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死 - Wikipedia

生命せいめい活動かつどう恒久こうきゅうてき停止ていしすること
病死びょうしから転送てんそう

(し)とは、

  1. いのちがなくなること[1]生命せいめいがなくなること[2]生命せいめい存在そんざいしない状態じょうたい[2]
  2. 機能きのうたせないこと、やくてないこと、能力のうりょく行使こうしできない状態じょうたい[1]( → #比喩ひゆてき用法ようほう参照さんしょう)。
世界せかいてき象徴しょうちょうとしてのヒト頭蓋骨ずがいこつ

ただし、なにをもってひととするのか、その判定はんてい定義ていぎ文化ぶんか時代じだい分野ぶんやなどにより様々さまざまである(→「死亡しぼう判定はんてい定義ていぎふし参照さんしょう)。一旦いったんいのちいとされる状態じょうたいになったがふたたきている状態じょうたいもどった場合ばあい途中とちゅうの「」とされた状態じょうたいを「仮死かし」や「仮死かし状態じょうたい」「臨死りんし状態じょうたい」という。伝統でんとうてき宗教しゅうきょう哲学てつがく神学しんがくあつかってきた。近年きんねんでは、死生しせいがく法学ほうがく法医学ほういがく生物せいぶつがく等々とうとう関係かんけいしている。うしろに様々さまざま言葉ことばをつなげ、様々さまざまなニュアンスを表現ひょうげんしている。たとえば「死亡しぼう」「死去しきょ」「死没しぼつ」などがある。

」の定義ていぎおよ判定はんていかんするしょ問題もんだい

編集へんしゅう

どのような状態じょうたいになったことを「」とするのかということについては、かく地域ちいき文化ぶんかてき伝統でんとう個人こじん心情しんじょう医療いりょうほう制度せいど倫理りんりてき観点かんてんなどが相互そうご対立たいりつしており、複雑ふくざつ様相ようそうていしている。たとえば、医学いがくてき見解けんかいひとつに着目ちゃくもくしてみた場合ばあいでも、そこには様々さまざま見解けんかいがありうる。養老ようろう孟司たけしつぎのように指摘してきした。

生死せいし境目さかいめというのがどこかにきちんとあるとおもわれているかもしれません。そして医者いしゃならばそれがわかるはずだとおもわれているかもれません。しかし、この定義ていぎ非常ひじょうむずかしいのです。というのも、「きている」という状態じょうたい定義ていぎ出来できないと、この境目さかいめ定義ていぎできません。うそのようにおもわれるかもれませんが、その定義ていぎじつはきちんと出来できていない[3]

医療いりょう現場げんばでの判定はんてい方法ほうほう

編集へんしゅう

さん兆候ちょうこう

編集へんしゅう

医療いりょうもちいられる「さん兆候ちょうこう」で、つぎみっつからる。

臓器ぞうき移植いしょく問題もんだい出現しゅつげんするまで、こうかんがえておけば基本きほんてきには問題もんだいはなかった[4]

バイタルサイン

編集へんしゅう

現代げんだい医療いりょう現場げんばでは、基本きほんてきにまずバイタルサイン生命せいめい状態じょうたい判断はんだんしている。つまり心拍しんぱくすう呼吸こきゅうすう血圧けつあつ体温たいおんである。そしてバイタルサインによる生命せいめい活動かつどう確認かくにん出来できなくなり、瞳孔どうこう反射はんしゃ調しらべ、それも場合ばあい死亡しぼうしたと判断はんだんする方法ほうほうである[ちゅう 1]

脳死のうし臓器ぞうき移植いしょく

編集へんしゅう

厳格げんかく定義ていぎするのは困難こんなんだが、医療いりょう現場げんばでは前述ぜんじゅつの「さん兆候ちょうこう」をもちいること一応いちおう解決かいけつていた。ところが、臓器ぞうき移植いしょく登場とうじょうにより、事態じたい複雑ふくざつした[4]

米国べいこくなどで一部いちぶ医師いしによって臓器ぞうき移植いしょくこころみがなされるようになると、こうした医師いしはできるだけ状態じょうたい臓器ぞうき使つかうため、すこしでもはや臓器ぞうき摘出てきしゅつしたいとかんがえるようになった。そのほうが移植いしょくされたひと良好りょうこうになる傾向けいこうがあるからである。だが、早期そうき臓器ぞうき摘出てきしゅつする手術しゅじゅつをしたことによって患者かんじゃ死亡しぼうしたと做された場合ばあい、その一連いちれん行為こういは(一種いっしゅの)「殺人さつじん」になってしまう。そこで、臓器ぞうき移植いしょくおこないたい医師いしたちなどが、意識いしき有無うむ生死せいし線引せんひきにもちいることを提唱ていしょうし、「脳死のうし」という概念がいねんまれた。それによって、のうんだ状態じょうたいでも、のこりの臓器ぞうき新鮮しんせん状態じょうたい維持いじしたまま臓器ぞうき移植いしょくすることが可能かのうになるとされた。脳死のうしという概念がいねんでは、「のう電気でんきてき活性かっせい停止ていし意識いしきわりをしめす」とした。つまり、のう電気でんきてき活性かっせいんだときひと死亡しぼうしたとされる。

