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ジャワ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ジャワ
Basa Jawa
꧁ꦧꦱꦗꦮ꧂
はなされるくに インドネシアの旗 インドネシア
マレーシアの旗 マレーシア
スリナムの旗 スリナム
ニューカレドニア
地域ちいき 東南とうなんアジア
話者わしゃすう やく7500まんにん
言語げんご系統けいとう
表記ひょうき体系たいけい ラテン文字もじ
ジャワ文字もじ
言語げんごコード
ISO 639-1 jv
ISO 639-2 jav
ISO 639-3 各種かくしゅ:
jav — ジャワ
jvn — カリブ・ジャワ
jas — ニューカレドニア・ジャワ
osi — ウシン
tes — トゥングル
kaw — カヴィ
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ジャワ話者わしゃ分布ぶんぷ濃緑こみどり主流しゅりゅうみどり少数しょうすう

ジャワ(ジャワご、Basa Jawa、ꦧꦱꦗꦮ、あま: Bahasa Jawaえい: Javanese) は、オーストロネシア語族ごぞくスンダ・スラウェシぐん英語えいごばんぞくしている。ジャワ英語えいごばん継承けいしょうし、この語族ごぞくなか最長さいちょう文化ぶんかてき伝統でんとう最多さいた使用しようしゃ[1]

ジャワは、インドネシアジャワ島じゃわとう中央ちゅうおうからひがしはなされている言語げんごであり、その本拠地ほんきょちジャワ島じゃわとう東部とうぶおよび中部ちゅうぶである。これにたい西部せいぶ西にしジャワしゅうではしゅとしてスンダもちいられているが、バンテンしゅう(Banten)の北方ほっぽう海岸かいがん地帯ちたいではふたたびジャワもちいられている。また19世紀せいき以降いこうおこなわれた移民いみん政策せいさくによって、ジャワ島じゃわとう以外いがいにも、スマトラ島すまとらとうランプンしゅう(Lampung)、マレーシアニューカレドニア南米なんべいスリナム共和きょうわこくなどにジャワけんがある[1]

インドネシア共和きょうわこくぜん人口じんこうやく2.55おくにん(2015ねん時点じてん)のうち[2]やく1.37おくにんジャワ島じゃわとうんでおり[3]、そのうちやく7500まんにんもの人々ひとびと日常にちじょう生活せいかつでジャワ使用しようしている[4]。ジャワ話者わしゃ公的こうてき場面ばめん意思いし疎通そつうおこな場合ばあい、またはことなる種族しゅぞく言語げんごはなもの同士どうし意思いし疎通そつうおこな場合ばあいおおくの場合ばあい公用こうようであるインドネシアもちいられている[5]

概要がいよう

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本来ほんらいジャワジャワ文字もじしるされるものであったが、20世紀せいき後半こうはんからラテン文字もじえた。ジャワは、オーストロネシア語族ごぞくマレー・ポリネシアスンダ・スラウェシぐん英語えいごばん西にしマレー・ポリネシアぐん)のスンダぐんぞくする[よう出典しゅってん]言語げんごがくてきて、マレースンダマドゥラバリふか関係かんけいがある。また、スマトラ島すまとらとうボルネオとう諸語しょごマダガスカルといくらかの関係かんけいがある。

ジャワ中央ちゅうおうジャワからひがしジャワにかけてはなされている。また、西にしジャワのきた海岸かいがんでもおなじようにもちいられている。マドゥラとうバリ島ばりとうロンボクとう、および西にしジャワのスンダ地域ちいきにおいて、文語ぶんごとしてもちいられる。パレンバンみなみスマトラでの宮廷きゅうていでは、18世紀せいきわりにオランダによって侵略しんりゃくされるまで宮廷きゅうていであった。

ジャワ現在げんざい、どこのくに公用こうようでもないが、ジャワ母語ぼごとしてもちいるひとかずは、オーストロネシア語族ごぞくなかで、断然だんぜんいちである。およそはちせんまんにんがこの言葉ことばはなすかまたは理解りかいする。すくなくともインドネシアのそう人口じんこうの 45% は、ジャワ家系かけいであるか、ジャワ支配しはいてき言語げんごである地域ちいきんでいる。1945ねん以降いこうインドネシアの大統領だいとうりょうにんよんにんまでがジャワ家系かけいである。したがって、インドネシアの国語こくごでありマレーあたらしい方言ほうげんであるインドネシア発展はってんに、ジャワおおきな影響えいきょうあたえていることは、おどろくべきことではない。

