(Translated by https://www.hiragana.jp/)
受動免疫 - Wikipedia コンテンツにスキップ

受動じゅどう免疫めんえき

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
移行いこう抗体こうたいから転送てんそう

受動じゅどう免疫めんえき(じゅどうめんえき、えい: passive immunity)とは個体こたいから個体こたいへと既存きそん抗体こうたいかたち活性かっせいえきせい免疫めんえき導入どうにゅうすることである。自然しぜん条件下じょうけんかでは、受動じゅどう免疫めんえき母体ぼたい抗体こうたい胎盤たいばん臍帯さいたい)あるいははつちちかいして胎児たいじ移行いこうするときみとめられる。特定とくてい病原びょうげんたい毒素どくそ特異とくいてきこうレベルの抗体こうたいヒトウマなど動物どうぶつからられる)の抗体こうたいを、血液けつえき製剤せいざいつうじて免疫めんえき個体こたいへと導入どうにゅうすることで、受動じゅどう免疫めんえき人為じんいてき誘導ゆうどうすることが可能かのうである[1]受動じゅどう免疫めんえき療法りょうほう免疫めんえきグロブリン療法りょうほうこう血清けっせい療法りょうほうなど)は[2]感染かんせん危険きけんたか自身じしん免疫めんえき応答おうとうでは抗体こうたいさんせいするのに十分じゅうぶん時間じかんがない場合ばあい、あるいは免疫めんえき不全ふぜんしょう症状しょうじょう軽減けいげんする場合ばあい利用りようされる[3][4]

自然しぜん獲得かくとく

[編集へんしゅう]

はは免疫めんえき(ぼじめんえき)は、自然しぜん獲得かくとくされる受動じゅどう免疫めんえき一種いっしゅであり、母親ははおやによって胎児たいじまたは乳児にゅうじ移行いこうする抗体こうたい媒介ばいかいせい免疫めんえきす。移行いこう抗体こうたい(いこうこうたい、えい: maternal antibody、MatAb)は、母体ぼたいから胎児たいじあるいは新生児しんせいじ世代せだいあいだ垂直すいちょくてき移行いこうする抗体こうたい[5]。これはおも免疫めんえきグロブリンG(IgG)より構成こうせいされ、哺乳類ほにゅうるいでは胎盤たいばん母乳ぼにゅう栄養えいようつうじて、鳥類ちょうるいでは卵黄らんおうかいして移行いこうする。

ヒトの場合ばあい移行いこう抗体こうたい胎盤たいばん細胞さいぼうじょうFcRn受容じゅようたい英語えいごばんによって胎盤たいばん通過つうかして胎児たいじつたえられる。これはおも妊娠にんしん後期こうき妊娠にんしんだいさん)に発生はっせいするため、早産そうざんでは減少げんしょうすることがよくられる。免疫めんえきグロブリンG(IgG)は、ヒトの胎盤たいばん通過つうかできる唯一ゆいいつ抗体こうたいアイソタイプであり、体内たいない存在そんざいする5種類しゅるい抗体こうたいなかもっと一般いっぱんてき抗体こうたいである。IgG抗体こうたいは、胎児たいじ細菌さいきんやウイルス感染かんせんから保護ほごするはたらきがある。結核けっかく肝炎かんえんポリオ百日咳ひゃくにちぜきなどの新生児しんせいじ病気びょうき予防よぼうするために、出生しゅっしょう直後ちょくご予防よぼう接種せっしゅ必要ひつようとなることがよくあるが、母体ぼたいのIgGは生後せいご1年間ねんかんつうじてワクチン防御ぼうぎょ反応はんのう誘導ゆうどう阻害そがいすることがある。この効果こうか通常つうじょう追加ついか免疫めんえきたいする応答おうとうによって克服こくふくされる[6]移行いこう抗体こうたいは、ポリオや百日咳ひゃくにちぜきなどのほか病気びょうきよりも、麻疹ましん(はしか)、風疹ふうしん破傷風はしょうふうなどの一部いちぶ病気びょうき効果こうかてき予防よぼうする[7]母体ぼたい受動じゅどう免疫めんえき即時そくじてき保護ほごをもたらすものの、母体ぼたいのIgGをかいした保護ほご通常つうじょう1ねんまでしか持続じぞくしない。