脳死のうしたいする見解けんかいかれている。そもそも「脳死のうし」という概念がいねん自体じたい線引せんひきは様々さまざまであり、(のうのどの部分ぶぶんんだ段階だんかいで「脳死のうし」とするか意見いけんかれ)、「のう神経しんけい細胞さいぼう全部ぜんぶんだ時点じてん脳死のうし」とするひともいる[5]。しかし、かりにこの論法ろんぽう場合ばあいでも、一体いったいどの時点じてん神経しんけい細胞さいぼう全部ぜんぶ死亡しぼうしたとえるかは明確めいかくではない[5][ちゅう 2][ちゅう 3][ちゅう 4][ちゅう 5][ちゅう 6][ちゅう 7]日本にっぽん臓器ぞうき移植いしょくネットワークでは、脳死のうしを「脳幹のうかんふくむ、のう全体ぜんたい機能きのううしなわれた状態じょうたい」と定義ていぎしており、所謂いわゆる植物しょくぶつ状態じょうたいとは明確めいかくことなるとしている[6]

脳死のうし議論ぎろんは、科学かがく分野ぶんやというよりは、社会しゃかい一致いっちしてめる「」が問題もんだい中心ちゅうしんになっているようだと養老ようろう孟司たけし指摘してきした[7]臓器ぞうき移植いしょくめぐる「脳死のうし概念がいねんでは、臓器ぞうき移植いしょくをしようとする医師いし臓器ぞうき摘出てきしゅつされるひととその家族かぞく臓器ぞうきひと立場たちば等々とうとうにより意見いけんことなる。養老ようろうは、人体じんたいというのは様々さまざま種類しゅるい細胞さいぼう出来できていてそれらが全体ぜんたいきているのに、そうしたすうおおくの細胞さいぼうなかからのう神経しんけい細胞さいぼうだけを特別とくべつするほどの明確めいかく根拠こんきょがあるわけではない[5]主張しゅちょうした。

のう神経しんけい細胞さいぼうだけを特別とくべつするということは、皮膚ひふ筋肉きんにく細胞さいぼう軽視けいししているのではないかと養老ようろう指摘してきしている[8]。また、筋肉きんにくは「脳死のうし」の判定はんていでも電気でんき刺激しげきあたえるとよくうご[9]ことから、「生死せいし境目さかいめ」や「瞬間しゅんかん」は厳格げんかく存在そんざいしているとするかんがえは、おもみにすぎないのではないかと養老ようろう主張しゅちょうしている[9]

臓器ぞうき移植いしょくほう」では、脳死のうしであるなどとはかれていない[10]たんに、脳死のうし状態じょうたい患者かんじゃからは臓器ぞうき移植いしょくしてもよい、としかかれておらず、解釈かいしゃくかれている[10][10]。 

村上むらかみ陽一郎よういちろうは「脳死のうし」という概念がいねんはかなり不適切ふてきせつだ、と指摘してきしている[11]村上むらかみは、「脳死のうし」という概念がいねんつくられたのは、医学いがく人間にんげんをパーツのあつまりとしかなくなったからであり、そこには一人ひとりいちにん人間にんげんとしての患者かんじゃへの視点してん欠如けつじょしていると主張しゅちょうした[11]一方いっぽうで、臓器ぞうき提供ていきょうによって救命きゅうめい出来でき患者かんじゃ存在そんざいしており、脳死のうしという概念がいねんおよ臓器ぞうき移植いしょくへの評価ひょうかかれている[12]

臓器ぞうき移植いしょく脳死のうしめぐって議論ぎろん活発かっぱつだったときに、脳死のうし)を「これからさきかって、可逆かぎゃくてき進行しんこうする過程かていになる状態じょうたいである」としたひともいる[13]法医学ほういがく教員きょういんでも、「ひとは、心臓しんぞうはいのう、それらすべての可逆かぎゃくてき機能きのう停止ていし」というひとがいる。「生命せいめい活動かつどう可逆かぎゃくてきまること」などともわれた[14][ちゅう 8][ちゅう 9]

以上いじょうのように、立場たちばによって見解けんかいことなるため、21世紀せいき現在げんざいでも「」の判定はんてい定義ていぎについては議論ぎろんがある。

ほう制度せいど要請ようせいによる医師いし判断はんだん

編集へんしゅう

前述ぜんじゅつのように実際じっさいにはなま境目さかいめ明確めいかくにあるわけではない。ただ、言葉ことばとして「生死せいし」という言葉ことばがありもちいられている以上いじょう、「あいだがある」という前提ぜんていかれており[15]、また社会しゃかい制度せいどとしては、どういうかたちにせよ、生死せいし明確めいかくにすることもとめられる。そうした背景はいけいから規定きていする必要ひつようがあるため、医師いし死亡しぼう診断しんだんしょの「死亡しぼう時刻じこくらん死亡しぼうしたと判断はんだんされる時刻じこくくことで対象たいしょうがいつ死亡しぼうしたかを一応いちおう明確めいかくにしている[15][15]。それによって、「瞬間しゅんかん」が形式けいしきてきにではあるが決定けっていされる[15]。しかし、これはあくまで文書ぶんしょうえめたにすぎず、実体じったいとしての「瞬間しゅんかん」は前述ぜんじゅつのように見解けんかい様々さまざま存在そんざいする[15]

死亡しぼう判定はんてい関連かんれん書類しょるい法的ほうてき手続てつづ

編集へんしゅう

おおくのくにではひと医師いしによる死亡しぼう診断しんだんしょ場合ばあいによっては死体したい検案書けんあんしょによって法的ほうてきとする。なお、日本にっぽんでは死亡しぼう診断しんだんしょ医師いしだけでなく歯科しか医師いし作成さくせいできるが、死体したい検案書けんあんしょについては医師いしのみである。

誤診ごしん

編集へんしゅう

医師いし死亡しぼう宣告せんこくされたのちかえったとされる事例じれい存在そんざいする[16]