ジャワは、世界せかいでも伝統でんとうのある言語げんごのひとつとることができる。12世紀せいき以上いじょうにわたって、おおくの文学ぶんがく作品さくひんかれている。学者がくしゃは、ジャワ発達はったつよっつの段階だんかいけている。

  • ジャワ - 9世紀せいき以降いこう
  • 中期ちゅうきジャワ - 13世紀せいき以降いこう
  • しんジャワ - 16世紀せいき以降いこう
  • 現代げんだいジャワ - 20世紀せいき以降いこう(この段階だんかいはあまり一般いっぱんてきでない)

敬語けいご

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ジャワは、日本語にほんご同様どうよう敬語けいご発達はったつしていることでもられる。その特徴とくちょうとしてげられるのが、普通ふつうたい丁寧ていねいたい区別くべつである。ジャワ日常にちじょうは「Ngokoたい」と名付なづけられるが、これは二人称ににんしょう代名詞だいめいしkoのじゅう語形ごけいkokoからの派生はせいである。「Ngokoたい」はごくしたしい友人ゆうじんあいだ目下めしたものたいして、またジャワじんひとごとをいう場合ばあいとうもちいられる。一方いっぽう丁寧ていねいたいである「Kramaたい」は、あらたまった会話かいわ目上めうえものたいして、貴人きじん同士どうしときとしてはつまおっとたいしてもちいる言葉ことばである[6]。すべての「Ngokoたい」に対応たいおうする「Kramaたい」が存在そんざいするのではなく、だい多数たすうかたりは「Ngokoたい」と「Kramaたい」に共通きょうつうして使つかわれる「Ngoko・Krama共通きょうつう」である[7]

そのに「Krama Inggil」とばれる単語たんごグループがあるが、これは日本語にほんご尊敬そんけい謙譲けんじょうたる。単語たんごとしてのみ存在そんざいし、「Ngokoたい」と「Kramaたい」のなかぜてもちいられる[7]

方言ほうげん

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ジャワはいくつかの方言ほうげんにわかれており、なかでもa母音ぼいん西部せいぶジャワとā母音ぼいん東部とうぶジャワ方言ほうげんだいぐんおもなものである[6]西部せいぶジャワはスンダ影響えいきょうけており、東部とうぶジャワ中央ちゅうおうジャワのジョクジャカルタやソロのジャワあいだにも一定いっていちがいがみられる[5]宮廷きゅうていのある中部ちゅうぶジャワのソロ(Solo, スラカルタ Surakarta)、ジョクジャカルタの方言ほうげんもっと純正じゅんせいなものとみとめられており[6]しんジャワ文学ぶんがくだい部分ぶぶんはSoloでかれている[1]

  • Tembung (jav-tem)
  • Jawa Halus (jav-jaw)
  • Pasisir (jav-pas)
  • Manuk (jav-man)
  • Indramayu (jav-ind)

音韻おんいんてき特徴とくちょう発音はつおん

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ジャワ音素おんそは、7母音ぼいん/a, ə, e, ɛ, i, o, u/と、20子音しいん/p, t, ʈ, c, k, b, d, ɖ, ʝ, g, m, n, ny, ng, y, w, r, l, s, h/から[1]母音ぼいん子音しいん音韻おんいん体系たいけいとその特徴とくちょう以下いかとおりである[8][9][10]

母音ぼいん

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ぜんした ちゅうした こうした
せま [i] [u]
はんせま [e] [ə] [o]
はんひろ [(ɛ)] [(ɔ)]
ひろ [a]

