ワイルドハント (英語 えいご : Wild Hunt 、ドイツ語 ご : Wild Jagd[注釈 ちゅうしゃく 1] , Wildes Heer[注釈 ちゅうしゃく 2] 、フランス語 ふらんすご : Chasse sauvage )は、ヨーロッパ の大 だい 部分 ぶぶん の地域 ちいき に、古 ふる くから伝 つた わる伝承 でんしょう である。
いずれの地域 ちいき においても、伝説 でんせつ 上 じょう の猟師 りょうし の一団 いちだん が、狩猟 しゅりょう 道具 どうぐ を携 たずさ え、馬 うま や猟犬 りょうけん と共 とも に、空 そら や大地 だいち を大挙 たいきょ して移動 いどう していくものであるといわれている。
『ワイルドハント』ペーテル・ニコライ・アルボ 作 さく
猟師 りょうし たちは死者 ししゃ あるいは妖精 ようせい (民話 みんわ の中 なか で、死 し と関連 かんれん する妖精 ようせい )であり、猟師 りょうし の頭領 とうりょう は亡霊 ぼうれい 、多神教 たしんきょう の神 かみ 、あるいは精霊 せいれい (男女 だんじょ を問 と わない)、または歴史 れきし 上 じょう や伝説 でんせつ 上 じょう の人物 じんぶつ であると言 い われる。例 れい を挙 あ げれば、東 ひがし ゴート王 おう テオドリック 、デンマーク王 おう ヴァルデマー4世 せい 、ウェールズ で霊魂 れいこん を冥界 めいかい に導 みちび くとされるグウィン・アプ・ニーズ 、または北欧 ほくおう 神話 しんわ の神 かみ オーディン 、またアーサー王 おう のこともある。
この狩猟 しゅりょう 団 だん を目 め にすることは、戦争 せんそう や疫病 えきびょう といった、大 おお きな災 わざわ い を呼 よ び込 こ むものだと考 かんが えられており、目撃 もくげき した者 もの は、死 し を免 まぬか れなかった。他 ほか にも、狩猟 しゅりょう 団 だん を妨害 ぼうがい したり、追 お いかけたりした者 もの は、彼 かれ らにさらわれて冥土 めいど へ連 つ れていかれたといわれる。また、彼 かれ らの仲間 なかま に加 くわ わる夢 ゆめ を見 み ると、魂 たましい が肉体 にくたい から引 ひ き離 はな されるとも信 しん じられていた[6] 。
オーディンとの関連 かんれん [ 編集 へんしゅう ]
ハロウィーンからユールの時期 じき [ 編集 へんしゅう ]
オーディンのワイルドハント ハーパーズ・ニュー・マンスリー・マガジン1873年 ねん 1月 がつ 号 ごう より
北欧 ほくおう 神話 しんわ ではオーディン の狩猟 しゅりょう 団 だん とされており、「オーディンの渡 わた り」とも呼 よ ばれる。ワイルドハントが始 はじ まるのは10月31日 にち で、翌年 よくねん 4月 がつ 30日 にち までは終 お わらないといわれた。この2つの日 ひ は特 とく に大事 だいじ である。10月31日 にち 、太陽 たいよう は九 ここの つの世界 せかい へいき、精霊 せいれい や妖怪 ようかい がこの世 よ を放浪 ほうろう するようになるからである[8] 。10月31日 にち のサムハイン(サウィーン、ハロウィーン )は魔女 まじょ の新年 しんねん であり、現世 げんせい と霊界 れいかい の壁 かべ がいちばん薄 うす くなる時期 じき でもある。北欧 ほくおう 神話 しんわ では、サムハインは10月31日 にち の9日 にち 前 まえ の夜 よる から始 はじ まり、10月31日 にち の9日 にち 後 ご の夜 よる に終 お わるが、31日 にち 当日 とうじつ が、壁 かべ が薄 うす くなるピークである[9] 。また北半球 きたはんきゅう の大 だい 部分 ぶぶん では、ハロウィーンと共 とも に、冬 ふゆ の季 き 節 ぶし が始 はじ まり、かつて多 おお くのヨーロッパの人々 ひとびと は、影 かげ が長 なが くなって火 ひ をともすこの時期 じき は家 いえ にこもった [疑問 ぎもん 点 てん – ノート ] 。狩猟 しゅりょう 月 がつ の先端 せんたん が暗闇 くらやみ に浮 う かぶと、嵐 あらし が吹 ふ き荒 あ れる時期 じき となり、アンシーリーコート の時期 じき でもあり、ワイルドハント は暗 くら い日 ひ 、10月31日 にち から冬至 とうじ の休閑 きゅうかん 期 き に集中 しゅうちゅう する[10] 。元々 もともと は、ユールと十 じゅう 二 に 夜 や の間 あいだ に、8本 ほん 足 あし のスレイプニル にまたがったオーディンが、魔物 まもの や精霊 せいれい たちや遠吠 とおぼ えする犬 いぬ を従 したが えて、やってくるとされていた。オーディンが、スレイプニルにまたがって天 てん に駆 か け出 だ すと、雷 かみなり のような音 おと が轟 とどろ き、風 ふう が吹 ふ きはじめ、やがて耳 みみ をつんざくような音 おと へと変 か わる。他 た の悪魔 あくま や精霊 せいれい の馬 うま の蹄 の音 おと も、この音 おと に加 くわ わり、犬 いぬ たちも同様 どうよう に、やはり耳 みみ をつんざくような吠 ほ え声 ごえ を上 あ げる。かつてのゲルマン 世界 せかい で、クリスマス 前後 ぜんご の、燻 いぶ し十 じゅう 二 に 夜 や の頃 ころ は雪 ゆき 嵐 あらし が多 おお く、その嵐 あらし にオーディンの到来 とうらい を人々 ひとびと は重 かさ ね合 あ わせた。また、この頃 ころ 祖先 そせん の霊 れい が帰 かえ ってくるというい伝 いつた えがあり、今 いま も、特 とく に北欧 ほくおう ではこの習慣 しゅうかん が守 まも られていて、故人 こじん の好 この んだ料理 りょうり を作 つく って並 なら べ(ユール・ボード)、馬 うま の手綱 たづな を解 と いて、故人 こじん の霊 れい が乗 の れるようにしておくという[12] 。