イギリスビクトリア時代じだいのそのような逸話いつわでは、あるものは防腐ぼうふ処理しょりはじめたときに、あるものは数日すうじつかんなか意識いしき回復かいふくするなどしてうごまわったりする[よう出典しゅってん]当時とうじのイギリスでは、このようなはやすぎた埋葬まいそうを、強迫きょうはく観念かんねんてきおそれるようになるひとがいた。どう時代じだい以前いぜんには、ペストなどの伝染でんせんびょう流行りゅうこうに、感染かんせんおそれて杜撰ずさん検死けんしがしばしばあったとされ、これが死者ししゃ復活ふっかつ(→吸血鬼きゅうけつきゾンビグールなど)の伝承でんしょうとなったとかんがえるものもいる[よう出典しゅってん]

これらは、その当時とうじ検死けんし技術ぎじゅつ完全かんぜんではなく、ショック状態じょうたいにおける体温たいおん急激きゅうげき低下ていかや、呼吸こきゅうりょういちじるしい減少げんしょう、あるいは血圧けつあつ低下ていかによるみゃく微弱びじゃく状態じょうたい死亡しぼうあやまって判定はんていしたケースや、一時いちじてき心肺しんぱい停止ていしのち偶発ぐうはつてき心臓しんぞう鼓動こどう正常せいじょうもどるなどして「かえった」とみなされたとされる[よう出典しゅってん]。このため近代きんだいてき検死けんしでは、最初さいしょのチェックから一定いってい時間じかん生命せいめい兆候ちょうこうがないかをさい確認かくにんするようになっている。

検死けんし技術ぎじゅつ発達はったつ以前いぜんにおける土葬どそうでは、このようにきているにもかかわらず埋葬まいそうされる可能かのうせいがあった。そのため発明はつめいたちは埋葬まいそうしゃ状態じょうたいかんがいつたえる方法ほうほう発明はつめいした。地表ちひょうにはベルとはたがあり、それがかんないひもつながっていた。かんぶたには金槌かなづち滑車かっしゃ装置そうちこわせるガラス仕切しきりがあった。しかしこれは気休きやすめでしかなく、この滑車かっしゃ装置そうちかんにかけられたのため機能きのうず、かん破壊はかいしたところでれたガラスと埋葬まいそうしゃかおおおことになる。(安全あんぜんかん参照さんしょう

統計とうけい原因げんいん

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WHOによる人口じんこうひゃくまんたり死者ししゃすう2012ねん
  1,054–4,598
  4,599–5,516
  5,517–6,289
  6,290–6,835
  6,836–7,916
  7,917–8,728
  8,729–9,404
  9,405–10,433
  10,434–12,233
  12,234–17,141

世界せかいにおいては1にちあたり、おおよそ15まんにんむかえるが、そのうち2/3は高齢こうれいによるよわい関連かんれん死因しいんである[17]先進せんしんこくになるとその割合わりあいたかく、90%ほどがよわい関連かんれんである[17]。また日本にっぽんでは、およそ23びょう1人ひとり死亡しぼうしており、悪性あくせいしん生物せいぶつ腫瘍しゅよう)が死因しいん最多さいためる[18]

 
日本にっぽんにおける月別つきべつ死亡しぼうすう割合わりあい[19][20]日本にっぽんでは、近年きんねんでは、ふゆ死亡しぼうするれいおおく、それ以外いがい時期じき死亡しぼうすう比較的ひかくてきすくない。暖房だんぼう冷房れいぼう普及ふきゅうしていなかった明治めいじ時代じだいにはふゆなつに2つの死亡しぼうのピークがみとめられる。

ひといた原因げんいん死因しいんう。

直接的ちょくせつてき死亡しぼうつながった原因げんいんことを「直接ちょくせつ死因しいん(direct cause of death)」とい、直接ちょくせつ死因しいんまねいた原因げんいんを「はら死因しいん(underlying cause of death)」とう。[よう出典しゅってん]

 
喫煙きつえんするアメリカじん少年しょうねん1910ねんタバコ喫煙きつえんは、20世紀せいき推定すいてい1おくにん死亡しぼうこした。

一般いっぱんてき死因しいん分類ぶんるいかならずしも一致いっちするわけではないが参考さんこうまでに)死亡しぼう診断しんだんしょでの「死因しいん」の分類ぶんるいではつぎのようになっている[21]

子宮しきゅうない胎児たいじ死亡しぼうした状態じょうたいまれることを、検案書けんあんしょでは「自然しぜん死産しざん」や「人工じんこう死産しざん」と分類ぶんるいする[24]厳密げんみつには胎児たいじそのものの死因しいんあらわすものではないが、胎児たいじ死亡しぼうしたさいもちいられる。

なお病死びょうしかんしては、近年きんねん日本にっぽんではがんこころ疾患しっかん肺炎はいえんが3だい要因よういんとなっている[25]

2018ねん平成へいせい30ねん)ではがんこころ疾患しっかん老衰ろうすい上位じょうい3つをめており、以後いごのう血管けっかん障害しょうがい肺炎はいえん不慮ふりょ事故じこつづ[26]

