月つき: 2016年ねん3月がつ

四天王してんのうに踏ふまれている邪よこしま鬼おにだが、これは夜叉やしゃとも言いい、
インドでは男おとこはヤクシャ、女おんなはヤクシー、もしくはヤクシニーと言いう。
それで仏教ぶっきょうが始はじまってしばらくの間あいだは仏像ぶつぞうはなかったが、バラモン教ばらもんきょうの神像しんぞうはあったようだ。

釈迦しゃかが出家しゅっけする（密ひそかに城しろを出でる）ときに馬うまの蹄の音おとがしないように蹄を持もち上あげているのがヤクシャであり、
この頃ころからすでにヤクシャは踏ふまれていたということになる。
また、ヤクシャは建造けんぞう物ぶつを支ささえる像ぞうとしても作つくられている。

四天王してんのうに踏ふまれている邪よこしま鬼おにが笑わらっているように見みえるのはヤクシャがそもそも笑わらっている神像しんぞうだからではなかろうか。

最近さいきんどうも歌うたがうまく詠よめない。
昔むかし詠よんだ歌うたをながめてみても、良よいと思おもえなくなっていた。
自分じぶんが詠よんだ歌うたとか自分じぶんが書かいた文章ぶんしょうが嫌きらいになることはこれまでもよくあったことだ、
自分じぶんとしてはもっとうまい歌うたを詠よみたいとかもっとうまい文章ぶんしょうを書かきたいとか、
詠よめるはずだ書かけるはずだいう気持きもちがでてきてそのレベルに達たっしてないわけだから、
これはもう仕方しかたない。

それでこないだ「セックス哲学てつがく懇話こんわ会かい」という怪あやしげな集会しゅうかいに飲のみ会かいだけ参加さんかしたのだが、そこで某ぼう哲学てつがく者しゃに
「本ほんが売うれたいのか？有名ゆうめいになりたいのか？」と聞きかれたので、
なんかもごもごとうまく説明せつめいできなかったのだが、
まあ、商業しょうぎょう的てきに売うれてくれれば好すきな仕事しごとで金かねがもうかって嫌きらいな仕事しごとをしなくて済すむわけで、
それはそれでもちろんありがたいのだけど、
本ほんが売うれて、いろんな人ひとから正当せいとうな評価ひょうかを受うけて初はじめて本ほんというのは「自分じぶんの業績ぎょうせき」になるのである。
論文ろんぶんならば査読さどくがある。それなりの権威けんいある学会がっかいの査読さどくに通とおりさえすれば、別べつに一般いっぱん読者どくしゃはいなくても、
自分じぶんの仕事しごとが認みとめられたことになる。
その学会がっかいとか査読さどくシステムというものも、必かならずしも万能ばんのうではない。
分野ぶんやから少すこしでも外はずれるとなかなか読よんでもらえず評価ひょうかもしてもらえない。
学生がくせいの頃ころからずっと同おなじ研究けんきゅうをして同おなじ学会がっかいにいれば良よいのかもしれんが、私わたしのように、
せっかちで落おち着つきの無ない性格せいかくだと、どんどん関心かんしんがずれていってまったく違ちがうことをやりだしてしまう。
そういうタイプの人間にんげんにとって、基本きほん縦割たてわりのたこつぼ構造こうぞうになってる学会がっかいというのは不便ふべんである。

そんでまあ、自分じぶんに合あった「学際がくさい的てき」な学会がっかいを作つくろうとかそういう「学際がくさい的てき」な大学だいがくに移うつろうとかいろいろ画策かくさくした
（実際じっさいにはふらふらと転職てんしょくを繰くり返かえしたり、学会がっかいの立たち上あげに関かかわったりした）のが、
私わたしの場合ばあいは30代だいだった。もっと細こまかくいえば、30歳さいから43歳さいくらいまで。
まじめに論文ろんぶんを書かいたのは30歳さいまでだった、とも言いえる。

