避妊

避妊ひにん（ひにん、birth control、contraception）とは技術ぎじゅつや方法ほうほう、避妊ひにん具ぐなどの道具どうぐ、避妊ひにん薬やくなどの医薬品いやくひん、手術しゅじゅつなどなんらかの手段しゅだんを用もちい、受精じゅせいもしくは受精卵じゅせいらんの着ちゃく床ゆかを妨さまたげて、起おこりうる妊娠にんしん、望のぞまぬ妊娠にんしんを避さけることの総称そうしょうである。

概説がいせつ

人間にんげんは生殖せいしょく以外いがいに親愛しんあいの情じょうからも性行為せいこういを行おこなうが、倫理りんり的てき・経済けいざい的てき・社会しゃかい的てき理由りゆうから無制限むせいげんな妊娠にんしん・出産しゅっさんは負担ふたんになることが多おおい。また、性器せいきの結合けつごうや射精しゃせい・オーガズムなどの官能かんのう的てき快楽かいらくの欲求よっきゅうを満みたすためだけに性交せいこうを行おこなう場合ばあいが最もっとも多おおく、妊娠にんしんを避さけながら性行為せいこういを行おこなう手段しゅだん「避妊ひにん」が必要ひつようとされる。

避妊ひにんは様々さまざまな方法ほうほうがありそれぞれ程度ていどの差さはあるが、完全かんぜんな避妊ひにん法ほうは存在そんざいしない。卵管らんかん結紮けっさつやパイプカット等ひとしの手術しゅじゅつでも妊娠にんしんの可能かのう性せいはわずかながら残のこる。このため、いくつかの方法ほうほうを併用へいようすることが推奨すいしょうされている。

古ふるくから行おこなわれているが、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん以前いぜんの日本にっぽんにおいては避妊ひにんの知識ちしきは少すくなく確実かくじつ性せいも低ひくかった。ようやく戦後せんごに普及ふきゅうし始はじめ教育きょういく機関きかんでは性教育せいきょういくの一環いっかんとして避妊ひにんを教おしえる所ところもあるが、これには賛否さんぴ両論りょうろんがある。

アフリカなどでは児童じどう就労しゅうろうを目的もくてきとした出産しゅっさんや医療いりょうの進歩しんぽ、戦争せんそうや部族ぶぞく間あいだ抗こう争そうの減少げんしょうの一方いっぽうで避妊ひにん知識ちしきや避妊ひにん具ぐの普及ふきゅうが遅おくれているため、人口じんこうの急激きゅうげきな増加ぞうかの原因げんいんのひとつになっている。望のぞまない出産しゅっさんの増加ぞうかは貧困ひんこんを助長じょちょうし、出産しゅっさん後ごすぐ子供こどもを自みずから死しに追おいやったりするなどの社会しゃかい問題もんだいが起おきている。また、アフリカではもともと貧困ひんこん家庭かていが多おおく避妊ひにん具ぐが高価こうかであり、その普及ふきゅうを遅おくらせている要因よういんの一ひとつになっている。

パールインデックス(PI)

完全かんぜんな避妊ひにん法ほうは存在そんざいしないが、そこで議論ぎろんされるのが避妊ひにんの効果こうかである。パールインデックス(PI)はそれを示しめす一般いっぱん的てきな指標しひょうである。パールインデックスとはある避妊ひにん法ほうを一いち年間ねんかん用もちいた場合ばあいに、避妊ひにんに失敗しっぱいする確かく率りつ（厳密げんみつな定義ていぎではないが、妊娠にんしんする確かく率りつともいえる）を示しめすものである。

例たとえば、ある避妊ひにん法ほうのパールインデックスが3の場合ばあい、その避妊ひにん法ほうのみを1年間ねんかん使つかった女性じょせいのうち3パーセントの人数にんずうが妊娠にんしんするということになる。避妊ひにんをしなかった場合ばあいのパールインデックスは85程度ていどといわれている。これは、避妊ひにんをまったくしなかった（もしくは妊娠にんしんを望のぞんでいる）カップルの女性じょせいが1年ねん後ごに妊娠にんしんしている率りつが85%程度ていどであることを示しめす。

