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クリ - Wikipedia

クリ

ブナクリぞく植物しょくぶつ総称そうしょう

クリぐり学名がくめいCastanea crenata)は、ブナクリぞく落葉らくよう高木たかぎ。クリのうち、かく栽培さいばい品種ひんしゅ原種げんしゅ山野やまの自生じせいするものは、シバグリ(柴栗しばぐり)またはヤマグリ(やまぐり)とばれる、栽培さいばい品種ひんしゅはシバグリにくらべて果実かじつ大粒おおつぶである。また、シバグリもごく一部いちぶでは栽培さいばいされている。クリの仲間なかま日本にっぽんしゅ中国ちゅうごくしゅアメリカしゅイタリアしゅがあるが、植物しょくぶつ分類ぶんるいがくじょうたねとしてのクリは、日本にっぽんしゅ(ニホングリ)のことをす。

クリ
Castanea crenata
受粉じゅふん成功せいこうした雌花めばな(2008ねん7がつ5にち長野ながのけん
分類ぶんるいAPG III
さかい : 植物しょくぶつかい Plantae
階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ Angiosperms
階級かいきゅうなし : 真正しんしょうそう子葉しようるい Eudicots
階級かいきゅうなし : コア真正しんせいそう子葉しようるい Core eudicots
階級かいきゅうなし : バラるい Rosids
階級かいきゅうなし : 真正しんしょうバラるいI Eurosids I
: ブナ Fagales
: ブナ Fagaceae
ぞく : クリぞく Castanea
たね : クリ C. crenata
学名がくめい
Castanea crenata
Siebold et Zucc. (1846)[1]
シノニム
英名えいめい
Japanese Chestnut
品種ひんしゅ
  • ヤツブサグリ C. c. f. foemina
  • タンバグリ C. c. f. gigantea
  • ハゼグリ C. c. f. imperfecta
  • シダレグリ C. c. f. pendula
  • ハコグリ C. c. f. pleiocarpa
  • ハナグリ C. c. f. pulchella
  • トゲナシグリ C. c. f. sakyacephala

名称めいしょう

編集へんしゅう

和名わみょう「クリ」の語源ごげん諸説しょせつあり、食料しょくりょうとしてふるくから栽培さいばいされ、果実かじつ黒褐色こっかっしょくになるので「くろ(くろみ)」になり、これが転訛てんかして「クリ」とばれるようになったというせつ[3]樹皮じゅひから栗色くりいろというところからめいになったというせつ[4]、クリとはもともと「小石こいし」という意味いみ古語こごで、かたいからちた小石こいしたとえてクリとんだというせつ[4][5]などがある。日本にっぽんでは野生やせいしゅはヤマグリ(やまぐり)とばれ、果実かじつちいさいことからシバグリ(柴栗しばぐり)とも[3]、これを改良かいりょうした園芸えんげいしゅがニホングリ(日本にっぽんぐり)である[6]中国ちゅうごく植物しょくぶつめいぐり(りつ)[7]中国ちゅうごくのシバグリが、甘栗あまぐり天津てんしん甘栗あまぐり)として市販しはんされるぐりである[3]

英語えいごのチェストナッツ(Chestnut)は、いがのなか果実かじつがいくつかにかれている様子ようすから、部屋へや意味いみChest から命名めいめいされている[4]学名がくめいクリぞくあらわラテン語らてんごのカスタネア(Castanea)は、かたちからたる意味いみするカスクに由来ゆらいする[4]日本にっぽんぐりは、学名がくめいでカスタネア・クレナータ(Castanea crenata)とばれるたねで、クリぞくなかでいわゆる日本にっぽんしゅ中心ちゅうしんをなすものである[4]

日本にっぽん朝鮮半島ちょうせんはんとう南部なんぶ原産げんさん北海道ほっかいどう西南せいなんから本州ほんしゅう四国しこく九州きゅうしゅう屋久島やくしままで、および朝鮮半島ちょうせんはんとう分布ぶんぷする[4][8]暖帯だんたいから温帯おんたいいき分布ぶんぷし、とく暖帯だんたい上部じょうぶ多産たさんする場合ばあいがあり、これをクリたいという。北海道ほっかいどうでは、石狩いしかりてい地帯ちたい付近ふきんまであるが、それより北東ほくとう激減げきげんする[4]

