試製しせい四よん式しき七なな糎せんちめーとる噴進砲ほう

試製しせい四よん式しき七なな糎せんちめーとる噴進砲ほう

試製しせい四よん式しき七なな糎せんちめーとる噴進砲ほう
種類しゅるい	対戦たいせん車しゃロケット弾だん発射はっしゃ器き
製造せいぞう国こく	大日本帝国だいにっぽんていこく
設計せっけい・製造せいぞう	第だい一いち陸軍りくぐん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ
仕様しよう
口径こうけい	74mm
銃身じゅうしん長ちょう	1.5m
作動さどう方式ほうしき	ロケット弾だん発射はっしゃ機き
全長ぜんちょう	1.5m
重量じゅうりょう	8kg
発射はっしゃ速度そくど	4～6発はつ/分ぶん
銃口じゅうこう初速しょそく	100m/s（最大さいだい160m/s）
最大さいだい射程しゃてい	1,000m
有効ゆうこう射程しゃてい	200m
歴史れきし
製造せいぞう数すう	約やく3,500門もん

試製しせい四よん式しき七なな糎せんちめーとる噴進砲ほう（しせい4しき7せんちふんしんほう）は、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん末期まっきに大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐんが製造せいぞうした対戦たいせん車しゃロケット弾だん発射はっしゃ器き。本ほん砲ほうが使用しようする噴進穿ほじ甲かぶと榴弾りゅうだんに対たいし、噴進弾だんを表あらわす秘匿ひとく名称めいしょうの「ろ弾だん」と、穿ほじ甲かぶと榴弾りゅうだんを表あらわす秘匿ひとく名称めいしょうの「タ弾だん」を合あわせた「ロタ弾だん」という秘匿ひとく名称めいしょうが与あたえられたことから、本ほん砲ほうは「ロタ砲ほう」とも呼よばれる。

ドイツのパンツァーシュレックやアメリカのバズーカに類似るいじした携帯けいたい式しきロケットランチャーではあるが、使用しようする噴進弾だんは一般いっぱん的てきな翼つばさ安定あんてい式しきではなく、底部ていぶにあいた6個この孔あなから斜ななめ（25度どの角度かくど）に吹ふき出だすロケット噴進による旋動（スピン）安定あんてい式しきで、形状けいじょうも先端せんたんに丸まるみのある旧型きゅうがたの砲弾ほうだんの弾丸だんがんに近ちかい。また発火はっか方式ほうしきとして電気でんき発火はっか式しきではなく撃げき発はつ式しきを用もちいる。

1943年ねん（昭和しょうわ18年ねん）4月がつ頃ごろにドイツから潜水せんすい艦かんによってパンツァーシュレックの図面ずめんがもたらされたが、開発かいはつは難航なんこうし、実戦じっせん配備はいびされるのは終戦しゅうせん間際まぎわになってからであった。

構造こうぞう

分解ぶんかいされた噴進砲ほう。

発射はっしゃ器き

砲身ほうしんは全長ぜんちょう1500mm、厚あつさ2mm、内径ないけい74.0mm、前方ぜんぽう砲身ほうしんと後方こうほう砲身ほうしんに分解ぶんかいでき、背負せおい具ぐで携行けいこうすることにより一人ひとりで持もち運はこぶことができた。前方ぜんぽう砲身ほうしん（長ながさ750mm、重量じゅうりょう3.9kg）と後方こうほう砲身ほうしん（長ながさ750mm、重量じゅうりょう4.1kg）は3個このボルトと蝶ちょうナットで結合けつごうする。

前方ぜんぽう砲身ほうしんの前方ぜんぽう左側ひだりがわに照星しょうせいを溶接ようせつしてある。照準しょうじゅんは簡易かんいな固定こてい式しきで、射程しゃてい50mと100mの二に種しゅの照星しょうせいが用意よういされていた。後方こうほうには砲ほうを支ささえる脚あし托たく架かと脚あし（共ともに九きゅう九きゅう式しき軽けい機関きかん銃じゅうと同おなじもの）が付ついている。脚あしは開閉かいへい式しきで持もち運はこぶときには前方ぜんぽうに閉とじることができる。また脚あし托たく架かには脚あしを固定こていする凹へこみが二にヶ所かしょあるため、脚あしの角度かくどを変かえることができ、必要ひつように応おうじて高姿勢こうしせいと低てい姿勢しせいをとることができる。

