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デンプン - Wikipedia

デンプン

天然てんねん高分子こうぶんし化合かごうぶつ
のりから転送てんそう

デンプン澱粉でんぷんラテン語らてんご: amylum英語えいご: starch)とは、化学かがくしき (C6H10O5)n炭水化物たんすいかぶつとうるい)で、多数たすうαあるふぁ-グルコース分子ぶんしグリコシド結合けつごうによって重合じゅうごうした天然てんねん高分子こうぶんし化合かごうぶつである。構成こうせい単位たんいであるグルコースとはことなる性質せいしつしめす。陸上りくじょう植物しょくぶつにおけるグルコース貯蔵ちょぞういち形態けいたいであり、種子しゅし球根きゅうこんなどにおおふくまれている。

デンプン
識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう 9005-25-8 チェック
ChemSpider NA ×
EC番号ばんごう 232-679-6
RTECS番号ばんごう GM5090000
特性とくせい
化学かがくしき 様々さまざま
モル質量しつりょう 様々さまざま
外観がいかん 白色はくしょくこなじょう
密度みつど 1.5 g/cm3
融点ゆうてん

decomp.

みずへの溶解ようかい 不溶ふよう
危険きけんせい
安全あんぜんデータシート(外部がいぶリンク) ICSC 1553
EU Index not listed
発火はっかてん 410 °C
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・つねあつ (100 kPa) におけるものである。
アミロース分子ぶんし構造こうぞう
アミロペクチン分子ぶんし構造こうぞう
ヨウデンプン反応はんのう着色ちゃくしょくされた小麦こむぎデンプン顆粒かりゅう

デンプンは植物しょくぶつ光合成こうごうせいによって体内たいないなど)に貯蔵ちょぞうした炭水化物たんすいかぶつで、工業こうぎょうじょうはそれを精製せいせいした製品せいひんをいう[1]。デンプンの特性とくせい起源きげんとなった植物しょくぶつ種類しゅるいによりかなりことなる[1]代表だいひょうてきなデンプンにカタクリ市場いちば流通りゅうつうするおおくの製品せいひんでは馬鈴薯じゃがいも)を原料げんりょうとする片栗粉かたくりこトウモロコシ原料げんりょうとするコーンスターチなどがある[1]

分子ぶんし構造こうぞう

編集へんしゅう

デンプンはその構造こうぞうによってアミロースアミロペクチンけられる。アミロースはじきくさりじょう分子ぶんしで、分子ぶんしりょう比較的ひかくてきちいさい。アミロペクチンは枝分えだわかれのおお分子ぶんしで、分子ぶんしりょう比較的ひかくてきおおきい。アミロースとアミロペクチンの性質せいしつことなるが、デンプンのなかには両者りょうしゃ共存きょうぞんしている。デンプンのちょくくさり部分ぶぶんは、グルコースαあるふぁ1-4結合けつごうつらなったもので、分岐ぶんきちょくくさり途中とちゅうからグルコースのαあるふぁ1-6結合けつごうによる。アミロースはほとんど分岐ぶんきたないが、アミロペクチンは、平均へいきんでグルコースざんもとやく251個いっこ割合わりあいαあるふぁ1-6結合けつごうによるぶんえだ構造こうぞうをもつ(ちょくくさり部分ぶぶんながさは18〜24ざんもと分岐ぶんきあいだは5〜8ざんもと間隔かんかくがある)。また、アミロースのなかにはαあるふぁ1-6結合けつごうつものも少量しょうりょうあり、中間なかまたいばれている。なお、動物どうぶつにおける貯蔵ちょぞうとうとしてられるグリコーゲンはアミロペクチンよりもはるかに分岐ぶんきおおく、3ざんもといちかい分岐ぶんきちょくくさり部分ぶぶんながさは12〜18ざんもと分岐ぶんきさきがさらに分岐ぶんきし、網目あみめ構造こうぞうをとる)となり、アミロースやアミロペクチンとは区別くべつされる。トウモロコシの種子しゅしなどでもこのグリコーゲンの顆粒かりゅう存在そんざいする。