冬 ふゆ の
風 かぜ が
吹 ふ いて、ユールの
火 ひ がともされる
頃 ころ は、
家 いえ の
中 なか にいるべきだ。
暗闇 くらやみ の小道 こみち からも、野生 やせい のヒース からも閉 と ざされていて安全 あんぜん だ。
ユールの夜 よる にあてどもなくうろつく者 もの は、樹 き 上 じょう からのさらさらと言 い う音 おと を耳 みみ にする。
それは風 かぜ の音 おと だろう、でも他 た の木 き はしんとしている。
でもその次 つぎ に、犬 いぬ の吠 ほ える声 こえ を聞 き こえる、軍団 ぐんだん の首領 しゅりょう が舞 ま い降 お りてくる。
目 め から
火 ひ を
吹 ふ く
黒 くろ い
猟犬 りょうけん 、
黒 くろ い
馬 うま のいななき。
ユールの間 あいだ 中 ちゅう 、ワイルドハントの動 うご きも最高潮 さいこうちょう に達 たっ し、死者 ししゃ がワイルドハントの一員 いちいん となって現世 げんせい をうろつく。リーダーであるオーディン、その後 ご に、黒 くろ くて吠 ほ え続 つづ ける犬 いぬ を連 つ れて、狩 か りの角笛 つのぶえ を吹 ふ きならす死 し んだ英雄 えいゆう たちが続 つづ く[13] 。オーディンの8本 ほん 足 あし の馬 うま 、スレイプニルのために、古代 こだい のゲルマンやノルマンの子供 こども たちは、冬至 とうじ の前 まえ の夜 よる にブーツを暖炉 だんろ のそばに置 お き、スレイプニルのために干 ほ し草 くさ と砂糖 さとう を入 い れ、オーディンはその見返 みかえ りとして、子供 こども たちに贈 おく り物 もの を置 お いていったという。現代 げんだい では、スレイプニルは8頭 とう のトナカイ となり、灰色 はいいろ の髭 ひげ のオーディンは、キリスト教 きりすときょう 化 か により、聖 せい ニコラウス 、そして親切 しんせつ なサンタクロース となったのである[14] 。ブーツ以外 いがい に靴下 くつした を置 お き、やはり中 なか に、スレイプニルの食物 しょくもつ や干 ほ し草 くさ を入 い れておくと、やはり、オーディンから、子供 こども たちへのキャンディ がその中 なか に入 はい っているといわれる。もし、戸外 こがい でワイルドハントに出逢 であ った人 ひと は、心 しん の純粋 じゅんすい さと、このワイルドハントに象徴 しょうちょう されるような恐 おそ ろしい光景 こうけい に敬意 けいい を払 はら えるか、一種 いっしゅ の度胸 どきょう 試 ため しがなされ、さらにユーモア のセンスが試 ため される。もしそれに合格 ごうかく すれば、その人 ひと は靴 くつ を黄金 おうごん で一 いち 杯 はい にするか、食 た べ物 もの と飲 の み物 もの をもらって帰 かえ ることができる。しかし不運 ふうん なことに合格 ごうかく しなかった場合 ばあい 、その人 ひと は、恐怖 きょうふ に満 み ちた夜 よる の旅 たび へ、生涯 しょうがい 連 つ れまわされることになる[13] 。ワイルドハントに命 いのち を奪 うば われ、魂 たましい が、その後 ご 何 なん 年 ねん もこの軍団 ぐんだん と共 とも に空 そら を駆 か け巡 めぐ った者 もの は、邪悪 じゃあく な者 もの や嘘 うそ つきといわれるが、ユールの時期 じき に、祖 そ 霊 れい へのご馳走 ちそう を怠 おこた ったからだとも広 ひろ く伝 つた えられる。かつては、死 し が間近 まぢか な病人 びょうにん の場合 ばあい 、狩 か りに加 くわ われるように、部屋 へや の窓 まど が開 あ けてあった[15] 。サンタクロースがワイルドハントに由来 ゆらい するというこれらの説 せつ は、ヘレーン・アデリーン・ガーバーらによって唱 とな えられたものだが、史料 しりょう による確認 かくにん はなされていない。また、サンタクロース伝説 でんせつ の元 もと になったミラのニコラオス の逸話 いつわ は、ワイルドハントとはほど遠 とお いものである[要 よう 出典 しゅってん ] 。
ワルキューレ アルボ作 さく
北欧 ほくおう では、夏至 げし の前夜 ぜんや にもみられることがある。空 そら で犬 けん をけしかける声 こえ がして、地域 ちいき によってはケルヌンノス に率 ひき いられている。夏至 げし の夜 よる はヨーロッパでは妖精 ようせい の夜 よる 、魔女 まじょ の夜 よる でもある。リアノン・ライアル の著述 ちょじゅつ には、『ウエスト・カントリー・ウィッカ』の中 なか で、儀式 ぎしき を伴 ともな う魔女 まじょ の集会 しゅうかい は、イングランド西部 せいぶ で何 なに 世紀 せいき も続 つづ いているとある[16] 。ワイルドハントは、春分 しゅんぶん や秋分 しゅうぶん の頃 ころ にも出現 しゅつげん する。これは、その季 き 節 ぶし の暴風 ぼうふう と関係 かんけい があるとされ、また、オーディン自身 じしん が死者 ししゃ の魂 たましい を運 はこ ぶ風 ふう とする説 せつ もある。また、オーディンがもたらす風 かぜ が、翌年 よくねん の豊穣 ほうじょう を約束 やくそく するともいわれた[12] 。