後方こうほう砲身ほうしんの前ぜん端はし左側ひだりがわに照あきら門もん、前ぜん端はし下部かぶに托たく環たまき（簡単かんたんな取とっ手て）、その後方こうほうに握にぎ把わ（グリップ）が右みぎに偏かたよった状態じょうたいで取とり付つけてあり、握にぎ把わの近辺きんぺんに引環（引鉄ひきがねの役割やくわりをするリング）がある。引環は撃げき発はつ機きから握にぎ把わの前まえへと拉ひしげ縄なわ（発射はっしゃするための引びき紐ひも）をのばしてきた終端しゅうたんであり、これを引ひくと撃げき発はつ機きが作動さどうした。拉ひしげ縄なわは二にヶ所かしょの拉ひしげ縄なわ托たく環たまき（砲身ほうしんにつけられた小ちいさな環たまき）を通とおし、握にぎ把わの前まえへ誘導ゆうどうされている。さらに砲身ほうしん後ご端はしの上部じょうぶには撃げき発はつ機き、下部かぶには弾丸だんがん止どめ（装填そうてんした弾丸だんがんが落下らっかするのを防ふせぐ装置そうち）がつけられている。砲ほう尾おには地面じめんとの接触せっしょくで砲ほうが変形へんけい・破損はそんするのを防ふせぐために砲ほう尾お托たく架かが溶接ようせつされていた。

発射はっしゃ時じには、まず砲身ほうしん後ご端はしの撃げき鉄てつ槓桿（撃げき鉄てつレバー）を起おこし、軸受じくうけ（撃げき鉄てつ槓桿と撃げき鉄てつの回転かいてん軸じくとなる）の左ひだりにある止とめねじを締しめて撃げき鉄てつ槓桿と撃げき鉄てつとを一体いったいにし、両者りょうしゃが連動れんどうして動作どうさするようにする。次ついで撃げき鉄てつ槓桿を前方ぜんぽうに倒たおし、撃げき鉄てつ脱だつ桿（シアーに相当そうとう）と噛かみ合あわせて止とめる。これによって砲ほう尾おを塞ふさぐ形かたちになっていた撃げき鉄てつが上方かみがたに持もち上あがり、撃げき発はつ準備じゅんびが整ととのうと共ともに弾薬だんやくが装填そうてん可能かのうとなる。弾たま尾おが弾丸だんがん止どめに掛かかるまで弾丸だんがんを装填そうてんして引環を引ひくと、引環に繋つながった拉ひしげ縄なわを介かいして撃げき鉄てつ脱だつ桿が撃げき鉄てつ槓桿を開放かいほうする。それに連動れんどうして撃げき鉄てつが撃げき鉄てつばねの反発はんぱつ力りょくによって落おち、撃げき鉄てつの先端せんたんに固定こていされた撃げき針はりが爆ばく管かんを叩はたき弾丸だんがんを発射はっしゃする。

射撃しゃげき時じには、射手しゃしゅは顔かおと目めを保護ほごするため防ぼう焔ほのお布ぬのと防塵ぼうじん眼鏡めがねを装着そうちゃくした。防ぼう焔ほのお布ぬのは上部じょうぶに全長ぜんちょう1.28mの結むすび紐ひもが付ついた長方形ちょうほうけいの木綿もめん製せいの布ぬので、眼めの部分ぶぶんが開ひらいており、頭部とうぶ全体ぜんたいを覆おおえるものだった。脚あしを起おこして砲ほうを置おき、射手しゃしゅと装填そうてん手しゅは砲身ほうしんに対たいしてそれぞれ30度どの角度かくどを開ひらいて伏ぶせた。射手しゃしゅは砲ほう左側ひだりがわに伏ふせ、右肩みぎかたに砲ほう後ご端はしを乗のせて保持ほじ、左手ひだりてで托たく環たまき、右手みぎてで握にぎ把わを握にぎり、照準しょうじゅんした。狙ねらう個所かしょは戦車せんしゃの前面ぜんめん下部かぶである。