αあるふぁ-グルコース分子ぶんしちょくくさりじょう重合じゅうごうしている部分ぶぶんは、水素すいそ結合けつごうによりαあるふぁ-グルコースざんもと6やく1きの螺旋らせん構造こうぞうとなっている。また、螺旋らせん構造こうぞう同士どうし相互そうご水素すいそ結合けつごうかいして平行へいこうならび、結晶けっしょう構造こうぞうをとる。分子ぶんしじゅう螺旋らせん状態じょうたいでの結晶けっしょうと、いちじゅう螺旋らせん状態じょうたいでの結晶けっしょうつくりうる。まずじゅう螺旋らせん状態じょうたい結晶けっしょうには、おたがいのグルコースざんもとじょう水酸基すいさんき同士どうし直接ちょくせつ水素すいそ結合けつごう形成けいせいするタイプ(Aがた。コーンスターチなどの穀類こくるい由来ゆらいのものがこのかたち)、あいだ水分すいぶんいちそうをはさむタイプ(Bがたぶ。馬鈴薯じゃがいもなどの根茎こんけい球根きゅうこん由来ゆらいのものがこのかた)と、両者りょうしゃ混合こんごうしたタイプ(Cがた由来ゆらいのもの)がある。またいちじゅう螺旋らせん状態じょうたい結晶けっしょうはVがたばれ、天然てんねんではデンプン顆粒かりゅうふくまれる油脂ゆし成分せいぶんがアミロースのいちじゅう螺旋らせんのなかにつつめせっされた、つつみせっ錯体さくたいとして存在そんざいしている。

デンプンのなま合成ごうせい

編集へんしゅう

デンプンは植物しょくぶつプラスチドなま合成ごうせいされ、とくにデンプン合成ごうせいさかんでデンプンを貯蔵ちょぞうしているプラスチドをアミロプラストとよぶ。細胞さいぼうしつからプラスチドに輸送ゆそうされたグルコース-1-リンさんグルコース-6-リンさんADP-グルコース (ADP-glucose) はプラスチドちゅう最終さいしゅうてきにADP-グルコースとなり、ADP-グルコースのグルコースざんもとはデンプン合成ごうせい酵素こうそ (starch synthase, EC 2.4.1.21, 反応はんのう) によって伸長しんちょうちゅうのアミロースやアミロペクチンの還元かんげんまつはしのグルコースざんもとの4水酸基すいさんき脱水だっすいちぢみあいしてあらたなαあるふぁ-1,4グルコシド結合けつごう形成けいせいしてまれる。プラスチドちゅうのデンプン合成ごうせい酵素こうそはデンプンつぶ結合けつごうがたデンプン合成ごうせい酵素こうそ (GBSS: granule-bound starch synthase) と可溶性かようせいデンプン合成ごうせい酵素こうそ (SSS: soluble starch synthase) に大別たいべつされる。GBSSはアミロースのなま合成ごうせい関与かんよしている。SSSによって合成ごうせい途中とちゅうαあるふぁ-1,4グルコシド結合けつごうのグルコースざんもとちょくくさりが、枝分えだわかれ酵素こうそ (branching enzyme, EC 2.4.1.18, 反応はんのう) によって一部いちぶ切断せつだんされ、その切断せつだんされてしょうじた還元かんげんまつはしのグルコースざんもとの1水酸基すいさんきちょくくさり部分ぶぶん中間ちゅうかんのグルコースざんもとの6水酸基すいさんきあいだαあるふぁ-1,6グルコシド結合けつごうしょうじる。こうしてしょうじた分子ぶんしちゅう存在そんざいする複数ふくすう還元かんげんまつはしはSSSによって伸長しんちょうするとともに枝分えだわかれ酵素こうそによってあらたに還元かんげんまつはしがわくさり次々つぎつぎ形成けいせいされる。余分よぶんαあるふぁ-1,6グルコシド結合けつごう部分ぶぶんえだ酵素こうそによって切断せつだんされがわくさり整理せいりされて、アミロペクチンは合成ごうせいされる。つまり、アミロースとアミロペクチンの含量はGBSSとSSSの活性かっせいによって制御せいぎょされている。よって、GBSSが欠損けっそんしていればアミロペクチンのみをふくモチせいとなり、SSSの活性かっせい低下ていかしているとこうアミロース含量となる。