受動じゅどう免疫めんえきは、はつちち母乳ぼにゅうつうじて提供ていきょうされ、ふくまれているIgA抗体こうたい乳児にゅうじちょう移行いこうすることで、新生児しんせいじ自分じぶん抗体こうたい合成ごうせいできるようになるまでのあいだ病気びょうき原因げんいんとなる細菌さいきんやウイルスにたいする局所きょくしょてき防御ぼうぎょとしてはたら[8]。IgAによる保護ほご母乳ぼにゅう育児いくじ期間きかん依存いぞんしており、これが世界せかい保健ほけん機関きかん(WHO)がすくなくとも生後せいご2ねん母乳ぼにゅう育児いくじ推奨すいしょうしている理由りゆうひとつである[9]

ヒト以外いがいにも、霊長れいちょうるいやウサギ(ウサギやノウサギをふくむ)など、出生しゅっしょうまえ移行いこう抗体こうたい導入どうにゅうするたねがある[10]。これらのたねなかには、IgGと同様どうようIgM胎盤たいばんえて移行いこうするものがある。のすべての哺乳ほにゅう動物どうぶつしゅは、しゅとしてあるいは単独たんどくで、移行いこう抗体こうたい出産しゅっさん乳汁にゅうじゅうかいして移行いこうする。反芻はんすうるいでははつちちにより移行いこうする。ウシでははつちちちゅう移行いこう抗体こうたい吸収きゅうしゅう能力のうりょく生後せいご24時間じかん以内いないで100%であり、ブタでは生後せいご0~3あいだでは100%、3~9あいだでは50%である。これらのたねでは、新生児しんせいじちょう生後せいごすうあいだから数日すうじつあいだ、IgGを吸収きゅうしゅうすることができる。ただし、一定いってい期間きかん経過けいかすると、新生児しんせいじ母体ぼたいIgGをちょうから吸収きゅうしゅうすることができなくなり、この現象げんしょうは「腸管ちょうかん閉鎖へいさ(gut closure)」[訳語やくご疑問ぎもんてん]ばれている。新生児しんせいじ動物どうぶつ腸管ちょうかん閉鎖へいさまえ十分じゅうぶんりょうはつちちらなかった場合ばあい一般いっぱんてき病気びょうきたたかうのに十分じゅうぶんりょう母体ぼたいIgGが血液けつえきちゅう存在そんざいしない。この症状しょうじょう受動じゅどう免疫めんえき移行いこう不全ふぜんばれている。これは、新生児しんせいじ血液けつえきちゅうのIgGりょう測定そくていすることで診断しんだんされ、免疫めんえきグロブリンの静脈じょうみゃくない投与とうよによって治療ちりょうされる。治療ちりょうしなければ致命ちめいてきとなる可能かのうせいがある。

獣医じゅういがくにおいて、感染かんせんしょう種類しゅるいによっては移行いこう抗体こうたいによる感染かんせんしょう予防よぼう期待きたいして、おや動物どうぶつワクチン接種せっしゅすることがある(ニューカッスルびょうにわとりのう脊髄せきずいえんなど)。

人為じんいてき獲得かくとく

[編集へんしゅう]

人為じんいてき獲得かくとくされた受動じゅどう免疫めんえきは、抗体こうたい移行いこうによって達成たっせいされる短期たんきてき免疫めんえきであり、ヒトまたは動物どうぶつ血漿けっしょう血清けっせい静脈じょうみゃくないIVIG)または筋肉きんにくない(IG)よう貯蔵ちょぞうされたヒト免疫めんえきグロブリン、免疫めんえきけたドナーや病気びょうきから回復かいふくしたドナーからの高力こうりきヒトIVIGやIG、およびモノクローナル抗体こうたい(MAb)など、いくつかの形態けいたい投与とうよすることができる。ていガンマグロブリンしょうなどの免疫めんえき不全ふぜん疾患しっかん場合ばあい病気びょうき予防よぼうするために受動じゅどうてき移行いこうおこなわれる[11][12]。また、これはいくつかの種類しゅるい急性きゅうせい感染かんせんしょう中毒ちゅうどく治療ちりょうにも使用しようされる[4]受動じゅどう免疫めんえき免疫めんえきは、すう週間しゅうかんから3~4ヶ月かげつ持続じぞくする[7][13]。また、とくに「ヒト由来ゆらい」のガンマグロブリン抗体こうたい)による過敏かびん症状しょうじょう血清けっせいびょう潜在せんざいてき危険きけんせいもある[8]受動じゅどう免疫めんえきでは即時そくじ防御ぼうぎょされるが、身体しんたい記憶きおくのこらないため、能動のうどう免疫めんえきまたはワクチン接種せっしゅ獲得かくとくしないかぎり、あとおな病原びょうげんたい感染かんせんする危険きけんせいがある[8]

