コロン (記号きごう)

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コロン (えい: colon) は、欧文おうぶんやくもののひとつ「:」である。自然しぜん言語げんご数学すうがくコンピュータ言語げんごひとしもちいられる。

歴史れきし[編集へんしゅう]

英語えいごの colon は、ラテン語らてんごの「colon」(複数ふくすう cola)に由来ゆらいし、これはさらに 古代こだいギリシア: κかっぱλらむだοおみくろんνにゅー手足てあし部分ぶぶん)にさかのぼる。ギリシャ韻文いんぶんにおいて、コロンというかたり記号きごうすことはなく、表現ひょうげん文章ぶんしょう一節いっせつそのものをし、完全かんぜんかんがえや文章ぶんしょう一節いっせつのことをいった。このことから、古文書こもんじょにおいては写本しゃほんうえ1ぎょうかれる一節いっせつまたは複数ふくすうふしした[1]

紀元前きげんぜん3世紀せいきにビュザンティオンのアリストパネスが考案こうあんした正書法せいしょほうでは、そのような一節いっせつわりにはちゅう程度ていどながさの息継いきつぎがかれ、これを中点ちゅうてん「·」でしめした。(この記号きごうはときどき使つかわれるにぎなかったが、現代げんだいギリシャではセミコロンにあたるアノテリアとして復活ふっかつした[2])。その一方いっぽう、2つのてんならべた記号きごう」は終止符しゅうしふまたは話者わしゃわったことをしめ記号きごうとして使つかわれた。この記号きごう変種へんしゅコンマピリオド中間ちゅうかんながさの休止きゅうししめ記号きごうとして1600ねん前後ぜんこう英語えいご正書法せいしょほう導入どうにゅうされた[3]。18世紀せいきになってもまだコロンはテキストを音読おんどくするときの休止きゅうしながさと関連かんれんづけられていたが[4]黙読もくどく一般いっぱんてきになるとべつ定義ていぎってかわられた。

イギリス英語えいごでは、かつてコロンのうしろにハイフンまたはダッシュをつけた「:—」が音読おんどく休止きゅうし記号きごうとして使つかわれ、「Dog's bollocks」(いぬ金玉きんぎょく)とばれたが、現在げんざいすたれている[5][6][7]

ドイツ: Doppelpunktフランス語ふらんすご: deux-pointsロシア: двоеточие朝鮮ちょうせん: 쌍점 などはいずれも「2つのてん」を意味いみする。中国ちゅうごく: おかせごう文章ぶんしょうだし(冒頭ぼうとうおかせ)と本体ほんたいける記号きごうであることを意味いみし、1919ねん教育きょういく提出ていしゅつした「請頒ぎょう新式しんしきしるべてん符号ふごう議案ぎあん」でこの名称めいしょうもちいられ、翌年よくねん正式せいしき決定けっていされた。

記号きごう[編集へんしゅう]

自然しぜん言語げんごでの用法ようほう[編集へんしゅう]

国際こくさいてき用法ようほう[編集へんしゅう]

引用いんよう[編集へんしゅう]

直接ちょくせつ引用いんよう複文ふくぶんなかで、引用いんようまえにおく。1ぎょうない使つかうほか、コロンと引用いんようあいだ改行かいぎょうする(しばしば引用いんようインデントする)こともある。現代げんだい英語えいごでは通常つうじょうコンマ使つかうが、形式けいしきばった導入どうにゅう(thus, following でわる場合ばあいなど)にはコロンをもちいる。

He looked at the picture and exclaimed: “What a beautiful picture!”
He looked at the picture and exclaimed:
What a beautiful picture!

いか[編集へんしゅう]

説明せつめいいか。「X: Y」は、「X、つまりY」「X、いいかえるとY」、あるいは文中ぶんちゅうでなく単独たんどく使つかわれた場合ばあいは「XはYである」と意訳いやくできる。

その[編集へんしゅう]

ローカルな用法ようほう[編集へんしゅう]

数学すうがくでの用法ようほう[編集へんしゅう]

  • 除法じょほうざん)をあらわす。÷日本語にほんごでは「る」とむ。(おもドイツフランス使つかわれ、日本にっぽんではあまり使つかわれない。)
  • あらわす。「たい」(たい)とむ。除算じょざんことなり、「」のように3つ以上いじょうならべる記述きじゅつ可能かのうである。
  • =(等号とうごう)とわせた「」は、定義ていぎあらわす。Unicodeでは1つの文字もじ (U+2254) が用意よういされている。
  • 集合しゅうごうを、もとあらわ一時いちじてき変数へんすう使つかって定義ていぎする。たとえば、 は「10よりおおきい実数じっすう集合しゅうごう」をさだめる。ただしこれは ともあらわす。
  • 行列ぎょうれつ内積ないせきあらわす。たとえば、
     (2つのコロンは「定義ていぎ」)。

コンピュータでの用法ようほう[編集へんしゅう]

プログラミング言語げんご[編集へんしゅう]