GBSSの欠損けっそん変異へんいトウモロコシイネにおいてはwaxy (ワキシー) としてられている劣性れっせい変異へんい遺伝子いでんしによる。被子植物ひししょくぶつ胚乳はいにゅうなか細胞さいぼうのゲノムは重複じゅうふく受精じゅせいによって3nとなるため、胚乳はいにゅうちゅうのデンプンがアミロペクチンのみからなるモチせいとなるためには、3nすべてのGBSS遺伝子いでんしwaxy変異へんいたなければならない。そのため、モチせい品種ひんしゅであってもその近傍きんぼうにウルチせい品種ひんしゅ存在そんざいすると他家たけ受粉じゅふん結果けっかキセニア現象げんしょうしょうじてウルチせい胚乳はいにゅう種子しゅしとなる場合ばあいがある。

アミロース含量がたかいほど白米はくまい胚乳はいにゅう透明とうめいたかく、ひくくなるほど透明とうめいひくくなる。そのため、もちまいていアミロースまい白米はくまいうるち白米はくまいくらしろにごっている[1]

物理ぶつりてき性質せいしつ

編集へんしゅう
  • アミロース・アミロペクチンともに、白色はくしょくつぶこなじょう物質ぶっしつで、無味むみ無臭むしゅう
  • アミロースはねつすいけるが、アミロペクチンはけない。
  • 天然てんねん結晶けっしょう状態じょうたいにあるデンプンをβべーたデンプンとび、デンプンちゅうとうくさりあいだ水素すいそ結合けつごう破壊はかいされとうくさり自由じゆうになった状態じょうたいのデンプンをαあるふぁデンプンとぶ(日本にっぽん国内こくないかたで、国際こくさいてき用語ようごではない)。これはつまり、蛋白質たんぱくしつでいう、構造こうぞうにあたるかんがかたで、αあるふぁデンプンとβべーたデンプンではフォールディングことなるということもできる。

デンプンを水中すいちゅうかかにご加熱かねつすると、デンプンつぶ吸水きゅうすいして次第しだい膨張ぼうちょうする。加熱かねつつづけると最終さいしゅうてきにはデンプンつぶ崩壊ほうかいし、ゲルじょう変化へんかする。この現象げんしょうのり(こか)という。このとき、デンプンかかにごえき白濁はくだくした状態じょうたいから次第しだい透明とうめいになり、急激きゅうげきねばたびす。粒子りゅうし最大限さいだいげん吸水きゅうすいしたときねばたび最大さいだいとなり、粒子りゅうし崩壊ほうかいによりねばたび低下ていかする。

デンプンののりは、結晶けっしょう構造こうぞうをとっているデンプン分子ぶんし隙間すきま水分すいぶんはいむことでその構造こうぞうゆるみ、かくえだ水中すいちゅうひろがることによってこる。このときデンプンが溶解ようかいしているようにえるが、前述ぜんじゅつしたようにアミロペクチンは溶解ようかいしているということではない。

のりしたデンプンの溶液ようえき冷却れいきゃくすると、のりえき次第しだい白濁はくだくし、みず遊離ゆうりして不溶ふよう状態じょうたいとなる。これを老化ろうか[2]。デンプンのりえき老化ろうかは、水中すいちゅう分散ぶんさんしたデンプン分子ぶんしふたた結晶けっしょうすることによりこる。ただし、完全かんぜんにもとの状態じょうたいもどるわけではない[2]。これがデンプンを原料げんりょうふくむパンなどの食品しょくひんが、時間じかんつとかたくなる主要しゅよう原因げんいんといえる。

一般いっぱんてきに、アミロペクチン含量のおおいデンプンつぶでは、のり温度おんどひくく、ねばたび(膨潤)、保水ほすいりょくたかく、老化ろうかしにくい性質せいしつがある[2]。これは、ちょくくさりじょうのアミロースよりも、分岐ぶんきおおいアミロペクチンのほうが、デンプン分子ぶんしあいだ水素すいそ結合けつごうがおこりにくいからとかんがえられる。さらに、おなじデンプンであっても、もとげん植物しょくぶつにより、それぞれ老化ろうかこりやすさがことなることがわかっている。たとえば、タピオカクズジャガイモ由来ゆらいのものでは、老化ろうかこりにくさのじゅんは、タピオカ>ジャガイモ>クズとなっている。これは、アミロース、もしくはアミロペクチンとしてたんはなしても、それぞれに老化ろうかこりやすさがことなる。アミロースではタピオカ>ジャガイモ>クズのじゅん老化ろうかこりにくく、アミロペクチンでは、クズ>タピオカ>ジャガイモとなっている。