「オーディンの軍団 ぐんだん 」本来 ほんらい の姿 すがた [ 編集 へんしゅう ]
時 じ が経 た つに連 つ れ、オーディンの群 む れは魔物 まもの 化 か していき、多 おお くの精霊 せいれい や妖怪 ようかい 、悪事 あくじ を働 はたら いた者 もの や非業 ひごう の死 し を遂 と げた者 もの をも引 ひ き連 つ れた軍団 ぐんだん へと変化 へんか していった。ワイルドハントに出逢 であ ったら、通 とお り過 す ぎるのを待 ま つか、三 みっ つの十字架 じゅうじか を前 まえ に並 なら べるともいわれる。この三 みっ つの十字架 じゅうじか には、キリスト教 きょう の影響 えいきょう が窺 うかが える。これは日本 にっぽん の百鬼夜行 ひゃっきやこう にも通 つう ずるものがある。かつては物忌 ものいみ の象徴 しょうちょう であったものが、いつの間 ま にか恐 おそ ろしい物 も の怪 のけ の集団 しゅうだん となっていったのである[12] 。また別 べつ の地域 ちいき では、聖 せい ニコラウス の日 ひ に、「オーディン(ヴォーダン)」をはじめとし、麦 むぎ わら の妖精 ようせい シャープ、さまざまな精霊 せいれい や、化 ば け物 もの の格好 かっこう をした人々 ひとびと の行列 ぎょうれつ が練 ね り歩 ある く。先頭 せんとう は道案内 みちあんない の神 かみ のエケハルト で、大 だい 天使 てんし のミヒャエル と共 とも にサンクト・ニコラウスがやってくる。行列 ぎょうれつ のさらに後 うし ろからは、毛皮 けがわ を着 き て、色 いろ とりどりの面 めん をつけ、角 かく を生 は やした鬼 おに が続 つづ くと言 い われる[17] 。オーディンが引 ひ き連 つ れているのは、ワルキューレ という説 せつ もある[8] 。
ヨーロッパ各地 かくち での伝承 でんしょう [ 編集 へんしゅう ]
多 おお くの
人々 ひとびと が、
大勢 おおぜい の
猟師 りょうし たちが
狩 か りをしているのを、
目 め または
耳 みみ にしていた。
彼 かれ らは
黒 くろ く、
巨大 きょだい で
醜 みにく く、
黒 くろ い
馬 うま または
雄 ゆう の
ヤギ に
乗 の っていた。
彼 かれ らの
連 つ れていた
犬 いぬ は
漆黒 しっこく で、
皿 さら のような
耳 みみ をしていて、
恐 おそ ろしかった。
ピーターバラ のディアパークの、
正 せい のその
空 そら に
見 み えた。その
町 まち からスタンフォードまで、
森 もり づたいに、その
光景 こうけい が
見 み えていた。その
夜 よる 修道 しゅうどう 士 し たちは、
彼 かれ らが
笛 ふえ を
吹 ふ いているのを
耳 みみ にした。
—著者 ちょしゃ 不明 ふめい 、アングロサクソン年代 ねんだい 記 き 、a b Garmonsway, G.N., The Anglo-Saxon Chronicle, Dent, Dutton, 1972 & 1975, p. 258.
デボンのウィストマンウッドの森 もり
サー・フランシス・ドレイク
ワイルドハントは、時 とき を経 へ るに従 したが って、オーディン以外 いがい の神 かみ や、民話 みんわ の英雄 えいゆう が狩猟 しゅりょう 団 だん の頭領 とうりょう となっていく。それはアーサー王 おう であったり、ダートムア の民間 みんかん 伝承 でんしょう では、サー・フランシス・ドレイク であったりする。サマセット のキャドバリー城 じょう 近 ちか くの古 ふる い道 みち はキング・アーサー・レインと呼 よ ばれており、19世紀 せいき の時点 じてん でも、風 かぜ の強 つよ い冬 ふゆ の夜 よる は、アーサー王 おう が犬 いぬ を連 つ れてそこを疾駆 しっく するという話 はなし が信 しん じられていた。英国 えいこく のある場所 ばしょ では、この狩猟 しゅりょう 団 だん は、宗教 しゅうきょう 上 じょう の大罪 だいざい を犯 おか した者 もの や、受洗 じゅせん していない者 もの を追 お いかける地獄 じごく の猟犬 りょうけん であると言 い われている。デボン では、イェス(ヒース)またはウィシュトハウンドと呼 よ ばれ、コーンウォール ではダンドーと犬 いぬ たち、またはデビルとダンディードッグと呼 よ ばれる。ウェールズ ではクンアンゥン(地獄 じごく の猟犬 りょうけん )、サマセットではガブリエル・ラチェッツまたはレチェッツ(犬 いぬ )、デボンでは特 とく に、ウィストマンウッド で見 み られ。、ウィストハウンドという名 な もある[10] 。このガブリエル・ラチェッツ(ラチェットは犬 いぬ のこと)、またはガブリエルハウンズとは、古 ふる い表現 ひょうげん で「死体 したい 」を意味 いみ する。セブンホイッスラーズ(夜 よる の間 あいだ 中 ちゅう 飛 と び回 まわ る七 なな 羽 わ の鳥 とり 、恐 おそ らくは死 し んだ鉱夫 こうふ や漁師 りょうし の霊 れい )と似通 にかよ ったものがある。このセブンホイッスラーズの鳴 な き声 ごえ は天災 てんさい の前兆 ぜんちょう とされた。
