねん-2023ねん)。 世界せかい金融きんゆう危機きき有名ゆうめいリーマンショックは2008ねん

経済けいざいがく定義ていぎでは、バブルとは「ファンダメンタルズ価格かかく理論りろん価格かかく)からはなれた資産しさん価格かかくうごき」とされている[2]

概要がいよう

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バブルの発生はっせいから崩壊ほうかいまでのなが

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土地とち住宅じゅうたく株式かぶしきなど、定価ていかさだまっていない時価じか資産しさんは、取引とりひきのたびに刻々こくこく約定やくじょう価格かかく変化へんかさせる。時価じか会計かいけいにおいては、時価じか資産しさん資産しさん価値かち直近ちょっきん約定やくじょう価格かかく時価じか資産しさん総量そうりょうをかけわせたものであり、市場いちばにおける取引とりひき価格かかく変化へんか会計かいけいじょう社会しゃかい全体ぜんたい時価じか資産しさん総額そうがくおおきく変動へんどうさせる。

ある資産しさんたいする消費しょうひ需要じゅよう増加ぞうかし、供給きょうきゅう逼迫ひっぱくする局面きょくめんにおいては、資産しさんすうすう上回うわまわり、資産しさん価格かかく上昇じょうしょうする。資産しさん価格かかく上昇じょうしょうする局面きょくめんにおいては、資産しさん転売てんばいによる売買ばいばいえきキャピタル・ゲイン)をもとめる投資とうし金融きんゆう機関きかんによる資産しさんへの投資とうしおこなわれるため、さらに資産しさん価格かかく上昇じょうしょうする。資産しさん価格かかく上昇じょうしょう見越みこした消費しょうひしゃによる需要じゅよう消費しょうひ需要じゅよう一段いちだん増加ぞうかさせ、時価じか資産しさん増加ぞうかによる帳簿ちょうぼじょう資産しさん増加ぞうか要因よういんとして、消費しょうひ前向まえむきになった消費しょうひしゃによる消費しょうひ需要じゅよう増加ぞうか投資とうしによる投資とうし需要じゅよう増加ぞうか発生はっせいし、連鎖れんさてき資産しさん価格かかく上昇じょうしょうするという、資産しさんインフレスパイラルがまれる。この時期じきがバブルである。

一方いっぽう資産しさん価格かかく消費しょうひしゃ購買こうばいりょくいちじるしく上回うわまわったとき、もしくは市場いちばにおける資産しさん供給きょうきゅうりょう消費しょうひしゃ実需じつじゅいちじるしく上回うわまわったとき資産しさんすうすう下回したまわり、資産しさん価格かかく下落げらくはじめる。投資とうし金融きんゆう機関きかん売買ばいばい損失そんしつ(キャピタル・ロス)をけるためいっせいに資産しさん売却ばいきゃくし、資産しさん価格かかく暴落ぼうらくする。時価じか資産しさん暴落ぼうらくによる会計かいけいじょう国民こくみん資産しさん急減きゅうげんとさらなる資産しさん価格かかく下落げらく期待きたいした消費しょうひしゃによるびかえにより、資産しさん需要じゅよう急減きゅうげんし、資産しさんデフレ状態じょうたいおちいる。これがバブル崩壊ほうかいである。

バブルの崩壊ほうかいは、不良ふりょう債権さいけん問題もんだい発生はっせいともなう。これは、バブル経済けいざい時価じか資産しさん高騰こうとう膨張ぼうちょうした法人ほうじん金融きんゆう資産しさんたいして査定さていおこなわれ、それをもと返済へんさい不可能ふかのう融資ゆうしおこなわれるからである。バブル崩壊ほうかい資産しさん価格かかく下落げらくすると、のこされた負債ふさい返済へんさいによる貸借たいしゃく対照たいしょうひょう調整ちょうせい投資とうし停滞ていたいをもたらす。こうしてバブル経済けいざい実体じったい経済けいざい好影響こうえいきょうあたえていたのとおなじく、バブル崩壊ほうかい実体じったい経済けいざいおおきな打撃だげきあたえることになる。米国べいこくはつ世界せかい恐慌きょうこうや、1991ねん平成へいせい3ねん)3がつ以降いこう日本にっぽんうしなわれた20ねんはその典型てんけいである。

