ローブ・モンタント

1885年ねん頃ごろのローブ・モンタント

ローブ・モンタント（仏ふつ: robe montante）とは、高たかい立たて襟えりの女性じょせい用ようドレスのことである。「モンタント」はフランス語ふらんすごで「上あがる」「登のぼる」「高たかまる」を意味いみし、ネックラインが深ふかく大おおきくカットされているローブ・デコルテ(夜よるの正せい礼装れいそう)に対たいして、肩かたも背中せなかも露出ろしゅつしていない。

皇室こうしつ主催しゅさいの公式こうしき行事ぎょうじなどにおいて女性じょせいの昼ひるの正せい礼装れいそうとして着用ちゃくようされることが多おおい。

概要がいよう

1903年ねんドイツでの式典しきてん

2011年ねん新年しんねん一般いっぱん参賀さんがにてローブ・モンタントを着用ちゃくようし手袋てぶくろと扇おうぎを所持しょじする正せい仁じん親王しんのう妃ひ華子はなこ、彬あきら子女しじょ王おう、承うけたまわ子こ女王じょおう、絢子あやこ女王じょおう

19世紀せいき後半こうはんから20世紀せいき初頭しょとうにかけてが全盛ぜんせいで、イブニングドレス以外いがいのドレスにこの型かたが広ひろく採とり入いれられていた。そのため、日本にっぽんで婦人ふじんにも礼式れいしき相当そうとうの西洋せいよう服装ふくそうが認みとめられた際さいには、「通常つうじょう礼服れいふく」と規定きていされた服装ふくそうが「ローブ・モンタント」と称しょうされるようになった。

この当時とうじ、日本にっぽんでは憲法けんぽうを制定せいていして立憲りっけん君主くんしゅ制せい近代きんだい国家こっかを設立せつりつすることを目指めざしており、服ふく制せいの整備せいびも行おこなわれていた。女性じょせいの和装わそうの礼服れいふくとしては、明治めいじ4年ねん7月がつ24日にち皇室こうしつ令れい第だい8号ごうにて平安へいあん装束しょうぞくを改良かいりょうした袿袴が制定せいていされ、明治めいじ17年ねん9月がつ17日にちの宮内くない省内しょうない達たちにより勅みことのり任官にんかん夫人ふじん、同どう11月がつ19日にちの宮内くない省内しょうない達たちにより奏そう任官にんかん夫人ふじんの服ふく制せいが定さだめられていたが、明治めいじ19年ねん6月がつ23日にち宮内くない省内しょうない達たちにより婦人ふじんにも礼式れいしき相当そうとうの西洋せいよう服装ふくそうが認みとめられた。同どう達たちにより、大だい礼服れいふくはマント・ド・クール、中ちゅう礼服れいふくはローブ・デコルテ、小しょう礼服れいふくはローブ・ミーデコルテ（仏ふつ: robe mi-décolletée)とされ、「通常つうじょう礼服れいふく」と規定きていされた服装ふくそうが「ローブ・モンタント」である。これらの礼服れいふくは何いずれも丈たけが長ながく、裾すそを引ひく長ながさであった。格式かくしきの高たかいマント・ド・クールとローブ・デコルテは袖そでが短みじかく胸元むなもとが大おおきく開ひらかれ、ローブ・ミーデコルテは胸元むなもとが閉とじられている。それらに対たいし、ローブ・モンタントは袖そでが長ながく、手首てくびまであるのが特徴とくちょうとされた。これに帽子ぼうしを被こうむり、手袋てぶくろと扇おうぎを持もつのが女性じょせいの昼ひるの正せい礼装れいそうとされる。明治めいじ17年ねんの内達ないたつ以降いこうの宮内くない省内しょうない達たち及および告示こくじを総合そうごうすると、女性じょせいの礼装れいそうとしては、洋装ようそうが主おもであり、和装わそうは次つぎとなっていることが見みて取とれる。本来ほんらい長袖ながそでのロングドレスだが、ミモレ丈たけもある。1959年ねんの皇太子こうたいし明仁あきひと親王しんのうの結婚けっこんの儀ぎでは宮中きゅうちゅう三さん殿どのに参列さんれつした清宮きよみや貴子たかこ内親王ないしんのうは膝ひざ丈たけのローブ・モンタントだった。

今日きょうでは、女性じょせい皇族こうぞくが宮中きゅうちゅうの昼ひるの正式せいしきな行事ぎょうじや、陵墓りょうぼ、伊勢神宮いせじんぐう及および明治めいじ神宮じんぐうへの拝礼はいれいの際さいに用もちいる。「勲章くんしょう記章きしょう佩用はいよう心得こころえ」（明治めいじ22年ねん賞しょう勲くん局きょく告示こくじ第だい1号ごう）では、男子だんしの通常つうじょう礼服れいふく（燕尾服えんびふく）は全すべての勲章くんしょうが佩用はいようできるとされたのに対たいし、女子じょしの通常つうじょう礼服れいふく（ローブ・モンタント）には勲一等くんいっとう以上いじょうは副ふく章しょうのみ可かとされていた。戦後せんごの「勲章くんしょう等とう着用ちゃくよう規程きてい」（昭和しょうわ39年ねん4月がつ28日にち総理府そうりふ告示こくじ第だい16号ごう）でもこれが踏襲とうしゅうされていたが、平成へいせい2年ねん11月17日にち総理府そうりふ告示こくじ第だい47号ごうによる改正かいせいで、ローブ・モンタントも燕尾服えんびふくやローブ・デコルテと同様どうよう、全すべての勲章くんしょうが着用ちゃくようできるようになった。2017年ねん10月26日にちのタイ王国おうこくのラーマ9世せい前ぜん国王こくおう葬儀そうぎでは文ぶん仁じん親王しんのう妃ひ紀子のりこは夜間やかんでも着用ちゃくようしている。

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  2009年ねん天皇誕生日てんのうたんじょうび一般いっぱん参賀さんがにてローブ・モンタントを着用ちゃくようし帽子ぼうしを被こうむり手袋てぶくろと扇おうぎを携帯けいたいする皇后こうごう雅子まさこ（当時とうじ皇太子こうたいし妃ひ）

参考さんこう文献ぶんけん

• 文化出版局ぶんかしゅっぱんきょく編へん 編へん『服飾ふくしょく辞典じてん』文化出版局ぶんかしゅっぱんきょく、1979年ねん。 NCID BN02385171。OCLC 674296747。全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:79012345。 
• 田中たなか千代ちよ『田中たなか千代ちよ 服飾ふくしょく辞典じてん』 新しん増補ぞうほ第だい2刷さつ、同どう文書ぶんしょ院いん、1982年ねん3月がつ。 
• 刑部おさかべ芳則よしのり『洋服ようふく・散髪さんぱつ・脱だつ刀かたな : 服ふく制せいの明治維新めいじいしん』講談社こうだんしゃ、2010年ねん4月がつ。ISBN 978-4-06-258464-7。 

関連かんれん項目こうもく

• ドレス
• アフタヌーンドレス
• ローブ・デコルテ
• 大だい礼服れいふく
• オールド・ファッション