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量子りょうしのう理論りろん

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量子りょうしのう理論りろん(りょうしのうりろん)は、のうのマクロスケールでの振舞ふるまい、または意識いしき問題もんだいに、けい量子力学りょうしりきがくてき性質せいしつふかかかわっているとするかんがかた総称そうしょうこころまたは意識いしきかんする量子力学りょうしりきがくてきアプローチ(Quantum approach to mind/consciousness)、クオンタム・マインド(Quantum mind)、量子りょうし意識いしき(Quantum consciousness)などともわれる。具体ぐたいてき理論りろんにはいくつかの流派りゅうは存在そんざいする。

概要がいよう[編集へんしゅう]

のういにけい量子力学りょうしりきがく性質せいしつ本質ほんしつてきかたちかかわっている、というのが量子りょうしのう理論りろんわれるものの一般いっぱんてき特徴とくちょうであるが、近年きんねんでは意識いしき問題もんだいからめて議論ぎろんされることがおおい。

量子りょうしのう理論りろんばれるものの全体ぜんたい物理ぶつりがくてき言葉ことば特徴とくちょうづけることはむずかしいが、一般いっぱんてき特徴とくちょうとしては量子力学りょうしりきがくてき効果こうかいてくる範囲はんいとして、普通ふつう物理ぶつり学者がくしゃかんがえるよりはるかにおおきい時間じかんてき空間くうかんてきスケールをかんがえているてんげられる。 ヒトののうはおおよそ2000ccのおおきさをっておりその内的ないてき構造こうぞう非常ひじょう複雑ふくざつである。そしてのうはおよそ常温じょうおん一般いっぱん体温たいおんである37℃、つまり310K程度ていど)で動作どうさしている。こうしたけいにおいてマクロスケールで量子力学りょうしりきがくてき性質せいしついてくるとかんがえることはなかむずかしいが(量子りょうしてき効果こうかをマクロスケールで発現はつげんさせるためには普通ふつう規則きそくせいのある構造こうぞう非常ひじょう単純たんじゅんけいを、かなりの低温ていおんたとえば絶対ぜったいれいちかくまでやさなければならない)、一般いっぱん量子りょうしのう理論りろんばれる理論りろん提唱ていしょうしゃにおいては、このてんつよかんがかたつ。

量子りょうしのう理論りろん共通きょうつうするのは、意識いしき基本きほん構成こうせい単位たんいとしての属性ぞくせいが、素粒子そりゅうし各々おのおの付随ふずいするというかんがかたもとづいており、波動はどう関数かんすう収縮しゅうしゅくにおいて、意識いしき基本きほんてき構成こうせい単位たんい同時どうじわされ、生物せいぶつゆうする高度こうど意識いしきしょうじるとしているてんである。 こうした理論りろん提出ていしゅつされる背景はいけいには様々さまざま動機どうきがあるが、そのひとつとは自由じゆう意志いし問題もんだいである。これは物理ぶつりてき世界せかい因果いんがてきじている(物理ぶつり領域りょういき因果いんがてき閉包性へいほうせい)という主張しゅちょうをうまくかわしながら、現在げんざい物理ぶつりがく整合せいごうてきかたち実体じったい二元論にげんろんてき立場たちばるための方策ほうさくとして、物理ぶつりけい因果いんが作用さようあたえられそうな地点ちてんとして、波動はどう関数かんすう収縮しゅうしゅく過程かてい存在そんざい利用りようできるためである。とはいえかならずしも量子りょうしのう理論りろんばれる理論りろんのすべてが自由じゆう意志いし問題もんだい背景はいけいにもつわけではない。

たとえばペンローズの理論りろん決定けっていろんであり、哲学てつがくてき意味いみでは自由じゆう意志いし問題もんだいではなくむしろ数学すうがくてきプラトニズム立場たちばかかわる[1]

様々さまざまなが[編集へんしゅう]

ノイマン=ウィグナー アプローチ[編集へんしゅう]

ノイマン=スタップ アプローチ[編集へんしゅう]