私わたしの田中たなか久三きゅうぞうという名前なまえは先さきに tanaka0903 というユーザー名めいがあって、これは 2009年ねん3月がつという意味いみ。
43歳さいの終おわりだ。
この頃ころから完全かんぜんにもう学会がっかいとか論文ろんぶんとか大学だいがくでの研究けんきゅうというものから外はずれだした。
だったらそこで教員きょういんを辞やめるかと言いえば、メシが食くえなくなるので辞やめられないし、
もともと研究けんきゅうすること自体じたいは嫌きらいじゃないから、
大学だいがくの仕事しごとはそれとして、趣味しゅみみたいなことを研究けんきゅうしだした。
それで知しり合あいの出版しゅっぱん社しゃを頼たよって単たん著ちょで本ほんを書かかせてもらうことはできるかもしれないが、
ただ書かいただけじゃ、誰だれも査読さどくしてない勝手かってに書かいた論文ろんぶんと同おなじで、出版しゅっぱんしても何なんの意味いみもない。
本ほんは、査読さどくの代かわりの何なにか、第三者だいさんしゃによる評価ひょうかが必要ひつようなわけで、
それはある程度ていど商業しょうぎょう的てきに成功せいこうすることだったり、社会しゃかい的てきな影響えいきょうを与あたえることだと思おもうのだ。
そうなれば私わたしも、今いままでとは全然ぜんぜん違ちがう分野ぶんやだけど、「研究けんきゅう業績ぎょうせき」のリストの中なかに加くわえることもできるだろう。
そうでないのに（そうしている人ひとはたくさんいるかもしれないが）これが私わたしの研究けんきゅうですよなんて自慢じまんする気きにはなれない。

それで、出版しゅっぱん社しゃに損そんをさせない程度ていどに売うれたらまた本ほんを書かかせてもらう。
書かきたい本ほんを書かけてたまに売うれてくれればうれしい。
売うれなきゃもうそれっきりだ。

[歌うた経けい標しるべ式しき序じょ考こう](http://ypir.lib.yamaguchi-u.ac.jp/bg/metadata/1281)

> 臣しん濱はま成しげる言げん。原はら夫おっと歌か者しゃ、所以ゆえん感かん鬼神きじん之の幽かそけ情じょう、慰天人じん弓懸ゆがけ心しん者しゃ也。
韻いん者しゃ所以ゆえん異い於風俗ふうぞく之の言語げんご、長ちょう於遊樂らく之の精神せいしん者しゃ也。

【臣しん・藤原ふじわら濱はま成なりが申もうし上あげる。
そもそも歌うたは、鬼神きじんの幽かそけ情じょうを感かんじ、天人てんにんの恋心こいごころを慰なぐさめるものである。
韻いんは、風俗ふうぞくの言語げんごと異ことなり、遊学ゆうがくの精神せいしんに長ながじたものである。】

「毛もう詩し正義せいぎ序じょ」「動どう天地てんち、感かん鬼神きじん、莫近於詩」

> 故こ有ゆう龍りゅう女おんな帰き海うみ天孫てんそん贈おく恋こい婦ふ歌か、味あじ耜昇天しょうてん會かい拙作せっさく称しょう威い之これ詠えい。
並なみ尽つき雅みやび妙みょう之の音韻おんいん之の始はじめ也。

【それゆえに、豊玉とよたま毘売命いのちが海うみに帰かえる際さいに、火ひ遠どお理り命いのちは女おんなを恋こいする歌うたを送おくった。】

赤あか玉だまは 緒いとぐちさへ光ひかれど 白玉しらたまの 君きみが装そうし 貴たっとくありけり

沖おきつ鳥とり 鴨かも著しるく島しまに 我わが率りつ寝ねし 妹いもうとは忘わすれじ 世よのことごとに

短歌たんか形式けいしきに整ととのいすぎているので、おそらく古こ歌うたではあるまい。

【阿おもね遅おそ鉏高日子にっし根ね（アヂスキタカヒコネ）神かみが天てんに昇のぼるときの宴うたげでは、
その威いを称たたえる歌うたを詠よんだ。】

あめなるや おとたなばたの うながせる 玉たまのみすまる あな玉だまはや み谷たにふたわたらす あぢしき高だかひこねの神かみぞ

【いずれも、雅まさ妙たえの音韻おんいんを尽つくした初はじめである。】

> 近代きんだい歌人かじん雖長歌か句く、未知みち音韻おんいん。
含他悦えつ懌猶無知むち病びょう。
准じゅん之の上古じょうこ既すんで無む春はる花はな之の儀ぎ、傳つて之の來き葉は不ふ見み秋あき實みのる之これ味あじ。
無む六體何能感慰天人之際者乎。
故こ建けん新しん例れい則そく抄しょう韻いん曲きょく、合ごう為ため一いち巻かん名めい曰歌式しき。
蓋ぶた亦また詠えい之これ者しゃ無罪むざい、聞之者しゃ足あし以戒矣。