PIの計算けいさん法ほう

PIは「100人にんの女性じょせいが1年間ねんかん避妊ひにん」または「10人にんの女性じょせいが10年間ねんかん避妊ひにん」した場合ばあいの「100女性じょせい年ねん」を用もちいて算出さんしゅつされる。PIはあくまで避妊ひにん方法ほうほうを数値すうち化かし、各々おのおのの避妊ひにん効果こうかを比較ひかくするための数値すうちであり、避妊ひにん効果こうか自体じたいを算出さんしゅつするものではない。

PIの算出さんしゅつには3つの数値すうちが必要ひつようである。

• 何なんヶ月かげつ間あいだ避妊ひにん検証けんしょうが行おこなわれたか、または避妊ひにん中ちゅうの月経げっけい回数かいすう。
• 妊娠にんしん回数かいすう。
• 検証けんしょう完了かんりょう理由りゆう（妊娠にんしんが0、その他たが1。下記かきBを参照さんしょう）。

PIの算出さんしゅつには2つの方法ほうほうがある。

1. 妊娠にんしん回数かいすうを避妊ひにん検証けんしょうの合計ごうけい月がつで割わり、1200で掛かける。
2. 妊娠にんしん回数かいすうを月経げっけい回数かいすうで割わり、1300で掛かける。

※2.で1300で掛かけるのは月経げっけいの平均へいきん的てき期間きかんが28日間にちかん、年間ねんかん13回かいほどだからである。

一般いっぱん的てきに検証けんしょう結果けっかには2つのPIが表示ひょうじされる。

• (A)実じつ使用しよう例れい：すべての妊娠にんしん回数かいすうと検証けんしょう期間きかんが含ふくまれる。
  
• (B)完璧かんぺき使用しよう例れい：検証けんしょう中ちゅう避妊ひにん方法ほうほうを誤あやまり、妊娠にんしんしてしまった例れいは除外じょがいして計算けいさん。
  

PIの信憑しんぴょう性せい

統計とうけい的てきにPIは0～100の間あいだではあるものの、科学かがく的てきに「実験じっけん失敗しっぱい」の確かく率りつを含ふくめるとPIはパーセントで表あらわせない数値すうちであることがわかる。避妊ひにん方法ほうほうの検証けんしょうに参加さんかした女性じょせい達たちが皆みな1か月げつ目めで妊娠にんしんしてしまったら、PIは1200～1300のパーフェクトな数値すうちとなってしまう。これはPIがパーセントで表あらわすPearl Rate（パール率りつ）からそうでないPearl Index（パール指数しすう）と呼よばれるようになった由来ゆらいでもある。

また避妊ひにん実験じっけんを行おこなう被験者ひけんしゃの国柄くにがら、人種じんしゅ、年齢ねんれい、学歴がくれきなどにより避妊ひにん失敗しっぱい率りつは激変げきへんし、PIにも大おおきく影響えいきょうする。もちろん健康けんこう的てきで妊娠にんしんしやすいカップルから妊娠にんしんし、不健康ふけんこうで不ふ妊にん性せいのカップルは避妊ひにんしなくても妊娠にんしんできないこと、避妊ひにん道具どうぐは使用しよう方法ほうほうを練習れんしゅうするほど効果こうかが上あがることなどは数値すうち化かされていない。さらには避妊ひにん方法ほうほうへの不満ふまん、妊娠にんしん願望がんぼう、避妊ひにん方法ほうほうの副作用ふくさよう、後日ごじつ検証けんしょうに現あらわれない被験者ひけんしゃなどはPIに反映はんえいすることができない。

だからといってPIに信憑しんぴょう性せいがなくなるわけではない。科学かがく的てき根拠こんきょにだけ基もとづいた指数しすうであることを踏ふまえた上うえで避妊ひにん検証けんしょう実験じっけんの状況じょうきょうを勘案かんあんして、PIをどれだけ重視じゅうしすべきかを検討けんとうすべきである。