人為じんいてき獲得かくとくされたどう免疫めんえき歴史れきし用途ようと

[編集へんしゅう]
ジフテリア抗毒素こうどくそのバイアル(1895ねん

1888ねんエミール・ルー英語えいごばんアレクサンドル・イェルサン英語えいごばんは、ジフテリアの臨床りんしょう効果こうかジフテリア毒素どくそによるものであることをしめし、1890ねんエミール・アドルフ・フォン・ベーリング北里きたさとしば三郎さぶろうジフテリア破傷風はしょうふうたいする抗毒素こうどくそもとづく免疫めんえき発見はっけんしたことにより、抗毒素こうどくそ近代きんだい治療ちりょう免疫めんえきがく最初さいしょおおきな成功せいこうとなった[14][15]しば三郎さぶろうとフォン・ベーリングは、ジフテリアから回復かいふくした動物どうぶつ血液けつえき製剤せいざいでモルモットを免疫めんえきしたことで、動物どうぶつ血液けつえき製剤せいざいおなじプロセスで熱処理ねつしょりすることでヒトのジフテリアを治療ちりょうできることに気付きづいた[16]。1896ねんまでに、ジフテリア抗毒素こうどくそ導入どうにゅうは「急性きゅうせい感染かんせんしょう治療ちりょうにおいて19世紀せいきもっと重要じゅうよう進歩しんぽ」として歓迎かんげいされた[17]

ワクチンや抗生こうせい物質ぶっしつ登場とうじょうするまえは、特異とくいてき抗毒素こうどくそが、ジフテリアや破傷風はしょうふうなどの感染かんせんしょうたいする唯一ゆいいつ治療ちりょうほうであることがおおかった。免疫めんえきグロブリン療法りょうほうは、サルファやく合成ごうせい抗菌こうきんざい)が導入どうにゅうされたのちでも、1930年代ねんだいまで重症じゅうしょう呼吸こきゅう疾患しっかん治療ちりょうにおけるだいいち選択せんたく治療ちりょうほうであった[12]

幼児ようじうま血清けっせいからジフテリア抗毒素こうどくそ投与とうよしている様子ようすえがかれている(1895ねん)。この画像がぞうは、フィラデルフィア医科いか大学だいがく歴史れきし医学いがく図書館としょかんからのものである。

1890ねん破傷風はしょうふう治療ちりょう抗体こうたい療法りょうほうもちいられ、免疫めんえきけたうま血清けっせい重度じゅうど破傷風はしょうふう患者かんじゃ注射ちゅうしゃして破傷風はしょうふう毒素どくそ中和ちゅうわし、病気びょうき蔓延まんえんふせいだ。1960年代ねんだい以降いこう米国べいこくでは、破傷風はしょうふう発症はっしょう一致いっちする創傷そうしょうったワクチン接種せっしゅまたは不完全ふかんぜん免疫めんえき患者かんじゃに、ヒト破傷風はしょうふう免疫めんえきグロブリン(TIG)が使用しようされてきた[12]ボツリヌス中毒ちゅうどくたいする唯一ゆいいつ薬理やくりがくてき治療ちりょうほううま抗毒素こうどくそ投与とうよである[18]抗毒素こうどくそ異種いしゅ高力こうりき免疫めんえき血清けっせいとしてもられており、汚染おせんされた食品しょくひん摂取せっしゅしたひと予防よぼうてき投与とうよされることもよくある[7]IVIG治療ちりょうは、1970年代ねんだいタンポン騒動そうどう英語えいごばんさい何人なんにんかのどく素性すじょうショック症候群しょうこうぐん患者かんじゃ治療ちりょうにも成功せいこうした。

抗体こうたい療法りょうほうは、ウイルス感染かんせんしょう治療ちりょうにももちいられる。1945ねん夏季かきキャンプで流行りゅうこうしたAがた肝炎かんえん感染かんせんを、免疫めんえきグロブリン治療ちりょうふせぐことに成功せいこうした。同様どうように、Bがた肝炎かんえん免疫めんえきグロブリン(HBIG)は、Bがた肝炎かんえん感染かんせん効果こうかてき予防よぼうする。AがたおよびBがた肝炎かんえん抗体こうたい予防よぼうは、ワクチンの導入どうにゅうによってほぼ代替だいたいされたが、感染かんせんおよび流行りゅうこう地域ちいきへの渡航とこうまえには抗体こうたい予防よぼう必要ひつようである[19]