生物せいぶつがくてき説明せつめい

編集へんしゅう
 
南北戦争なんぼくせんそうでのみなみ軍兵ぐんびょう死体したい1865ねんピッツバーグ

いたった場合ばあい生物せいぶつたい次第しだい崩壊ほうかいいたる。これはしゅとしてふたつの作用さようによる。

ひとつは、生物せいぶつからだ自身じしんみずからを分解ぶんかいすることである。たとえば消化しょうか酵素こうそのように、生物せいぶつたい分解ぶんかいすることが可能かのう酵素こうそ生物せいぶつ体内たいないのあちこちに存在そんざいしており、これによって生物せいぶつたい分解ぶんかいされないのは、生命せいめい活動かつどうのひとつとして、それらを隔離かくりした状態じょうたいにする活動かつどうがあるからである。によってそれがまれば、生物せいぶつたいみずか分解ぶんかいはじめる。

もうひとつは、生物せいぶつ分解ぶんかいされることである。生物せいぶつからだは、それ以外いがいのさまざまな生物せいぶつにとって有益ゆうえき栄養えいようげんである。とく微生物びせいぶつつね空気くうきちゅう地面じめんなどから侵入しんにゅうこころみている。これが成功せいこうしないのは、きた生物せいぶつには免疫めんえきはたらきがあるからである。によってその活動かつどうまれば、たちまちそれらの侵入しんにゅう繁殖はんしょくはじまる。

単細胞たんさいぼう生物せいぶつとう

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原則げんそくとして単細胞たんさいぼう生物せいぶつには寿命じゅみょう老化ろうか)によるという概念がいねんい。 細胞さいぼう生物せいぶつテロメアによって細胞さいぼう分裂ぶんれつ回数かいすう制限せいげんされており、分裂ぶんれつ回数かいすう限界げんかい老化ろうかをもたらすが、かく単細胞たんさいぼう生物せいぶつ例外れいがいなくテロメラーゼによってテロメアを修復しゅうふくすることで、無限むげんえることができる。

単細胞たんさいぼう生物せいぶつ寿命じゅみょうなるものをさがそうとしても、ゾウリムシ分裂ぶんれつ制限せいげんぐらいしかげられない。ゾウリムシ人為じんいてきいち個体こたいずつに隔離かくりすることかえして、自家じか生殖せいしょくもしくは接合せつごうおこなわせないよう注意深ちゅういぶか飼育しいくしたところ、350かい程度ていど細胞さいぼう分裂ぶんれつのちむかえる。これはゾウリムシは自家じか生殖せいしょくもしくは接合せつごうによるかく融合ゆうごうがテロメラーゼをはたらかせるスイッチになっているからである。ゆえに、自然しぜんかい寿命じゅみょうむかえることは、ありえないとってい。

細胞さいぼう生物せいぶつ

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細胞さいぼう生物せいぶつでは細胞さいぼう組織そしき個体こたい区別くべつされる。

過程かてい

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心肺しんぱい停止ていし

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一般いっぱんてきには、呼吸こきゅう停止ていしし、脈拍みゃくはくくなると、過程かてい開始かいしされる。日本にっぽんでは心肺しんぱい停止ていし国際こくさいてきにはしん停止ていし(Cardiac arrest)とばれる。

細胞さいぼう

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通常つうじょう細胞さいぼう機能きのうは、不可欠ふかけつ細胞さいぼう代謝たいしゃのために必要ひつようエネルギーと、酵素こうそ構造こうぞうタンパク質たんぱくしつ生産せいさん細胞さいぼう化学かがくてきおよび浸透しんとうてき恒常こうじょうせい維持いじ、などをふくむ。通常つうじょう機能きのうしている細胞さいぼうは、酸素さんそリンさんしおカルシウム水素すいそ炭素たんそ窒素ちっそ硫黄いおう栄養えいようてき基質きしつATP、などを摂取せっしゅする必要ひつようがあり、また無傷むきず細胞さいぼうまく酸素さんそ消費しょうひする不変ふへん活動かつどう必要ひつようとする。これらの要素ようそのうちどれがさえぎられても、細胞さいぼうこりえる。心肺しんぱい停止ていし細胞さいぼう急速きゅうそく進行しんこうすることになる。

心肺しんぱい停止ていし状態じょうたいになると、大量たいりょう酸素さんそ必要ひつようとするのうすみやかに破壊はかいされる。人間にんげん身体しんたい中枢ちゅうすうであるため、意識いしき回復かいふくや、身体しんたい恒常こうじょうせい維持いじ期待きたいできなくなる。

死後しご遺体いたい変化へんか

編集へんしゅう
 
レンブラント『ニコラス・テュルプ博士はかせ解剖かいぼうがく講義こうぎ』(1632ねん

死後しご人体じんたいにおこる変化へんか死後しご変化へんかう。まず、心拍しんぱく停止ていしした時点じてん死亡しぼう時間じかんとし、そのられる現象げんしょう以下いかとおりである。死亡しぼうられるあきらかな変化へんかおおくは、りゅう停止ていしによってもたらされる。[よう出典しゅってん]