古代 こだい ヨーロッパでは、犬 いぬ は守護神 しゅごじん であり、亡霊 ぼうれい を食 く らうものだった。これは狼 おおかみ も同様 どうよう だった。「肉 にく が骨 ほね と切 き り離 はな されるまでは、魂 たましい は来世 らいせ で自由 じゆう になれない」と信 しん じられており、犬 いぬ たちは肉体 にくたい を食 く らってその人 ひと を自由 じゆう にするとされた。サウスウォーウィックシャー では、キリスト教 きょう が伝 つた わる前 まえ の冬至 とうじ の祭 まつ りでワイルドハントと共 とも に見 み られた、お化 ば けのような猟犬 りょうけん の一団 いちだん は、ナイトハウンズやヘルハウンズ(正確 せいかく には「ノルマンの女神 めがみ のヘルハウンズ」)と呼 よ ばれた。シャックまたはショックとも呼 よ ばれたこれは、古代 こだい 英語 えいご の悪魔 あくま (スクッカ)が起源 きげん と思 おも われる。北欧 ほくおう 神話 しんわ のバーサーカー と狼 おおかみ は、いずれも死 し を表 あらわ し、古代 こだい 英語 えいご での狼 おおかみ (ウルヴズ)は、放浪 ほうろう 者 しゃ や犯罪 はんざい 者 しゃ のような「社会 しゃかい 的 てき に死 し んだ者 もの 」と同義 どうぎ であり、彼 かれ らがワイルドハントの一因 いちいん となっている理由 りゆう とされる。
ワイルドハントの後 のち に、暖炉 だんろ のそばに小 ちい さな黒 くろ い犬 いぬ がいたら、見 み つけた人 ひと が、その後 ご 1年 ねん 世話 ぜわ をし、労 ろう わらなければならない。きちんと世話 せわ をしないと、悲惨 ひさん な結末 けつまつ が待 ま ち受 う けている。また、夜 よる に黒 くろ い犬 いぬ を見 み るのは、間近 まぢか な死 し の前兆 ぜんちょう とされた。
イングランド で主 おも にワイルドハントの首領 しゅりょう と考 かんが えられるのは、イングランド オーディン[19] 、オーディンの一 いち 形態 けいたい であるヘルラ[20] [21] サクソンの富豪 ふごう でノルマンに盾突 たてつ いたエドリック 、アーサー王 おう 、サー・フランシス・ドレーク、ダラム 地方 ちほう ではイェス またはウィッシュハウンドなどである。ヘルラ(ハーン)は頭 あたま に雄 お 鹿 しか の頭蓋骨 ずがいこつ と角 かく を飾 かざ り、体 からだ 中 ちゅう から燐光 りんこう を放 はな って、冬 ふゆ の真夜中 まよなか ウィンザー の森 もり に現 あらわ れる精霊 せいれい で、不吉 ふきつ の前兆 ぜんちょう とされる。ウィリアム・シェイクスピア の『ウィンザーの陽気 ようき な女房 にょうぼう たち 』には、このヘルラが登場 とうじょう する[23] 。ヘルラに関 かん しての、12世紀 せいき のウォルター・マップ の次 つぎ のような文章 ぶんしょう もある。
ヘル
ラ王 らおう の
一族 いちぞく は、
ヘンリー2世 せい の
治世 ちせい の
最初 さいしょ の
年 とし に、ウェールズとヘレフォードの
境界 きょうかい 地方 ちほう で
目撃 もくげき された。
昼間 ひるま のことで、我々 われわれ と同 おな じように馬車 ばしゃ に乗 の って、馬 うま に荷物 にもつ を載 の せ、馬 うま の荷鞍 にぐら に荷 に 籠 こめ 、鷹 たか に猟犬 りょうけん 、そして男女 だんじょ が集 あつ まっていた。
この一 いち 行 ぎょう を最初 さいしょ に見 み た者 もの は、国 くに を挙 あ げて彼 かれ らを敵 てき に回 まわ しラッパ を吹 ふ いて、叫 さけ びをあげた。
なぜなら彼 かれ らは、話 はな しかけるための言葉 ことば をひねり出 だ せない。
武器 ぶき を突 つ きつけ、彼 かれ らに答 こた えさせようとしたが、彼 かれ らは宙 ちゅう に浮 う かんですぐさま消 き えてしまった。
ウェールズ では、グウィン・アプ・ニーズのほかに、マリュティノス (マチルダ・オブ・ザ・ナイトまたはナイト・マリュト)の伝承 でんしょう もある。マリュティノスは、かつては不信心 ふしんじん な貴婦人 きふじん で、狩 か り が大好 だいす きで、「天国 てんごく に狩 か りがないのなら、行 い かない方 ほう がいいわ」と口 くち にしてしまったため、死後 しご はその望 のぞ み通 どお りになり、暴 あば れ馬 ば に乗 の って、アラウン と共 とも に、泣 な きわめくような声 こえ を上 あ げながら、クリスマス や大晦日 おおみそか に、アヌンウン の犬 いぬ の亡霊 ぼうれい を走 はし らせるという[24] 。この犬 いぬ は、ガブリエル・ラチェッツと同 おな じ犬 けん ともいわれる。
グウィン・アプ・ノーズはウェールズの五 ご 月 がつ 祭 さい (カランマイ)に現 あらわ れる[8] 。
ペルヒタ
時 とき に、狩猟 しゅりょう 団 だん がドラゴン や悪魔 あくま を連 つ れているという話 はなし がある。猟師 りょうし たちは馬 うま 、または馬車 ばしゃ に乗 の っている場合 ばあい が多 おお く、何 なん 頭 とう かの犬 いぬ を引 ひ き連 つ れている。特 とく に若 わか い女性 じょせい は、罪 つみ があろうとなかろうと、彼 かれ らの獲物 えもの となる。この話 はなし の多 おお くは、ワイルドハントに出 で くわして難 なん を逃 のが れた人々 ひとびと によるもので、もし彼 かれ らの道 みち を塞 ふさ ぐようなことをすれば罰 ばっ せられ、もし彼 かれ らの手助 てだす けをすれば、金 かね や黄金 おうごん 、あるいは、かなり高 たか い確 かく 率 りつ で、死者 ししゃ や死 し んだ動物 どうぶつ の脚 あし が与 あた えられる。この人間 にんげん や動物 どうぶつ たちは、呪 のろ われ て逃 のが れられなかった者 もの たちである。