  • いくつかのプログラミング言語げんごでは、ラベル命令めいれいぶんくだりける名前なまえ)のわりに使つかわれ、gotoぶんひとしのジャンプさきしめす。
    れい loop:
  • いくつかのプログラミング言語げんごでは「::」とふたつづけてスコープ解決かいけつ演算えんざんとして使つかわれる。
  • Prologでは「:-」のかたちン節んせつ記述きじゅつ使つかわれる。
  • BASICでは、行内こうないでの命令めいれいセパレータ(区切くぎり)である。つまり、1ぎょう複数ふくすう命令めいれい実行じっこうさせたいとき(IF 〜 THEN 〜 ELSE構文こうぶんなど、1ぎょう必要ひつようがあった)かく命令めいれいあいだにコロンをく。これをマルチステートメントとび、処理しょりけいによっては容量ようりょう節約せつやく実行じっこう速度そくどのわずかな向上こうじょう見込みこめるが、ソースリストがみにくくなるという弊害へいがいともないやすい。しかし、1ぎょう入力にゅうりょく即時そくじ実行じっこうされるダイレクトモードでは、複数ふくすう命令めいれい処理しょりおこないたいならばしたれいのようにマルチステートメントを使つか必要ひつようがある。
    れい P=19800:T=1.05:PRINT P*T
  • Object REXX では、ディレクティブ構文こうぶんまえ::かれる(::CLASS, ::METHOD, ::REQUIRES, ::ROUTINES, ::ATTRIBUTE, ::CONSTANTなど)
  • いくつかの言語げんごで「:=」が代入だいにゅうあらわす。なおそれらの言語げんごでは「=」は(代入だいにゅうではなく)等号とうごうである。
  • クエスチョンマーク(?)とセットで「A?true:false」という条件じょうけん演算えんざん構成こうせいする。
  • 範囲はんいあらわす。
    • MATLABや、その影響えいきょうけたScilabOctaveなどでは、等差とうさ数列すうれつからなるベクトル(配列はいれつ)をあらわす。たとえば、「10:20」は「10 11 12 … 20」、「100:10:200」は「100 110 120 … 200」。
    • Pythonでは、スライス(リスト一部いちぶしたもの)の添数の範囲はんいあらわす。たとえば「a[1:10]」。
    • Microsoft Excel では、セルの範囲はんいあらわす。たとえば「A10:20」は「セルA10からA20まで」。
  • Pythonでは、そのほかに、ブロックはじまり、無名むめい関数かんすう定義ていぎ辞書じしょがた初期しょきなどをあらわす。

そののコンピュータ分野ぶんや[編集へんしゅう]

はん[編集へんしゅう]

大文字おおもじ小文字こもんじ[編集へんしゅう]

アルファベット使つか文頭ぶんとう大文字おおもじはじめる言語げんごでは、コロンののち大文字おおもじはじめるか小文字こもじはじめるかが問題もんだいになる。

イギリスヨーロッパ大陸たいりく大半たいはんでは小文字こもじアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは大文字おおもじはじめることがおおい。アメリカの The Chicago Manual of Style は、コロンののち直接ちょくせつ引用いんようまたは複数ふくすうぶんつづくときに大文字おおもじはじめるとしている。

スペース[編集へんしゅう]

欧文おうぶんでは、伝統でんとうてきに、コロンのまえせまスペースのちひろいスペースがれられてきた。フランス語ふらんすごでは現在げんざいもこのスタイルだが、現在げんざい英語えいごでは、コロンのまえのスペースはれず、のちにのみれる。

日本語にほんご横書よこがばんみでは、コロンを半角はんかくとし、その前後ぜんごに4ふんかく14かく)ずつのスペースをれ、わせて全角ぜんかくとする。とうはばフォントでは、これら前後ぜんこうのスペースをふくめた全角ぜんかくぶんのグリフが全角ぜんかくコロンにデザインされている。

天地てんち方向ほうこうよこみ)の位置いち調整ちょうせい[編集へんしゅう]

iOSでは「12:34」のように時刻じこく做される文字もじれつ入力にゅうりょくすると、コロンの天地てんち位置いち数字すうじとズレてえないよう自動じどう調整ちょうせいされる。コロンののち数字すうじ削除さくじょすると元通もとどおがる。

符号ふごう位置いち[編集へんしゅう]

記号きごう Unicode JIS X 0213 文字もじ参照さんしょう 名称めいしょう
: U+003A 1-1-7 :
:
コロン
colon
˸ U+02F8 ˸
˸
modifier letter raised colon
܃ U+0703 ܃
܃
syriac supralinear colon
܄ U+0704 ܄
܄
syriac sublinear colon
U+1365 ፥
፥
ethiopic colon
U+1804 ᠄
᠄
mongolian colon
U+205D ⁝
⁝
tricolon
U+2236 ∶
∶

ratio
U+A6F4 ꛴
꛴
bamum colon
U+A789 ꞉
꞉
modifier letter colon
U+FE55 ﹕
﹕
small colon
U+FF1A 1-1-7 :
:
コロン(全角ぜんかく
fullwidth colon

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Oxford English Dictionary, 1st ed. "colon, n.²" Oxford University Press (Oxford), 1891.
  2. ^ Nicolas, Nick (2005ねん). “Greek Unicode Issues: Punctuation”. 2014ねん10がつ7にち閲覧えつらん
  3. ^ John Bullokar An English expositor (1616) でコロンを "A marke of a sentence not fully ended which is made with two prickes." と定義ていぎしている
  4. ^ John Mason (1706–1763) An Essay on Elocution (1748) "A Comma Stops the Voice while we may privately tell one, a Semi Colon two; a Colon three: and a Period four."
  5. ^ Extreme Type Terminology Part 4: Numerals and Punctuation”. I Love Typography (2008ねん4がつ25にち). 2014ねん11月28にち閲覧えつらん
  6. ^ The Secret History of Typography in the Oxford English Dictionary”. The Bygone Bureau (2010ねん1がつ20日はつか). 2014ねん11月28にち閲覧えつらん
  7. ^ The Colon”. University of Sussex. 2014ねん11月28にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]