日当ひあたりの山地さんち丘陵きゅうりょうなどに自生じせいする[3]。ただし、現在げんざいではひろ栽培さいばいされているため、自然しぜん分布ぶんぷとの境目さかいめわかりにくい場合ばあいがある。中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく東部とうぶ台湾たいわんでも栽培さいばいされている。

世界せかいてきには、クリの仲間なかま北半球きたはんきゅう温帯おんたいひろ分布ぶんぷしており、日本にっぽんしゅクリ: Castanea crenata)、中国ちゅうごくしゅシナグリ中国ちゅうごくグリ): Castanea mollissima)、アメリカしゅアメリカグリ: Castanea dentata)、イタリアしゅヨーロッパグリ西洋せいようグリ): Castanea sativa)などがそれぞれの地方ちほう自生じせいし、栽培さいばいされてきている[4]

形態けいたい生態せいたい

編集へんしゅう

落葉らくようせい高木たかぎで、たかさ15メートル (m) [3]みき直径ちょっけいは80センチメートル (cm) 、あるいはそれ以上いじょうになる[9]樹皮じゅひくらばい褐色かっしょくあつく、老木ろうぼく樹皮じゅひ縦長たてながふかくてながしょうじる[9][10]いちねんえだ赤褐色せきかっしょくで、すこのこ[10]

みじか葉柄ようへいがついて互生ごせいし、ながさ8 - 15 cm、はば3 - 4 cmのなが楕円だえんかたちちょう楕円だえんじょう披針形ひしんけいで、先端せんたんするどとがり、基部きぶ円形えんけいからハートがたをしており[9]、ややうすくてぱりぱりしている。ひょう緑色みどりいろつやがあり、うらはややいろうすくてこまかいおおわれ、あわ黄色きいろせんてん多数たすうある[9][11]えんにはするどしたちいさな鋸歯きょしなら[9]全体ぜんたいクヌギによくているが、鋸歯きょし先端せんたんはクヌギほどながびない[11][12]あきじゅくすころには、紅葉こうようしていろづきはじめ、黄色おうしょく褐色かっしょく変化へんかしてっていく[5]地上ちじょうちた褐色かっしょくとなって、樹下じゅかはやしゆかおお[5]

雌雄しゆうどうかぶ雌雄しゆうはなで、6がつ前後ぜんごするころ開花かいかする[8][9]花序かじょながさ10 - 20 cmのひものようなじょうで、ななめにがりながらさきしだれ、全体ぜんたいクリームしょくびた白色はくしょくである[9][13]花序かじょ上部じょうぶには多数たすう雄花おばながつき、下部かぶに2、3雌花めばながつく[8]個々ここはなちいさいものの、しろ花穂かすいたばになってくのでみどり背景はいけいによく目立めだつ。クリの雄花おばなにおいは独特どくとくで、すこしせいしゅうびた青臭あおくさ生臭なまぐささをつのがあり[8][14]かおりもつよく、あたり一帯いったいただよ[9]。クリは自家じか受粉じゅふんしない[8]。ブナ植物しょくぶつ風媒花ふうばいかはな地味じみのものがおおいが、クリは虫媒花ちゅうばいかで、雄花おばなにおいをまきらしてハエハチのなかまの昆虫こんちゅうせて、他家たけ花粉かふんはこばせる[8][9]一般いっぱん雌花めばなは3子房しぼうふくみ、受精じゅせいした子房しぼうのみが肥大ひだいして果実かじつとなり、受精じゅせいのものはしいなとなる。

