平間ひらま誠記もとき

獲得かくとくメダル
日本にっぽん
男子だんし 自転車じてんしゃ競技きょうぎ
アジア競技きょうぎ大会たいかい
金きむ	1958 東京とうきょう	スプリント

平間ひらま 誠記もとき（ひらま せいき 1937年ねん3月21日にち - 1968年ねん8月がつ21日にち）は、元もと競輪けいりん選手せんしゅ。宮城みやぎ県けん刈田かりた郡ぐん蔵王ざおう町まち出身しゅっしん。日本にっぽん競輪けいりん学校がっこう（当時とうじ。以下いか、競輪けいりん学校がっこう）第だい13期き卒業そつぎょう。現役げんえき時じは日本にっぽん競輪けいりん選手せんしゅ会かい宮城みやぎ支部しぶ所属しょぞく。選手せんしゅ登録とうろく番号ばんごう6789。

競輪けいりん学校がっこう91期生きせいであった元もと競輪けいりん選手せんしゅの平間ひらま一洋かずひろの大叔父おおおじにあたる。

戦績せんせき

宮城みやぎ県立けんりつ大河原おおがわら高等こうとう学校がっこうを卒業そつぎょう後ご、アマチュア選手せんしゅとしてアジア大会たいかいなどのスクラッチ（現在げんざいのスプリント）種目しゅもくに出場しゅつじょうし数々かずかずの優秀ゆうしゅうな成績せいせきを治おさめる。この頃ころは早稲田大学わせだだいがく商学部しょうがくぶの聴講生ちょうこうせいであったが、大学だいがくの自転車じてんしゃ部ぶが平ひら間あいだを一般いっぱん学生がくせいとして登録とうろくし出場しゅつじょうさせていたため、部ぶ全体ぜんたいが長期ちょうきの活動かつどう停止ていし処分しょぶんを受うけてしまい、アマとしての活動かつどうが難むずかしくなったため、プロである競輪けいりんへの転向てんこうを決断けつだんしている。

1959年ねん3月がつに競輪けいりん学校がっこうへ入学にゅうがくし、6月27日にちに門司もじ競輪けいりん場じょうでデビューを果はたすと、既すでにアマチュアでの実績じっせきがあったことから際立きわだつ強つよさを発揮はっきするようになり、1962年ねんにはオールスター競輪けいりんを優勝ゆうしょうしトップクラスとしての確固かっこたる地位ちいを築きずき、やがて同期どうきの高原たかはら永ひさし伍ご、年上としうえの白鳥しらとり伸雄のぶおらと共ともに「3強きょう」とまで評ひょうされるようになる。だがトップクラスとなってからも常つねに頂点ちょうてんを目指めざすため、レースではライバルと目めした相手あいてを攻せめる競走きょうそうを続つづけており、特とくに高原たかはら永ひさし伍ごへの対抗心たいこうしんは凄すさまじく、同おなじレースに同乗どうじょうする場合ばあいは同期どうきとしての連携れんけいを拒こばみ必かならず別線べつせんで戦たたかいを挑いどんでいた。

しかし勝負しょうぶにかける性格せいかくの激はげしさからか、選手せんしゅの間あいだにおいてだけでなく私生活しせいかつでもトラブルを引ひき起おこし、やがて当時とうじの公営こうえい競技きょうぎにつきものであった「黒くろい霧きり」の噂うわさまで囁ささやかれるようになり、1965年ねん8月がつには日本にっぽん自転車じてんしゃ振興しんこう会かいから事情じじょう聴取ちょうしゅを受うけた後のち、無む期限きげんの自粛じしゅく欠場けつじょう処分しょぶんをい渡いわたされ、選手せんしゅ生命せいめいの危機ききに立たたされた。しかし関係かんけい団体だんたいの調査ちょうさにおいて平間ひらまの不正ふせい行為こういを立証りっしょうすることはできず、1966年ねんの年明としあけと共ともに自粛じしゅく処分しょぶんは4ヶ月かげつほどで解除かいじょされた。