まず、からだひょう温度おんどすみやかに室温しつおんちかづいていく。死後しごからだしん温度おんどからだひょう温度おんどことなり、ゆるやかに気温きおんちかづく。おおくの場合ばあい気温きおん体温たいおんよりひくいため、低下ていかする(ひや)。体温たいおん低下ていか速度そくどは、死亡しぼう体温たいおん死体したいおおきさ、環境かんきょう着衣ちゃくいなど、いくつかの要因よういんによって変化へんかする。周囲しゅうい湿度しつどひく場合ばあいゆびとんがはなとんがとう突出とっしゅつ部位ぶいからすみやかに乾燥かんそう皮膚ひふ収縮しゅうしゅくがみられ、ミイラはじまる。生理学せいりがくてきには、りゅう停止ていし酸素さんそ供給きょうきゅう途絶とだえた全身ぜんしん細胞さいぼううち神経しんけい細胞さいぼうなどの脆弱ぜいじゃく細胞さいぼうから、すうふん以内いない可逆かぎゃくてき変化へんかはじまり、最後さいご筋繊維きんせんいなどの一番いちばんうとつよ細胞さいぼう死滅しめつする。末梢まっしょうの、上皮じょうひなど血液けつえき以外いがいから酸素さんそられる細胞さいぼうではりゅう停止ていしによる水分すいぶん不足ふそく(乾燥かんそう)、電解でんかいしつ異常いじょうなどを原因げんいん細胞さいぼうはじまる。乾燥かんそうからまぬかれ、周囲しゅうい空気くうきからなにとか酸素さんそ供給きょうきゅうされている場合ばあい毛根もうこんなどの細胞さいぼうはしばらく生存せいぞんする可能かのうせいもあるが、死体したいひげかみびるとわれる場合ばあいおおくは表皮ひょうひ乾燥かんそうによる収縮しゅうしゅくのため、毛髪もうはつがより露出ろしゅつしてえることによる錯覚さっかくであるともわれている。また、まばたきがおこなわれないため、角膜かくまく乾燥かんそう角膜かくまく細胞さいぼうによる蛋白たんぱく変性へんせいによる白濁はくだくすみやかに進行しんこうする。[よう出典しゅってん] 死体したい腐敗ふはいするよりまえ死後しご硬直こうちょくはじまる。死体したい硬直こうちょく発現はつげんまでの時間じかんとその持続じぞく期間きかんは、死亡しぼう筋肉きんにく温度おんど気温きおん影響えいきょうける。死体したい硬直こうちょく通常つうじょうの2 - 4あいだはじまり[よう出典しゅってん]筋肉きんにくはこの過程かていで、すじげん線維せんいないにあるATP減少げんしょう乳酸にゅうさんアシドーシスのため、徐々じょじょにこわばっていく。死後しご9 - 12あいだ経過けいかすると、すじげん繊維せんい機能きのううしなわれるため死体したい硬直こうちょく解除かいじょされる。死後しご硬直こうちょくちゅう他動的たどうてき関節かんせつ屈伸くっしんさせると死後しご硬直こうちょく解除かいじょされる。また気温きおん十分じゅうぶんたかければ、死体したい硬直こうちょくこらない。[よう出典しゅってん]

臨死りんし体験たいけん

編集へんしゅう

仮死かし状態じょうたいから医学いがく処置しょちなどで蘇生そせいしたひとの4 - 18%が仮死かし体験たいけん状態じょうたい体験たいけんした出来事できごと報告ほうこくする。つまり、医師いしなどによって死亡しぼうしたと判定はんていされたのに、時間じかんふたたかえひとがいる。べつのいいかたをするなら、仮死かし状態じょうたいからかえひとである。ゆえに「臨死りんし体験たいけん」とばれている。

有史ゆうし以来いらい、「臨死りんし体験たいけん」をした人々ひとびとおおくいたようであり、西洋せいようでも東洋とうようでも類似るいじ内容ないよう様々さまざま文献ぶんけん記録きろくされているという。ハーバードで宗教しゅうきょうがく講義こうぎ担当たんとうするキャロル・ザレスキーは、中世ちゅうせい文献ぶんけん臨死りんし体験たいけん記述きじゅつであふれていると指摘してきした。また、日本にっぽんでも『今昔こんじゃく物語ものがたり』『宇治うじ拾遺しゅうい物語ものがたり』『扶桑ふそう物語ものがたり』『日本にっぽん往生おうじょう極楽ごくらく』などに臨死りんし体験たいけんそっくりの記述きじゅつがあるという[27]

近年きんねんでは医学いがく技術ぎじゅつにより、停止ていしした心臓しんぞうはくどう呼吸こきゅうをふたたび開始かいしさせることも可能かのうになったため、ふちから生還せいかんするひとかず過去かこくらべてえている[28]

臨死りんし体験たいけん研究けんきゅうというのは、欧米おうべいでは地質ちしつ学者がくしゃアルベルト・ハイム登山とざん事故じこ自身じしん臨死りんし体験たいけんしたことをきっかけにおこな1892ねん発表はっぴょう先鞭せんべんをつけ、その 1910年代ねんだい - 1920年代ねんだいすうめいにより研究けんきゅう発表はっぴょうされたが一旦いったん途絶とだえ、1975ねんキューブラー=ロスレイモンド・ムーディという医師いしがあいついで著書ちょしょ出版しゅっぱんしたことでふたた注目ちゅうもくされるようになった[27]1982ねんには、やはり医師いしのマイクル・セイボムも調査ちょうさ結果けっか[29]出版しゅっぱんした[27]

ひとのぞんで、まばゆいばかりのひかりうつくしい景色けしきなどをたり、このってひさしい身内みうちなどがあらわれたりするという。自分じぶんちゅうがり、その肉体にくたいなかもどってきたことをおもすこともあるという[28]臨死りんし体験たいけん様々さまざま解釈かいしゃくされている。スピリチュアルな解釈かいしゃく唯物ゆいぶつろんてき解釈かいしゃくがあり、医師いし科学かがくしゃあいだでも解釈かいしゃくかれている[30][31]臨死りんし体験たいけんにて詳説しょうせつ)。