あき(9 - 10がつごろ)に茶色ちゃいろ成熟せいじゅくすると、いがのあるからが4分割ぶんかつきれひらけして、ちゅうからかた果実かじつけんはてであり種子しゅしではない)が1個いっこから3ずつあらわれる[9][13]果実かじつたんに「クリ(ぐり)」、または「ぐり」とばれ、普通ふつうのブナ植物しょくぶつ果実かじつであるドングリとは区別くべつされる。また、かさじょうからつつまれていることからこの状態じょうたいかさはて[注釈ちゅうしゃく 1]ばれることもあるが、なかにあるぐりじつ自体じたい種子しゅしではなく果実かじつであるためあやまりである。かおりの主成分しゅせいぶんメチオナールサツマイモかおりの主成分しゅせいぶん)とフラノンにはイチゴパイナップルふくまれている)。胚乳はいにゅう種子しゅしである。

冬芽とうがえだ先端せんたんかりいただきがわ互生ごせいしてつき、まるみのある三角形さんかっけいでクリのじつている[10][12]冬芽とうがうろこは3 - 4まいつく[10]こん半円はんえんがたで、維管たばこん多数たすうある[10]

下位かい分類ぶんるい

編集へんしゅう

ニホングリはじつおおきいが甘味あまみすくなく、「筑波つくば」「丹沢たんざわ」などの品種ひんしゅがある[15]京都きょうとさんとしてられるタンバグリ丹波たんばぐり)は、おもに「ぎんよせ」(ぎんよせ)というおおぶりな品種ひんしゅである[15]

  • 品種ひんしゅ(フォーム)
    • ヤツブサグリ C. c. f. foemina - 花穂かすいおおくのイガをつける。
    • タンバグリ C. c. f. gigantea - 別名べつめいオウグリ。栽培さいばい品種ひんしゅとしては「ぎんよせ」とばれる。
    • ハゼグリ C. c. f. imperfecta - 別名べつめいハダカグリ。果皮かひたてけて内部ないぶえる。
    • シダレグリ C. c. f. pendula - 樹幹じゅかんえだ屈曲くっきょくくだる。
    • ハコグリ C. c. f. pleiocarpa(シノニム C. c. var. pleiocarpa)- 1つのから果実かじつが6から8はいる。
    • ハナグリ C. c. f. pulchella(シノニム C. c. var. pulchella)- はなとイガはあかい。
    • トゲナシグリ C. c. f. sakyacephala(シノニム C. c. var. sakyacephala)- からのイガが極端きょくたんみじかい。
  • 栽培さいばい品種ひんしゅ - やく200種類しゅるい以上いじょうあり、シバグリが改良かいりょうされたものがおもではあるが、海外かいがいさんのクリるい交雑こうざつされたものも存在そんざいする。栽培さいばい品種ひんしゅ収穫しゅうかくにより早生わせちゅうせい晩生ばんせい大別たいべつされる。以下いか代表だいひょうてき品種ひんしゅ
    • 早生わせぐり - 丹沢たんざわ(たんざわ)、国見くにみ(くにみ)
    • ちゅうせいぐり - 筑波つくば(つくば)、ぎんよせ(ぎんよせ)、利平りへいぐり(りへいぐり)
    • 晩生ばんせいぐり - 石鎚いしづち(いしづち)、岸根きしね(がんね)

栽培さいばい

編集へんしゅう

温帯おんたいいきひろ分布ぶんぷしてきたクリは、それぞれの地方ちほう自生じせいし、ふるくから栽培さいばいされてきた[4]年間ねんかん平均へいきん気温きおん10 - 14℃、最低さいてい気温きおんが -20℃を下回したまわらない地方ちほうであれば栽培さいばい可能かのうで、日本にっぽんにおいてはほぼあきら都道府県とどうふけんでみられる。平安へいあん時代じだいには京都きょうと丹波たんば地方ちほう栽培さいばいさかんになり、日本にっぽん各地かくちひろまった[15]生産せいさんりょうは、茨城いばらきけん熊本くまもとけん愛媛えひめけん岐阜ぎふけん埼玉さいたまけんじゅんおおい。また、名産めいさんとして丹波たんば地方ちほう京都きょうと大阪おおさか兵庫ひょうごけん)や長野ながのけん小布施おぶせまち茨城いばらきけん笠間かさまられる。これらの地域ちいきでは「丹波たんばぐり」のようなブランドや、クリを使つかった菓子かしスイーツ開発かいはつによるこう付加ふか価値かち、イベント開催かいさいによる観光かんこうさそえきゃくへの活用かつようすすめられている[16]

