ひじり (プロテスタント)

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ひじり英語えいご:Sanctificationギリシア:ハギアスモス(まれ: άγιασμος、hagiasmos)とは、聖霊せいれいはたらきによって人間にんげんつみからすくわれ、かみひじりせいにあずかり、せいなるものとされること[1]プロテスタントでは、キリストあがないにたのんで、とされた(みとめ成義なりよし信仰しんこうしゃが、きよしとのかみぞう変貌へんぼうされてゆく、転機てんきをもふく過程かていである。カトリックではなりきよしという[1]

概説がいせつ[編集へんしゅう]

ローマ・カトリック教会きょうかいおしえているように、「ハギアゾー」(ἁγιάζω hagiazo:ハギオス〔άγιοςhagios〕の動詞どうしがた)は「きよしべつする」の意味いみがあるが、時代じだいすすむにつれて「ハギアゾー」に相当そうとうするヘブルは「純化じゅんかする」という意味いみびてきた[注釈ちゅうしゃく 1]

「ハギアスモス」は「きよし(Sanctification)」とやくされるとともに、「ホーリネスきよしめ」(Holiness)ともやくされている。前者ぜんしゃのように翻訳ほんやくする場合ばあいは、きよしとする過程かてい強調きょうちょうてんかれ、後者こうしゃのようにやくすときには、きよしとする過程かてい結果けっか、そこにしょうじたせい状態じょうたい強調きょうちょうてんがある。「ハギアスモス」のかたりは、この双方そうほう概念がいねんふくむ。

ひとにとって「きよし」は、「きよしきよしとする過程かてい」の結果けっかしょうじた状態じょうたい[2]であるが、「かみきよし」は、本質ほんしつてきなもので「ハギアスモス」ではなく、もうひとつの同系どうけい「ハギオテース」[3]によってあらわされ、区別くべつされている。

ウェスレアン神学しんがく(メソジズム)におけるきよし[編集へんしゅう]

きよし」は生涯しょうがいてき過程かていであるが、ジャン・カルヴァン神学しんがく発展はってんさせた改革かいかく神学しんがくでは、その過程かてい地上ちじょうではわることがなく、肉体にくたいをもって完成かんせいされるとく。またルーテル神学しんがくでは、聖霊せいれいはたらきにより、キリストにともない、ひとちからではまったくちかづくことのできない賜物たまものけさせることをひじりという。それらにたいして、きよし過程かてい重視じゅうししつつ、その途上とじょうのあるいちてんに、瞬時しゅんじてきな「全的ぜんてきひじり」(Entire Sanctification)の転機てんきてき経験けいけんがあるとくのが、ウェスレアン神学しんがくである。ここに「全的ぜんてき」とは、ジョン・ウェスレーく「キリストしゃ完全かんぜん」における「完全かんぜん同様どうよう限定げんていてき意味合いみあいにおいてであって、瞬時しゅんじてき経験けいけんをもって「きよめ」にかんするすべての問題もんだい解決かいけつするのではない。そのにも「きよし」の過程かてい継続けいぞくするのである。「全的ぜんてき」とは、アダム以来いらい課題かだいである生来せいらいつみ腐敗ふはいせい・「にく」の性質せいしつつみ単数たんすうのSIN)が、きよめられたひと心中しんちゅうのから放逐ほうちくされたと意味いみにおいて、アダムの堕罪との関連かんれんにおいてその影響えいきょう感化かんかかんがえるとき、「全的ぜんてき」なのである。近年きんねん、この「全的ぜんてき」、「ぜんき」とのかたり誤解ごかいあたえるとの理由りゆうで、転機てんきてきなきよめを「全的ぜんてきひじり・Entire Sanctification」とばず「実効じっこうてきひじり・Effective Sanctification」としょうする聖書せいしょ学者がくしゃてきている。

ひとつみかたむ性質せいしつは、生来せいらい腐敗ふはいせいからるのみならず、その個人こじん過去かこかた、さらに、気質きしつといっためんふくめるならば、家系かけいといった家族かぞくてき過去かこにもかかわっているとされる。このめんでのつみへのかたむやすさを、アダム以来いらい人類じんるいつみへのかたむやすさ「生来せいらいつみ腐敗ふはいせい」と区別くべつして「取得しゅとくされたつみ腐敗ふはいせい」とぶ。漸進ぜんしんてきひじり過程かていは、この後者こうしゃがもたらす課題かだいの「きよし」にかかわることであると理解りかいできる。

それは表現ひょうげんもちいるならば、人格じんかくゆがみからの「きよめ」であり、キリストきょう信者しんじゃが、あいにおいてイエス・キリストたけまでに成長せいちょうするまで、信仰しんこうおうじて継続けいぞくてきになされる聖霊せいれいによるごうである[4]。このめんでの「きよし」は生涯しょうがいてきなもので、地上ちじょうにおいて完成かんせいされることはない。ウェスレアン神学しんがくにおけるきよしろん特徴とくちょうは、この過程かてい転機てんきてき経験けいけんとのいにある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ イザヤしょ6しょうなどにそのめん顕著けんちょである

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b デジタル大辞泉だいじせん
  2. ^ ヘブル12:14
  3. ^ ヘブル12:10
  4. ^ コリントだい手紙てがみ3:18

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]