砲弾ほうだん

使用しようする弾たま種しゅは試製しせい四式七糎噴進穿甲榴弾（秘匿ひとく名称めいしょう：七なな糎せんちめーとるロタ弾だん）のみで、弾たま径みち72mm、全長ぜんちょう359mm、炸薬さくやく710g、推進すいしん薬やく260g、全備ぜんび弾だん量りょう4.08kgだった。信管しんかんは試製しせい四よん式しき瞬発しゅんぱつ信管しんかん「穿ほじ」を弾頭だんとう部ぶに装着そうちゃくした。爆ばく管かんは四よん式しき点火てんか管かんを用もちいたが、不良ふりょうのため不発ふはつや遅おそ発はつが多おおかった。発射はっしゃすると、7本ほんの円筒えんとう状じょう推進すいしん薬やくが燃焼ねんしょうして弾たま底そこの6個この孔あなから25度どの角度かくどでガスを噴出ふんしゅつし、右みぎ方向ほうこうに旋動しながら飛翔ひしょうする。装そう薬やくの燃焼ねんしょう時間じかんは約やく0.4秒びょう、初速しょそくは100m/s、燃焼ねんしょう完了かんりょう時じの存そん速そくは約やく160m/s、回転かいてんは毎まい分ぶん10,000回かい、実用じつよう射程しゃていは200mだった。貫徹かんてつ能力のうりょくは、着ちゃく角かく60～90度どで80mmの鋼板こうはんを貫通かんつうした。命中めいちゅう率りつは射程しゃてい100mで約やく6割わりであり、ロケット弾だんの常つねとして精度せいどは低ひくかった。発射はっしゃ速度そくどは毎まい分ぶん4～6発はつだった。本ほん弾薬だんやくは1944年ねん（昭和しょうわ19年ねん）度どから終戦しゅうせんにかけて相模さがみ陸軍りくぐん造兵ぞうへい廠しょうで約やく47,600発はつ製造せいぞうされた。また終戦しゅうせん時じに大阪おおさか陸軍りくぐん造兵ぞうへい廠しょう枚方ひらかた製造せいぞう所しょに完成かんせい品ひん約やく1,600発はつと半途はんと品ひん約やく1,500発はつがあった。

派生はせい型がた

試製しせい四よん式しき七なな糎せんちめーとる噴進砲ほうとほぼ同様どうようの構造こうぞうで、弾たま体たいを93.5mmに増ふえ径みちし120mm前後ぜんこうの貫徹かんてつ能力のうりょくを持もたせた試製しせい九きゅう糎せんちめーとる噴進砲ほうも試作しさくされているが、本格ほんかく的てきな生産せいさん配備はいびには至いたらないまま終戦しゅうせんを迎むかえている。この試製しせい九きゅう糎せんちめーとるを元もとに、日本にっぽん陸軍りくぐんの空挺くうてい部隊ぶたいである挺進ていしん連隊れんたいへの配備はいびも想定そうていし、砲身ほうしん長ちょうを1200mmに短縮たんしゅくして可か搬性を向上こうじょうさせた試製しせい九糎空挺隊用噴進砲も試作しさくされている。

中国ちゅうごくでは朝鮮ちょうせん戦争せんそうで鹵獲ろかくしたM20スーパーバズーカをコピーして51式しき90毫米反はん坦ひろし克かつ火箭かせん筒とうを開発かいはつした際さい、瀋陽しんようの第だい52兵へい工廠こうしょう（前身ぜんしんは陸軍りくぐん造兵ぞうへい廠しょう南みなみ満まん工廠こうしょう）に残のこっていた試製しせい四よん式しき七なな糎せんちめーとる噴進砲ほうの資料しりょうを活用かつようしており、この影響えいきょうでM20スーパーバズーカの弾たまを90mm口径こうけいとした241型がた90毫米尾翼びよく式しき反はん坦ひろし克かつ火箭かせん弹と共ともに、試製しせい四よん式しき七なな糎せんちめーとる噴進砲ほうのロタ弾だんを90mm口径こうけいとした135型がた90毫米反はん坦ひろし克かつ火箭かせん破やぶ甲かぶと弹を使用しよう可能かのうとなっている。

現存げんそん砲ほう

現存げんそんする本ほん砲ほうのうちの1門もんがスミソニアン国立こくりつ航空こうくう宇宙うちゅう博物館はくぶつかん スティーブン F. ユードバー ハジーセンター(Smithsonian National Air and Space Museum Steven F. Udvar-Hazy Center)にて展示てんじされている。

日本にっぽん国内こくないでは、1988年ねんに熊本くまもと城じょうの備前びぜん堀ほりから1門もんが出土しゅつどした。アメリカ製せいのブローニングM2 12.7mm機関きかん銃じゅうと共ともに出土しゅつどしており、戦後せんごに廃棄はいきされたものと考かんがえられている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 佐山さやま二郎じろう 『大砲たいほう入門にゅうもん-陸軍りくぐん兵器へいき徹底てってい研究けんきゅう』光人みつひと社しゃNF文庫ぶんこ、 光人みつひと社しゃ、2008年ねん。ISBN 978-4-7698-2245-5
• 佐山さやま二郎じろう 『日本にっぽん陸軍りくぐんの火砲かほう　迫撃はくげき砲ほう　噴進砲ほう　他た-日本にっぽんの陸戦りくせん兵器へいき徹底てってい研究けんきゅう』光人みつひと社しゃNF文庫ぶんこ、 光人みつひと社しゃ、2011年ねん。ISBN 978-4-7698-2676-7

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• 大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐん兵器へいき一覧いちらん