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アルゴン

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
Argonから転送てんそう
塩素えんそ アルゴン カリウム
Ne

Ar

Kr
外見がいけん
無色むしょく気体きたいこうあつ電場でんじょうかれるとライラック(むらさきしょくひかりはっする。


アルゴンのスペクトルせん
一般いっぱん特性とくせい
名称めいしょう, 記号きごう, 番号ばんごう アルゴン, Ar, 18
分類ぶんるい ガス
ぞく, 周期しゅうき, ブロック 18, 3, p
原子げんしりょう 39.948(1) 
電子でんし配置はいち [Ne] 3s2 3p6
電子でんしから 2, 8, 8(画像がぞう
物理ぶつり特性とくせい
そう 気体きたい
密度みつど (0 °C, 101.325 kPa)
1.784 g/L
融点ゆうてん 83.80 K, −189.35 °C, −308.83 °F
沸点ふってん 87.30 K, −185.85 °C, −302.53 °F
三重みえてん 83.8058 K (−189 °C), 69 kPa
臨界りんかいてん 150.87 K, 4.898 MPa
融解ゆうかいねつ 1.18 kJ/mol
蒸発じょうはつねつ 6.43 kJ/mol
熱容量ねつようりょう (25 °C) 5R/2=20.786 J/(mol·K)
蒸気じょうきあつ
圧力あつりょく (Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度おんど (K)   47 53 61 71 87
原子げんし特性とくせい
酸化さんかすう 0
電気でんき陰性いんせい no data(ポーリングの
イオン化いおんかエネルギー だい1: 1520.6 kJ/mol
だい2: 2665.8 kJ/mol
だい3: 3931 kJ/mol
共有きょうゆう結合けつごう半径はんけい 106±10 pm
ファンデルワールス半径はんけい 188 pm
その
結晶けっしょう構造こうぞう めんこころ立方りっぽう構造こうぞう
磁性じせい はん磁性じせい[1]
ねつ伝導でんどうりつ (300 K) 17.72×10−3 W/(m⋅K)
おとつたわるはや (気体きたい, 27 °C) 323 m/s
CAS登録とうろく番号ばんごう 7440–37–1
おも同位どういたい
詳細しょうさいアルゴンの同位どういたい参照さんしょう
同位どういたい NA 半減はんげん DM DE (MeV) DP
36Ar 0.337 % 中性子ちゅうせいし18安定あんてい
37Ar syn 35 d εいぷしろん 0.813 37Cl
38Ar 0.063 % 中性子ちゅうせいし20安定あんてい
39Ar trace 269 y βべーた 0.565 39K
40Ar 99.600 % 中性子ちゅうせいし22安定あんてい
41Ar syn 109.34 min βべーた 2.49 41K
42Ar syn 32.9 y βべーた 0.600 42K

アルゴンえい: argon)は原子げんし番号ばんごう18ばん元素げんそである。元素げんそ記号きごうAr原子げんしりょうは39.95。だい18ぞく元素げんそガス)、だい3周期しゅうき元素げんそひとつ。

名称めいしょう

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「アルゴン」というギリシャで「怠惰たいだな」「活発かっぱつな」を意味いみする「αあるふぁρろーγがんまοおみくろんνにゅー」という単語たんご由来ゆらいする[2]

はたらく」という意味いみの「εいぷしろんρろーγがんまοおみくろんνにゅー」に「αあるふぁνにゅー」をつけた「αあるふぁνにゅー εいぷしろんρろーγがんまοおみくろんνにゅー」(はたらかない)が語源ごげんとするせつもある。また、ギリシャで「なまもの」という意味いみの「αργος」が語源ごげんとするせつもある。[3][4]

分布ぶんぷ

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アルゴンは、地球ちきゅう大気たいきなか窒素ちっそ酸素さんそいで3番目ばんめおおふくまれている気体きたい水蒸気すいじょうきのぞく)で、その質量しつりょうパーセント濃度のうどは0.93 %である。地球ちきゅうじょうのアルゴンのほとんどは、質量しつりょうすうが40のアルゴン40であり、これは地殻ちかくなかカリウム40崩壊ほうかいにより生成せいせいした。一方いっぽう宇宙うちゅうにおいてはアルゴン36がもっと多量たりょう存在そんざいし、超新星ちょうしんせい爆発ばくはつによる元素げんそ合成ごうせいにより生成せいせいされた。