避妊ひにん方法ほうほう

避妊ひにん具ぐの使用しよう

コンドーム

詳細しょうさいは「コンドーム」を参照さんしょう

コンドームはラテックスやポリウレタンの薄膜うすまくをサック状じょうにした避妊ひにん具ぐで、膣ちつに挿入そうにゅうする前まえに勃起ぼっきした状態じょうたいのペニスにかぶせて使用しようする。避妊ひにん具ぐの中なかで最もっとも一般いっぱん的てきに行おこなわれる避妊ひにん法ほうである。確実かくじつな避妊ひにんのためには勃起ぼっき直後ちょくごに装着そうちゃくすることがすすめられる。また、勃起ぼっきしたペニスの大おおきさに適応てきおうしたコンドームを使用しようしないと、行為こうい中ちゅうにコンドームが外はずれる可能かのう性せいがあるために、自身じしん（パートナー）の勃起ぼっきしたペニスの大おおきさを測定そくていして、大おおきさに応おうじたコンドームを使用しようしなければならない。

※（勃起ぼっき時じのペニスの長ながさによる参考さんこうサイズ）Ｓ（～14㎝程度ていど）/Ｍ（14㎝程度ていど～18㎝程度ていど）※標準ひょうじゅん　/L（18㎝程度ていど～22㎝程度ていど）/ＬＬ（22㎝程度ていど以上いじょう）

通常つうじょう、単たんにコンドームと言いうと男性だんせいが装着そうちゃくする避妊ひにん具ぐを指さすが、女性じょせい性器せいきに装着そうちゃくする女性じょせい用ようコンドームも市販しはんされている。

ペッサリー

ペッサリーの装着そうちゃく位置いち

もともとは、子宮しきゅうの位置いちを直なおすための道具どうぐである。現在げんざいでは殆ほとんど使つかわれていない。膣ちつより挿入そうにゅうするゴム状じょうの避妊ひにん具ぐ。子宮しきゅう口こうにかぶせるように指ゆびで挿入そうにゅうし、通常つうじょうはゼリーと併用へいようする。精子せいしが膣ちつ内ないに入はいっても子宮しきゅうに達たっせず避妊ひにんすることができる。

装着そうちゃく状態じょうたいが見みえないため正ただしく装着そうちゃくするのが難むずかしい。装着そうちゃく方法ほうほうについては指導しどうが必要ひつようであり、避妊ひにんの確かく率りつもあまり高たかくなく（PI：6-20程度ていど）最近さいきんではあまり使用しようされない。また、人ひとによって適てきしたサイズ・形状けいじょうなどが異ことなるため、薬局やっきょくなどでは販売はんばいされていない。入手にゅうしゅするためには、産婦人科さんふじんかの診察しんさつを受うける必要ひつようがある。

子宮しきゅう内ない避妊ひにん用具ようぐ(IUD)

銅どう付加ふかIUD「パラガード」T 380A

詳細しょうさいは「子宮しきゅう内ない避妊ひにん器具きぐ」を参照さんしょう

子宮しきゅう内ない避妊ひにん用具ようぐにはリング状じょう・ループ状じょう・コイル状じょうなど様々さまざまな形かたちがある。これを病院びょういんにおいて子宮しきゅう内うちに挿入そうにゅうしておくと体からだ機能きのうとしての異物いぶつ排除はいじょ機能きのうが働はたらき、受精卵じゅせいらんの着ちゃく床ゆかを妨さまたげることで妊娠にんしんを防ふせぐ。避妊ひにんの確かく率りつはあまり高たかくなかったが近年きんねんの改良かいりょうにより避妊ひにんの確かく率りつは高たかくなっている。日本にっぽんでは単純たんじゅんタイプに加くわえ、銅どう付加ふかタイプ（PI：0.6-0.8程度ていど）が認みとめられている。Intra-uterine（Contraceptive）Deviceの頭文字かしらもじをとってIUD（あるいはIUCD）とも呼よばれる。日本にっぽんではリング状じょうのものが早はやくから普及ふきゅうしたため「避妊ひにんリング」と呼よばれることも多おおい。