投資とうし行動こうどうとバブルの相関そうかんせい

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投資とうしによる利益りえきは、債券さいけん購入こうにゅう融資ゆうしおこなうことでられる金利きんり収入しゅうにゅう、すなわち配当はいとうえきインカム・ゲイン)と、土地とちかぶ絵画かいが売買ばいばいしてられる売買ばいばいえきキャピタル・ゲイン)に大別たいべつできる。資産しさんバブルは、このキャピタルゲイン投資とうしによってこされる。債券さいけん購入こうにゅう企業きぎょう融資ゆうしによってられる金利きんり収入しゅうにゅうは、安定あんていして収入しゅうにゅうられるわりに低利ていりりつ(ローリスク・ローリターン)で、専業せんぎょう金融きんゆう保有ほゆうする金融きんゆう技術ぎじゅつかしきれない。資本しほん主義しゅぎ社会しゃかいでは、競争きょうそうイデオロギーのもと、金融きんゆう預金よきんしゃ出資しゅっししゃからハイリスク・ハイリターンをもとめられ、バブルをあお行動こうどうるのである。

経済けいざい学者がくしゃ松原まつばらさとしは「バブルが発生はっせいする社会しゃかいは、将来しょうらい期待きたいがもてる社会しゃかいであり、経済けいざい成長せいちょう余地よちがあるとられる」と指摘してきしている[3]

バブル経済けいざいであったか

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急激きゅうげき資産しさん価格かかく上昇じょうしょう=バブル経済けいざい」と表現ひょうげんされることもあるが、実体じったい経済けいざいわせてソフトランディングした資産しさん価格かかく上昇じょうしょうはバブルではない。投機とうきによるしたささえが不可能ふかのうとなり、バブル崩壊ほうかい(バブル経済けいざい)こって、はじめて大衆たいしゅうはそれまでの経済けいざいがバブル経済けいざいであったということがかる。その意味いみでは「バブルはかなら崩壊ほうかいする」という表現ひょうげんは、論点ろんてん先取せんしゅにすぎない[だれ?]

ベン・バーナンキは「バブルとは、わってみないとそれがバブルであったのか、それとも経済けいざいのファンダメンタルズをあらわしたものであったのかはわからない」としており、バブルの識別しきべつ事実じじつじょう不可能ふかのうであるとしている[4]

バブルの予防よぼう

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自由じゆう市場いちば取引とりひきではストックの適正てきせい価格かかくはつきつめるところ市場いちば参加さんかしゃだれにもわからないため、過剰かじょう期待きたい失望しつぼう群集ぐんしゅう雪崩なだれこし[† 3]、バブルや恐慌きょうこう発生はっせいさせる。厚生こうせい経済けいざいにおいては拡張かくちょうにはおも物価ぶっか高騰こうとう収縮しゅうしゅく恐慌きょうこう)には消費しょうひ投資とうし停滞ていたい失業しつぎょう拡大かくだい問題もんだいとなる。物価ぶっか賃金ちんぎん統制とうせい経済けいざい計画けいかく採用さいよう恐慌きょうこう発生はっせい未然みぜんふせ有望ゆうぼう手立てだてであったが、おおくの社会しゃかい主義しゅぎこくられるように、長期ちょうきてき観点かんてんではかならずしも経済けいざい厚生こうせいたかめるものではなかった。

バブルをこさないためには、株式かぶしき土地とちなどの価格かかく変動へんどうによる売買ばいばい収益しゅうえきをもくろむ投資とうし行動こうどう、とくにオルタナティブ投資とうし制限せいげんする、市場いちば自由じゆう取引とりひき形態けいたい制限せいげん行政府ぎょうせいふ公的こうてき機関きかん取引とりひきルールに関与かんよする、公的こうてき年金ねんきん資金しきん中央ちゅうおう銀行ぎんこうによるアナウンスメントや介入かいにゅう政策せいさく金利きんり税制ぜいせいによる関与かんよなどがおこなわれる。近年きんねんでは機関きかん投資とうし自己じこ売買ばいばい成功せいこう報酬ほうしゅうがた報奨ほうしょう制度せいど過剰かじょうなリスクマネーをもたらしていると批判ひはんされている。時価じか会計かいけい主義しゅぎによる財務ざいむ指針ししん取得しゅとく原価げんか主義しゅぎもどすべきだとの主張しゅちょうもあるが、これにはかえって市場いちば透明とうめいせいぐものだとの批判ひはんがある[だれ?]。オルタナティブ投資とうしでは過剰かじょうレバレッジがストップロスオーダーによる異常いじょう価格かかく変動へんどうをもたらしていると批判ひはんされている[だれ?]