【最近さいきんの歌人かじんは歌うた句くに長ながじてはいるが、未いまだに音韻おんいんを知しらない。
他たのことばかり喜よろこんで、歌うたの「病やまい」を知しらない。
これを上古じょうこの風ふうになぞらえているが、すでに春はるの花はなはなく、
これを後世こうせいに伝つたえようとしながら、秋あき実みのるの味あじが無ない。
六体りくたいが無なくて、天人てんにんを慰なぐさめるということがどういうことか、何なにを感かんじることができようか。
そのために新しん例れいを建たてて、韻いん曲きょくを】

> 伏ふく惟おもんみ、聖ひじり朝ちょう端はし歴れき六ろく天てん、奉たてまつ樂らく無窮むきゅう。
榮さかえ比ひ四よん輪りん御ご賞しょう難なん極ごく。
臣しん含恩遇ぐう奉たてまつ侍さむらい聖ひじり明あきら、
欲よく以撮壌導滑すべり之の情じょう而有加か於賞樂らく焉。
若わか蒙こうむ収おさむ採と、幸さいわい傳つたえ當代とうだい者しゃ、可か久ひさ可か大だい之の功こう、並なみ天地てんち之の眞しん観かん、日用にちよう日新にっしん之の明あきら、將はた金かね鏡きょう之の高こう懸かか。
臣しん濱はま成しげる誠まこと惇あつし誠まこと恐おそれ、頓首とんしゅ謹言きんげん。

> 寳たから亀ひさし三さん年ねん五ご月がつ七日参議兼刑部省卿守從四位上勲四等藤原朝臣濱成上

徳川とくがわ家康いえやすの母ははは「大だい」と言いい、皇族こうぞくではない。

秀忠ひでただの母ははも、「西郷さいごう局きょく」と言いって、皇族こうぞくではない。

家光いえみつの母はは「江こう」も皇族こうぞくではない。
正室せいしつ鷹司たかつかさ孝子たかこは天皇てんのう家かの血ちを引ひいていたに違ちがいない、しかし実子じっし無なし。

家綱いえつなの母はは「楽らく」も普通ふつうの農民のうみんの娘むすめ。
正室せいしつは伏見ふしみ宮みや貞清さだきよ親王しんのう王女おうじょ顕子あきこ女王じょおう。
家綱いえつなに実子じっしはない。

綱吉つなよしの母はは「玉たま」は公家くげの家いえ司しと言いわれているが、実際じっさいにはただの召使めしつかいだろう。
正室せいしつ鷹司たかつかさ信子のぶこは公家くげの娘むすめなので、天皇てんのうの血ちを引ひいてるかといえば遠とおいかもしれないがたぶん引ひいてるだろう。
しかし信子のぶこには子こがなく、また綱吉つなよしの子こはみな夭折ようせつした。

家宣いえのぶの母はは「保良ぼら」も一般人いっぱんじん。
正室せいしつ近衛このえ熙子は母ははが後水尾天皇ごみずのおてんのうの娘むすめ常子つねこ内親王ないしんのう。
つまり熙子は天皇てんのうの孫娘まごむすめだが、生うまれた子こはみな夭折ようせつした。

家継いえつぐの母はは「喜代きよ」も一般人いっぱんじん。
霊れい元もと天皇てんのう皇女おうじょ・八はち十じゅう宮みやと婚約こんやくするが、家継いえつぐは早世そうせい。

吉宗よしむねの母はは「由利ゆり」も一般人いっぱんじん。
ただし、正室せいしつは伏見ふしみ宮みや貞さだ致親王おう王女おうじょ理子さとこ、死産しざんの後のち死去しきょ。

家重いえしげの母はは「須磨すま」も一般人いっぱんじん。
ただし正室せいしつは伏見ふしみ宮みや邦くに永なが親王しんのうの娘むすめ増子ましこ、実子じっし無なし。

家治いえはるの母はは「幸こう」も一般人いっぱんじん。
ただし正室せいしつは閑院宮みや直ただし仁じん親王しんのう王女おうじょ倫子ともこ女王じょおう、実子じっしは女子じょしのみ、いずれも夭折ようせつ。