ただし、月経げっけいの出血しゅっけつ量りょう増加ぞうかや期間きかん延長えんちょう、下腹かふく痛つう、不正ふせい性器せいき出血しゅっけつが起おきる場合ばあいがあるほか、月経げっけい中ちゅう自然しぜんにIUDが体外たいがいに出でてしまうこと（自然しぜん脱出だっしゅつ）もまれに起おこる。また普通ふつうの妊娠にんしんは防ふせげても、子宮しきゅう外がい妊娠にんしんは防ふせげない。定期ていき検診けんしんと数すう年ねんに一いち度どの取替とりかえが必要ひつようだとされている。

ミレーナ

詳細しょうさいは「ミレーナ (子宮しきゅう内ない避妊ひにんシステム)」を参照さんしょう

挿入そうにゅう方法ほうほう、形状けいじょうはIUDと同おなじだが、中央ちゅうおうの部分ぶぶんから黄体おうたいホルモン（女性じょせいホルモンの一種いっしゅ）が持続じぞく的てきに子宮しきゅう内ないに放出ほうしゅつされるのが特徴とくちょうであることから、「レボノルゲストレル放出ほうしゅつ子宮しきゅう内ない避妊ひにんシステム」と呼よばれることとなった。黄体おうたいホルモンは子宮しきゅう頸管（子宮しきゅうの入いり口くち）の粘膜ねんまくを変化へんかさせ精子せいしの侵入しんにゅうを防ふせぎ、また子宮しきゅう内ない膜まくの増殖ぞうしょくを抑制よくせいし、受精卵じゅせいらんの着き床ゆかを防ふせぐ作用さようがある。ピルの長所ちょうしょ・月経げっけい困難こんなん症しょう（生理せいりに伴ともなう重おもい症状しょうじょう）の緩和かんわとIUDの長所ちょうしょ・2～5年間ねんかんの装着そうちゃく可能かのう（最大さいだい5年ねん）を兼かね備そなえている。

ただし、使つかい続つづけていると無む月経げっけいになる可能かのう性せいもあるが除去じょきょすれば直すぐに月経げっけいが戻もどり、妊娠にんしん可能かのうとなる。副作用ふくさようもほとんどない。使つかい始はじめてから数すうヶ月かげつの間あいだは子宮しきゅう内ない膜まくへの刺激しげきなどで月経げっけい時じ以外いがいにも少量しょうりょうの出血しゅっけつが続つづく場合ばあいもあり、出産しゅっさん経験けいけんの無ない人ひとは子宮しきゅう口こうが開ひらいていないため挿入そうにゅう時じに痛いたむこともある。

過多かた月経げっけいの女性じょせいには推奨すいしょうできないIUDと異ことなり、ミレーナでは月経げっけい時どきの出血しゅっけつ量りょうが軽減けいげんされる。出産しゅっさん経験けいけんがあり、これ以上いじょう妊娠にんしんを希望きぼうしない女性じょせい、次つぎの出産しゅっさんまで期間きかんをあけたい女性じょせい、長期ちょうきにわたり避妊ひにんを望のぞむ女性じょせいに非常ひじょうに適てきした避妊ひにん法ほうである。

ミレーナは1990年ねんフィンランドにおいて世界せかいで初はじめて承認しょうにん・発売はつばいされて以来いらい、現在げんざいでは112ヵ国かこくで使用しようされている。日本にっぽんでは2007年ねんより「ミレーナ52mg」が使用しようされている。

薬品やくひんの使用しよう

ピル（避妊ひにん用ようピル）

避妊ひにん用よう女性じょせいホルモン剤ざいのこと。経口けいこう避妊ひにん薬やく（OC）とも呼よばれる。これを女性じょせいが服用ふくようすることにより人工じんこう的てきに排卵はいらん終了しゅうりょう後ごの黄体おうたい期きと同様どうような内分泌ないぶんぴつ状態じょうたいを持続じぞくさせることで排卵はいらんを停止ていしさせる。正まさしく服用ふくようした場合ばあいの避妊ひにんの確かく率りつは非常ひじょうに高たかい（PI：0.1-5程度ていど）。