この場合 ばあい 、その人 ひと は聖職 せいしょく 者 しゃ や魔術 まじゅつ 師 し に頼 たの んでワイルドハントを撃退 げきたい してもらうか、塩 しお をねだって、脚 あし を取 と り戻 もど させるように仕向 しむ ける。ワイルドハントは塩 しお を渡 わた すことができないからである。多 おお くの場合 ばあい 、狩猟 しゅりょう 団 だん が通過 つうか する間 あいだ 、道 みち の中央 ちゅうおう より右側 みぎがわ にいた人 ひと は安全 あんぜん だと言 い われる[26] [27] [28] 。ドイツでは、ヴォーダン (オーディン)、ベルヒトルト 、ディートリッヒ・フォン・ベルン 、ホルタ 、ペルヒタ 、ビルデヒャイト 、ローデンシュタイン とハンス・フォン・ハッケルベルク の従者 じゅうしゃ (2人 ふたり とも安息日 あんそくび を破 やぶ った罪人 ざいにん )[29] 、レイジングホストまたはフュリアスホスト、レッドベアード [要 よう 出典 しゅってん ] などが首領 しゅりょう とされている。
ザクセンの神話 しんわ では、オーディン 、またはヴォータンは、戦死 せんし した兵士 へいし をワルハラ に連 つ れていき、蘇 よみがえ らせてからエインヘリャル を編成 へんせい した。毎日 まいにち 兵士 へいし たちは戦死 せんし し、夜 よる に蘇 よみがえ って、酒宴 しゅえん を楽 たの しんだ[30] 。
ザクセンには次 つぎ のような伝説 でんせつ もある。ある王子 おうじ が、少年 しょうねん を切 き り裂 さ いた。少年 しょうねん はヤナギ の皮 かわ をはいで笛 ふえ を作 つく った。王子 おうじ は少年 しょうねん が木 き を傷 きず つけたため、罰 ばち を与 あた えたのである。王子 おうじ は少年 しょうねん の腸 ちょう をヤナギの周囲 しゅうい に巻 ま き付 つ けた。また、鹿 しか を狩 か った農奴 のうど にも残酷 ざんこく な刑 けい を科 か した。
王子 おうじ は狩 か りの途中 とちゅう 、カバノキに激突 げきとつ して死 し に、永遠 えいえん に狩 か りをすることになった。この王子 おうじ の集団 しゅうだん は、十字路 じゅうじろ では転落 てんらく し、また広 ひろ い通 とお りを避 さ ける[15] 。また、1123年 ねん 、このザクセンのヴォルムス の司教 しきょう 管区 かんく の住民 じゅうみん たちは、毎晩 まいばん のように、大勢 おおぜい の武装 ぶそう した騎士 きし たちが隊列 たいれつ を組 く んで山 やま から下 お りてきて、また山 やま に引 ひ き返 かえ すのを目撃 もくげき していた。
彼 かれ らの前 まえ に十字架 じゅうじか を押 お しやって、そのうちの一人 ひとり に尋 たず ねたところ、彼 かれ らは実 じつ は皆 みな 死 し んでいるのだと答 こた えた。
この騎士 きし たちは、戦死 せんし した者 もの の魂 たましい だったのである[30] 。オーストリア の民族 みんぞく 学者 がくしゃ であるアレクサンダー・スラヴィク は、ワイルドハントが「来訪 らいほう する死者 ししゃ 」「来訪 らいほう する亡 な くなった隣人 りんじん 」への昔 むかし からの信仰 しんこう を示唆 しさ する、と考 かんが えた[31] 。
ワイルドハントを率 ひき いるといわれる、ハンス・フォン・ハケルンベルク (ハッケルベルク)という人物 じんぶつ は1521年 ねん または1581年 ねん に没 ぼっ したといわれる。
後世 こうせい の民話 みんわ では、ハケルンベルクは猪 いのしし を殺 ころ したが、牙 きば で脚 あし を負傷 ふしょう し、毒 どく が回 まわ って死 し んだ。彼 かれ は、死 し んでから天国 てんごく へ行 い くことは望 のぞ まない、代 か わりに狩 か りをさせてくれるように望 のぞ んだ。
彼 かれ の願 ねが いはき届 きとど けられ、あるいは呪 のろ われ、夜空 よぞら で狩 か りをすることになった。この話 はなし のもう一 ひと つ別 べつ の形 かたち として、生前 せいぜん の罪 つみ の罰 ばち として軍団 ぐんだん を率 ひき いるようになったというのもある。この話 はなし には、もっと昔 むかし のものではないかとも思 おも われる。また、ハッケンベルクとは、単 たん に、古代 こだい サクソン(ザクセン)語 ご で、ボーダン(オーディン)のあだ名 な であるハコルベランドがなまったものだともいわれている。
グリム兄弟 きょうだい は、「怒 おこ れる軍団 ぐんだん 」(ワイルドハント)は、オーディンの軍 ぐん に起源 きげん があるとしている[32] 。
1133年 ねん のノルマンディー の聖職 せいしょく 者 しゃ 、オルデリック・ヴィタリス によると、1091年 ねん の1月 がつ 1日 にち 、亡霊 ぼうれい たちからの伝言 でんごん を依頼 いらい された聖職 せいしょく 者 しゃ のボンヌヴァル・ウォルシュラン は、彼 かれ らを無視 むし し、乗 の り手 て のいない馬 うま を一 いち 頭 とう 盗 ぬす もうとした。しかし赤 あか く焼 や けた手綱 たづな と、盗 ぬす みで彼 かれ を取 と り押 お さえた騎士 きし の手 て で焼 や かれてしまう。ウォルシュランは兄弟 きょうだい のとりなしで難 なん をのがれたが、死 し んでからは、ワイルドハントに加 くわ わったと言 い う。