行政府ぎょうせいふ議会ぎかいによる公的こうてき関与かんよについても政府せいふ失敗しっぱい問題もんだいがあり、バブルの生起せいき市場いちば失敗しっぱい)を代替だいたいするものではない。政策せいさく金利きんり公定歩合こうていぶあいマクロ経済けいざい誘導ゆうどうする強力きょうりょく政策せいさく手段しゅだんであるが、経済けいざい自然しぜん成長せいちょうりつ自然しぜん利子りしりつ)もまた、市場いちば参加さんかしゃだれにもからないものであり、議会ぎかい干渉かんしょう当局とうきょく誤判ごはんだんにより誘導ゆうどう金利きんり自然しぜん利子りしりつとが長期ちょうきてき乖離かいりすることでバブルや恐慌きょうこう原因げんいんになることがある。インフレターゲット議論ぎろん人為じんいてき政策せいさく金利きんりへの干渉かんしょうをなくせとの主張しゅちょうであるがその有効ゆうこうせい歴史れきしてき立証りっしょうされた段階だんかいにはない[よう出典しゅってん]

キャリートレード存在そんざい重要じゅうようである[5]先進せんしんこく人口じんこう停滞ていたいもありてい成長せいちょうから市中金利しちゅうきんり低迷ていめいしている一方いっぽうで、新興しんこうこくではキャッチアップによるこう成長せいちょうながつづいており、先進せんしんこく低利ていり短期たんき資金しきん長期ちょうき資金しきんとし(長短ちょうたんスワップ)新興しんこうこく投資とうしするキャリートレードが活発かっぱつおこなわれているが、恐慌きょうこう発生はっせいなどで先進せんしんこくでの市中金利しちゅうきんり急騰きゅうとうすることで新興しんこうこくへの投資とうし資金しきんげられ(アンワインディング)通貨つうか急落きゅうらくするなど混乱こんらん原因げんいんとなっている。アジア通貨つうか基金ききん国際こくさい通貨つうか基金ききんなどによる国際こくさい支援しえんスキームが形成けいせいされているが混乱こんらん予防よぼうするものではない。

歴史れきし

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日本にっぽんでは1986ねん昭和しょうわ61ねん)12月から1991ねん平成へいせい3ねん)2がつまでのバブル景気けいき(バブル経済けいざい[† 4]昭和しょうわバブル[† 5])が代表だいひょうてきであるが、世界せかいてきには金融きんゆう資産しさんえた近代きんだいから頻繁ひんぱんられている現象げんしょうである。1970ねんから世界せかいでは130かいのバブルがきている[6]歴史れきしじょう有名ゆうめいなバブルは、チューリップ・バブルミシシッピ計画けいかく南海なんかい泡沫うたかた事件じけんである[7]

20世紀せいきのバブル崩壊ほうかいは、おも政府せいふ中央ちゅうおう銀行ぎんこうによる金融きんゆう政策せいさく金利きんりげ)がきっかけとなっている。

1971ねん8がつニクソンショック以後いご発生はっせいしたユーロダラーばれる過剰かじょう流動りゅうどうせい(マネー)が世界せかい各地かくち移動いどうしてバブルをこしており、発生はっせい崩壊ほうかい頻度ひんどたかまっている。

日本にっぽんでは、1974ねん1がつ以降いこう安定あんてい成長せいちょうて、1985ねん9がつプラザ合意ごういバブル景気けいき直接ちょくせつがねとなった。日本にっぽん経済けいざい空前くうぜん好景気こうけいきむかえ、株式かぶしき市場いちば日経にっけい平均へいきん株価かぶか30,000えん大台おおだいえた。そのうしなわれた30ねんは、日本にっぽん経済けいざいへの打撃だげきをそのまましめすものであった。94ねん中南米ちゅうなんべいにおけるバブル、アジア通貨つうか危機ききと、各地かくちでバブルと不況ふきょうというかたりがセットになったものが発生はっせいした。そのは、インターネット・バブル(1999ねん-2000ねん)、アメリカの住宅じゅうたく不動産ふどうさんバブル(2003ねん)、Web 2.0バブル(2005ねん)、国際こくさい商品しょうひん石油せきゆ穀物こくもつとう)バブル(2005-2008ねんとう発生はっせいした。バブル景気けいきは、実体じったい経済けいざい経済けいざい成長せいちょう以上いじょうキャピタルゲイン資産しさん市場いちば過熱かねつした場合ばあいきる。