避妊ひにん以外いがいにも生理せいり時期じきの調整ちょうせいや月経げっけい困難こんなん症しょう（生理せいりに伴ともなう重おもい症状しょうじょう）の緩和かんわ、子宮しきゅう内ない膜まく症しょうの治療ちりょうなどに使つかわれるが、人ひとにより血栓けっせん症しょう、肥満ひまんなどの副作用ふくさようが出でる場合ばあいもあるので注意ちゅういを要ようする。かつては中ちゅう用量ようりょうピルが用もちいられていたが、副作用ふくさようのリスクの低減ていげんを目的もくてきとして低てい用量ようりょうピル、超ちょう低てい用量ようりょうピルなどが開発かいはつされ、海外かいがいでは主流しゅりゅうとなっている。

日本にっぽんでは治療ちりょう目的もくてきの中なか用量ようりょうピルが認可にんかされており1998年ねんに避妊ひにん目的もくてきの低てい用量ようりょうピルが認可にんかされた。2010年ねんに超ちょう低てい用量ようりょうピルが月経げっけい困難こんなん症しょうの治療ちりょう薬やくとして認可にんかされたが、避妊ひにん用ようとしては低てい用量ようりょうピルが主流しゅりゅうになっている。副作用ふくさようがありうるので医師いしの指導しどうのもとに服用ふくようすることが望のぞましい。→詳くわしくはピルを参照さんしょう。

モーニングアフターピル

「受精卵じゅせいらんの着ちゃく床ゆかを妨さまたげる」ために性交せいこう後ごに服用ふくようするピルのこと。「事後じごピル」または「緊急きんきゅう避妊ひにん薬やく」とも呼よばれる経口けいこうのホルモン剤ざいで性交せいこう後ご72時間じかん以内いないに1回かい目め（低てい用量ようりょうピルで2～4錠じょう）を服用ふくようし、その12時じ間あいだ後ごにもう一度いちど（やはり2～4錠じょう）服用ふくようする（ヤッペ法ほう）。吐はき気けや嘔吐おうとの副作用ふくさようを伴ともなうため制せい吐剤とざいをあわせて飲のむことが望のぞましい。

緊急きんきゅう避妊ひにん

医療いりょう機関きかんによっては緊急きんきゅう避妊ひにんとしてモーニングアフターピルが処方しょほうされる。IUD・ミレーナの挿入そうにゅうという方法ほうほうが採とられることもある。

アメリカ、フランスなどでは強姦ごうかん被害ひがい者しゃなどに緊急きんきゅう避難ひなん的てきにモーニングアフターピルが処方しょほうされてきた。できるだけ早はやいほうが高たかい避妊ひにん効果こうかが期待きたいできるが実際じっさいには 100～120時じ間あいだくらいまで効果こうかが得えられるという調査ちょうさ結果けっかがある。ただし中ちゅう用量ようりょうピルあるいは低てい用量ようりょうピルを通常つうじょう服用ふくよう量りょうの数すう倍量ばいりょう飲のむことにも相当そうとうし、吐はき気けなどの副作用ふくさようが強つよく出でる可能かのう性せいがある[1][2][3]。

ピルを服用ふくようする緊急きんきゅう避妊ひにんにより受精卵じゅせいらんの着ちゃく床ゆかを阻止そしすることは命いのち（受精卵じゅせいらん）を強制きょうせい的てきに殺ころすこと、つまり中絶ちゅうぜつであり、この薬くすりは『人工じんこう妊娠にんしん中絶ちゅうぜつ薬くすり』（子こおろし薬やく）であるとして使用しようを非難ひなんする人々ひとびともいる。

殺ころせ精子せいし剤ざい

その名なの通とおり、精子せいしを殺ころす作用さようのある薬剤やくざいを性交せいこうの一定いってい時間じかん前まえに膣ちつ内うちに挿入そうにゅうし、避妊ひにんを行おこなう。薬剤やくざいは時間じかんが経たつと溶とけ精子せいしが侵入しんにゅうしても死滅しめつしてしまう。効果こうかのある時間じかんは決きまっているので、射精しゃせいのタイミングにより失敗しっぱいすることがある。
自然しぜんに性交せいこうのできる方法ほうほうであるが、避妊ひにんの確かく率りつはあまり高たかくない（PI：6-26程度ていど）。そのため、他たの避妊ひにん方法ほうほうとの併用へいようが好このましい。