のステレオタイプな表現ひょうげん

編集へんしゅう
 
のシンボルとされる人間にんげん骸骨がいこつ
 
骸骨がいこつでの表現ひょうげん

比喩ひゆてき用法ようほう

編集へんしゅう

自然しぜん言語げんごはそのちからして基本きほんてきメタファー出来できているものであり、という表現ひょうげんも、なにかしら生命せいめいせられる存在そんざいが、その比喩ひゆてきな「いのち」をうしなうような場合ばあいにも使つかわれる。「マ帝国まていこく」、「ほし」などである。

 
OSのブルースクリーン。ソウルの地下鉄ちかてつにて

現在げんざい[いつ?]では、機械きかい装置そうちなどが破損はそんした場合ばあいに「んだ」などと形容けいようされることもある。とくにコンピュータたいしては、電源でんげんれた、クラッシュした、あるいはプロセス停止ていししたなどの状態じょうたい比喩ひゆてきに「んだ」と表現ひょうげんすることがあり、その延長えんちょうで「プロセスをころす」(進行しんこうちゅう処理しょり停止ていしさせる)などといった比喩ひゆ表現ひょうげん使つかわれる(いちれいげれば、UNIXけいオペレーティングシステムではたんなる比喩ひゆまらずプロセス停止ていしコマンドとして'kill'コマンドが存在そんざいしている)。生命せいめい可逆かぎゃくてきとはことなり、これら機械きかい比喩ひゆてきでは破損はそんした部品ぶひん交換こうかんするなり修理しゅうりして、コンピュータの場合ばあいはクラッシュしたプログラムにかんするメモリを破棄はきして記憶きおく媒体ばいたいからしなおすなど復旧ふっきゅうさせる方法ほうほういくらでもある。とく技術ぎじゅつすじにもなると「異常いじょう故障こしょうえなくなり、それを破棄はきして異常いじょうのないものにえする以外いがい対処たいしょ方法ほうほうがない」場合ばあいに「んだ」と表現ひょうげんする。

相撲すもうの「たい」、野球やきゅうの「死球しきゅう」などの表現ひょうげんでももちいられている。また、一定いってい職業しょくぎょういていたものが、様々さまざましょ事情じじょうによってその職務しょくむいちじるしく困難こんなんになった場合ばあいなどはたとえ生物せいぶつがくまとにはきてはいてもマスメディアなどでは「○○生命せいめいたれる。」などと表現ひょうげんされる。また、政治せいじ芸能人げいのうじんジャーナリストなど社会しゃかいてき注目ちゅうもくされる職業しょくぎょう従事じゅうじするものが、自身じしん運営うんえいしているブログのいわゆる「炎上えんじょう」などによって事実無根じじつむこん様々さまざま風評ふうひょう被害ひがいけることにより、上記じょうきのような社会しゃかいてき活動かつどうおこなえなくなったものなども職業しょくぎょうじんとしては「んでいる」もしくは「ころされた」ようなものであるため「社会しゃかいがくてき」とみなされる。

なお、「ぬ」や「にそうなくらいつらい」など、「もうだめだ」と弱音よわねときに、比喩ひゆ誇張こちょう表現ひょうげん道具どうぐとして、おも若者わかもの使つかネットスラングに「タヒる」「タヒぬ」というのもある。これは、半角はんかくかれた「タヒ」が「」というていることが語源ごげんである[32]

コンピュータゲームでは、おもにプレイヤーストックせい採用さいようしているゲームにおいて、ミスをしてが1つることを「ぬ」と表現ひょうげんされることがある。

兵士へいしぬときの表現ひょうげん

編集へんしゅう

英語えいごフランス語ふらんすごでは、兵士へいし敗北はいぼくきっしたときに「ほこり()をむ(英語えいご:bite the dust、フランス語ふらんすご:mordre la poussière)」、ドイツでは、「くさむ(Ins Gras beißenドイツばん)」という表現ひょうげん使つかわれる。むという表現ひょうげんは、古代こだいギリシアのイーリアス (2, 418)などにもることができる。

日本語にほんごでは、すなむは感情かんじょうかないようなとき表現ひょうげんで、意味合いみあいはことなる。コンピュータゲームでは、敗北はいぼくきっするときに使つか表現ひょうげんとして「ゆかペロ」という言葉ことば使つかわれる[33]

芸術げいじゅつ作品さくひん

編集へんしゅう

芸術げいじゅつ作品さくひんが、ひとれぬようになったり(死蔵しぞう)、作者さくしゃ意図いとした事柄ことがら部分ぶぶんてきにすらられなくなった場合ばあい、その作品さくひん意味いみをなくし" ぬ "とされる。

古代こだいギリシャ古代こだいローマにおいて人間にんげんすべきものとばれ、かみのり不死ふしなるものの永遠えいえんせいとの対比たいひによって、時間じかんてきかぎられたものとイメージされ、芸術げいじゅつ詩人しじんとは、この限界げんかい人間にんげんかみ々を媒介ばいかいするものとかんがえられた[よう出典しゅってん][34]現在げんざい[いつ?]でも芸術げいじゅつ作品さくひんは "不死ふしせい" とむすけられてとらえられることがおおい。

ヴァルター・ベンヤミン1892ねん - 1940ねん)はすでに"んでしまった"芸術げいじゅつ作品さくひんの「救済きゅうさい」が歴史れきし使命しめいであるとかんがえた。

20世紀せいき後半こうはんには、クンデラ大江おおえ健三郎けんざぶろうらが、「小説しょうせつ」、「文学ぶんがく」といった言葉ことばもちいた。

  • じつんでいない - シャーロック・ホームズのライヘンバッハのたきでの死闘しとうからの復活ふっかつ。「ギャグキャラじゃなければんでいた」など、人気にんきキャラクターを作者さくしゃやファンがころせなくなったり、作風さくふうとしてきている、もしくは作品さくひんげるために一時いちじてきんだようによそわれるプロット・デバイス