正書法せいしょほうでは、/a/はa、/ə,e,ɛ/はe, è, é とかれる。/a/は[a]のほか[ɔ]をもつが、これは標準ひょうじゅん特色とくしょくである。ただし、正書法せいしょほうでは[a]と区別くべつされない。

a: ジャワでは語尾ごびひらき音節おんせつの a はつねに åと発音はつおんされ、ひと手前てまえ音節おんせつも a でわっているときはその影響えいきょうけて å の発音はつおんとなる[1]。å は英語えいごの water のa[ɔ]にひとしい。たとえば、apa「なに」は「オポ」、tampa「る」は「トンポ」となる。ただしこの例外れいがいとして、以下いかのものがげられる。 ora(オラ)(否定ひてい)、arta(アルト)「おかね」、tanpa(タンポ)「〜なしで」とう。a はひらけ音節おんせつではなが発音はつおんされ、閉音ぶしではみじかいが音節おんせつ境界きょうかい鼻音びおんがある場合ばあいちょうする。

e: くちかたち大体だいたい日本語にほんごの「イ」ないしは「エ」にして「ウ」と発音はつおんするとおとられる。 れい:baras(ブラス)「べい」、kena(クノ)「〜してもいい」、endi(ウンディ)「どこ」

è: 日本語にほんごの「エ」よりもすここうよこひらいて発音はつおんする。れい:tèken(テクン)「サインする」、yèn(イェン)「〜ならば」、sèket(セクッ)「50」

é: 日本語にほんごの「エ」よりもずっとくちよこひらいて発音はつおんする。れい:méja(メジョ)「テーブル」、mépé(メペ)「す」、suwé(スウェ)「ながあいだ

o: u のようにとをすぼめてすようにして発音はつおんする。i またはek が後続こうぞくするとひらけ音節おんせつでは長短ちょうたんなかあいだになる。そののo はつねみじか発音はつおんされる。れい:ora(オラ)(否定ひてい)、kono(コノ)「そこ」、ombé(オンベ)「む」

u: れい:kayu(カユ)「木材もくざい」、tugu(トゥグ)「とう」、tuku(トゥク)「う」

i: ひらき音節おんせつではなが発音はつおんされるが、閉音ぶし(ただ鼻音びおんじをのぞく)ではみじかい。日本語にほんごの「イ」よりもっとよこくちをあけて発音はつおんされる。れい:dina(ディノ)「」、saiki(サイキ)「いま」、kuwi(クウィ)「それ」

子音しいん

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りょう唇音しんおん 歯音しおん/
歯茎はぐきおん
そりしたおん かた口蓋こうがいおん 軟口蓋なんこうがいおん 声門せいもんおん
鼻音びおん [m] [ɳ] [ɲ] [ŋ]
破裂はれつおん/やぶおと [p b̥] [t d̥] [ʈ ɖ̥] [tʃ dʒ̊] [k ɡ̊] [ʔ]
摩擦音まさつおん [ʂ] [h]
接近せっきんおん ちゅうせんおん [ɽ] [j] [w]
側面そくめんおん [ɭ]


ジャワ子音しいんにはf, v, z, c, x, q はない。また語末ごまつ音節おんせつまつ子音しいん連続れんぞくすることもなく、子音しいん連続れんぞくわる外来がいらいはその子音しいんひとつが脱落だつらくする(れい:「知事ちじ」resident → résidèn、「郵便ゆうびんきょく」postkantoor → kantorpos)[11]正書法せいしょほうでは、/ʈ,ɖ/はth,dh とかれる。また、/n/は、[n]のほか[ʈ][ɖ]のまえあらわれるとき、おととして[ɳ]を[1]

b: らんのb よりするどく、b が語頭ごとうつときは初頭しょとうおと'p をともなっているようにこえる(れい:bakal →'pbakal)。だいふたまたはだいさん音節おんせつあたまおんがb ならばp が先行せんこう音節おんせつじ、次節じせつ音節おんせつはb ではじまる(れい:boeboer → 'pboep-boer)。ただし先行せんこう音節おんせつがm でわるときはこの現象げんしょうられない(れい:ambakali)。

c: 日本語にほんごの「チャ」や「チョ」の子音しいんている。れい:kanca(コンチョ)「友人ゆうじん」、basa(ボソ)「言語げんご」、bisa(ビソ)「出来できる」

d: 語頭ごとうまたはかたりちゅうにあるときtd となり、語尾ごびつときはt と発音はつおんされる。ただし'n またはan がd に先行せんこうするさいはtd にはならない(れい:dados → 'tados, babad → pbapbat)。したさき前歯まえばけてすこむように発音はつおんされる。

dh: 舌先したさきうえ前歯まえばあたりにてて発音はつおんする。英語えいご公用こうようインドネシアのd にあたる。れい:dhéwé(デウェ)「自分じぶんで」、adhi(アディ)「おとうと/いもうと」、tedha(トゥド)「べる」