シナグリなどと比較ひかくして、しぶ皮剥かわはぎがわ困難こんなんであり、生食なましょくよう用途ようとでは渋皮しぶかわ直下ちょっか果肉かにくとともにけず作業さぎょう必須ひっすである。とくにこのことが近年きんねん家庭かていにおけるクリの需要じゅよう低下ていかさせる原因げんいんとなってきた。そのようななかのうけん機構きこうにおいて、シナグリなみしぶ皮剥かわはぎかわせいすぐれるクリ品種ひんしゅぽろたん」(2007ねん10がつ22にち品種ひんしゅ登録とうろく)が育成いくせいされた[17]

日本にっぽん国内こくない収穫しゅうかくりょう

2014年度ねんど 23,401 t [18]

日本にっぽんおもなクリの産地さんち

自治体じちたいおよきゅう自治体じちたい作況さっきょう調査ちょうさ市町村しちょうそんべつデータ長期ちょうき累年るいねん一覧いちらんによる。作況さっきょう調査ちょうさ2014年版ねんばんによると、沖縄おきなわけん以外いがいの46都道府県とどうふけん収穫しゅうかく実績じっせきあり。そのうち33都府県とふけん収穫しゅうかくりょう100トン以上いじょうとなっている。ブランドでは丹波たんばぐり有名ゆうめいで、兵庫ひょうごけん丹波たんば亀岡かめおかから大阪おおさか能勢のせまちにかけて産出さんしゅつされ、ぶんろく年間ねんかん1592 - 1596ねん)のころからこめわるものとして栽培さいばいさかんになったものである[19]

  • 秋田あきたけん
  • 茨城いばらきけん - 国内こくない1
    • 小美おいたまきゅう美野里みのりまち
    • 笠間かさまきゅう岩間いわままちきゅう友部ともべまち
    • 茨城いばらきまち
    • かすみがうらきゅう霞ヶ浦かすみがうらまちきゅう千代田ちよだまち
    • 石岡いしおか
    • 土浦つちうら
    • つくば
  • 埼玉さいたまけん
    • 日高ひだか - 2007ねんに「にちだかぽロン」ので「ぽろたん」を特産とくさんひん[20]
  • 東京とうきょう
    • 八王子はちおうじ
    • あきる
  • 長野ながのけん
    • 小布施おぶせまち
  • 岐阜ぎふけん
    • 中津川なかつがわ
    • 美濃加茂みのかも
  • 静岡しずおかけん
    • 掛川かけがわ
  • 愛知あいちけん
    • 豊田とよだきゅう足助あすけまち
  • 京都きょうと
  • 大阪おおさか
    • 能勢のせまち - ぎんよせ発祥はっしょう[21]
  • 山口やまぐちけん
    • 岩国いわくにきゅう美和みわまち)- がんね(岸根きしねぐり産地さんち
  • 愛媛えひめけん - 国内こくない3
    • 大洲おおす
    • 伊予いよきゅう中山ちゅうざんまち
    • 内子うちこまち
  • 熊本くまもとけん - 国内こくない2けん北部ほくぶ菊鹿きくか地方ちほうけん南東なんとう人吉ひとよし地方ちほう偏在へんざいする。
    • 山鹿やまがきゅう菊鹿きくかまちきゅう鹿北かほくまち) - 西日本にしにほんいち生産せいさんりょう市町村しちょうそん
    • 山都やまとまちきゅう清和せいわむら
    • 菊池きくち
    • 山江やまえむら
    • 人吉ひとよし
  • 宮崎みやざきけん
    • 須木すきむら