ヘンリー・スタップ英語えいごばんは、量子りょうし波動はどう意識いしき相互そうご干渉かんしょうしたときにだけ収縮しゅうしゅくすることを提唱ていしょうした。かれは、ジョン・フォン・ノイマン量子力学りょうしりきがく立場たちばから、観察かんさつしゃ将来しょうらいこす行動こうどう根拠こんきょとして、いくつもの量子りょうし可能かのうせいなかからたった1つを選択せんたくするときに、量子りょうし状態じょうたい収縮しゅうしゅくすると主張しゅちょうする。それゆえ、収縮しゅうしゅくは、観測かんそくしゃがその状態じょうたいむすびついた予測よそくにおいてこるのである。スタップの研究けんきゅうはDavid BourgetやDanko Georgievといった科学かがくしゃから批判ひはんけた[2]。 Georgiev[3][4][5]はスタップのモデルをふたつのてんから批判ひはんしている。

  • スタップの仮説かせつにおけるしんは、それ自身じしん波動はどう関数かんすう密度みつど行列ぎょうれつたないにもかかわらず、射影しゃえい演算えんざんもちいてのう作用さようすることができる。このようなあつかかた標準ひょうじゅんてき量子力学りょうしりきがくとは相容あいいれない。なぜなら、空間くうかんない任意にんいてん任意にんいかず幽霊ゆうれいのようなしん配置はいちすることができ、その幽霊ゆうれいのようなしん任意にんい射影しゃえい演算えんざん使つかって物理ぶつりてき量子りょうしけい作用さようすることができるからである。スタップのモデルは、それゆえ、「有力ゆうりょく物理ぶつりがく原理げんり」を否定ひていしている[3]
  • 量子りょうしゼノン効果こうか外部がいぶ環境かんきょうてきデコヒーレンスつよいというスタップの主張しゅちょうは、量子りょうし情報じょうほう理論りろん基本きほん定理ていりである「量子りょうしけい密度みつど行列ぎょうれつ射影しゃえい演算えんざん作用さようさせると、そのけいフォン・ノイマンエントロピー増大ぞうだいするだけ」ということとこうから矛盾むじゅんしている[3][4]

スタップはGeorgievのふたつの反論はんろん両方りょうほう返答へんとうしている[6][7]

エックルズ=ベック アプローチ[編集へんしゅう]

ジョン・エックルズながれをぎつつF. ベックによって提唱ていしょうされているアプローチ。

治部じぶこうアプローチ[編集へんしゅう]

梅沢うめざわ博臣ひろおみの1978ねん,79ねん論文ろんぶん起源きげんつアプローチ。量子りょうしのう力学りきがく(Quantum Brain Dynamics)とばれ、現在げんざい治部じぶ眞里まりこう邦夫くにおなどが研究けんきゅうおこなっている。量子りょうしろん使つかって、神経しんけい細胞さいぼう間隙かんげきにあるみず巨視的きょしてき凝集ぎょうしゅうたいとしてみて、記憶きおく過程かていなどをあきらかにしようとするものである。だった哲学てつがくてき含意がんい理論りろんてき飛躍ひやくとくになく、量子りょうしのう理論りろんとよばれているもののなかではおそらくもっと普通ふつうである[よう出典しゅってん]

量子りょうしのう力学りきがく理論りろんサイアス 1999 ねん 12 がつごうに「■特集とくしゅう1 シリーズ「人間にんげん」 のうしん物理ぶつりがく 量子りょうしろんはどこまで人間にんげん本性ほんしょうせまれるか?」とだいして紹介しょうかいされた。「数理すうり科学かがく 2000 Vol.38 No.10」では、「のうしん量子りょうしろん物理ぶつりがくひらのう科学かがくあらたな地平ちへい」という特集とくしゅうまれている。

理論りろん概説がいせつ
日本語にほんごによる治部じぶこうアプローチの簡潔かんけつ概説がいせつ
起源きげんとなっている論文ろんぶん
治部じぶこうアプローチの起源きげんとなっている、梅沢うめざわ博臣ひろおみ高橋たかはしやすしらによる1978-79ねん論文ろんぶん

ペンローズ=ハメロフ アプローチ[編集へんしゅう]

理論りろん物理ぶつり学者がくしゃロジャー・ペンローズ麻酔ますいスチュワート・ハメロフによって提唱ていしょうされているアプローチ。二人ふたりによって提唱ていしょうされている意識いしきかんする理論りろんは Orchestrated Objective Reduction Theory(統合とうごうされた客観きゃっかん収縮しゅうしゅく理論りろん)、またはりゃくして Orch-OR Theory(オーチ・オア・セオリー)とばれる。