アミロースでの順位じゅんいは、重量じゅうりょう平均へいきん重合じゅうごうちいさいじゅん一致いっちし、重合じゅうごうすうせん高分子こうぶんしのアミロースでは、重合じゅうごうおおきい分子ぶんしほど老化ろうかせいひくいとかんがえられる。これは、重合じゅうごうたかいと、いち分子ぶんしない水素すいそ結合けつごうつくりやすくなり、デンプン分子ぶんしあいだ水素すいそ結合けつごうによる規則きそくてき結晶けっしょう構造こうぞう、つまりβべーたがたをとりにくいとかんがえられる。さらに、タピオカのアミロース分岐ぶんきがジャガイモのものよりおおいということも影響えいきょうしているとかんがえられる。アミロペクチンについては、ジャガイモのアミロペクチンの平均へいきんくさりちょうがクズとタピオカのものより、2.8 ざんもとながい。このことより、アミロペクチンは単純たんじゅんながいほうが水素すいそ結合けつごうをしやすいので、老化ろうかしやすいとかんがえられる。

老化ろうかふせ方法ほうほうとして、トレハロースマルトースなどの糖類とうるい使用しようされている。これは、デンプン分子ぶんし構造こうぞうている糖類とうるい使つかうことで、インターカレーションをおこし、規則きそくてき結晶けっしょう構造こうぞうをとりにくくして、老化ろうかふせいでいるとかんがえられる。

化学かがくてき性質せいしつ

編集へんしゅう

ヨウデンプン反応はんのう

編集へんしゅう

デンプン水溶液すいようえきヨウもと溶液ようえき(ヨウもとヨウカリウム溶液ようえき)をくわえると、デンプン分子ぶんしラセン構造こうぞうながさによって青色あおいろ赤色あかいろていする鋭敏えいびん化学かがく反応はんのう。この反応はんのうは、ラセン構造こうぞう内部ないぶにヨウ分子ぶんしはいむことに由来ゆらいする。水溶液すいようえき加熱かねつするとラセン構造こうぞうからヨウ分子ぶんしはずれるため、ていしょくえる。

ヨウデンプン反応はんのう食品しょくひん衛生えいせい分野ぶんやでは、デンプンよごれにたいする食器しょっきひとし洗浄せんじょう効果こうか確認かくにん検査けんさもちいられる[3]。また、小学校しょうがっこう中学校ちゅうがっこう生物せいぶつおも植物しょくぶつ)にかんする実験じっけん多用たようされる。

ちょくくさりながさとていしょく関係かんけい
くさりちょう(グルコースざんもと ラセンちょう ていしょく
12 2 無色むしょく
12〜15 2 褐色かっしょく
20〜30 3〜5 あか
35〜40 6〜7 むらさき
45 9 あお

加水かすい分解ぶんかい

編集へんしゅう

デンプン水溶液すいようえきまれ硫酸りゅうさんくわえて加熱かねつすると、デンプンはデキストリンマルトースグルコースまで分解ぶんかいされる。

デンプンの消化しょうか吸収きゅうしゅう

編集へんしゅう

ヒトがデンプンをべるとまず、くち唾液だえきなか消化しょうか酵素こうそアミラーゼ唾液だえきアミラーゼ;プチアリン)により、アミロースとアミロペクチンのαあるふぁ1-4結合けつごう不規則ふきそく切断せつだんされ、デキストリンマルトース麦芽糖ばくがとう)に分解ぶんかいされていく。デンプンをふく食品しょくひんつづけると甘味あまみかんじられるようになるのはこのためである。唾液だえきアミラーゼ作用さようものおくられたのちもしばらくつづくが、強酸きょうさんせい胃液いえきによってアミラーゼは次第しだいしつかつする。

内容ないようぶつ十二指腸じゅうにしちょうおくられると、膵臓すいぞうから分泌ぶんぴつされた膵液によって中和ちゅうわされる。そして膵液にふくまれるアミラーゼ(膵アミラーゼ;アミロプシン)によりデンプンは糖類とうるいであるマルトースにまで分解ぶんかいされる。