家斉いえなりの母はは「富とみ」は幕臣ばくしんの娘むすめ。

家慶いえよしの母はは「照あきら」も一般人いっぱんじん。
ただし家慶いえよしの正室せいしつは有栖川ありすがわ宮みや織お仁じん親王しんのう皇女おうじょの喬子たかこ女王じょおう、長男ちょうなん竹ちく千せん代だいを産うむが夭折ようせつ。

家定いえさだの母はは「美津みつ」も単たんなる側室そくしつ。実子じっし無なし。

家茂いえもちの母はは「美佐みさ」は紀州きしゅう松平まつだいら。
ただし正室せいしつは仁孝天皇にんこうてんのう皇女おうじょ和宮かずのみや親子おやこ内親王ないしんのう、実子じっし無なし。

慶喜よしのぶの母はは「吉子よしこ」女王じょおうは有栖川ありすがわ宮みや織お仁じん親王しんのうの娘むすめ。
織お仁じんは職しょく仁じんの皇子おうじ、職しょく仁じんは霊れい元もと天皇てんのうの皇子おうじ。
奇くしくも、職しょく仁じんは家継いえつぐと婚約こんやくした八はち十じゅう宮みや吉子よしこ内親王ないしんのうの一いち歳さい年上としうえの同母どうぼ兄けいである。
母ははは松室まつむろ敦子あつこ。
霊れい元もと天皇てんのうと松室まつむろ敦子あつこの娘むすめは婚約こんやくまではもちこんだが、家継いえつぐが幼おさなくしてなくなったために、
天皇てんのうの血ちを引ひいた将軍しょうぐんが生うまれることはなかった。
しかし霊れい元もと院いんがなくなってずっと後ごの幕末ばくまつに、夭折ようせつもせず、成人せいじんして、
たまたま将軍しょうぐん職しょくが水戸みと徳川とくがわ家かから一いち橋きょう家かに養子ようしに出でた慶喜よしのぶに回まわってきたのである。
家光いえみつ以来いらい、徳川とくがわ将軍しょうぐんは皇女おうじょか、王女おうじょか、天皇てんのうの血ちを引ひいているはずの公家くげの娘むすめを正室せいしつにしている。
しかし、誰だれ一人ひとりとして、慶喜よしのぶ以外いがいは、将軍しょうぐんとなることがなかったのである。

もし、慶喜よしのぶが、天皇てんのうの血ちを引ひいていなかったら。
もし、慶喜よしのぶが、水戸みと光圀みつくにの血ちを引ひいていなかったら。
もし、幕末ばくまつ、慶喜よしのぶ以外いがいの普通ふつうの徳川とくがわ将軍しょうぐんが就任しゅうにんしていたら。
皇室こうしつに対たいしてあれほどの恭順きょうじゅんの姿勢しせいを示しめしただろうか。
おそらく将軍家しょうぐんけはもう少すこし保たもっただろうし、或あるいは日本にっぽんが二分にぶんすることもあったかもしれない。
慶喜よしのぶの血ちの由来ゆらいを意識いしきしないことには幕末ばくまつ維新いしんは語かたれないのではなかろうか。

皇女おうじょ、皇子おうじ、主要しゅような関係かんけい者しゃなどほぼ書かき込こんだ、と思おもう。
ただし明治めいじ以降いこうの皇女おうじょは一部いちぶの例外れいがいをのぞいて記しるしてない。
幼年ようねんで死しんだ人ひとは略りゃくしていることが多おおいが、書かいている場合ばあいもある。
これからは微妙びみょうな訂正ていせいなどしていこうと思おもう。

後こう西にし天皇てんのうの皇子おうじ・有栖川ありすがわ宮みや幸仁ゆきひと親王しんのうとか、家康いえやすの孫まご・松平まつだいら忠直ただなおの孫娘まごむすめに当あたる明子あきこ内親王ないしんのう、
霊れい元もと天皇てんのうの后きさき・松室まつむろ敦子あつこやその娘むすめ・八はち十じゅう宮みや（吉子よしこ内親王ないしんのう）については「将軍家しょうぐんけの仲人なこうど」にも書かいたので、
特とくに感慨かんがいぶかい。
その他たにもいろんなことをいろいろ書かき散ちらしてきたわけだが。