空気くうきなか地表ちひょう)に 0.93 % ふくまれているので、アルゴンは空気くうきから液体えきたい酸素さんそ液体えきたい窒素ちっそ分離ぶんり精製せいせいするさいに、酸素さんそから分留ぶんりゅうしてることができる。

だい18ぞく元素げんそガス)のなかではもっと空気くうきちゅうでの存在そんざいおおきい。これは自然しぜんさかいすなわち岩石がんせきなか存在そんざいしていたカリウム40の一部いちぶ (11 %) が電子でんし捕獲ほかくによってアルゴン40となったためである。このため地球ちきゅうおよび火星かせいなど岩石がんせき惑星わくせい大気たいきなかではアルゴン40の同位どういたい圧倒的あっとうてきおおきいのにたいし、太陽たいよう大気たいきちゅうではアルゴン36の同位どういたいだい部分ぶぶんめる[5]。 こうしたこともあって地球ちきゅうじょうのアルゴンは原子げんしりょうおもいものがかたよっているため、アルゴン(原子げんし番号ばんごう18)は原子げんし番号ばんごう19のカリウムよりも平均へいきん原子げんしりょうおおきくなっている[6]

ちなみに乾燥かんそう空気くうきちゅう構成こうせい物質ぶっしつだい4二酸化炭素にさんかたんそだが、2008ねん現在げんざいられる資料しりょうでは 0.038 % であり、3とのおおきい。

特徴とくちょう

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とおり、アルゴンは化学かがく反応はんのうをほとんどこさない元素げんそである。さいそとから電子でんしすうが8でありオクテットそくたしているので、アルゴンは安定あんていでほかの元素げんそ結合けつごうしにくい。三重みえてんは83.8058 Kであり、これは1990ねん国際こくさい温度おんど目盛めもり (ITS-90) の定義ていぎ定点ていてん採用さいようされた。[7]

凍結とうけつさせたアルゴン

ガスひとつ。常温じょうおんつねあつ無色むしょく無臭むしゅう気体きたいガスのため活性かっせいである。比重ひじゅうは、1.65(−233 °C: 固体こたい)、1.39(−186 °C: 液体えきたい)、空気くうきたいする比重ひじゅうは、1.38。固体こたいでの安定あんてい構造こうぞうは、めんこころ立方りっぽう構造こうぞう (FCC)。

用途ようと

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産業さんぎょう用途ようととしてはおも反応はんのうせいひくさを利用りようした活性かっせいガスとして製鋼せいこう溶接ようせつシリコン製造せいぞうもちいられる[7]。アルゴンの2004年度ねんど日本にっぽん国内こくない生産せいさんりょう219461000 m3やく40まんトン)、工業こうぎょう消費しょうひりょう38348000 m3である。近年きんねん需要じゅよう対応たいおうして、2005ねん日本工業規格にほんこうぎょうきかく (JIS K 1105) が改正かいせいされ、純度じゅんどたかめられた。

  1. 初生しょせい40Ar/36Ar初生しょせい)が大気たいきアルゴンの(=295.5)にひとしい[8]
  2. 溶岩ようがん噴出ふんしゅつ冷却れいきゃくしてから現在げんざいまで岩石がんせきサンプルの閉鎖へいさけいたもたれ、カリウムおよびアルゴンの出入でいりがない[8]
しかし、実際じっさいには初生しょせい補正ほせい必要ひつようになる[9]

歴史れきし

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1892ねんレイリーきょうジョン・ウィリアム・ストラット)が大気たいき分析ぶんせき過程かてい未知みち気体きたいづき、1894ねんウィリアム・ラムゼーともにその正体しょうたいがアルゴンであることをめた[10]

レイリーきょういたきっかけは、「空気くうきから酸素さんそ二酸化炭素にさんかたんそ水蒸気すいじょうきといった当時とうじ既知きち気体きたいのぞいてつくった窒素ちっそ」と「酸化さんか窒素ちっそなどの窒素ちっそ化合かごうぶつからつくった窒素ちっそ」のおもさがほんのわずかではあるがちがうためで、この問題もんだいについてかれがラムゼーとほぼ同時どうじにたどりいた結論けつろんが「空気くうきからとった窒素ちっそにはごくわずかだがいかなる薬品やくひんとも反応はんのうしない気体きたいがある」というもので、のちにラムゼーはこうした活性かっせい気体きたいがアルゴン以外いがいにもあることにき、ネオンやクリプトンも空気くうきから分離ぶんりしている[11]メンデレーエフ周期しゅうきひょうのどこにもこれらの元素げんそ性質せいしつじょうはいらないので、たてにもうひとれつだい0ぞく元素げんそ)をつくった[6]