マルトースはさらに小腸しょうちょうかべ存在そんざいするαあるふぁ-グルコシダーゼ(ヒトでは小腸しょうちょう上皮じょうひ細胞さいぼうまく酵素こうそとして発現はつげんしている消化しょうか酵素こうそである。まく酵素こうそであるのは、吸収きゅうしゅう直前ちょくぜんたんとう分解ぶんかいすることでちょうない細菌さいきんなどに栄養えいよううばわれにくくするためである)により最終さいしゅうてきグルコースブドウ糖ぶどうとう)に分解ぶんかいされ、小腸しょうちょう吸収きゅうしゅうされる。小腸しょうちょういただきはしまく腎臓じんぞう上皮じょうひ細胞さいぼうとおるグルコースの輸送ゆそうは、てき活性かっせいされるナトリウム-グルコースども輸送ゆそうたいタンパクのSGLT-1およびSGLT-2の存在そんざい依存いぞんする。SGLTはsodium-dependent glucose transporter の略称りゃくしょうである。これらは、ナトリウムイオンども輸送ゆそうたいのつくるNa+の電気でんき化学かがくてき勾配こうばいによって供給きょうきゅうされるエネルギーを利用りようして、グルコースの細胞さいぼうない濃度のうどたかめる[4]

デンプンの製造せいぞう

編集へんしゅう

植物しょくぶつ細胞さいぼううち貯蔵ちょぞうしているデンプンつぶす。基本きほんてきには植物しょくぶつ細胞さいぼう細胞さいぼうかべ破壊はかいしてすが、原料げんりょうとする植物しょくぶつ種類しゅるい用途ようとにより蛋白質たんぱくしつあるいは脂質ししつ除去じょきょ必要ひつようとなることもある。

原料げんりょうとなる植物しょくぶつとしては、ジャガイモ馬鈴薯じゃがいも)、小麦こむぎトウモロコシサツマイモ甘藷さつまいも)、べいキャッサバクズかずら)、カタクリ片栗かたくり)、緑豆りょくとうサゴヤシワラビわらび)、オオウバユリだいうばひゃくごう)など様々さまざまものもちいられている。

利用りようされる植物しょくぶつ部位ぶいは、くき種子しゅしおよび果実かじつがある。およびくきからのデンプンつぶ抽出ちゅうしゅつ比較的ひかくてき容易よういだが、種子しゅし果実かじつとく種子しゅし)からの抽出ちゅうしゅつは、蛋白質たんぱくしつ脂質ししつ分離ぶんり操作そうさ必要ひつようとすることがおおい。

原料げんりょうとなる植物しょくぶつとそのデンプンの性質せいしつ

編集へんしゅう

穀類こくるい

編集へんしゅう

トウモロコシ

編集へんしゅう

トウモロコシ澱粉でんぷん。いわゆるコーンスターチである[1]世界せかい生産せいさんされるデンプンのやく8わりはトウモロコシ澱粉でんぷん(コーンスターチ)である[1]。アミロース含量25%。

原料げんりょうとなる品種ひんしゅは、食用しょくようとして一般いっぱんひろ認知にんちされているスイートコーン(甘味あまみしゅ)や ポップコーン爆裂ばくれつしゅ)などはもちいず、デントコーン(うましゅ)が使つかわれる。イエローしゅデントコーンが大半たいはんめるが、その一部いちぶ特殊とくしゅ用途ようとけにホワイトしゅデントコーンが原料げんりょうとしてもちいられる。

つぶみち2-30µm、平均へいきんつぶみち15µmでちいさめ、非常ひじょうこまかく角張かくばっている。

安価あんかかつ品質ひんしつ安定あんていしており、食品しょくひんようには甘味あまみりょう、プリンの凝固ぎょうこざい、ビールのふく原料げんりょうなどに利用りようされる[1]。また工業こうぎょうようには製紙せいしだんボール製造せいぞうのりりょうとしても使用しようされる[1]

白色はくしょくたかく、吸湿きゅうしつせいすくなく、灰分かいぶんもっとすくない。一方いっぽう蛋白質たんぱくしつ脂質ししつの含量がおおめ。糖化とうか製品せいひん原資げんしとしておおもちいられる。のりねばたび中庸ちゅうようだが安定あんていせいたかく、接着せっちゃくりょくのりえき浸透しんとうせいたかいため、加工かこうデンプン原料げんりょうとしてもちいられる。つぶしゅからされた澱粉でんぷんいろとしては白色はくしょくだが、一部いちぶ用途ようと錠剤じょうざいなどの製薬せいやく用途ようと和菓子わがしとうのとりなどの食品しょくひん用途ようとけにはしろつぶしゅ原料げんりょうとしてさら白色はくしょくたか澱粉でんぷん(ホワイトコーンスターチ)をしてもちいている。

