鋳物師屋いもじや遺跡いせき

鋳物師屋いもじや
遺跡いせき

鋳物師屋いもじや遺跡いせき（いもじやいせき）は、山梨やまなし県けん南みなみアルプス市し下した市ノ瀬いちのせにある遺跡いせき。縄文じょうもん時代じだい中期ちゅうきと平安へいあん時代じだい前期ぜんきの集落しゅうらくを中心ちゅうしんとする複ふく合あい遺跡いせき。出土しゅつど遺物いぶつは国くにの重要じゅうよう文化財ぶんかざい。

地理ちり的てき・歴史れきし的てき環境かんきょう

釜無川かまなしがわ以西いせいの甲府盆地こうふぼんち西部せいぶ、御ご勅使ちょくし川がわ複ふく合あい扇状地せんじょうちの南西なんせい端はし部ぶに位置いちする。漆川うるしかわと市ノ瀬いちのせ川がわに挟はさみされた地域ちいきで、自然しぜん堤防ていぼうの後背こうはい地ちにあたる。標高ひょうこうは280～290メートル付近ふきんで、北西ほくせいから南西なんせいの傾斜けいしゃ上じょうに立地りっちする。西郡にしごおり地域ちいきは縄文じょうもん・弥生やよいの遺跡いせきが希薄きはくな地域ちいきで、鋳物師屋いもじや遺跡いせきは縄文じょうもん時代じだいの遺跡いせきが扇状地せんじょうち上じょうに立地りっちしている珍めずらしい事例じれい。

下した市ノ瀬いちのせには2基きの古墳こふんが現存げんそんしており、県内けんないでは類例るいれいの少すくない方墳ほうふんとも考かんがえられている（鋳物師屋いもじや古墳こふん）。

発掘はっくつ調査ちょうさと検出けんしゅつ遺構いこう・出土しゅつど遺構いこう

1986年ねん（昭和しょうわ61年ねん）の第だい一いち期き工業こうぎょう団地だんち造成ぞうせい事業じぎょうに際さいして、隣接りんせつし同おなじく縄文じょうもん時代じだいと平安へいあん時代じだいの遺構いこうが複ふく合ごうする〆木き遺跡いせきの発掘はっくつ調査ちょうさが行おこなわれ、第だい二に期き造成ぞうせい区域くいき内ないが遺構いこう主体しゅたい部ぶの推定すいてい地域ちいきとされた。1992年ねん（平成へいせい4年ねん）に第だい二に期き造成ぞうせい計画けいかくが開始かいしされると山梨やまなし県けん土地とち開発かいはつ公社こうしゃから依託いたくされた櫛形くしがた町まち教育きょういく委員いいん会かいが発掘はっくつ調査ちょうさを行おこない、1993年ねん（平成へいせい5年ねん）に完了かんりょうする。

検出けんしゅつ遺構いこうは竪穴たてあな建物たてもの跡あと141軒けんで、縄文じょうもん時代じだい中期ちゅうき中葉ちゅうようのものが27軒けん。集落しゅうらく規模きぼは小ちいさいが、ほぼ全容ぜんようが解明かいめいされている。出土しゅつど遺物いぶつのうち、内部ないぶが中空ちゅうくうとなった57号ごう建物たてもの出土しゅつどの円錐えんすい形がた土偶どぐうや133号ごう建物たてもの出土しゅつどの人体じんたい文様もんようの浮うき彫ぼりが施ほどこされた人体じんたい文様もんよう付づけ有ゆう孔あな鍔つば付づけ土器どきのほか出土しゅつど品ひん205点てんが1995年ねん（平成へいせい7年ねん）国こくの重要じゅうよう文化財ぶんかざいに指定していされた。

円錐えんすい形がた土偶どぐうは完かん形がたで出土しゅつどした貴重きちょうなもので、縄文じょうもん中期ちゅうきの関東かんとう・中部ちゅうぶ地方ちほうにおける特有とくゆうの形式けいしき。本体ほんたいは中空ちゅうくう、胴体どうたいの側面そくめん・底部ていぶに孔あなが存在そんざいする。切きれ長ながの目めに乳房ちぶさと妊娠にんしんによる正中せいちゅう線せんが現あらわされた妊にん婦ふを表現ひょうげんしたもので、3本ほん指ゆびの手てを腰こしと腹部ふくぶにあてている。

調査ちょうさ終了しゅうりょう後ごには工業こうぎょう団地だんちが造成ぞうせいされる。出土しゅつど遺物いぶつや調査ちょうさ資料しりょう、図録ずろく等とうは櫛形くしがた町まち教育きょういく委員いいん会かい（現げん南みなみアルプス市し教育きょういく委員いいん会かい）に保管ほかん。現在げんざいは「南みなみアルプス市しふるさと文化ぶんか伝承でんしょう館かん」に移管いかん・収蔵しゅうぞうされている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 清水しみず博ひろし「鋳物師屋いもじや遺跡いせき」「鋳物師屋いもじや古墳こふん」『山梨やまなし県けん資料しりょう編へん1原始げんし・古代こだい〔考古こうこ（遺跡いせき）〕』（1998）
• 末木すえき健けん「鋳物師屋いもじや遺跡いせき」『縄文じょうもん時代じだい研究けんきゅう辞典じてん』