パリ 近 ちか くのフォンテーヌブロー の森 もり には、ル・グラン・ヴェヌール(大 だい 頭領 とうりょう )がいて、森 もり の中 なか を風 ふう が吹 ふ けば、ル・グラン・ヴェヌールが現 あらわ れたといわれる[15] 。
ドイツに近 ちか いアルザス の住人 じゅうにん であるジャン・ガイレ・カイゼルベール は、1516年 ねん に、ワイルドハントについて次 つぎ のように書 か いている。「神 かみ の決断 けつだん が下 くだ される前 まえ に世 よ を去 さ ったものは、ワイルドハントの一員 いちいん となる。彼 かれ らは、突 つ きされたり、吊 つ るされたり、水 みず におぼれたりして死 し に至 いた ったもので、神 かみ の決断 けつだん が来 く るまで、死後 しご もこの世 よ に留 とど まっているのである」
フランスでは、ワイルドハントを率 ひき いるのは、必 かなら ずしもオーディンや、シャッセマカベイ、シャッセアルトゥ、そしてメスネデレキン(死 し の女神 めがみ エル)だけではなく、アルザスではホレのおばさん やペルヒタ のこともある。また、ワイルドハントが、大人 おとな にならないうちに死 し んだ子供 こども たちの集団 しゅうだん である場合 ばあい もある。これは子供 こども だけが見 み ることができるが、これを見 み た子供 こども たちに危害 きがい は加 くわ えられず、ワイルドハントの一員 いちいん として引 ひ き込 こ まれることもない。むしろ、この集団 しゅうだん を率 ひき いるホレおばさんは、子供 こども たちに贈 おく り物 もの (しばしば小 ちい さな食物 しょくもつ )をくれ、これが、アルザスのクリスマスイブ に、子供 こども たちにプレゼントをくれる、白 しろ いドレスの女性 じょせい 、クリストキント の発祥 はっしょう になったといわれている。(現代 げんだい のサンタクロースとは別物 べつもの である)
20世紀 せいき の始 はじ め、アルザスには、冬至 とうじ の近 ちか くに、仮面 かめん を付 つ けて幽霊 ゆうれい や動物 どうぶつ に扮 ふん し、できるだけ大 おお きな音 おと を立 た てて歩 ある く祭 まつり があった。彼 かれ らは村中 むらなか を歩 ある き、特 とく に、その年 とし 死者 ししゃ が出 で た家 いえ からは、なかなか離 はな れようとしなかった。夜 よる には、オーディンの戦場 せんじょう でよみがえった戦士 せんし に扮 ふん したダンサーによる饗宴 きょうえん があり、その時 とき に祭 まつり の王 おう が選 えら ばれた[32] 。
また、「提督 ていとく の狩猟 しゅりょう 」という、クリスマスの時期 じき の恐怖 きょうふ 話 ばなし (プレ)もある。フランス海軍 かいぐん 提督 ていとく で、サン=ジャン=ローヌ付近 ふきん のフランソに領地 りょうち を持 も つシャルニ伯 はく フィリップ・ド・シャボは、非 ひ 回心 かいしん の狩人 かりゅうど と呼 よ ばれ、1541年 ねん 、領地 りょうち に近 ちか いジュラの付近 ふきん にオオカミ が沢山 たくさん 出 で るということで、クリスマスイブの礼拝 れいはい をすっぽかして狩猟 しゅりょう に行 い こうとするが、夫人 ふじん に促 うなが され、教会 きょうかい に出 で かけた。しかし、ミサ のさなかに、伯爵 はくしゃく 領 りょう にオオカミが出 で たとの連絡 れんらく が入 はい り、そのまま、連絡 れんらく に来 き た貴族 きぞく と共 とも に教会 きょうかい を出 で ていった。その後 ご 、教会 きょうかい の中 なか にフクロウ が降 お りてきてろうそく の火 ひ が消 き えたり、クモ が降 お りてきたりで、人々 ひとびと を不安 ふあん に陥 おとしい れる。その後 ご 、遠 とお くで狩猟 しゅりょう の音 おと が聞 き こえる中 なか を、夫人 ふじん や子供 こども たち、召使 めしつかい たちは城 しろ に戻 もど るが、夜 よる が明 あ けて狩猟 しゅりょう の音 おと がやんでも、提督 ていとく は2度 ど と戻 もど らなかった。その後 ご 、この地域 ちいき では、イブのミサが始 はじ まるころ、狩猟 しゅりょう の音 おと が聞 き こえるという。このシャルニ伯 はく フィリップ・ド・シャボはほぼ同 どう 時代 じだい に実在 じつざい し、この話 はなし とは違 ちが った運命 うんめい をたどる[33] 。(en:Philippe de Chabot )
オークニー諸島 しょとう の中心 ちゅうしん 都市 とし カークウォール
オークニーにも、ワイルドハントの伝説 でんせつ が残 のこ っている。妖精 ようせい やトロール が、時 とき 折 お り、夜中 よなか に白馬 はくば や雑草 ざっそう でできた馬 うま [34] に乗 の り、空 そら を飛 と ぶと言 い われる。盗 ぬす んだ雌牛 めうし に乗 の っているともいわれる。ヨーロッパ中 ちゅう で、ワイルドハントはいろんな時期 じき に現 あらわ れるが、ユールの時期 じき が最 もっと も一般 いっぱん 的 てき だといわれる。この時期 じき は、超 ちょう 自然 しぜん 的 てき な存在 そんざい が現世 げんせい を訪 おとず れる時期 じき で、特 とく に死者 ししゃ の霊 れい が家 いえ に帰 かえ るのを許 ゆる される時期 じき でもある。この考 かんが えが、ワイルドハントは死者 ししゃ の集 あつ まりということになり、オークニーでもそれが当 あ てはまる。オークニーのトロールは元々 もともと は生霊 いきりょう 、あるいは幽霊 ゆうれい と考 かんが えられていた。そしてユールや、ハロウィン や大晦日 おおみそか に悪 わる さをするのである。