  • ワキシートウモロコシ(もちトウモロコシ) - もちトウモロコシ澱粉でんぷん、ワキシーコーンスターチ。アミロースをほとんどふくまない。アミロペクチンのみで構成こうせいされる。のり温度おんどひくく、透明とうめいゲル形成けいせいする。
  • ハイアミローストウモロコシ - ハイアミローストウモロコシ澱粉でんぷん、ハイアミロースコーンスターチ。アミロース含量60-70%。のり温度おんど非常ひじょうたかい(135℃以上いじょうにしないと完全かんぜんにはのりしない)。

小麦こむぎ澱粉でんぷん。アミロース含量25%。

つぶみち2-40µm、平均へいきんつぶみち15-40µmからなる大粒おおつぶと2-10µmからなる小粒こつぶからなり、粒子りゅうしとつレンズがた

品質ひんしつのばらつきがおおく、おおくの製造せいぞうしょつぶ区分くぶん純度じゅんどしたがって等級とうきゅう指定していしている。だい粒子りゅうし区分くぶん精製せいせいした特級とっきゅうひんのり温度おんどひくく、冷却れいきゃくねばたびたかくなる。のデンプンと比較ひかくしてのりねばたびはややひくいが、冷却れいきゃくねばたびたかくゲル能力のうりょくたかい。のりえきねばたび安定あんていせい良好りょうこうで、老化ろうかしにくく離水りすいすくない。

大粒おおつぶこうねばたび小麦こむぎデンプンは関西かんさい地方ちほうなどで水産すいさん製品せいひん利用りようされている[1]。また、小粒こつぶていねばたび小麦こむぎデンプンは錠剤じょうざいのベースに利用りようされている[1]

一般いっぱんてきにはうわしょうされている。

べい澱粉でんぷん。アミロース含量15-20%。

べいのデンプンはふくつぶであり、アミロプラストのなか複数ふくすうのデンプンつぶ内包ないほうされている。べいつぶ胚乳はいにゅうちゅうのデンプンつぶ隙間すきまなくまっている。とうじゅくさい高温こうおん低温ていおんけると、形成けいせい異常いじょうこり、イレギュラーなかたちのアミロプラストが形成けいせいされる。

平均へいきんつぶみち2-5µmと市販しはんデンプンちゅうもっとちいさい。このため製造せいぞうじょう歩留ぶどまりをげることはむずかしく(60%程度ていど高価こうかになる。

デンプンつぶ形状けいじょうとそのおおきさから、微細びさい凹凸おうとつ付着ふちゃく平滑へいかつめんとする効果こうかおおきい。

化粧けしょうひんやそばやうどんなどの利用りようする[1]

ソラマメ緑豆りょくとう小豆あずきなど。アミロース含量30-35%。

つぶみち25-40µm(そらまめ)。

のり温度おんどがややたかく(80℃)、冷却れいきゃくかたいゲルを形成けいせいする。食品しょくひんではソース、フィリングとして利用りようされる。緑豆春雨りょくとうはるさめ緑豆りょくとうデンプンを原料げんりょうとする春雨はるさめである[1]。また、細胞さいぼうデンプン(細胞さいぼうまくつつまれた状態じょうたいにあるデンプンのこと)は100℃においてものりしないため、あんとしてもちいられる。


馬鈴薯じゃがいも澱粉でんぷん国内産こくないさんのものとしては、北海道ほっかいどう一大いちだい産地さんちとしてひろられる。アミロース含量20-25%。

つぶみち2-80µm、平均へいきんつぶみち30-40µmと、市販しはんデンプンのなか最大さいだいつぶがたとなっている。

いわゆる片栗粉かたくりこ本来ほんらいカタクリ地下茎ちかけいから採取さいしゅしたデンプンであるが、市場いちば流通りゅうつうしている片栗粉かたくりこばれるもののほとんどは馬鈴薯じゃがいも澱粉でんぷんとなっている[1]。デンプンとしてはリンさんの含量がおおい。