ここから平間ひらまの驚異きょうい的てきな快かい進撃しんげきが始はじまり、復帰ふっきレースとなった平ひらたでのレースを完全かんぜん優勝ゆうしょうし、直後ちょくごの大宮おおみや記念きねんも優勝ゆうしょうしたが、その時とき観戦かんせんした阿おもね佐田さた哲也てつやは迎むかえ撃うって特選とくせんで平ひら間あいだを退しりぞけた白鳥しらとり伸雄のぶおとの激突げきとつをエッセイに残のこしている。そして2月がつには秩父宮ちちぶのみや妃ひ杯はい競輪けいりんを優勝ゆうしょうして高たからかに復活ふっかつをアピールした。1967年ねんには特別とくべつ競輪けいりん（現在げんざいのGI）を3勝しょうして自身じしん初はつの年間ねんかん賞金しょうきん王おうとなり、高原たかはら永ひさし伍ごやこの年としに引退いんたいした白鳥しらとり伸雄のぶおを抑おさえて競輪けいりん界かいの頂点ちょうてんに上のぼり詰つめた。これにより競輪けいりん選手せんしゅでは初はじめて特別とくべつ競輪けいりんの全ぜん冠かんむり制覇せいは（グランドスラム）を達成たっせいすることも期待きたいされたが、1968年ねん8月がつに残のこり一ひとつとなっていた全国ぜんこく都道府県とどうふけん選抜せんばつ競輪けいりんにおいて準決勝じゅんけっしょうで敗やぶれ、全ぜん冠かんむり制覇せいは達成たっせいは翌年よくねん以降いこうに持もち越こしかと思おもわれた。

しかし、その直後ちょくごの8月がつ16日にちに世界せかい選手権せんしゅけん自転車じてんしゃ競技きょうぎ大会たいかいへ向むけての合宿がっしゅく中ちゅう、平塚ひらつか競輪けいりん場じょうにて練習れんしゅうを行おこなっていた時ときに落車して頭蓋骨ずがいこつを骨折こっせつし、重体じゅうたいのまま平塚ひらつか市内しないの病院びょういんへ搬送はんそうされた。当時とうじの報道ほうどうによると、隊列たいれつを組くんで走行そうこう中ちゅう、運うん悪わるく前まえの転倒てんとうに巻まき込こまれる形かたちで乗のり上あげてしまい、さらにこの時ときヘルメットではなく皮かわ製せいの防護ぼうご具ぐを装着そうちゃくしていたため、走路そうろへの頭部とうぶ激突げきとつによる衝撃しょうげきが緩和かんわされず深刻しんこくな致命傷ちめいしょうを負おった。病院びょういんに搬入はんにゅうされた時点じてんで既すでに自発じはつ呼吸こきゅうが停止ていししており、そのまま8月がつ21日にちに脳のう挫傷ざしょうのため亡なくなった。31歳さい没ぼつ。

なお、この事故じこにより、この年としの世界せかい選手権せんしゅけんへのプロ選手せんしゅ参加さんかは取とりやめとなった。また平ひら間あいだが特別とくべつ競輪けいりんで唯一ゆいいつ勝利しょうりできなかった全国ぜんこく都道府県とどうふけん選抜せんばつ競輪けいりんは、平間ひらまが事故じこ直前ちょくぜんに出場しゅつじょうした年としを最後さいごに、翌年よくねん以降いこうは開催かいさいされることなく廃止はいしされてしまった。

平間ひらま誠記もときが受うけた自粛じしゅく欠場けつじょう処分しょぶんについては現在げんざいも詳細しょうさいが判明はんめいしておらず、その当時とうじの関係かんけい者しゃも平間ひらまについて語かたることが少すくないため、現在げんざいの競輪けいりんにおける平間ひらまの存在そんざいは昭和しょうわ40年代ねんだいにおける競輪けいりん盛況せいきょう期きの「伝説でんせつ」と化かしている。

主おもな獲得かくとくタイトルと記録きろく

• 1962年ねん - オールスター競輪けいりん（川崎かわさき競輪けいりん場じょう）
• 1966年ねん - 秩父宮ちちぶのみや妃ひ賜杯しはい競輪けいりん（西武園せいぶえん競輪けいりん場じょう）
• 1967年ねん - 高松宮たかまつのみや杯はい競輪けいりん（大津おおつびわこ競輪けいりん場じょう）・日本にっぽん選手権せんしゅけん競輪けいりん（後楽園こうらくえん競輪けいりん場じょう）・競輪けいりん祭さい（小倉おぐら競輪けいりん場じょう）
• 年間ねんかん賞金しょうきん王おう1回かい - 1967年ねん
• 年間ねんかん最高さいこう連れん対たい率りつ - 9割わり1分ふん1厘りん（1967年ねん）
• 通算つうさん成績せいせき742走はし中ちゅう469勝しょう