北欧 ほくおう では、オーディンのワイルドハントは、耳 みみ にはしても、めったに見 み られない。典型 てんけい 的 てき なものとしては、オーディンの2頭 とう の犬 いぬ が、1頭 とう は騒 さわ がしく、1頭 とう は弱々 よわよわ しく吠 ほ えるということである。この吠 ほ える声 こえ は、誰 だれ にでもき分 きわ けられる。多 おお くの地域 ちいき では、この声 こえ が聞 き こえると、天候 てんこう が変 か わると言 い われているが、戦争 せんそう や社会 しゃかい 不安 ふあん の前兆 ぜんちょう の場合 ばあい もある。幾 いく つかの報告 ほうこく によると、静 しず かな森 もり で、犬 いぬ が鼻 はな を鳴 な らす音 おと と吠 ほ える声 こえ だけが聞 き こえたという。
スウェーデンでは、特 とく にイェータランド にこの伝承 でんしょう が広 ひろ まっている。ここは、古 ふる くからオーディン信仰 しんこう があった地域 ちいき でもある。民間 みんかん 伝承 でんしょう のオーディンは、神話 しんわ で見 み せる姿 すがた とは違 ちが い、外部 がいぶ からの影響 えいきょう が大 おお きいのは特筆 とくひつ すべきことである。キリスト教 きょう 以前 いぜん の時代 じだい から今 いま に至 いた るまで、オーディン信仰 しんこう は、人 ひと びとの信心 しんじん に強 つよ い影響 えいきょう を与 あた えている。
黒 くろ ヤギが引 ひ くトールの馬車 ばしゃ
ワイルドハントは、古代 こだい ゲルマン信仰 しんこう が発祥 はっしょう なのは明 あき らかである。近年 きんねん のオーディンの伝承 でんしょう が、オーディン自身 じしん と彼 かれ の神性 しんせい とを結 むす びつけようとしないのは、注目 ちゅうもく されるべきである。何 なに 世紀 せいき もにわたり、オーディンはエウヘメロス の説 せつ に基 もと づいて、伝説 でんせつ の人物 じんぶつ であり、悪魔 あくま のように恐 おそ ろしく、危険 きけん な存在 そんざい とされてきたが、北欧 ほくおう 神話 しんわ の主神 しゅしん とのはっきりした関連 かんれん 付 づ けは見 み られなかった。スウェーデン西部 せいぶ 、また東部 とうぶ でも、オーディンは貴族 きぞく であり王 おう ですらあった。日曜日 にちようび にも狩 か りをし、そのため、この世 よ の終 お わりまで、超 ちょう 自然 しぜん 的 てき なものを追 お い詰 つ め、狩 か ることを運命 うんめい づけられたのだとい伝 いつた えられている。
オーディンは、馬 うま ではなく、やはり北欧 ほくおう 神話 しんわ に登場 とうじょう するトール が乗 の っているような馬車 ばしゃ で駆 か け回 まわ っているともいわれている。オーディンが現 あらわ れるという地域 ちいき には、それぞれの伝説 でんせつ があるようで、オーランド のガルドローサでは、オーディンが、険 けわ しい岩山 いわやま に馬 うま を繋 つな ぎ、馬 うま が繋 つな がれた綱 つな を強 つよ く引 ひ っ張 ぱ ったところ、岩山 いわやま は粉々 こなごな に砕 くだ け、そして馬 うま も地上 ちじょう に落 お ちて、底 そこ なし沼 ぬま ができたと言 い われる。スモーランド のある地域 ちいき では、犬 いぬ たちが疲 つか れてくると、オーディンは大 おお きな鳥 とり たちを使 つか って狩 か りをしたという話 はなし がある。その鳥 とり は、スズメ の群 む れを変身 へんしん させたものであるという。また、かつて通 とお った道 みち に家 いえ が建 た っていれば、その家 いえ は燃 も やされてしまう。またある伝説 でんせつ によれば、雄 お 牛 うし にくびき を付 つ けている時 とき は、オーディンは狩 か りをしないといい、オーディンが狩 か りをしているときは、地面 じめん に身 み を投 な げ出 だ して、悪 わる いことをされないようにするのが一番 いちばん いいやり方 かた だという。
スモーランドのアルグールトでは、クリスマスに教会 きょうかい に行 い く時 とき は、パンをひとかけらと金属 きんぞく を一 いち 片 へん 持 も っていくのが一番 いちばん 良 よ いといわれ、もしつばの広 ひろ い帽子 ぼうし を被 こうむ った狩人 かりゅうど [注釈 ちゅうしゃく 3] に出会 であ った場合 ばあい 、自分 じぶん の前 まえ に金属 きんぞく を投 な げる、しかし犬 いぬ に最初 さいしょ に出会 であ った場合 ばあい は、その代 か わりにパンを投 な げるのがいいとされる。
ノルウェー ではオスコレイと呼 よ ばれる。20世紀 せいき 初頭 しょとう まで、ノルウェーの若者 わかもの は、冬至 とうじ にワイルドハントの再演 さいえん を行 おこな っていた。扮装 ふんそう した若者 わかもの たちは、伝統 でんとう 行事 ぎょうじ を破壊 はかい する、大抵 たいてい はビール や穀物 こくもつ を盗 ぬす む人々 ひとびと に罰 ばっ を与 あた えた。この若者 わかもの たちに食 た べ物 もの や飲 の み物 もの を与 あた えると、繁栄 はんえい がもたらされると言 い われた。