g: 語頭ごとうまたはかたりちゅうにあるときkg となり、語尾ごびつときはk と発音はつおんされる。ただし'n またはang がg に先行せんこうするさいはkg にはならない(れい:gawé → kgawé, toetoeg → toetoek)。日本語にほんごのガぎょう子音しいんちかい。音節おんせつわりのg はk にちかおと発音はつおんされる。

h: 母音ぼいんはじまるかたりでは、初頭しょとうにh があらわれるが、とく発音はつおんされるのは朗読ろうどくかせのさいかぎる。またどう母音ぼいんあいだやo とoe のあいだにもh が挿入そうにゅうされる。音節おんせつわりにあるh はいきだけをおんである。れい:omah(オマ(h))「いえ」、murah(ムラ(h))「やすい」。また、oeh, oh, ich, èh でわるかたり接尾せつびがつくとh は通常つうじょうj またはw にてんじる。

k: 語尾ごびにあるときはうちやぶおととなるが、だまおとe が直前ちょくぜんにあるときはそとやぶおととなる。またk が音節おんせつ末尾まつびにあるときはうちやぶおととなる(れい:anak → ana', watek → watek)

j: 日本語にほんごの「ジャ」や「ジョ」にちかおとれい:jam(ジャム)「」、aja(オジョ)「〜するな」

l: 舌先したさきうえ前歯まえばにあてて発音はつおんする。れい:lali(ラリ)「わすれる」、loro(ロロ)「2」、lemu(ルムー)「ふとっている」

m: 日本語にほんごのマぎょう子音しいんおとちかい。音節おんせつわりのm はくちじるように発音はつおんされる。れい:mati(マティ)「ぬ」、méja(メジョ)「テーブル」、nem(ヌム)「6」

n: 日本語にほんごのナぎょうにあるおとちかい。舌先したさきうえ前歯まえばうらけて発音はつおんされる。れい:nami(ナミ)「名前なまえ」、enak(エナ)「おいしい」

ng: 「イ」を発音はつおんしたのち舌先したさきをn のようにせずそのままにして「ン」とはなからいきすようにするとられる。れい:ing(イン)「〜に/〜で」、menuang(ムニヤン)「〜へ(く)」、wong(ウォン)「ひと」。ただしng のうしろに母音ぼいんつづ場合ばあい以下いかのようにg が後続こうぞく母音ぼいんとともに発音はつおんされる。れい:nangis(ナッギス)「く」、mangan(マッガン)「べる」

ny: 日本語にほんごの「ニャ」や「ニュ」の子音しいんている。れい:banyu(バニュ)「みず」、anyar(アニャル)「あたらしい」

p: apa(オポ)「なに」、sarapan(サラパン)「朝食ちょうしょくをとる」

r: じたである。れい:rega(ルゴ)「値段ねだん」、mréné(ムレネ)「ここへ」、rada(ロド)「幾分いくぶん

s: 日本語にほんごのサぎょうにあたるおとれい:bisa(ビソ)「出来できる」、sinau(シナウ)「勉強べんきょうする」、sasi(サシ)「つき

t: d と反転はんてんおん関係かんけいにある。転写てんしゃされるとうしろにhをともなう(れい:dhampar"王座おうざ")。d と同様どうよう舌先したさき口蓋こうがい前方ぜんぽうけて発音はつおんされる。

th: 英語えいご公用こうようインドネシアのt のおと該当がいとうする。現在げんざいのジャワではその区別くべつ混同こんどうされてきている[12]れい:sethithik(セティティ)「すこし」、mesthi(ムスティ)「きっと」

w: 語末ごまつにはあらわれない。日本語にほんごのワぎょうたるおとれい:wis(ウィス)「すでに」、wétan(ウェタン)「ひがし」、waras(ワラス)「健康けんこうな」

y: 日本語にほんごの「ヤ」や「ヨ」にたるおとれい:yaiku(ヨイク)「つまり」、supaya(スポヨ)「〜できるように」、kaya(コヨ)「〜のようだ」

形態けいたいてき特徴とくちょう

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ジャワ形態けいたいろんじょう膠着こうちゃく言語げんご分類ぶんるいされる派生はせい屈折くっせつんだ言語げんごである[4]