クリのじつ人類じんるい史上しじょうにおいて食料しょくりょうとしてふるくから重用じゅうようされてきた。縄文じょうもん時代じだいには食料しょくりょうであるほか、建築けんちくざい木具きぐざいとしてきわめて重要じゅうよう樹木じゅもくであった[8]果実かじつ加工かこうひんれいとして、あまみがあるぐり焼酎しょうちゅう醸造じょうぞう[22]ちゃ飲料いんりょう[23]はな蜂蜜はちみつ採取さいしゅするみつげん植物しょくぶつとしても利用りようされる。

日本にっぽんぐり せい[24]
100 gあたりの栄養えいよう
エネルギー 686 kJ (164 kcal)
36.9 g
食物しょくもつ繊維せんい 4.2 g
0.5 g
2.8 g
ビタミン
ビタミンA相当そうとうりょう
(0%)
3 µg
(0%)
24 µg
チアミン (B1)
(18%)
0.21 mg
リボフラビン (B2)
(6%)
0.07 mg
ナイアシン (B3)
(7%)
1.0 mg
パントテンさん (B5)
(21%)
1.04 mg
ビタミンB6
(21%)
0.27 mg
葉酸ようさん (B9)
(19%)
74 µg
ビタミンC
(40%)
33 mg
ビタミンK
(1%)
1 µg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
1 mg
カリウム
(9%)
420 mg
カルシウム
(2%)
23 mg
マグネシウム
(11%)
40 mg
リン
(10%)
70 mg
鉄分てつぶん
(6%)
0.8 mg
亜鉛あえん
(5%)
0.5 mg
どう
(16%)
0.32 mg
セレン
(4%)
3 µg
成分せいぶん
水分すいぶん 58.8 g
水溶すいようせい食物しょくもつ繊維せんい 0.3 g
食物しょくもつ繊維せんい 3.9 g
ビオチン (B7) 3.9 µg

廃棄はいき部位ぶいからおにがわおよ渋皮しぶかわ包丁ほうちょうむき)
%はアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける
成人せいじん栄養えいよう摂取せっしゅ目標もくひょう (RDI割合わりあい

食用しょくよう

編集へんしゅう

日本にっぽんにおいて、クリは縄文じょうもん時代じだい初期しょきから食用しょくよう利用りようされていた。長野ながのけん上松うえまつまちのおみやもりうら遺跡いせき竪穴たてあな建物たてものあとからは1まん2900ねんまえ〜1まん2700ねんまえのクリが出土しゅつどし、乾燥かんそうよう可能かのうせいがあるあなけられたもあった。縄文じょうもん時代じだいのクリは静岡しずおかけん沼津ぬまづ遺跡いせきでもつかっているほか[25]青森あおもりけんさんない丸山まるやま遺跡いせきから出土しゅつどしたクリののDNA分析ぶんせきにより[26]縄文じょうもん時代じだいにはすでにクリが栽培さいばいされていたことがわかっている。

クリのじつは、一般いっぱん果樹かじゅじょうをもいで採取さいしゅするのとはことなり、ちたをいがにをつけながらひろ[19]野生やせいしゅ(ヤマグリ・シバグリ)は、栽培さいばいしゅよりもけんはてちいさいが、甘味あまみつよく、非常ひじょう濃厚のうこうあじわいがある[27][28]栽培さいばいしゅのオオグリ(大栗おおぐり)は、野生やせいしゅから改良かいりょうされたものである[13]。ナッツの一種いっしゅで、じつかたおにがわつつまれ、おにがわくと内側うちがわうす渋皮しぶかわおおわれている[6]食材しょくざいとしてのしゅんは、9 - 10がつで、おにがわにハリとツヤがあり、虫食むしくいがなく、おもみのあるののが商品しょうひん価値かちたか良品りょうひんとされる[6]

延喜えんぎしき』には乾燥かんそうさせてかわのぞいた「搗栗かちぐり(かちぐり)」やしてこなにした「たいら栗子りつこ(ひらぐり)」などの記述きじゅつがある[29]

