十じゅう四よん年ねん式しき重じゅう迫撃はくげき砲ほう

データ（十じゅう四よん年ねん式しき重じゅう迫撃はくげき砲ほう）
重量じゅうりょう	4,044kg(放列ほうれつ砲車ほうしゃ重量じゅうりょう)
口径こうけい	274.4mm
砲身ほうしん長ちょう	1,356mm(4.7口径こうけい)
砲ほう口こう初速しょそく	166m/s(1号ごう装そう薬やく)
最低さいてい射程しゃてい	350m
最大さいだい射程しゃてい	2,400m
高低こうてい射しゃ界かい	+40度ど～+75度ど
方向ほうこう射しゃ界かい	左右さゆう各かく20度ど
弾薬だんやく重量じゅうりょう	134.4kg
製造せいぞう国こく	日本にっぽん

十じゅう四よん年ねん式しき重じゅう迫撃はくげき砲ほう（14ねんしきじゅうはくげきほう）とは、大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐんが1925年ねん（大正たいしょう14年ねん）に開発かいはつした口径こうけい274mmの重おも迫撃はくげき砲ほう。野戦やせん重砲じゅうほうと同どう程度ていどの運動うんどう性せいを有ゆうする大だい威力いりょくの火砲かほうとして設計せっけいされ、少数しょうすうが製造せいぞうされた。

審査しんさ概要がいよう

本ほん砲ほうは大正たいしょう9年ねん(1920年ねん)7月がつ20日にち付づけ参さん第だい398号ごう研究けんきゅう方針ほうしんにより射程しゃてい500～2,000m・砲弾ほうだん炸薬さくやく量りょう40kg以上いじょうで大だいなる破壊はかい力りょくを有ゆうし、運動うんどう性せいは野戦やせん重砲じゅうほうと同様どうようの重じゅう迫撃はくげき砲ほうとして開発かいはつが開始かいしされた。同どう研究けんきゅう方針ほうしんに基もとづき大正たいしょう10年ねん(1921年ねん)3月がつ9日にち付づけ甲かぶと第だい80号ごうにより重じゅう迫撃はくげき砲ほうの設計せっけい要領ようりょう書しょを上申じょうしんし、同月どうげつ21日にち付づけ陸りく普ひろし第だい4142号ごうをもって陸軍りくぐん技術ぎじゅつ本部ほんぶに対たいし試製しせい審査しんさが下命かめいされた。重じゅう迫撃はくげき砲ほうの設計せっけいに当あたっては以下いかのような目標もくひょうが立たてられた。

• 口径こうけいは274mm。
• 射程しゃていは最低さいてい500m、最大さいだい2,000m。
• 砲弾ほうだん重量じゅうりょうは約やく120kg。
• 炸薬さくやく量りょうは40kg以上いじょう。
• 方向ほうこう射しゃ界かいは左右さゆう各かく10度ど以上いじょう、高低こうてい射しゃ界かいは+45度ど～+80度ど。
• 分解ぶんかい時じの各部かくぶ重量じゅうりょうは2,500kg以下いか。

砲ほう各部かくぶの設計せっけい要領ようりょうは次つぎのようなものである。砲身ほうしんは施ほどこせ条じょうを有ゆうし薬莢やっきょうを用もちいる。閉鎖へいさ機きは螺にし式しきとし駐ちゅう退すさ機きは水圧すいあつ式しき、復ふく座ざ機きは発条はつじょう式しきとする。砲ほう架かは簡易かんいな高低こうてい照準しょうじゅん器きを有ゆうし射撃しゃげきには基もと面めんの広ひろい砲ほう床ゆかを用もちいる方式ほうしきとする。運動うんどう性せいは砲身ほうしんと砲ほう床ゆかに分割ぶんかつして車輪しゃりんを付つけ、砲身ほうしん車しゃ及および砲ほう床ゆか車しゃとして運搬うんぱんするものとした。