1953ねんインドのマドラス発生はっせいした天然痘てんねんとう蔓延まんえん防止ぼうしにヒトワクシニア免疫めんえきグロブリン(VIG)が使用しようされ、現在げんざい天然痘てんねんとうワクチン接種せっしゅからしょうじる合併症がっぺいしょう治療ちりょうつづ使用しようされている。麻疹ましん(はしか)の予防よぼう通常つうじょう、ワクチン接種せっしゅによって導入どうにゅうされるが、暴露ばくろ免疫めんえき予防よぼうてき治療ちりょうされることがおおくある。狂犬病きょうけんびょう感染かんせん予防よぼうには、なおワクチンと免疫めんえきグロブリンの両方りょうほう治療ちりょう必要ひつようである[12]

1995ねんコンゴ民主みんしゅ共和きょうわこく流行りゅうこうしたエボラ出血熱えぼらしゅっけつねつでは、有効ゆうこう予防よぼうほうがなかったため、回復かいふくした患者かんじゃぜんこうエボラ抗体こうたいふくぜん使用しようして8にん患者かんじゃ治療ちりょうした。最近さいきん、2013ねんに、アフリカで流行りゅうこうしたエボラ出血熱えぼらしゅっけつねつ治療ちりょうほう発見はっけんされた。典型てんけいてきエボラ出血熱えぼらしゅっけつねつ死亡しぼうりつが80%であるのにたいし、感染かんせんしゃ8めいのうち死亡しぼうしたのは1めいのみで、これは抗体こうたい治療ちりょう生存せいぞん寄与きよしている可能かのうせい示唆しさしている[20]免疫めんえきグロブリンは、単純たんじゅんヘルペスウイルス(HSV)、水痘すいとう帯状疱疹たいじょうほうしんウイルスエプスタイン・バール・ウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)のさい活性かっせい予防よぼう治療ちりょう両方りょうほう使用しようされている[12]

FDA認可にんか免疫めんえきグロブリン

[編集へんしゅう]

現在げんざい米国べいこくFDAは、つぎ免疫めんえきグロブリンを感染かんせんしょう予防よぼう免疫めんえき療法りょうほう使用しようすることをみとめている[21]

受動じゅどう免疫めんえきおよび免疫めんえき療法りょうほうのためのFDA承認しょうにん製品せいひん
疾患しっかん 製品せいひん形態けいたい[注釈ちゅうしゃく 1] 供給きょうきゅうげん 用途ようと
ボツリヌス中毒ちゅうどくしょう 特異とくいてきウマIgG ウマ 創傷そうしょうおよび食物しょくもつ媒介ばいかいがたのボツリヌスしょう治療ちりょう乳児にゅうじボツリヌスしょうには、ヒトボツリヌス免疫めんえきグロブリン(BabyBIG)を使用しようする。
サイトメガロウイルス (CMV) 高力こうりきあたい免疫めんえきIVIG ヒト じん移植いしょく患者かんじゃもっとおお使用しようされる予防よぼうやく
ジフテリア 特異とくいてきウマIgG ウマ ジフテリア感染かんせんしょう治療ちりょう
Aがた肝炎かんえん, 麻疹ましん 貯蔵ちょぞうヒトIg ヒト血清けっせい Aがた肝炎かんえん麻疹ましん感染かんせん予防よぼう先天せんてんせいまたは後天こうてんせい免疫めんえき不全ふぜんしょう治療ちりょう
Bがた肝炎かんえん Bがた肝炎かんえんIg英語えいごばん ヒト 曝露ばくろ予防よぼうこうリスク乳児にゅうじにおける予防よぼうBがた肝炎かんえんワクチンとの併用へいよう)。
ITP, 川崎病かわさきびょう, IgG欠乏けつぼう英語えいごばん 貯蔵ちょぞうヒトIg ヒト血清けっせい ITPおよび川崎病かわさきびょう治療ちりょう、IgG欠乏症けつぼうしょうともな日和見ひよりみ感染かんせん予防よぼう/治療ちりょう
狂犬病きょうけんびょう 狂犬病きょうけんびょうIg英語えいごばん ヒト 曝露ばくろ予防よぼう狂犬病きょうけんびょうワクチンを投与とうよ)。
破傷風はしょうふう 破傷風はしょうふうIg ヒト 破傷風はしょうふう感染かんせんしょう治療ちりょう
ワクシニア ワクシニアIg英語えいごばん ヒト 湿疹しっしん眼球がんきゅうがたふく進行しんこうせいワクシニア感染かんせんしょう治療ちりょう通常つうじょう免疫めんえき不全ふぜん患者かんじゃ天然痘てんねんとうワクチン接種せっしゅ起因きいんする)。
水痘すいとう (水疱瘡みずぼうそう) 水痘すいとう-帯状疱疹たいじょうほうしんIg ヒト こうリスク患者かんじゃにおける曝露ばくろ予防よぼう
  1. ^
    特異とくいてき/記載きさい: こう免疫めんえきグロブリンまたは抗毒素こうどくそ貯蔵ちょぞう: 通常つうじょう供給きょうきゅうげんからの混合こんごうIgで、通常つうじょうヒト免疫めんえきグロブリンともばれる。