景けい行ぎょう天皇てんのうはすごいな、とか、
彦坐王おうとか何者なにものなんだろうとか、
手て白しろ香が皇女おうじょってほんとは女帝にょていだったんじゃないの、とかいろんな妄想もうそうが沸わいてくる。

図ずが横よこに広ひろがっているときには、やはり、天皇てんのう家かを巻まき込こんだ、なんか歴史れきし的てきにたいへんなことが起おきているんだよね。

掛かけ軸じくかなんかにして売うれば需要じゅようがあるんじゃなかろうか。

皇子おうじや皇女おうじょ、妃ひなどをできるかぎりみな書かき込こんでみようと思おもったのだが、
後こう嵯峨天皇さがてんのうあたりで力尽ちからつきた。
余あまりに複雑ふくざつなので間違まちがいもあるかと思おもうがそのうち直なおす。

Inkscape で描えがいているのだがだんだん重おもくなってきたのでレイヤー分わけたりとかした。
かなり Inkscape に熟練じゅくれんした。

後こう嵯峨さがで挫折ざせつしたのには意味いみが無むくは無ない。
後深草天皇ごふかくさてんのうと亀山天皇かめやまてんのうは同母どうぼ（西園寺さいおんじ氏し）兄弟きょうだいであるのに皇統こうとうが割われたのはもはや外戚がいせきや妃ひの影響えいきょう力りょくというものが無なくなってしまったことを意味いみしている。
この頃ころから完全かんぜんな男系だんけい社会しゃかい、武家ぶけ社会しゃかいになってしまった。
だから皇女おうじょや妃ひを書かいてもあまり意味いみが無ない。
またあまった皇子おうじはこの頃ころから完全かんぜんに法親王ほうしんのうになるようになった。

桓武かんむ天皇てんのうの頃ころから明あきらかに皇子おうじや皇女おうじょが爆発ばくはつ的てきに増ふえている。
皇子おうじはやたらといろんな女性じょせいと恋愛れんあいし、子供こどもを作つくった。まさに光源氏ひかるげんじの時代じだい。
その流ながれはおよそ村上むらかみ天皇てんのうの頃ころまで続つづく。外戚がいせきにも多様たよう性せいがあり、皇子おうじもものすごくたくさんいた。
道長みちながの時代じだいに天皇てんのう家かはようやく衰おとろえかけている。
妃ひや子供こどもの数かずが明あきらかに減へっている。
たとえば嵯峨天皇さがてんのうと白河天皇しらかわてんのうを比くらべてみてもずいぶん違ちがってきた。
その後ごも天皇てんのう家かはどんどん衰退すいたいしていく。
天皇てんのう家かの外戚がいせきになりたがる人ひとが減へったということだろう。
光源氏ひかるげんじはただ無節操むせっそうだったのではなく、それなりの「社会しゃかい的てき需要じゅよう」があったはずなのだ。

自分じぶんの息子むすこが親王しんのうになれるならともかく、
法親王ほうしんのうではあまり旨味うまみがない、ということもあっただろう。

> 光源氏ひかるげんじ、名なのみことことしう、言げんひ消けしたれたまふ咎とがめ多たかなるに、いとど、かかる好すきごとどもを、末すえの世よにも聞きき伝つたへて、軽けいびたる名めいをや流りゅうさむと、忍しのぶびたまひける隠かくれろへごとをさへ、語かたり伝でんへけむ人じんのもの言げんひさがなさよ。

「帚木」の冒頭ぼうとうだが、どうも、源氏物語げんじものがたりに先立さきだって、光源氏ひかるげんじの物語ものがたりのプロトタイプというものがあったように思おもえる書かき方かただ。
「桐きり壺つぼ」は後ごから付つけ足たした序章じょしょうだとして、この「帚木」がもともとの出でだしだったとするとあまりにも唐突とうとつだ。

「みなもとのひかる」という人ひとは仁明天皇にんみょうてんのうの皇子おうじにただ一人ひとり見みえる。
源みなもと光ひかり（845-913）。
母ははは宮人みやびと・百済くだら王おう豊ゆたか俊しゅんの娘むすめ。
百済くだらからの帰化きか人じんの家系かけい。
源みなもと多た（みなもとのまさる）という兄あにがいた。
この時代じだい、普通ふつうの皇子おうじの名なは「光ひかり」「多た」と一文字ひともじ、親王しんのうだと二に文字もじ、という区別くべつがあったようだ。