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 判定はんていをする医療いりょうしゃについて。原則げんそくとして医師いし歯科しか医師いし以外いがいもの患者かんじゃ死亡しぼう宣言せんげんする権限けんげんはない。消防しょうぼう機関きかん救急きゅうきゅう業務ぎょうむ規程きていなかでは、「あきらかに死亡しぼうしている場合ばあい」や「医師いし死亡しぼうしていると診断しんだんした場合ばあい」には、救急きゅうきゅうたい患者かんじゃ搬送はんそうしないとさだめられている。すなわち、それ以外いがい場合ばあいでは、患者かんじゃ生存せいぞんしている可能かのうせいがあるものとしてあつかうことがもとめられている。「あきらかに死亡しぼう」とは、断頭だんとうからだ幹部かんぶはなれだん死体したい硬直こうちょく死斑しはん腐敗ふはい炭化たんかミイラそのあきらかに生存せいぞん状態じょうたいとは矛盾むじゅんする身体しんたいへの損害そんがい(いわゆる社会しゃかい状態じょうたい)をいう。社会しゃかい要件ようけんたさない場合ばあい救急きゅうきゅう隊員たいいん救命きゅうめい措置そち開始かいしに、医師いし診断しんだんけるまでそれをやめてはならない。病院びょういん到着とうちゃく診察しんさつ死亡しぼう確認かくにんされることを、DOA(Dead on arrival = 病院びょういん到着とうちゃくすでに死亡しぼう)という。
  2. ^ じつ意識いしき有無うむ判定はんてい容易よういではない。意識いしき停止ていし睡眠すいみんなか昏睡こんすいなかにもこりえるため、停止ていし一時いちじてきなものではなく、永続えいぞくてき回復かいふく不能ふのうなものでなくてはならない。意識いしき停止ていしがたんなる睡眠すいみんであった場合ばあい脳波のうはけい比較的ひかくてき簡単かんたん確認かくにんできる。 だが、のう一部いちぶ機能きのううしなわれたと外的がいてきにモニタできた場合ばあいでも、その状態じょうたい意識いしきがあるのかいのか、判断はんだんできない場合ばあいおおい。
  3. ^ 一部いちぶひとは、脳幹のうかんきているかどうかを線引せんひきに使つかえばいい、と主張しゅちょうしている。だが、脳幹のうかん機能きのう停止ていししているにもかかわらず、聴覚ちょうかくのほうはきて機能きのうたもっていて、周囲しゅういひと言葉ことば理解りかいしている患者かんじゃ事例じれい発見はっけんされた。
  4. ^ 一部いちぶひとは、「人間にんげん意識いしき必要ひつようなのはのうしん皮質ひしつだけである」と主張しゅちょうしている。こうしたひとは「しん皮質ひしつ電気でんきてき活性かっせいだけを基準きじゅん判定はんていをすべきである」とする。"大脳皮質だいのうひしつによってもたらされる認識にんしき機能きのう永続えいぞくてき回復かいふく不能ふのう消失しょうしつが、判定はんていする基準きじゅんとなる"とべるひともいる(関西医科大学かんさいいかだいがく大学院だいがくいん法医学ほういがく生命せいめい倫理りんりがく研究けんきゅうしつによる関西医科大学かんさいいかだいがく法医学ほういがく講座こうざ)。"じん思考しこう人格じんかく回復かいふくするのぞみはないから"とかんがえるのである。
  5. ^ さんかけによって大脳皮質だいのうひしつ機能きのううしなわれた場合ばあいでも、のう電気でんきてき活性かっせい脳波のうはけい感知かんちするにはあまりにひくかった場合ばあいなに存在そんざいしなくても、脳波のうはけいノイズかけの電気でんき信号しんごう)を感知かんちすることがある。(病院びょういんでは、脳波のうはけい使つかって判定はんていをするときは、病院びょういんないひろ空間くうかんへだてるなどの精巧せいこう実施じっし要綱ようこうがあるという。)
  6. ^ 米国べいこくでは、2005ねんに、植物しょくぶつ状態じょうたいにおちいったテリー・スキアボ尊厳そんげんめぐ事例じれいが、アメリカの政治せいじ脳死のうし人為じんいてき生命せいめい維持いじ問題もんだい直面ちょくめんさせた。一般いっぱんてきに、そのように判定はんていめぐってあらそわれた事例じれいで、のう死因しいん酸素さんそ状態じょうたいによってこる。大脳皮質だいのうひしつはおよそ7分間ふんかんさんかけいたる。
  7. ^ 人工じんこう心肺しんぱいなどの医療いりょう技術ぎじゅつ登場とうじょうしたことによって、心肺しんぱい停止ていし状態じょうたいでも恒常こうじょうてきのうかし意識いしきたもつことも可能かのうになった。また、のう機能きのうのみが廃絶はいぜつしても心肺しんぱい機能きのう人工じんこうてき維持いじすることが可能かのうとなり、心肺しんぱい機能きのうたもたれているがのう活動かつどうしめ所見しょけんがない状態じょうたいを「脳死のうし」、心肺しんぱい停止ていしによる心肺しんぱいのうすべての停止ていしを「心臓しんぞう」とぶようになった。また、人間にんげん心臓しんぞうはいわる生命せいめい維持いじ装置そうち、あるいはペースメーカーなどによって生命せいめいたもつことが可能かのう場合ばあいあらわれた。また、心肺しんぱい蘇生そせいじゅつ迅速じんそくぼそどう除去じょきょ発達はったつによって、鼓動こどう呼吸こきゅう再開さいかいさせることができる場合ばあいあらわれ、かんする従来じゅうらい医学いがくてきかんがかたでもれなくなってきた。そして心拍しんぱく呼吸こきゅう停止ていしを「臨床りんしょう」とびわけることもおこなわれるようになった。「」をめぐる状況じょうきょう複雑ふくざつしてきているのである。
  8. ^ こういう提案ていあんをするひとは、「可逆かぎゃくてき」の意味いみ理解りかいするには人間にんげんれいかんがえるとわかりやすい、とう。人間にんげんかみつめ心臓しんぞうはいのうすべ停止ていししていても、数日すうじつあいだつづける。このあいだ毛根もうこん細胞さいぼうきているが、心肺しんぱいのうすべ停止ていししている場合ばあい、やがては毛根もうこん活動かつどう停止ていししてゆくことはまぬかれない。こうかんがえて、「個体こたい状態じょうたい可逆かぎゃくてき活動かつどう停止ていしへの変化へんか」だとう。このかんがかたでは、ぎゃく事故じこなどで心肺しんぱい停止ていし状態じょうたいおちいっても心肺しんぱい蘇生そせいによっていきかえしたときには、このあいだ心肺しんぱい停止ていし可逆かぎゃくてきなのでとはわない、のだという。(出典しゅってん関西医科大学かんさいいかだいがく大学院だいがくいん法医学ほういがく生命せいめい倫理りんりがく研究けんきゅうしつによる関西医科大学かんさいいかだいがく法医学ほういがく講座こうざ
  9. ^ 養老ようろう孟司たけしは、このような「かって可逆かぎゃくてき進行しんこうする過程かていになる状態じょうたい」がだ、とする定義ていぎは、もっともらしくこえはするが、根本こんぽんてき問題もんだいがある、と指摘してきしている。というのは、そもそも人間にんげん全員ぜんいんぬ。つまり、人間にんげん全員ぜんいんまれたときからかって可逆かぎゃくてき進行しんこうする存在そんざいであり、後戻あともどりできない。そもそもひとだれでも、最初さいしょからその状態じょうたいきているのに、「可逆かぎゃくてきに……」といったことを定義ていぎとして論者ろんしゃは、あるひとが、論者ろんしゃがイメージする"かって可逆かぎゃくてき進行しんこうする過程かてい" なるものに、いつからはいったのか、どうやって判定はんていするのか? と、養老ようろうはその定義ていぎ論法ろんぽう問題もんだいてん指摘してきしている。(養老ようろう孟司たけし 2004, p. 69)