以下いかの3種類しゅるいのタイプが存在そんざいするが2006年ねん現在げんざい、薬局やっきょくでの取とり扱あつかいはかなり限かぎられている。

• 錠剤じょうざい
  • ネオサンプーン ループ錠じょう：発売はつばい/エーザイ

ネオサンプーンの成分せいぶんはメンフェゴールである。

• ゼリー
  • FPゼリー：発売はつばい/日本にっぽん家族かぞく計画けいかく協会きょうかい（製造せいぞう/第だい一いち薬品やくひん産業さんぎょう株式会社かぶしきがいしゃ）

FPゼリーの成分せいぶんはポリオキシエチレンノニルフェニールエーテルであるが、すでに発売はつばい中止ちゅうしされている。

• フィルム
  • マイルーラ（2001年ねん3月がつ以降いこう、製造せいぞう中止ちゅうし）が有名ゆうめい
    

薄うすいオブラート状じょうフィルムを折おりたたんで、膣ちつ内うちの子宮しきゅう近ちかくに挿入そうにゅうする。

マイルーラの成分せいぶんもFPゼリーと同おなじく、ポリオキシエチレンノニルフェニールエーテルである。

• その他た

坐薬ざやく形状けいじょうのもの（指ゆびで腟ちつ内ないに挿入そうにゅうする）や、アプリケーターでゼリーないしフォーム状じょうの殺ころせ精子せいし剤ざいを注入ちゅうにゅうするもの、殺ころせ精子せいし剤ざいをしみこませたスポンジを腟ちつ内ないに挿入そうにゅうするものなど、海外かいがいでは様々さまざまな製品せいひんが販売はんばいされている。ただし、皮膚ひふ刺激しげきの強つよいものもあり、人ひとによってはかぶれる場合ばあいがあるので、注意ちゅういして使用しようする必要ひつようがある。

生理せいり的てき変化へんかを利用りようした避妊ひにん

オギノ式しき

女性じょせいの月経げっけいの周期しゅうきに基もとづいて妊娠にんしん可能かのうな期間きかんを計算けいさん・予測よそくし、その期間きかんは性行為せいこういは避妊ひにんをするが、その期間きかん以外いがいは避妊ひにんをおこなわず、膣ちつ内ないに射精しゃせいしても妊娠にんしんしないとされる。周期しゅうき法ほうとも呼よぶ。簡便かんべんな方法ほうほうであるが、排卵はいらんの乱みだれなどで予測よそくを失敗しっぱいして妊娠にんしんしてしまう可能かのう性せいもある（PI：9程度ていど）。不ふ妊にん治療ちりょうのため日本人にっぽんじん産婦人科さんふじんか医い・荻野おぎの久作きゅうさくが発見はっけんした月経げっけい周期しゅうきに関かんする「荻野おぎの学説がくせつ」が避妊ひにん法ほうに流用りゅうようされたものである。
なお、荻野おぎの久作きゅうさく本人ほんにんは自分じぶんの学説がくせつが避妊ひにん法ほうとして利用りようされることについてはより確実かくじつな避妊ひにん法ほうが存在そんざいするゆえ、中絶ちゅうぜつの増加ぞうかにつながるとして大おおいに反対はんたいしていた。「女おんなの身体しんたいには1日にちたりとも『安全あんぜん日び』などありはしない」「迷惑めいわくだ。むしろ不ふ妊にん治療ちりょうに役立やくだつ学説がくせつだ」と主張しゅちょうしつづけたと言いう。現在げんざい、ローマカトリック教会きょうかいの教学きょうがく上じょう、（妊娠にんしんしやすい期間きかんの逆用ぎゃくようという理由りゆうで）唯一ゆいいつ認みとめられている避妊ひにん法ほうでもある。

基礎きそ体温たいおん法ほう

女性じょせいの月経げっけいの周期しゅうきのうち、基礎きそ体温たいおんを計測けいそくして低温ていおん相しょうから高温こうおん相しょうに変かわった日ひ（排卵はいらん日び）を知しり、それから4日にち目め以降いこうに性行為せいこういを行おこなう方法ほうほう（PI：3程度ていど）。毎日まいにち規則正きそくただしい生活せいかつを続つづけ、かつ定時ていじに基礎きそ体温たいおんを測はかりつづける必要ひつようがある。