現代げんだいにおいては、ほんのりとしたあまさをかしていしにした甘栗あまぐりぐりめしぐりはん)、ぐりおこわ茶碗蒸ちゃわんむたね菓子かしるいぐりきんとんぐり羊羹ようかんしぶ甘煮うまに甘露煮かんろになど)の材料ざいりょうひろ使つかわれている[30][28]。シンプルに、ぐりぐりにしてもおいしくべられる[30]

ヨーロッパでもひろ栽培さいばい利用りようされ、ぐりほかマロングラッセ仕立したてたり、にわとりなかにクリをんでローストにしたり、煮込にこ料理りょうりなどにする[30]。またイタリアではクリをこなにしてパンクレープケーキニョッキなどに利用りようする[31]

栄養えいようたかく、しょく100グラム (g) あたりの熱量ねつりょうが164キロカロリー (kcal) とこうカロリーで炭水化物たんすいかぶつおおふくみ、ビタミンB1B2カリウム葉酸ようさんなどもおお[15]

クリの長期間ちょうきかんおいておくと、水分すいぶんけてちぢんでむしはいってしまうため、かみなどにくるんで冷蔵れいぞう保存ほぞんするのがよく、かわいたクリのじつは、でてから冷凍れいとう保存ほぞんすることもできる[6]

材木ざいもくとしての用途ようと

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材木ざいもくは、かたくておもく、くさりにくいという材質ざいしつゆうする[14][32]。このような性質せいしつから建物たてものはしら土台どだい[33]鉄道てつどう線路せんろ枕木まくらぎ[14]家具かぐひとし指物さしもの使つかわれたが、近年きんねん資源しげんりょう不足ふそくから入手にゅうしゅしづらくなった。成長せいちょうはやく、よくえるので、ほそ丸太まるたたきぎシイタケ栽培さいばいのほだとして利用りようできる[33]縄文じょうもん時代じだい建築けんちくざい燃料ねんりょうざいはクリが大半たいはんであることが、遺跡いせき出土しゅつど遺物いぶつからかっている。さんない丸山まるやま遺跡いせきの6ほんばしら巨大きょだい構造こうぞうぶつしゅはしらにも利用りようされていた[32]触感しょっかんまつているが、まつよりかた年輪ねんりんもはっきりしている。強度きょうどたかいのが特長とくちょうだがかたいため加工かこうむずかしくなる[32]ならよりはやわらかい。

薬用やくよう

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中国ちゅうごく薬用やくようとされているクリは甘栗あまぐりいたぐり〈ばんりつ〉)で、日本にっぽんでは1しゅだけ自生じせいするが、これも薬用やくようにされる[7]

薬用やくよう部位ぶいたねひとしぐり)、と、そうつと(いが)で、それぞれ栗子りつこ(りっし)、ぐり(りつよう)、栗毛くりげかさ(りつもうきゅう)としょうする[7]たねじんあきはるからあき、いがはなつからあき採集さいしゅうして、なるべく緑色みどりいろのこるように日干ひぼ乾燥かんそうして薬用やくようもちいる[3][7]にはカロチンタンニンふくみ、樹皮じゅひ渋皮しぶかわにも多量たりょうのタンニンをふく[3]。タンニンはかせる消炎しょうえん作用さようと、細胞さいぼう組織そしきめる収斂しゅうれん作用さようがある[3]

民間みんかん療法りょうほうでは、食欲しょくよく不振ふしん下痢げり足腰あしこし軟弱なんじゃくに、たねじん)1にちりょう400グラムをみずれてせんじてから3かいけてむか、ふつうにべても[7]。また、ウルシイチジクギンナンなどのくさかぶれクラゲチャドクガムカデなどのどくむしされや、ただれ湿疹しっしんなどに、1にちりょう15 - 20グラム乾燥かんそうやイガを600 ccみず半量はんりょうになるまでとろせんじてやし、せんじえきをガーゼなどにふくませてひや湿布しっぷする用法ようほうられる[3]よくりょうとしてももちいる[7]。また、口内こうないえん、のどはれ、ひらたももえんにも、このせんじえき使つかってうがいするといとわれている[3]。いが(栗毛くりげかさ)を1にちりょう5 - 10グラムを600 ccのみずせんじて服用ふくようもするが、胃腸いちょうねつます作用さようがあるので、ねつがないときには使用しよう禁忌きんきとされる[7]