これに基もとづき主要しゅよう部ぶを設計せっけいし、大正たいしょう10年ねん10月がつに大阪おおさか砲兵ほうへい工廠こうしょうに対たいし細部さいぶの設計せっけいと試作しさく砲ほうの注文ちゅうもんが行おこなわれた。試作しさく砲ほうは翌よく大正たいしょう11年ねん(1922年ねん)11月に竣工しゅんこうし、同月どうげつに長田野おさだの演習えんしゅう場じょうで竣工しゅんこう試験しけんを実施じっしした。試験しけんに基もとづく修正しゅうせいを加くわえ大正たいしょう12年ねん(1923年ねん)4月がつに伊良湖いらこ試験場しけんじょうにおいて機能きのう試験しけんを実施じっしし、機能きのうは概おおむね良好りょうこうであると認みとめられた。同年どうねん12月がつに同どう試験場しけんじょうにおいて弾道だんどう性せい及および弾丸だんがん効力こうりょく試験しけんを実施じっしし、迫撃はくげき砲ほうとしては鮮度せんど及および弾道だんどう性せいが良好りょうこうであると認みとめられた。また弾丸だんがん効力こうりょくについてもベトンに対たいし相当そうとう大だいなる効力こうりょくを有ゆうすることが認みとめられた。なお試験しけんで消費しょうひされた砲弾ほうだんは填はま砂すな弾だん250発はつ、填はま薬くすり弾だん59発はつの合計ごうけい309発はつであった。大正たいしょう13年ねん(1924年ねん)12月には陸軍りくぐん重砲じゅうほう兵へい学校がっこうの要員よういんからなる試験しけん隊たいを編成へんせいし、実用じつよう試験しけんを実施じっしした。試験しけんでは自動車じどうしゃ牽引けんいんにより浜松はままつから気賀きが、三ヶ日さんがにちを経へて本坂ほんざか峠とうげを超こえて豊橋とよはしに至いたる50kmの道みちのりを2日にちかけて移動いどうし、高師原たかしはらにおいて塹壕ざんごう内うちの各種かくしゅ運用うんようなど野外やがいにおける実用じつよう試験しけんを実施じっしした。試験しけんの結果けっか実用じつよう性せいは良好りょうこうと認みとめられ、これをもって大正たいしょう14年ねん8月がつに仮かり制式せいしきとして制定せいていを上申じょうしんした。

構造こうぞう

本ほん砲ほうは運搬うんぱんのため砲身ほうしん車しゃと砲ほう架か車しゃに分割ぶんかつできる。砲身ほうしん車しゃは砲身ほうしん・揺ゆら化か・砲ほう架か・駐ちゅう退すさ機き等とうからなり、砲ほう床ゆか車しゃは小しょう架か・大だい架か・照準しょうじゅん器き等とうからなる。砲身ほうしん車しゃは全長ぜんちょう4.29m・重量じゅうりょう2,980kg・架か尾お70kg、砲ほう床ゆか車しゃは全長ぜんちょう4.35m・重量じゅうりょう1,930kgであり、ホルト5t牽引けんいん車しゃによって運行うんこうされる。このように分解ぶんかいして牽引けんいん車しゃにより運行うんこうされるため、陸軍りくぐんは本ほん砲ほうを「重じゅう迫撃はくげき砲ほう」に分類ぶんるいした。砲身ほうしんは単たん肉にく鋼こう製せいで、閉鎖へいさ機きは螺子ねじ式しきである。施ほどこせ条じょうは傾かたぶけ角かく5度どの右みぎ回まわり64条じょう、砲ほう腔内施ほどこせ条じょう長ちょうは1,058mmである。精度せいどは中ちゅう射程しゃていで射距離しゃきょりの約やく160分ぶんの1、最大さいだい射程しゃてい付近ふきんで約やく60分ぶんの1の射程しゃてい公算こうさん躱避を有ゆうする。装填そうてんのためには砲ほう耳みみを軸じくとして揺ゆら架かに対たいし砲身ほうしんを水平すいへいにする必要ひつようがあり、やや手間てまの掛かかるものであった。揺ゆら架かはU字形じけいの断面だんめんをもち2つの側板そくばんからなり、外側そとがわにそれぞれ1つずつ駐ちゅう退すさ機きを有ゆうする。砲身ほうしんは揺ゆら架かの内側うちがわに位置いちし、横よこ材ざいによって後のち復ふく座ざ運動うんどうを行おこなう。揺ゆら架かは下端かたんで小しょう架かの水平すいへい軸じくと連結れんけつし、照準しょうじゅん螺にしによって俯仰ふぎょう運動うんどうを行おこなう。小しょう架かは垂直すいちょく軸じくで大だい架かと連結れんけつし、揺ゆら架かの方向ほうこう運動うんどうを可能かのうにする。大だい架かは縦横じゅうおうのI字じ鋼こうからなり、広こう面積めんせきで地面じめんと接せっし駐ちゅう鋤すきと杭くいによって固定こていされる。方向ほうこう照準しょうじゅん器きは小しょう架かに固定こていされた小しょう歯は輪わと大だい架か前ぜん端はしに刻きざまれた歯は弧この噛合により作用さようする。揚あげ弾だん機きは大だい架かに対たいし垂直すいちょくに直立ちょくりつし、砲弾ほうだんを吊つり上あげて装填そうてん架かに送おくる。運行うんこうに用もちいる車輪しゃりんの中なか径みちは1.23mである。

後のちには本ほん砲ほうを船ふね載のして全ぜん周しゅう射撃しゃげきを可能かのうにするため、小しょう架か以上いじょうの構造こうぞうを搭載とうさいする回転かいてん盤ばん形がたの試製しせい船せん載の砲ほう床ゆかも開発かいはつされた。