その他たの方法ほうほう

この他ほか、子宮しきゅう頚けい管かん粘液ねんえきの状態じょうたいで排卵はいらん日びを確認かくにんする頚けい管かん粘液ねんえき法ほうもある（PI：2程度ていどとしているが、詳くわしく検証けんしょうされているかなど不明ふめいである）。

外科げか的てき手法しゅほう

不ふ妊にん手術しゅじゅつ

詳細しょうさいは「不ふ妊にん手術しゅじゅつ#医学いがく領域りょういき」を参照さんしょう

不ふ妊にん手術しゅじゅつ（sterilization）とは卵管らんかん、または精せい管かんを外科げか手術しゅじゅつによって縛しばり（結紮けっさつ）、卵子らんしや精子せいしの通過つうかを止とめることによって避妊ひにんする方法ほうほうである。一度いちどこの手術しゅじゅつを行おこなってしまうと自然しぜん妊娠にんしんのためには再度さいど手術しゅじゅつを行おこなわねばならず、この手術しゅじゅつには十分じゅうぶんな注意ちゅういが必要ひつようである。

子こどもをつくることを望のぞまない夫婦ふうふや、妊娠にんしんすることで女性じょせいの母体ぼたいや胎児たいじに対たいして深刻しんこくな問題もんだいが起おきる可能かのう性せいがある場合ばあいなどに用もちいられる。

膣ちつ外がい射精しゃせい

性交せいこう時ときに射精しゃせいの寸前すんぜんに陰茎いんけいを膣ちつから抜ぬいて膣ちつ外がいに射精しゃせいを行おこなうこと。アダルトビデオなどで頻繁ひんぱんに描写びょうしゃされるため、避妊ひにん法ほうとして認識にんしきされている場合ばあいも少すくなくないが、抜ぬき取とることに必かならず成功せいこうするとは限かぎらない上じょう、精子せいしは射精しゃせい時じの精液せいえきだけでなく、前ぜん段階だんかいで分泌ぶんぴつされるカウパー腺せん液えき中ちゅうにも僅わずかに存在そんざいする場合ばあいがあるため確かく率りつの高たかい避妊ひにん法ほうとは言いえず通常つうじょうは避妊ひにん法ほうとしてカウントされない（PIは4-19程度ていど）。

洗浄せんじょう

性交せいこう後ご、ビデを使用しようして洗あらい流ながす。ただし、精子せいしが子宮しきゅうに入はいるまでに洗浄せんじょうしなければ避妊ひにん効果こうかがない。

洗浄せんじょうすることが難むずかしいうえ、うまく洗浄せんじょうできたとしても極きわめて確かく率りつの低ひくい避妊ひにん法ほうであるため、通常つうじょうは避妊ひにん法ほうとしてカウントされない。

性行為せいこういの制限せいげん

• オーラルセックス

  男性だんせい器きを女性じょせい器きへ挿入そうにゅうすることなく、女性じょせいが手てや口くちを使つかい射精しゃせいさせる性行為せいこうい。

• 肛門こうもん性交せいこう

  男性だんせい器きを膣ちつの代かわりに肛門こうもんへ挿入そうにゅうし射精しゃせいする性行為せいこうい。膣ちつへ挿入そうにゅうしていないので通常つうじょう妊娠にんしんすることはないが、膣ちつと肛門こうもんが近ちかいため肛門こうもんへの精液せいえきが膣ちつに流ながれ出でることによる妊娠にんしんがありうる（その他たの問題もんだいについては「アナルセックス」の項こうを参照さんしょう）。

江戸えど時代じだいの避妊ひにん

日本にっぽんの江戸えど時代じだいの遊郭ゆうかくの女郎じょろうの避妊ひにん方法ほうほうとしては、膣ちつに和紙わしを詰つめるなどの方法ほうほうで、精液せいえきの注入ちゅうにゅうを妨さまたげて受精じゅせいを防ふせぐという、ペッサリー/リングに共通きょうつうするような方法ほうほうを取とっていたが、失敗しっぱい率りつは高たかく闇やみで中絶ちゅうぜつや出産しゅっさんしてすぐ遺棄いきされるなどの例れいは多おおかったという。