競走きょうそうスタイル

アマチュア時代じだいからスプリントを得意とくいとしていたことから、捲めくり追おい込こみ中心ちゅうしんの自在じざい選手せんしゅとして活躍かつやくしており、他たのラインの自力じりき選手せんしゅに対たいし徹底的てっていてきに体当たいあたりを行おこなうマーク技術ぎじゅつや、最後さいごの直線ちょくせんで爆発ばくはつ的てきとも言いえるダッシュによる追おい込こみを見みせていたが、メンバー次第しだいでは自みずから先行せんこうすることもあったという。

しかし他たの選手せんしゅから恐おそれられる実力じつりょくがありながら、あっさり敗退はいたいしてしまうこともある不安定ふあんていさや、上述じょうじゅつの「黒くろい霧きり」に関かんする噂うわさが絶たえなかったことから、当時とうじの競輪けいりんファンは平間ひらまに対たいし畏怖いふも込こめて『悪魔あくまの脚あし』というあだ名なをつけていた。

エピソード

• 1966年ねんの西にしドイツ・フランクフルト、翌よく1967年ねんのオランダ・アムステルダムで開催かいさいされた世界せかい自転車じてんしゃ選手権せんしゅけんのプロ・スクラッチ（現在げんざいはスプリントという名称めいしょう）種目しゅもくにおいて、平間ひらまは連続れんぞくしてベスト8入いりを果はたした。加くわえて、当時とうじ世界せかいチャンピオンだったイタリアのジュゼッペ・ベゲットのペダリングスキルや、後のちに中野なかの浩一こういちが確立かくりつすることになる「爪先立つまさきだちフォーム」を体得たいとくできたと考かんがえていた平間ひらまは、世界せかい選手権せんしゅけんでのメダル獲得かくとくも十分じゅうぶん狙ねらえると思おもい、1968年ねんのウルグアイ・モンテビデオ大会たいかいに照準しょうじゅんを合あわせて日々ひびの練習れんしゅうを行おこなっていた。しかし平間ひらま本人ほんにんの事故じこにより日本にっぽんプロ選手せんしゅ団だんは派遣はけん中止ちゅうしとなってしまう。一方いっぽう、杉原すぎはら鏘一郎いちろうを監督かんとくとするアマチュアは選手せんしゅ団だんを派遣はけんしてタンデム・スプリントに出場しゅつじょうしており、当時とうじは共ともに大学生だいがくせいだった班目まだらめ隆雄たかお・井上いのうえ三次みつじのコンビが日本人にっぽんじんとして同どう大会たいかい初はつの銅どうメダルを獲得かくとくしている。

• 弟子でしの河内かわうち剛つよしや、阿部あべ道みち、荒川あらかわ秀之助ひでのすけといった当時とうじの若手わかて選手せんしゅを練習れんしゅうにつきあわせ、「競せりの練習れんしゅう」という名なの下した、決きまって最後さいごは阿部あべらを田たんぼの中なかへと突つき落おとしたという、荒々あらあらしい練習れんしゅうをしていたことは有名ゆうめいな話はなし。当時とうじを振ふり返かえって阿部あべは「平間ひらまさんと練習れんしゅうするのが本当ほんとうに嫌いやだった」とこぼしていた。しかし平ひら間あいだの死後しご、河内かわうち、阿部あべ、荒川あらかわはいずれも日本にっぽん選手権せんしゅけん競輪けいりんを制覇せいはし、宮城みやぎ王国おうこくと呼よばれる強豪きょうごう集団しゅうだんを形成けいせいしていくことになる。

参考さんこう文献ぶんけんなど

• 寺内てらうち大吉だいきち『寺内てらうち大吉だいきちスポーツ文学ぶんがく全集ぜんしゅう4』1976年ねん 日本にっぽんスポーツ出版しゅっぱん社しゃ
• 最さい相あい葉月はづき『高原たかはら永ひさし伍ご、「逃にげ」て生いきた!』1994年ねん 徳間書店とくましょてん ISBN 4198601380
• 『月刊げっかん競輪けいりんダービー』1968年ねん8月がつ号ごう・9月がつ号ごう ダービー社しゃ
• 名めい選手せんしゅ列伝れつでん（SPEEDチャンネルで2000年ねんに放送ほうそう）

関連かんれん項目こうもく

• 広瀬ひろせ登喜夫ときお - オートレース選手せんしゅ。当時とうじの公営こうえい競技きょうぎにおける「黒くろい霧きり」の実態じったいについて。