細胞さいぼうせい免疫めんえき受動じゅどうてき移行いこう

[編集へんしゅう]

受動じゅどうてき体液たいえきせい免疫めんえき唯一ゆいいつ例外れいがいは、細胞さいぼうせい免疫めんえき受動じゅどうてき移行いこうであり、成熟せいじゅくした循環じゅんかんリンパだま移行いこうともな養子ようし免疫めんえき英語えいごばんえい: adoptive immunity)ともばれる。これは、ヒトではほとんど使用しようされず、組織そしき適合てきごうせい英語えいごばんのある(一致いっちした)ドナーを必要ひつようするが、そのドナーをつけるのはしばしば困難こんなんで、移植いしょくへんたい宿主しゅくしゅびょう深刻しんこくなリスクをともな[4]。この技術ぎじゅつは、あるしゅがん免疫めんえき不全ふぜんふく特定とくてい病気びょうき治療ちりょうするためにヒトに使用しようされている。しかし、この特殊とくしゅかたち受動じゅどう免疫めんえきは、免疫めんえきがく分野ぶんや実験じっけんしつで「コンジェニック」とばれる、組織そしき適合てきごうせいのある意図いとてききん交系のマウス系統けいとうあいだ免疫めんえきうつすためにもっともよく使用しようされる。

長所ちょうしょ短所たんしょ

[編集へんしゅう]

受動じゅどう免疫めんえきたいする個人こじん免疫めんえき応答おうとうは「ワクチンよりもはやく」、そして「免疫めんえき応答おうとうしない」個人こじんに、おおくの場合ばあい数時間すうじかんから数日すうじつ以内いない免疫めんえきけることができる。母乳ぼにゅう育児いくじは、受動じゅどうてき免疫めんえきりょく付与ふよするだけでなく、アレルギーや肥満ひまんのリスクを低減ていげんするなど、乳児にゅうじ健康けんこう永続えいぞくてき有益ゆうえき効果こうかをもたらす[16][22]

受動じゅどう免疫めんえき短所たんしょは、実験じっけんしつ抗体こうたい生産せいさんすることは高価こうかであり、おこなうのがむずかしいことである。感染かんせんしょう抗体こうたい生産せいさんするためには、おそらくすうせんにんものヒトドナーから血液けつえき提供ていきょうしてもらうか、免疫めんえき動物どうぶつ血液けつえき採取さいしゅして抗体こうたいつく必要ひつようがある。動物どうぶつからの抗体こうたい免疫めんえきけた患者かんじゃは、免疫めんえき動物どうぶつ由来ゆらいするタンパク質たんぱくしつによって血清けっせいびょう発症はっしょうし、じゅうあつしなアレルギー反応はんのう発症はっしょうする可能かのうせいがある[7]抗体こうたい治療ちりょう時間じかんがかかる可能かのうせいがあり、静脈じょうみゃく注射ちゅうしゃ(IV)でおこなわれるが、ワクチン接種せっしゅ注射ちゅうしゃ抗体こうたい治療ちりょうよりも時間じかんがかからず、合併症がっぺいしょうのリスクもすくなくなる。受動じゅどう免疫めんえき効果こうかてきであるが、短時間たんじかんしか持続じぞくしない[16]