出典しゅってん

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  1. ^ a b 広辞苑こうじえん だいはん p.1127
  2. ^ a b 大辞泉だいじせん
  3. ^ 養老ようろう孟司たけし 2004, p. 55.
  4. ^ a b 養老ようろう孟司たけし 2004, p. 69.
  5. ^ a b c 養老ようろう孟司たけし 2004, p. 57.
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  7. ^ 養老ようろう孟司たけし 2004, p. 67.
  8. ^ 養老ようろう孟司たけし 2004, p. 59.
  9. ^ a b 養老ようろう孟司たけし 2004, p. 58.
  10. ^ a b c 養老ようろう孟司たけし 2004, p. 70.
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  12. ^ サンクスレター|日本にっぽん臓器ぞうき移植いしょくネットワーク”. 日本にっぽん臓器ぞうき移植いしょくネットワーク. 2022ねん6がつ8にち閲覧えつらん
  13. ^ 養老ようろう孟司たけし 2004, p. 68.
  14. ^ 関西医科大学かんさいいかだいがく大学院だいがくいん法医学ほういがく生命せいめい倫理りんりがく研究けんきゅうしつサイト掲載けいさい情報じょうほう関西医科大学かんさいいかだいがく法医学ほういがく講座こうざ
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  20. ^ http://www.stat.go.jp/data/chouki/zuhyou/02-28.xls
  21. ^ a b c d e f g 関西医科大学かんさいいかだいがく法医学ほういがく講座こうざ - 死亡しぼう診断しんだんしょ
  22. ^ 自然しぜん」には老衰ろうすいによるなどがふくまれる。
  23. ^ 病死びょうし外因がいいんしょう場合ばあいには「しょう」となる。
  24. ^ 死亡しぼう診断しんだんしょ死体したい検案書けんあんしょ記入きにゅうマニュアル - 厚生こうせい労働省ろうどうしょう
  25. ^ 日本人にっぽんじん死因しいん浮上ふじょうした「肺炎はいえん
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  28. ^ a b マイクル・B・セイボム「セイボムによる はしがき」『「あの」からの帰還きかん 臨死りんし体験たいけん医学いがくてき研究けんきゅう日本教文社にっぽんきょうぶんしゃ、1986ねん、xiii-xvぺーじISBN 978-4531080427 
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  33. ^ 今日きょうのゲーム用語ようご】「ゆかペロ」とは ─ 事態じたいおもみを、なんとなくかるくしてくれる効果こうかも?”. インサイド. 2022ねん5がつ18にち閲覧えつらん
  34. ^ なお、古代こだいギリシャの悲劇ひげきは、作者さくしゃともえんじられなくなる慣習かんしゅうがあったが、唯一ゆいいつアイスキュロスの作品さくひんはあまりの人気にんきのために死後しご上演じょうえんされた。アリストパネス喜劇きげきかえる』に、それについて言及げんきゅうしたくだりがある。

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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