年表ねんぴょう

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ バブル経済けいざいは、景気けいきときわるとき関係かんけいなく発生はっせいする。
  2. ^ バブル経済けいざいは「インフレーション」、「デフレーション」、「スタグフレーション」となら経済けいざい病気びょうきである。
  3. ^ 資本しほん限界げんかい効率こうりつ高度こうど不安定ふあんていにしているのは、企業きぎょうしゃ真性しんせい期待きたいではなく、むしろ株式かぶしき市場いちばにおける無知むち大衆たいしゅう群集心理ぐんしゅうしんりにほかならない」「大衆たいしゅう資本しほん主義しゅぎ社会しゃかいにおいては、投資とうしするのは実際じっさい経営けいえい参加さんかすることの一般いっぱん大衆たいしゅう」であり、一般いっぱん大衆たいしゅうは「予想よそう収益しゅうえきもとづいて行動こうどうするのではなく、慣行かんこうしたが行動こうどうする」。この不安定ふあんていさの原因げんいんの「ひとつは大衆たいしゅうおこな投資とうし物件ぶっけん評価ひょうかなかには実情じつじょうにそくした知識ちしき要素ようそいちじるしくすくない」「ふたつは、機関きかん投資とうし関心かんしん投資とうし物件ぶっけん将来しょうらい予想よそう収益しゅうえきにではなく、群集心理ぐんしゅうしんり影響えいきょうする情報じょうほう雰囲気ふんいきせまった変化へんかさきんじて予想よそうすることにある」「なぜなら、かれらは長期ちょうきてき将来しょうらい収益しゅうえきよりは短期たんきてき株式かぶしき資本しほん価値かち騰貴とうきける投機とうきいえにすぎないからである」(美濃みのくち武雄たけおジョン・メイナ-ド・ケインズ」『いちきょう論叢ろんそうだい103かんだい4ごう日本にっぽん評論ひょうろんしゃ、1990ねん4がつ、PDF-p.12、doi:10.15057/11054NAID 120000818801 )
  4. ^ バブルともばれている。
  5. ^ 平成へいせい時代じだいになってからは平成へいせいバブルともばれている。

出典しゅってん

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  1. ^ 大辞泉だいじせん『バブル経済けいざい』。
  2. ^ 伊藤いとうおさむ日本にっぽん経済けいざい-歴史れきし現状げんじょう論点ろんてん中央公論ちゅうおうこうろんしんしゃ中公新書ちゅうこうしんしょ〉、2007ねん、124ぺーじ
  3. ^ 松原まつばらさとし日本にっぽん経済けいざい図解ずかい雑学ざつがくシリーズ)』 ナツメしゃ、2000ねん、110ぺーじ
  4. ^ 田中たなか秀臣ひでおみ 『ベン・バーナンキ 世界せかい経済けいざいしん皇帝こうてい講談社こうだんしゃ講談社こうだんしゃBIZ〉、2006ねん、95ぺーじ
  5. ^ キャリートレードの為替かわせ市場いちばでの役割やくわり一段いちだん拡大かくだいか、BIS報告ほうこくしょ」2010ねん2がつ28にちブルームバーグ。どう記事きじにあるBISレポート [1][2]
  6. ^ 2012ねんインタビュー FNホールディング
  7. ^ 高橋たかはし洋一よういち俗論ぞくろんつ! バブル再来さいらい懸念けねんこたえる その生成せいせい崩壊ほうかいへの対応たいおう検証けんしょうする ダイヤモンド・オンライン 2013ねん4がつ4にち
  8. ^ “なぜ中国ちゅうごく不動産ふどうさんバブルは崩壊ほうかいしないのか”. プレジデントしゃ. (2017ねん10がつ19にち). https://president.jp/articles/-/23370 2019ねん9がつ20日はつか閲覧えつらん 

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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