ロフト

ロフトを使つかった住居じゅうきょ兼けんスタジオの例れい。

中二階ちゅうにかいと吹ふき抜ぬけのあるロフトアパートメント

ロフト（Loft）とは、原義げんぎでは建物たてものの最上階さいじょうかいまたは屋根裏やねうらにある部屋へやを指さす。

天井てんじょうの下もとでなく直接ちょくせつ屋根やねの下したにあり、倉庫そうこなどに使つかわれる。下したの階かいからの荷物にもつの上あげ下おろしのために吹ふき抜ぬけが設もうけられているのも特徴とくちょうである。

ここから派生はせいして、天井てんじょうの高たかい倉庫そうこや工場こうじょうで、一部いちぶを中二階ちゅうにかいとし、残のこりを吹ふき抜ぬけにしているようなものもロフト（コマーシャル・ロフト）と呼よぶ。

こうしたロフトを住居じゅうきょ用ように改造かいぞうした（またはロフト風ふうに新築しんちくされた）天井てんじょうの高たかい空間くうかん（主おもにアトリエやスタジオなど美術びじゅつ・音楽おんがく作品さくひんの制作せいさくに使用しようされる）を備そなえた集合しゅうごう住宅じゅうたくは「ロフト・アパートメント」（loft apartment）と呼よばれる。

日本にっぽんの賃貸ちんたい物件ぶっけんなどでは、天井てんじょうを高たかくして中二階ちゅうにかいを設もうけて梯子はしごなどで昇降しょうこうできるようにしたものを指さす。

屋根裏やねうら部屋へやとしてのロフト

ヘルシンキのカトリック教会きょうかいのオルガン・ロフト。

屋根やねの直下ちょっかにある部屋へやや階かいは、寒暖かんだんの差さがあるため居住きょじゅうには使つかわれず、めったに使つかわない物ものを置おく倉庫そうことして使つかわれる。またこうした屋根裏やねうらや最上階さいじょうかいが特殊とくしゅな用途ようとのために使つかわれることもある。例たとえば教会きょうかいの中なかの「クワイア・ロフト」（choir loft）と呼よばれる聖歌せいか隊たい席せきや、オルガンを置おくための「オルガン・ロフト」（organ loft）、一般いっぱん住宅じゅうたくの「スリーピング・ロフト」（sleeping loft）と呼よばれる屋根裏やねうらの寝室しんしつ、冬ふゆの間あいだに独ひとりで集中しゅうちゅうして作業さぎょうする工芸こうげい品ひんなど工作こうさくの職人しょくにんなどはその一いち例れいである。

こうした物置ものおきなどとしてのロフトは、「屋根裏やねうら部屋へや」のおおざっぱな同義語どうぎごとしても使つかわれる。屋根裏やねうらとロフトの違ちがいは、屋根裏やねうらは建物たてものの一ひとつの階かい全体ぜんたいに広ひろがるのに対たいし、ロフトは建物たてものの一室いっしつまたは少数しょうすうの部屋へやの上うえにあり、物ものの上あげ下おろしのために床ゆかの一方向いちほうこうまたは多方向たほうこうが途切とぎれており、下したの部屋へやからの吹ふき抜ぬけになっていることにある。納屋なやの屋根裏やねうらにある「ヘイ・ロフト」（hayloft）は、一いち年ねん分ぶんの干ほし草くさを積つんでおくために下したの階かいの部屋へやより広ひろく取とっていることもある。

ロフト・アパートメント

シカゴのロフト・アパートメント

ニューヨークのトライベッカ地区ちく、倉庫そうこや工場こうじょうなどの上層じょうそう階かいがロフト・アパートメントに転用てんようされた例れい

ニューヨークの「ミートパッキング・ディストリクト」。

アメリカなどにおける「ロフト・アパートメント」（loft apartment、賃貸ちんたい用よう）や「ロフト・コンドミニアム」（loft condominium、分譲ぶんじょう用よう）は、かつて工場こうじょうや倉庫そうこなどとして使つかわれた建物たてものを改造かいぞうした集合しゅうごう住宅じゅうたくを指さす。産業さんぎょう用ようの建物たてものを賃貸ちんたいや分譲ぶんじょう用ようの集合しゅうごう住宅じゅうたくに改造かいぞうすることを、一般いっぱん的てきに「ウェアハウス・トゥ・ロフト」（warehouse-to-loft）ということもある。路上ろじょうに面めんした一いち階かい部分ぶぶんを商業しょうぎょう用ように、上層じょうそう階かいをロフト形式けいしきの住宅じゅうたくにするような開発かいはつを単たんに「ロフトスタイル」（loft-style）と称しょうすることもある。

