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9月, 1998 - はかもなきこと

豆乳とうにゅう凝固ぎょうこ過程かてい

大学だいがく豆乳とうにゅう凝固ぎょうこ(ゲル過程かてい研究けんきゅうをしてるひともいるのだ.一度いちどあってはなしいてみたいものだ.しかしいまだになぜ豆乳とうにゅう凝固ぎょうこするのか,まともな説明せつめいいたことがない.もしかしたらだれもほんとうのことはらないのかもしれない.

凝固ぎょうこざい塩化えんかマグネシウムを使つかうと,大豆だいず60kgから420ちょう豆腐とうふしかつくれないが,硫酸りゅうさんカルシウムだと1500ちょう,グルコノデルタラクトンだと3000ちょうつくれるという定量ていりょうてき(笑)なデータが提供ていきょうされている.なんで大豆だいずが60kgなのか. 60kgというのが卸売おろしうり単位たんいにでもなっているのだろうか.まあそりゃそうと, 1ちょうとはなにgなのだろうか.まあそれもどうでもよい.

さて,塩化えんかマグネシウム(ニガリ),硫酸りゅうさんカルシウム(石膏せっこう),グルコノデルタラクトンのみっつは,日本にっぽん豆腐とうふ代表だいひょうてき凝固ぎょうこざいである.こんど豆腐とうふったときには,添加てんかぶつ表示ひょうじ注意ちゅういしてみてもらいたい.この凝固ぎょうこざいかたまりやすさのが,420:1500:3000=1:3.6:7.1 だというのである.

かたまりやすいほど,おな分量ぶんりょう大豆だいずたいして余計よけい水分すいぶんふくませてかためることができるから,凝固ぎょうこざいかたまりにくい塩化えんかマグネシウムを使つかったほうが,大豆だいず割合わりあいおおきいので,結局けっきょくおいしい豆腐とうふになるという論法ろんぽうだ.

しかしそれはおかしなはなしで,水分すいぶんおおいのはそもそも凝固ぎょうこざいわるいのではなく,水分すいぶん余計よけいぜる製造元せいぞうもとわるい.グルコノデルタラクトンを使つかっても,大豆だいず成分せいぶんおお豆腐とうふつくれるのである.

せつによれば,ニガリは豆乳とうにゅうぜるとただちに凝固ぎょうこはじめ,均等きんとうかためるのがむずかしいので,大量たいりょう生産せいさんにはむかいてないという.それもまたおかしなはなしで,スーパーにはニガリ100%の豆腐とうふはたくさんならんでいる.スーパーにいてあるような豆腐とうふ大量たいりょう生産せいさんでないわけがない.まあそれにしても,ゆっくり均等きんとうかたまるほう大量たいりょう生産せいさんにはいているだろう.

それから,中国ちゅうごく内陸ないりく麻婆マーボー豆腐とうふ名物めいぶつ四川しせんとか,では,塩化えんかマグネシウム(ニガリ)よりも硫酸りゅうさんカルシウム(石膏せっこう)を凝固ぎょうこざい使つかうことがおおいとおもわれるし,そのようにいたほんんだことがある.ニガリを使つかうのは日本人にっぽんじんだけかもしれない.

問題もんだい水分すいぶんの含量や凝固ぎょうこざいかたまりやすさとかではない.水分すいぶん大豆だいず比率ひりつ一定いっていにするなど,しょ条件じょうけんおなじにしたとき,いったいどの凝固ぎょうこざい使つかうと一番いちばん豆腐とうふがおいしいか,ということにきる.

わたしかんじでは,石膏せっこうとグルコノデルタラクトンはほとんど無味むみであるから,大豆だいず豆乳とうにゅう風味ふうみをいかしたいのなら,こういう凝固ぎょうこざい使つかうべきだろう.一方いっぽう,ニガリは微量びりょうでもきわめてにがいもので,しかもかたまりにくいから大量たいりょうもちいなくてはならない.それをうすめたり,からいたりしても,最終さいしゅうてきにはほんのわずかのニガリの風味ふうみのこる.ところがこれはにがみというよりも,独特どくとく旨味うまみとして知覚ちかくされるらしい.現在げんざい上記じょうきさん種類しゅるい凝固ぎょうこざい配合はいごうして使つかっている場合ばあいは,ニガリをたん味付あじつけに使つかっているんじゃないかとわたしおもう.

で,ニガリがいてて,かた豆腐とうふほうがうまい,と世間せけんではかんがえがちなのであるが,わたしはニガリがまったくいてなくてふにゃふにゃな豆腐とうふにも,それなりにうまい豆腐とうふはあるとおもっている.豆腐とうふかたさと大豆だいず成分せいぶん比率ひりつについてもわたし疑問ぎもんっている.大豆だいず成分せいぶんおおくても絹漉きぬごしだとやわらかいままじゃないかというがする.かたければかたいほど大豆だいず成分せいぶんおおくてうまいというのはおかしい.そもそも充填じゅうてん絹漉きぬごしだからまずいというのもおかしい.充填じゅうてん絹漉きぬごしでもちゃんと大豆だいず成分せいぶんやせばおいしい豆腐とうふになるとおもう.みずにさらしたいわゆる木綿もめん豆腐とうふよりも,充填じゅうてん絹漉きぬごしほう大豆だいず旨味うまみふうめられていてうまいのじゃなかろうか.わたしはあまり木綿もめん豆腐とうふはうまいとおもわない.わたし一番いちばんうまいとおもうのはあるしゅの「ざる豆腐とうふ」である.

グルコノデルタラクトンはハムなどにも添加てんかされる.ハムの色調しきちょうととのえるためにはpH調節ちょうせつ必要ひつようで,そのためにグルコノデルタラクトンをくわえるとのこと.ということは,グルコノデルタラクトンは加水かすい分解ぶんかいしてグルコンさんしょうじるから, pHをげるために使つかわれるのかな.すると,グルコノデルタラクトンは多少たしょうすっぱいのかもしれん.