意識いしきなんらかの量子りょうし過程かていからしょうじてくると推測すいそくしている。ペンローズらの「Orch OR 理論りろん」によれば、意識いしきニューロン単位たんいとしてしょうじてくるのではなく、微小びしょうかんばれる量子りょうし過程かていこりやすい構造こうぞうからしょうじる。この理論りろんたいしては、現在げんざいでは懐疑かいぎてきかんがえられているが生物せいぶつがくじょう様々さまざま現象げんしょう量子りょうしろん応用おうようすることで説明せつめい可能かのうてんからすこしずつ立証りっしょうされていて20ねんまえからとなえられてきたこのせつ根本こんぽんてき否定ひていできたひとはいないとハメロフは主張しゅちょうしている。[8]

臨死りんし体験たいけん関連かんれんせいについて以下いかのように推測すいそくしている。「のうまれる意識いしき宇宙うちゅう世界せかいまれる素粒子そりゅうしよりちいさい物質ぶっしつであり、重力じゅうりょく空間くうかん時間じかんにとわれない性質せいしつつため、通常つうじょうのうおさまっている」が「体験たいけんしゃ心臓しんぞうまると、意識いしきのうから拡散かくさんする。そこで体験たいけんしゃ蘇生そせいした場合ばあい意識いしきのうもどり、体験たいけんしゃ蘇生そせいしなければ意識いしき情報じょうほう宇宙うちゅうつづける」あるいは「べつ生命せいめいたいむすいてまれわるのかもしれない。」とべている[9]

理論りろん簡潔かんけつ概説がいせつ
ハメロフのサイトにある理論りろん解説かいせつページ。豊富ほうふもちいられておりはなし概要がいようをつかむのに便利べんり
1996ねんにJCSに投稿とうこうされたハメロフとペンローズの共著きょうちょ論文ろんぶん
書籍しょせき 理論りろん背景はいけいなどをるのに有用ゆうよう
  • 『ペンローズの<量子りょうしのう理論りろんしん意識いしき科学かがくてき基礎きそをもとめて』<ちくま学芸がくげい文庫ぶんこ筑摩書房ちくましょぼう 2006ねん ロジャー・ペンローズしる竹内たけうちかおる茂木もき健一郎けんいちろうやく解説かいせつ徳間書店とくましょてん1997.5 ISBN 978-4480090065
竹内たけうちかおる茂木もき健一郎けんいちろうによるペンローズ・ハメロフ理論りろん解説かいせつしょ。139ページから194ページにうえのJCSの論文ろんぶん邦訳ほうやくおさめられている(茂木もき健一郎けんいちろうやく意識いしきはマイクロチューブルにおける波動はどう関数かんすう収縮しゅうしゅくとしてこる」)。

これらの理論りろん科学かがくてき枠組わくぐみでべられているが、科学かがくしゃ個人こじんてき信条しんじょうはなすことは困難こんなんである。提唱ていしょうしゃ意見いけんは、意識いしき本質ほんしつかんする直感ちょっかん主観しゅかんてきかんがえにもとづいていることがおおい。たとえば、ペンローズはつぎのようにいている[10]

わたし見解けんかいでは、意識いしきてき活動かつどうはシミュレートすることさえもできないだろう。意識いしきてき思考しこうこっていることは、計算けいさんではまったく真似まねできないものなのである(…)もしなにかが意識いしきっているかのようにったからといって、それが意識いしきつとえるだろうか?人々ひとびとはそれについて、わりのない議論ぎろんつづけている。ある人々ひとびとはこのようにうだろう、「さあ、きみ運用うんようてき視点してんたなければならない。意識いしきなになのかなんてりやしないさ。ある人物じんぶつ意識いしきがあるのかないのか、どうやって判断はんだんするんだ?かれらの行動こうどう判断はんだんするしかない。計算けいさんやロボットにもおなじことがてはまるだろ」と。人々ひとびとはこううだろう、「いいや、それがなにかをかんじているかのように振舞ふるまうことをもって、それがなにかをかんじているとは断言だんげんできない、というだけにぎない」と。わたしかんがえは、そのどちらともちがう。ロボットは、本当ほんとう意識いしきがないかぎり、あたかも意識いしきがあるかのように説得せっとくりょくのあるいをすることすらないだろう---そのロボットがすべて計算けいさんによって制御せいぎょされているかぎりはありえない。

ペンローズはこうつづける[11]