工場こうじょう・倉庫そうこでは、もともと作業さぎょう用ように各階かくかいの天井てんじょう高だかが高たかめに作つくられているため、住居じゅうきょとしての改造かいぞうに当あたり一ひとつの住じゅう区画くかくの一部いちぶに中二階ちゅうにかいや階段かいだんを増設ぞうせつして居住きょじゅう空間くうかんを増ふやし、残のこりの天井てんじょうの高たかい部分ぶぶんは作品さくひん制作せいさくのためのスタジオやアトリエ、あるいは吹ふき抜ぬけの居間いまにされる。また工場こうじょう・倉庫そうこの時ときのままのレンガ壁かべやコンクリートの床ゆかをそのまま利用りようし、むき出だしの状態じょうたいであることを売うりにされることもある。ロフト形式けいしきの集合しゅうごう住宅じゅうたくは、老朽ろうきゅう化かした工場こうじょう街がいや倉庫そうこ街がいを再生さいせいして街まちの新あたらしい「芸術げいじゅつ地区ちく」として売うり出だすにあたり、ギャラリーなどとともに古ふるい建物たてものの中なかに導入どうにゅうされることが多おおい。

荒廃こうはいした廃はい工場こうじょうや廃はい倉庫そうこのロフトは、安価あんかで広ひろく窓まども大おおきく、明あかるい制作せいさく空間くうかんを必要ひつようとする芸術げいじゅつ家かなどの間あいだでもともと人気にんきがあったが、後のちに芸術げいじゅつ家かのようなボヘミアン的てきな暮くらしにあこがれる豊ゆたかな若者わかものもロフトに住すむようになった。欧米おうべいの大都市だいとしの再さい開発かいはつでは、工場こうじょうなどをロフトに改造かいぞうして高こう所得しょとく者しゃ用ようの住宅じゅうたくとして販売はんばいするジェントリフィケーションの手法しゅほうは一般いっぱん的てきなものとなっている。例たとえばニューヨークのソーホーは鋳鉄ちゅうてつ建築けんちくの工場こうじょう街がいが転てんじて1950年代ねんだい以降いこうアトリエ街がいとなった例れいであり、近年きんねんの例れいでは、ハドソン川がわ沿ぞいの西にし14丁目ちょうめ以南いなんにある精肉せいにく工場こうじょう群ぐんが1990年代ねんだい以降いこうにブティックやクラブに変身へんしんした「ミートパッキング・ディストリクト」がある。同様どうようの例れいは全米ぜんべいに見みられる。

ロサンゼルス市しが2001年ねんに制定せいていした「適応てきおう型がた再さい利用りよう条例じょうれい」（アダプティヴ・リユース・オーディナンス、Adaptive Reuse Ordinance）などのように、経済けいざい的てきに立たち行ゆかなくなった産業さんぎょう施設しせつやオフィスビルを用途ようと変更へんこうし、ロフトのある高こう品質ひんしつな住宅じゅうたくや芸術げいじゅつ家か住宅じゅうたくへ転換てんかんすることを推進すいしんする条例じょうれいや法律ほうりつも全米ぜんべい各地かくちで作つくられている。これは都市とし文化ぶんかの振興しんこうや、より魅力みりょく的てきな都市としへと移住いじゅうしようとするクリエイティブ階層かいそうの人々ひとびとを惹ひきつけ集積しゅうせきさせることも目指めざしてもいる。

高こう所得しょとく層そうにおけるロフトの需要じゅようの高たかまりに対たいし、不動産ふどうさん開発かいはつ業者ぎょうしゃが廃はい工場こうじょうを高たかい費用ひようをかけてロフト住宅じゅうたくへ再生さいせいするだけでなく、すでにジェントリフィケーションの進すすんだ地区ちくにロフト物件ぶっけんのある高級こうきゅうコンドミニアムをわざわざ新築しんちくする場合ばあいすらある。完全かんぜん新築しんちくのロフト風ふう高級こうきゅう住宅じゅうたくは、廃はい工場こうじょう・廃はい倉庫そうこ地区ちくなど経済けいざい的てきに沈滞ちんたいした地区ちくに住すむ危険きけんなくしてロフトの持もつ都市とし生活せいかつの楽たのしさを享受きょうじゅしようというものであるが、家賃やちんの安やすい怪あやしげな地区ちくに集あつまって住すむ本来ほんらいのロフト生活せいかつの精神せいしんやボヘミアニズムからは離はなれたものとする批判ひはんもある。

その他たのロフトの種類しゅるい

倉庫そうことロフト。

コマーシャル・ロフト

コマーシャル・ロフト（Commercial loft）は、17フィート（5.18m）以上いじょうの天井てんじょう高だかのある建物たてもので、部屋へやの一部いちぶに倉庫そうこやオフィスとして使つかわれる中なか二に階かいを作つくっているものである。主おもな用途ようとは工場こうじょうなどで、中二階ちゅうにかいは事務じむ室しつなどに使つかわれる。

リギング・ロフト

リギング・ロフト（Rigging loft）は、造船ぞうせん所しょで帆船はんせんの索具さくぐ（リギング）を取とり付つける際さい、作業さぎょう員いんが立たつギャラリー（回廊かいろう）や足場あしばなどを指さす。

セイル・ロフト

セイル・ロフト（Sail loft）は、帆布ほぬの業者ぎょうしゃが帆ほを広ひろげる時ときに使つかう大おおきな空間くうかんである。

関連かんれん項目こうもく

• 屋根裏やねうら
• 中二階ちゅうにかい
• メゾネット
• ウォーターフロント