参照さんしょう項目こうもく

[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ Vaccines: Vac-Gen/Immunity Types”. www.cdc.gov. 2015ねん11月20にち閲覧えつらん
  2. ^ Passive Immunization - Infectious Diseases”. Merck Manuals Professional Edition. 2015ねん11月12にち閲覧えつらん
  3. ^ 受動じゅどう免疫めんえき - 13. 感染かんせんせい疾患しっかん”. MSDマニュアル プロフェッショナルばん. 2021ねん6がつ26にち閲覧えつらん
  4. ^ a b c Microbiology and Immunology On-Line Textbook Archived 2021-05-30 at the Wayback Machine.: USC School of Medicine
  5. ^ Kalenik, Barbara; Sawicka, Róża; Góra-Sochacka, Anna; Sirko, Agnieszka (2014-01-01). “Influenza prevention and treatment by passive immunization”. Acta Biochimica Polonica 61 (3): 573–587. doi:10.18388/abp.2014_1879. ISSN 1734-154X. PMID 25210721. 
  6. ^ Lambert, Paul-Henri, Margaret Liu and Claire-Anne Siegrist Can successful vaccines teach us how to induce efficient protective immune responses? (Full text-html) Nature Medicine 11, S54 - S62 (2005).
  7. ^ a b c d Centers for Disease Control and Prevention”. 2021ねん6がつ25にち閲覧えつらん
  8. ^ a b c Janeway, Charles; Paul Travers; Mark Walport; Mark Shlomchik (2001). Immunobiology; Fifth Edition. New York and London: Garland Science. ISBN 0-8153-4101-6. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/bv.fcgi?call=bv.View..ShowTOC&rid=imm.TOC&depth=10 .
  9. ^ WHO | Exclusive breastfeeding”. www.who.int. 2016ねん6がつ6にち閲覧えつらん
  10. ^ Mucosal Immunology. ISBN 9780124158474 
  11. ^ prophylactically. http://medical-dictionary.thefreedictionary.com/prophylactically. 
  12. ^ a b c d e Keller, Margaret A. and E. Richard Stiehm Passive Immunity in Prevention and Treatment of Infectious Diseases Clinical Microbiology Reviews, October 2000, p. 602-614, Vol. 13, No. 4
  13. ^ Baxter, David (2007-12-01). “Active and passive immunity, vaccine types, excipients and licensing”. Occupational Medicine 57 (8): 552–556. doi:10.1093/occmed/kqm110. ISSN 0962-7480. PMID 18045976. 
  14. ^ Dolman, C.E. (1973). “Landmarks and pioneers in the control of diphtheria”. Can. J. Public Health 64 (4): 317–36. PMID 4581249. 
  15. ^ Silverstein, Arthur M. (1989) History of Immunology (Hardcover) Academic Press. Note: The first six pages of this text are available online at: (Amazon.com easy reader)
  16. ^ a b c Passive Immunization — History of Vaccines”. www.historyofvaccines.org. 2015ねん11月20にち閲覧えつらん
  17. ^ (Report) (1896). “Report of the Lancet Special Commission on the relative strengths of diphtheria antitoxic serums”. Lancet 148 (3803): 182–95. doi:10.1016/s0140-6736(01)72399-9. PMC 5050965. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5050965/. 
  18. ^ Shapiro, Roger L. MD; Charles Hatheway, PhD; and David L. Swerdlow, MD Botulism in the United States: A Clinical and Epidemiologic Review Annals of Internal Medicine. 1 August 1998 Volume 129 Issue 3 Pages 221-228
  19. ^ Casadevall, A., and M. D. Scharff. 1995. Return to the past: the case for antibody-based therapies in infectious diseases. Clin. Infect. Dis. 21:150-161
  20. ^ Mupapa, K., M. Massamba, K. Kibadi, K. Kivula, A. Bwaka, M. Kipasa, R. Colebunders, and J. J. Muyembe-Tamfum on behalf of the International Scientific and Technical Committee. 1999. Treatment of Ebola hemorrhagic fever with blood transfusions from convalescent patients. J. Infect. Dis. 179(Suppl.):S18-S23
  21. ^ Samuel Baron MD (1996) Table 8-2. U.S. Licensed Immunoglobulin For Passive Immunization Medical Microbiology Fourth Edition The University of Texas Medical Branch at Galveston
  22. ^ Breastfeeding Overview” (英語えいご). WebMD. 2015ねん11月20にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  • 日本にっぽん獣医じゅうい病理びょうり学会がっかい編集へんしゅう 『動物どうぶつ病理びょうりがく総論そうろん だい2はん』 ぶんえいどう出版しゅっぱん 2001ねん ISBN 4830031832

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]