のうがやっていることのおおくは、計算けいさんでできることだ。わたしは、のうおこな動作どうさすべてが計算けいさんおこなうものとは完全かんぜんことなるとっているのではない。わたし主張しゅちょうしているのは、意識いしきおこなっていることはなにかがちがうということだ。わたし意識いしき物理ぶつりがくえている、ともっていない---我々われわれいまっている物理ぶつりがくえているとはっているが(…)わたしいたいのは、物理ぶつりがくにはまだ我々われわれ理解りかいしていないなにかがあるはずで、それは非常ひじょう重要じゅうようで、計算けいさんてき性質せいしつのものだということである。それはわたしたちののうかぎったことではなく、そとひろがる、物理ぶつりてき世界せかいにも存在そんざいするものなのだ。しかし、それは通常つうじょう、まったく重要じゅうようでない役割やくわりになっている。それは、量子りょうし物理ぶつりがくレベルと古典こてん物理ぶつりがくレベルの振舞ふるまいのあいだ橋渡はしわたしをしているはずで、そこで、量子りょうし測定そくてい登場とうじょうしなければならないのだ。

ローレンス・M・クラウスは、ペンローズのかんがえをあからさまに批判ひはんしている[12]

ロジャー・ペンローズは、量子力学りょうしりきがく根本こんぽんてき規模きぼで、意識いしき関係かんけいするかもしれないと示唆しさすることで、おおくのニューエイジかぶれの変人へんじんたちを活気かっきかせている。「量子りょうしのう理論りろん」という言葉ことばいたら、うたがったほうがいい(…)おおくの人々ひとびとがペンローズのせつ合理ごうりせいうたがっている。なぜならのう独立どくりつした量子力学りょうしりきがくけいではないからだ。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ ペンローズ 2006, pp. 293–296.
  2. ^ Bourget, D. (2004). “Quantum Leaps in Philosophy of Mind: A Critique of Stapp's Theory”. Journal of Consciousness Studies 11 (12): 17–42. 
  3. ^ a b c Georgiev, D. (2012). “Mind efforts, quantum Zeno effect and environmental decoherence”. NeuroQuantology 10 (3): 374–388. doi:10.14704/nq.2012.10.3.552. 
  4. ^ a b Georgiev, D. (2015). “Monte Carlo simulation of quantum Zeno effect in the brain”. International Journal of Modern Physics B 29 (7): 1550039. arXiv:1412.4741. Bibcode2015IJMPB..2950039G. doi:10.1142/S0217979215500393. 
  5. ^ Georgiev, Danko D. (2017). Quantum Information and Consciousness: A Gentle Introduction. Boca Raton: CRC Press. ISBN 9781138104488. OCLC 1003273264. https://books.google.com/books?id=OtRBDwAAQBAJ 
  6. ^ Henry P. Stapp (December 2012). “Reply to a Critic: 'Mind Efforts, Quantum Zeno Effect and Environmental Decoherence'”. NeuroQuantology 10 (4): 601–605. オリジナルの2018-11-06時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20181106202859/https://www.neuroquantology.com/index.php/journal/article/viewFile/619/548. 
  7. ^ Stapp, Henry (2015). “Reply to Georgiev: No-Go for Georgiev's No-Go Theorem”. NeuroQuantology 13 (2). doi:10.14704/nq.2015.13.2.851. 
  8. ^ モーガン・フリーマン 時空じくうえて だい2かい死後しご世界せかいはあるのか?」
  9. ^ NHK ザ・プレミアムちょうつね現象げんしょう さまよえるたましい行方ゆくえ
  10. ^ Edge Conversation Chapter 10: Intuition Pumps, and response by Roger Penrose”. Edge.com. 2018ねん2がつ20日はつか閲覧えつらん
  11. ^ Edge Conversation Chapter 14: Consciousness Involves Noncomputable Ingredients”. Edge.com. 2018ねん2がつ20日はつか閲覧えつらん
  12. ^ How to Spot Quantum Quackery”. NBC News Science News. 2018ねん3がつ8にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

全般ぜんぱん
(意識いしきかんする量子力学りょうしりきがくてきアプローチについて、様々さまざま立場たちば解説かいせつしている論文ろんぶん。)
  • こう邦夫くにおしる高橋たかはしやすし監修かんしゅう量子りょうしじょうのう理論りろん入門にゅうもんのう生命せいめい科学かがくのための量子りょうしろん〜』(2003ねんサイエンスしゃ)。
  • ロジャー・ペンローズ ちょ竹内たけうちかおる茂木もき健一郎けんいちろう やく『ペンローズの<量子りょうしのう理論りろん筑摩書房ちくましょぼう〈ちくま学芸がくげい文庫ぶんこ〉、2006ねん 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]