みつげん植物しょくぶつ

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クリは蜂蜜はちみつみつげん植物しょくぶつとしても重要じゅうようである。かつてぐりみつは、いろくろくて、あじおとるとしてれず、ミツバチ越冬えっとうするための植物しょくぶつとして使つかわれていた[8]。しかし、ぐりみつには鉄分てつぶんなどのミネラルるいおおく、あじ個性こせいてきでよい評価ひょうか見直みなおされて、ブルーチーズとよくうと推奨すいしょうされてイタリアさんぐりみつ需要じゅようえている[8]

病虫害びょうちゅうがい

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クリタマバチがつくるむしこぶ(むしえい)、クリメコブズイフシ。このむしこぶができたえだは、生長せいちょうまってはながつかなくなる[34]

戦前せんぜん中国ちゅうごくからまれたクリタマバチにより、昭和しょうわ20年代ねんだいには日本にっぽん全土ぜんど存在そんざいした100しゅえる品種ひんしゅ大半たいはん消滅しょうめつした。現在げんざい栽培さいばいされている品種ひんしゅは、その育成いくせいされたクリタマバチにたいする抵抗ていこうせい品種ひんしゅである[35]。クリタマバチ被害ひがいについては、1979ねん以降いこう、クリタマバチの天敵てんてきであるチュウゴクオナガコバチがクリのしゅ産地さんち飼されたことにより被害ひがい激減げきげんした。

つぎ問題もんだいとなっているのが、クリシギゾウムシによる果実かじつ被害ひがいである。これまでは、収穫しゅうかくにおいメチルによるくんじょうしゅとして防除ぼうじょがなされていたが、においメチルガスは温室おんしつ効果こうかたかいため、全廃ぜんぱいされることが決定けっていした(2005ねん全廃ぜんぱいする予定よていであったが、2015ねんまで不可欠ふかけつ用途ようと申請しんせいされて使用しようされていた)。においメチルくんじょう代替だいたい技術ぎじゅつとしてヨウメチルが登録とうろくされたが、ヨウもと逼迫ひっぱくによる価格かかく上昇じょうしょうや、においメチルにくらべて沸点ふってんたかあつかいにくいなどの理由りゆうで、製造せいぞう中止ちゅうしされた。代替だいたいほうとしては、こおりぞう壁面へきめん不凍液ふとうえき循環じゅんかんさせてくらない温度おんどこう湿度しつどのまま一定いっていたも保冷ほれい)によって -2℃で3週間しゅうかん程度ていど貯蔵ちょぞうするこおりぞう処理しょりと、50℃のおに30分間ふんかん浸漬しんせきする温湯ぬるゆ処理しょり確立かくりつされている。

日本にっぽんのクリはシナグリいでクリどう枯病たいする抵抗ていこうせいたかい。

天然記念物てんねんきねんぶつ

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クリにまつわる文化ぶんか作品さくひん

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ かさはてとは、まつかさのようなマツつな植物しょくぶつ果実かじつす。

出典しゅってん

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  1. ^ 米倉よねくら浩司こうじ梶田かじたただし (2003-). “Castanea crenata Siebold et Zucc. クリ(標準ひょうじゅん”. BG Plants 和名わみょう学名がくめいインデックス(YList). 2023ねん9がつ6にち閲覧えつらん
  2. ^ 米倉よねくら浩司こうじ梶田かじたただし (2003-). “Castanea crenata Siebold et Zucc. var. kusakuri (Blume) Nakai クリ(シノニム)”. BG Plants 和名わみょう学名がくめいインデックス(YList). 2023ねん9がつ6にち閲覧えつらん
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参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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