加熱かねつのり温度おんどひくく、膨潤りょく溶解ようかいりょくつよい。透明とうめい粘着ねんちゃくりょくつよのりえきられる。のりのりえきねばたび非常ひじょうたかい。ただし、ねばたび安定あんていせいとぼしい。食塩しょくえんひとし塩類えんるいによりのり状態じょうたいおおきく変化へんかする。しお存在そんざいでは、のり抑制よくせいされ、のりえき離水りすいしやすくなる。のりもちいるみず水質すいしつ、あるいは調味ちょうみにより容易よういのり抑制よくせいされるため、あつかいがむずかしいといわれる。

春雨はるさめ原料げんりょう、オブラートやぞうねばざい原料げんりょうのほか、関東かんとう地方ちほうなどでは水産すいさん製品せいひん利用りようされている[1]


甘藷さつまいも澱粉でんぷんいもかずら沖縄おきなわけんでは「ンムクジ」とばれ多用たようされる[5]国内産こくないさんのものとしては、鹿児島かごしまけん一大いちだい産地さんちとしてひろられる。アミロース含量15-20%。

つぶみち2-35µm、平均へいきんつぶみち18-20µm、形状けいじょう釣鐘つりがねがた

加熱かねつのり温度おんどはややたかく、完全かんぜんのりする。

液化えきか酵素こうそαあるふぁ-アミラーゼ)によりきわめてけやすいため、ほとんどが糖化とうか原料げんりょうとなる。ゲル形成けいせい独特どくとくしょくかんつため、食品しょくひんようとして、春雨はるさめかずら自然しぜん乾燥かんそうひんわらびもち原料げんりょうとなる。また、ラムネ菓子かし原料げんりょうとしてももちいられている。

タピオカ(キャッサバ)

編集へんしゅう

タピオカでんぶん。キャッサバ。アミロース含量15%。

つぶみち2-40µmでつぶみち分布ぶんぷひろく、形状けいじょう多角たかくがたまたは半球はんきゅうがた

加熱かねつのり温度おんどひくく(59℃)、加熱かねつにより容易ようい吸水きゅうすい膨潤し、80℃以下いか完全かんぜんのりする。のりえき透明とうめいたかく、ねばたびたかい。ゲルしにくい。このため、食品しょくひんぞうねばざいとしてすぐれている。また、ねばたびたかいために、デンプンのりの原材料げんざいりょうとして使用しようされており、比較的ひかくてき身近みぢか存在そんざいである。

はんのり乾燥かんそう粒状りゅうじょうひんタピオカパールとして流通りゅうつうしている。

野草やそうるい

編集へんしゅう

片栗粉かたくりことは、本来ほんらい自生じせいするカタクリ地下茎ちかけいからるデンプンをいう[1]。ただし、先述せんじゅつのように市場いちば流通りゅうつうする片栗粉かたくりこは、ジャガイモのデンプンである[1]

サゴヤシ原料げんりょうとするデンプンは東南とうなんアジアで食用しょくようとされソースの原料げんりょうにもなっている[1]

デンプンの利用りよう

編集へんしゅう

非常ひじょう多岐たきにわたる。

また、利用りよう形態けいたい様々さまざまものがある。

安全あんぜんせい問題もんだいしょうじたれい

編集へんしゅう

2013ねん台湾たいわんにて無水むすいマレインさんふくむデンプンが流通りゅうつうしていることが発覚はっかく毒性どくせい理由りゆう回収かいしゅうされた。無水むすいマレインさん添加てんかされた目的もくてきしょくかん向上こうじょうであったが、無水むすいマレインさん人体じんたい有害ゆうがいであり、本来ほんらい工業こうぎょう用途ようとかぎられている[8]

出典しゅってん

編集へんしゅう
  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 植物しょくぶつからつくられるでんぷん”. 独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじんのう畜産ちくさんぎょう振興しんこう機構きこう. 2019ねん12月6にち閲覧えつらん
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  6. ^ マーブルプリント
  7. ^ 和風わふうそう本家ほんけ密着みっちゃく日本にっぽん職人しょくにん24京都きょうとなにつくっている職人しょくにんさん?」TVでたくらトップ, 2015ねん1がつ4にち
  8. ^ 違法いほう食品しょくひん添加てんかぶつ事件じけん海外かいがい波及はきゅうしょく安全あんぜんれる台湾たいわん. 産経さんけいニュース (産経新聞さんけいしんぶんしゃ). (2013ねん6がつ8にち). https://web.archive.org/web/20130608104930/http://sankei.jp.msn.com/world/news/130608/chn13060807010001-n1.htm 2013ねん6がつ8にち閲覧えつらん 

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