砲弾ほうだん

本ほん砲ほうが使用しようする弾薬だんやくは十じゅう四よん年ねん式しき榴弾りゅうだんである。本ほん砲弾ほうだんは全備ぜんび弾だん量りょう134.4kgで、炸薬さくやくは熔製茶せいちゃ黄き薬やく41.5kgを有ゆうする。信管しんかんは十じゅう四よん年ねん式しき延期えんき弾だん底そこ信管しんかん「改修かいしゅう」を使用しようする。薬くすり筒とうは薬莢やっきょう・四よん〇式しき薬莢やっきょう爆ばく管かん・薬くすり包つつみ・点火てんか薬やく包つつみ・薬莢やっきょう蓋ぶた及および枠わくからなり全備ぜんび重量じゅうりょうは約やく7kgである。装そう薬やくは一いち号ごう方形ほうけい薬やくを使用しようし、装そう薬くすり量りょうは1号ごう1,270g・2号ごう825g・3号ごう625g・4号ごう500g・5号ごう470g・6号ごう390gの6種類しゅるいがある。砲弾ほうだん初速しょそくは1号ごう装そう薬やくから6号ごう装そう薬やくまでそれぞれ166m/秒びょう・130m/秒びょう・111m/秒びょう・98m/秒びょう・90m/秒びょう・85.5m/秒びょうとなっている。最大さいだい射程しゃていは2,400m、最小さいしょう射程しゃていは350mである。点火てんか薬やくは小粒こつぶ薬やく15gを使用しようする。弾たま着ぎにより生しょうじる漏斗ろうと孔あなは砂すな質しつ地ちで中ちゅう径みち6.2m・深ふかさ1.5m、優良ゆうりょうベトンで中ちゅう径みち2.3m・深ふかさ0.47m、鉄筋てっきんベトンで中ちゅう径みち2m、深ふかさ0.34mである。後のちには炸薬さくやくとして九きゅう一式いっしき爆薬ばくやく43kgを使用しようする十じゅう四よん年ねん式しき榴弾りゅうだん改あらため一いちも開発かいはつされた。本ほん砲弾ほうだんの諸しょ元もとは炸薬さくやくの種類しゅるいを除のぞいて十じゅう四よん年ねん式しき榴弾りゅうだんと同一どういつであった。より堅固けんごな目標もくひょうに対たいして使用しようする破やぶ甲かぶと榴弾りゅうだんとしては試製しせい破やぶ甲かぶと榴弾りゅうだんが存在そんざいした。本ほん砲弾ほうだんは全備ぜんび弾だん量りょう163.2kg、炸薬さくやくは熔製茶せいちゃ黄き薬やく13.06kgを有ゆうする。信管しんかんは五ご年ねん式しき小しょう弾だん底そこ信管しんかん「改修かいしゅう」を使用しようする。装そう薬くすり量りょうは80g～132gまでの5種類しゅるいで、射程しゃていは570m～1,550mであった。

実戦じっせん運用うんよう

本ほん砲ほうは昭和しょうわ7年ねん(1932年ねん)の第だい一いち次じ上海しゃんはい事変じへんで海軍かいぐんに譲渡ゆずりわたされて使用しようされた。

海軍かいぐんに譲渡ゆずりわたされた本ほん砲ほうの後継こうけい火砲かほうとして九きゅう六ろく式しき重じゅう迫撃はくげき砲ほうが開発かいはつされた。

参考さんこう資料しりょう

• 陸軍りくぐん技術ぎじゅつ本部ほんぶ長ちょう 宮田みやた太郎たろう「重じゅう迫撃はくげき砲ほう試製しせい審査しんさの件けん(大だい日記にっき乙おつ輯昭和しょうわ03年ねん)」アジア歴史れきし資料しりょうセンター、Ref.C01006203900。
• 陸軍りくぐん技術ぎじゅつ本部ほんぶ副官ふっかん 八木やぎ録郎ろくろう「14年ねん式しき重じゅう迫撃はくげき砲ほう仮かり取扱とりあつかい法ほう送付そうふの件けん(昭和しょうわ05年ねん「密ひそか大だい日記にっき」第だい3冊さつ・続つづけ)」アジア歴史れきし資料しりょうセンター、Ref.C01003914900。
• 「14年ねん式しき重じゅう迫撃はくげき砲ほう試製しせい船せん載の砲ほう床ゆか説明せつめい書しょ」アジア歴史れきし資料しりょうセンター、Ref.A03032123200。
• 館山たてやま海軍かいぐん砲術ほうじゅつ学校がっこう研究けんきゅう部ぶ「陸戦りくせん兵器へいき要目ようもく表ひょう(陸戦りくせん参考さんこう－第だい1号ごう・陸戦りくせん兵器へいき要目ようもく表ひょう)」アジア歴史れきし資料しりょうセンター、Ref.A03032103400。
• 佐山さやま二郎じろう『大砲たいほう入門にゅうもん』光人みつひと社しゃNF文庫ぶんこ ISBN 978-4769822455

関連かんれん項目こうもく

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