女神 めがみ ヘカテー
カタルーニャ州 しゅう リポイ の貴族 きぞく 、アラナウ伯爵 はくしゃく はその残忍 ざんにん さ、とりわけ神父 しんぷ への残忍 ざんにん さで知 し られ、その祟 たた りとして、田舎 いなか を、火 ひ を吹 ふ く黒 くろ い「地獄 じごく の乗馬 じょうば 」に乗 の って、獰猛 どうもう な地獄 じごく の猟犬 りょうけん と走 はし り回 まわ ることになった。イタリアでは、ヘロディアス 、のちのストレゲリア のアラディア の伝承 でんしょう がある。イタリアの魔女 まじょ を引 ひ き連 つ れて、海 うみ で邪悪 じゃあく な水兵 すいへい を狩 か る[10] 。
ギリシャ神話 しんわ のヘカテー は、月 つき の出 で ない夜 よる に、遠吠 とおぼ えをする不気味 ぶきみ な犬 いぬ の一団 いちだん を連 つ れて放浪 ほうろう する。ヘカテーも、元々 もともと はワイルドハントのリーダーと考 かんが えられており、他 ほか にもテュンリドル(妖婆ハッグ の乗 の り手 て たち)、ガンドライド(魔女 まじょ の騎行 きこう )という名 な もあって、女性 じょせい が率 ひき いるものであったともいわれる[15] 。
デンマーク では、首領 しゅりょう としてホルガー・ダンスク 、ポーランド ではヤドヴィガ女王 じょおう 、セルビア ではマルコ王子 おうじ の名 な が挙 あ げられる。
中央 ちゅうおう ヨーロッパ では、ワイルドハントをよけるため、肉 にく を沢山 たくさん いれた木 き の容器 ようき を、家 いえ の正面 しょうめん の木 き の上 うえ に置 お く。
また、マレ まれ ー半島 はんとう 、イロコイ族 ぞく にも似 に た伝説 でんせつ がある[15] 。
その他 た の地域 ちいき の例 れい
輝 かがや く馬車 ばしゃ 、燃 も える馬車 ばしゃ
首 くび のない騎士 きし
空 そら を飛 と ぶ兵士 へいし ・騎士 きし ・騎馬 きば ・馬車 ばしゃ
人外 じんがい (悪魔 あくま 、ドラゴン、天使 てんし 、幽霊 ゆうれい 、精霊 せいれい 、豚 ぶた 、犬 いぬ …)
Cŵn Annwn
ウェールズ の神話 しんわ 。異 こと 界 かい アンヌンの王 おう アラウンのワイルドハント
Mallt-y-Nos
クロウン (英語 えいご 版 ばん ) が「天国 てんごく に狩 か りがなければ、行 い きたくない!」と言 い った結果 けっか 、異 こと 界 かい アンヌンの王 おう アラウンと共 とも に永遠 えいえん に狩 か りを強制 きょうせい されている。
シュヌグーダ(la chenegouda)
スイス のヴァレー州 しゅう に伝 つた わる集団 しゅうだん 幻聴 げんちょう 。各 かく 村 むら で話 はなし が異 こと なり。「冬 ふゆ の夜 よる 暴 あば れる悪意 あくい のある騒々 そうぞう しい悪霊 あくりょう の集団 しゅうだん 」「鈴 すず 、鎖 くさり 、鎌 かま 、シャベル、大 おお きな叫 さけ び声 ごえ などの混 ま じったもの」などがある[41] 。
ムオーデル(綴 つづ り字 じ 不明 ふめい 、英語 えいご ・ドイツ語 ご 資料 しりょう 確認 かくにん できず)
日本 にっぽん の書籍 しょせき で、以下 いか のように紹介 しょうかい された[42] 。
「ドイツ[42] 、(別 べつ 資料 しりょう ではオーストラリア [43] )に伝 つた わる伝説 でんせつ の幽霊 ゆうれい の軍勢 ぐんぜい である。夜 よる になると、四辻 よつつじ を地面 じめん から数 すう 10cm浮 う かんで飛 と んでいく軍勢 ぐんぜい の姿 すがた が見 み えるという。この時 とき 、物凄 ものすご い叫 さけ び声 ごえ や吼 ほ え声 ごえ 、浮 う かんでいるのにもかかわらず轍 わだち の響 ひび きまで聞 き こえる。ムオーデルの先頭 せんとう では、白馬 はくば に乗 の った男 おとこ が角笛 つのぶえ を吹 ふ きながら「そこを退 しりぞ け、そこを退 しりぞ け、退 しりぞ かぬ者 もの は危 あぶ ないぞ!!」と警告 けいこく を発 はっ する。軍勢 ぐんぜい は、徒歩 とほ や騎馬 きば だけでなく、炎 ほのお の馬車 ばしゃ や黒 くろ い馬車 ばしゃ に乗 の って現 あらわ れる。
年寄 としよ りのい伝 いつた えには、ムオーデルの軍勢 ぐんぜい に出会 であ った場合 ばあい は、近 ちか くにある十字架 じゅうじか にしがみつき、目 め を閉 と じていることと伝 つた えられる。そうすれば軍勢 ぐんぜい は何 なに もしないで通 とお り過 す ぎる。また、近 ちか くに十字架 じゅうじか がない場合 ばあい 、両足 りょうあし を閉 と じ、両 りょう 腕 うで で十字架 じゅうじか の形 かたち を作 つく り寝 ね ることとされている。」
オーディン( Woden )を読 よ み間違 まちが えたか変形 へんけい させて( M oder とか)としているのだろうが、ドイツ語 ご や英語 えいご などの資料 しりょう では発見 はっけん できず。
音楽 おんがく 作品 さくひん
ゲーム作品 さくひん
^ 猛々 たけだけ しい狩 か り の意 い
^ 猛々 たけだけ しい軍 ぐん の意 い
^ オーディンを指 さ していると考 かんが えられる。
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