しかし、その100ねんまえに、ヘンリー・キャヴェンディッシュ存在そんざいがついていたとわれている[だれによって?]。なお、1904ねんレイリーきょうは「気体きたい密度みつどかんする研究けんきゅう、およびこの研究けんきゅうによりされたアルゴンの発見はっけん」によりノーベル物理ぶつりがくしょうを、ウィリアム・ラムゼーは「空気くうきちゅうガス元素げんそ発見はっけん周期しゅうきりつにおけるその位置いち決定けってい」によりノーベル化学かがくしょうを、それぞれ授与じゅよされた。

化合かごうぶつ

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アルゴンはたん原子げんしオクテットそくたしていることから、原子げんし結合けつごうした化合かごうぶつながあいだられていなかった。2000ねんフィンランド研究けんきゅうしゃによりはつのアルゴン化合かごうぶつアルゴンフッ素ふっそ水素すいそ化物ばけもの (HArF) の合成ごうせい発表はっぴょうされた。これは、アルゴンとフッ水素すいそヨウセシウム混合こんごうして 7.5 K紫外線しがいせん照射しょうしゃすることにより合成ごうせいされた[12]

同位どういたい

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出典しゅってん

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  1. ^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
  2. ^ http://www.rsc.org/chemistryworld/podcast/interactive_periodic_table_transcripts/argon.asp
  3. ^ Hiebert, E. N. (1963). “In Noble-Gas Compounds”. In Hyman, H. H.. Historical Remarks on the Discovery of Argon: The First Noble Gas. University of Chicago Press. pp. 3–20 
  4. ^ Travers, M. W. (1928). The Discovery of the Rare Gases. Edward Arnold & Co.. pp. 1–7 
  5. ^ 小嶋こじまみのる地球ちきゅう物理ぶつり概論がいろん東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱんかい、1990ねん
  6. ^ a b 原色げんしょく現代げんだい科学かがくだい事典じてん9化学かがく』「だい2しょう 物質ぶっしつのなりたちと変化へんか神保じんぼ元二もとじ山田やまだ圭一けいいち責任せきにん編集へんしゅう)、高橋たかはし洋一よういち執筆しっぴつ)、株式会社かぶしきがいしゃ学習がくしゅう研究けんきゅうしゃ、1968ねん、p.21
  7. ^ a b アルゴンAr だいさん
  8. ^ a b c 宇都うと浩三こうぞう, 石塚いしづかおさむ、「K-Ar, 40Ar/39Arほうによるだい三紀みき火山岩かざんがん年代ねんだい測定そくてい現状げんじょう将来しょうらい」 『石油せきゆ技術ぎじゅつ協会きょうかい』 1999ねん 64かん 1ごう p.63-71, doi:10.3720/japt.64.63, 石油せきゆ技術ぎじゅつ協会きょうかい
  9. ^ 松本まつもと哲一てついち, 宇都うと浩三こうぞう, 柴田しばたけん歴史れきし溶岩ようがんのアルゴン同位どういからだわか火山岩かざんがんのK-Ar年代ねんだい測定そくていにおける初生しょせい補正ほせい重要じゅうようせい 『Journal of the Mass Spectrometry Society of Japan.』 1989ねん 37かん 6ごう p.353-363, doi:10.5702/massspec.37.353
  10. ^ 桜井さくらいひろし元素げんそ111のしん知識ちしき講談社こうだんしゃ、1998ねん、109ぺーじISBN 4-06-257192-7 
  11. ^ 原色げんしょく現代げんだい科学かがくだい事典じてん9化学かがく神保じんぼ元二もとじ山田やまだ圭一けいいち責任せきにん編集へんしゅう)、高橋たかはし洋一よういち執筆しっぴつ)、株式会社かぶしきがいしゃ学習がくしゅう研究けんきゅうしゃ、1968ねん、p.20・362
    なお、ラムゼーはヘリウムも発見はっけんしているが、これはウラン鉱石こうせきから分離ぶんりしたもので大気たいき起源きげんではない
  12. ^ Khriachtchev, L.; Pettersson, M.; Runeberg, N.; Lundell, J.; Räsänen, M. Nature, 2000, 406, 874-876. DOI: 10.1038/35022551

外部がいぶリンク

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