避妊ひにん論争ろんそう

避妊ひにんを強つよく非難ひなんする意見いけんや逆ぎゃくに積極せっきょく的てきに広ひろめようとする意見いけんがあり、論争ろんそうが続つづいている。

避妊ひにんとは言いうなれば生殖せいしょくという生物せいぶつ学がく的てきな由来ゆらいを捨すて去さり、完全かんぜんに個人こじんの快楽かいらくのための性行為せいこういを可能かのうにする手段しゅだんであると言いえる。性せいを建前たてまえ上じょう罪悪ざいあく視しする人々ひとびとにとってはこれは「性行為せいこういを認みとめるべき唯一ゆいいつの理由りゆう(生殖せいしょく)」が欠かけたということであり、彼かれらは避妊ひにんを伴ともなう性行為せいこういを否定ひていしている。

教義きょうぎ上じょう「産うみ繁殖はんしょくすること」が奨励しょうれいされる宗教しゅうきょうも存在そんざいし、それらの信者しんじゃにとっては信仰しんこう上じょうは避妊ひにんは忌いみ嫌きらうものである。古来こらいからカトリック教会きょうかいでは夫婦ふうふ愛あいの姿すがたとして性せいを捉とらえており、避妊ひにんは大罪だいざいである。

一方いっぽうで避妊ひにんとは女性じょせいのみに妊娠にんしんという母体ぼたいに負担ふたんを掛かけることから解放かいほうして自由じゆう度どを高たかめ、男女だんじょが平等びょうどうに性せいを謳歌おうかすることを可能かのうとする手段しゅだんとも言いえ、性的せいてき快楽かいらくを是ぜとしてあまり罪悪ざいあく視ししない人々ひとびとの間あいだには賛成さんせいする声こえも多おおい。

虚構きょこう上じょうの避妊ひにん描写びょうしゃ

ほとんどすべての小説しょうせつ、映画えいが、ビデオその他たの中なかの避妊ひにんの措置そちが当然とうぜんなされるであろうと思おもわれるいわゆる和姦わかん描写びょうしゃにおいて、その描写びょうしゃはリアリズムが標榜ひょうぼうされる場合ばあいにおいてさえ、意図いと的てきに回避かいひされる。このことを問題もんだい視しする作家さっかに姫野ひめのカオルコなどがいる。

関連かんれん項目こうもく

• 性せい科学かがく（親おや分野ぶんや）
• セーファーセックス
• 中絶ちゅうぜつ禁止きんし法ほうに反対はんたいしピル解禁かいきんを要求ようきゅうする女性じょせい解放かいほう連合れんごう（中ちゅうピ連れん）
• 産児さんじ制限せいげん
• 人工じんこう妊娠にんしん中絶ちゅうぜつ
• 少子化しょうしか
• 経口けいこう避妊ひにん薬やく
• 日本にっぽん家族かぞく計画けいかく協会きょうかい
• 怪傑かいけつ黒くろ頭巾ずきん (つボイノリオの曲きょく)

外部がいぶリンク

• 男性だんせい用ようコンドーム・女性じょせい用ようコンドーム（性せいの健康けんこう医学いがく財団ざいだん）
• 避妊ひにん法ほう（Woman's MediNavi）
• 経口けいこう避妊ひにん薬やくピルについて 日本にっぽんカトリック医師いし会かい会誌かいし（第だい37号ごう）より転載てんさい
• 避妊ひにん法ほう（リプロヘルス情報じょうほうセンター）
• 緊急きんきゅう避妊ひにんを処方しょほうする医療いりょう機関きかんの紹介しょうかいホットライン（日本にっぽん家族かぞく計画けいかく協会きょうかい（JFPA））
• 自分じぶんで選えらぶOC（日本にっぽんオルガノン株式会社かぶしきがいしゃ）
• ピル（経口けいこう避妊ひにん薬やく）に関かんするQ&A 日本にっぽん家族かぞく計画けいかく協会きょうかい（JFPA）
• Perimon - Software for Natural Birth Control（英語えいご）
• the Emergency Contraception Website（英語えいご）（Office of Population Research at Princeton University and by the Association of Reproductive Health Professionals）