接辞せつじ

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a. 動詞どうし接辞せつじ

ジャワ動詞どうしには日本語にほんごのような動詞どうし活用かつようや、時制じせいというものもなく、また西欧せいおうのような動詞どうし人称にんしょう変化へんかもない。たとえば動詞どうし tangi「きる」に「すでに」といったものがあればその意味いみ過去かこがたきた」となる。反対はんたい未来みらい動作どうさは「これから〜するつもりだ」という副詞ふくし arep を付加ふかすることによってあらわ[13]。ジャワ動詞どうし(Ngokoたい)はおもつぎのものにけられる[14]。 1) 語根ごこん動詞どうし。 (れい:tangi きる、sinau 勉強べんきょうする、tuku う、wiwit はじまる) 2) 接頭せっとう m- がいたもの。m のいた動詞どうしは、自動詞じどうし機能きのうっている。(れい:mlaku あるく、mabur ぶ、mati ぬ) 3) 能動のうどうがた場合ばあい語根ごこん鼻音びおん接頭せっとうくもの。鼻音びおん接頭せっとういた動詞どうし他動詞たどうし機能きのうつ。なお、この接頭せっとう動詞どうし語根ごこんはじめのおとによって、n, ny, m, ng の4つのなかのいずれかのものがく。すなわち、語根ごこんはじめのおとが d, dh, t, th, j の場合ばあい接頭せっとう n が、s, c の場合ばあい接頭せっとう ny が、b, p, w の場合ばあい接頭せっとう m が、a, i, u, e,è, é, o, g, r, l, y, k の場合ばあい接頭せっとう ng が付与ふよされる。 (れい:jaluk → njuluk たのむ、silih → nyilih りる ※sはえる、wulang → mulang おしえる ※w はえる、ombé → ngombe む) 4) 能動のうどうがた場合ばあい鼻音びおん接頭せっとう接尾せつび -aké がくもの。-aké のいた動詞どうしは、他動詞たどうしつぎのような役割やくわり意味いみっている。

   a. 「〜させる」(自動詞じどうし他動詞たどうしに) (bali もどる → mbalèkaké もどす、kalah ける → ngalahaké かす)
   b. 「〜してやる」 (tuku う → nukokaké ってやる、waca む → macakaké んでやる)
   c. 「(他人たにんに)〜させる」(使役しえき) (priksa 調しらべる → mriksakaké 調しらべさせる)
   d. 「〜の状態じょうたいになるようにする」 (bener ただしい → mbeneraké 訂正ていせいする)
   e. 「〜について/〜にたいして」 (omong はなす → ngomongaké 〜についてはなす、rungu く → ngrungokaké 〜を傾聴けいちょうする)

5) 能動のうどうがた場合ばあい鼻音びおん接頭せっとう接尾せつび -i がくもの。-i のいた動詞どうしつぎのような役割やくわり意味いみっている。

   a. ing (〜で、〜に)、marang(〜にたいして)、menyang(〜へ(場所ばしょ))、saka(〜から)といった前置詞ぜんちし役割やくわりをするもの。(ngunggahi = munggah ing のぼる)
   b. 動作どうさ反復はんぷく目的もくてき複数ふくすうであることをしめすもの。(menthung asu けんをたたく→ menthungi asu けんなんもたたく)
   c. 動作どうさおこなわれる場所ばしょおよ対象たいしょうしめすのにくわえて、さらにつぎのような意味いみつもの。

    ・「〜の状態じょうたいにする」 (resik 清潔せいけつな → ngresiki 綺麗きれいにする)     ・「〜をける」「〜をあたえる」 (klambi 上着うわぎ → nglambeni 上着うわぎせる) 6) 接頭せっとう a- がいたもの。(adol る、aweh あたえる) 7) 接頭せっとう ke- がいたもの。ke- のいた動詞どうしは、「偶然ぐうぜん〜」「自発じはつてきに〜」「〜できる」という意味いみつ。(kepethuk 出会であう、krasa かんじる、katon える)

b. 形容詞けいようし接辞せつじ 1) 接頭せっとうke- と接尾せつび-en により過度かどきゅうあらわす。(dawa N. ながい → kedawanen N. ながすぎる)[15]

c. 名詞めいし接辞せつじジャワ名詞めいしには語根ごこん接頭せっとう接尾せつびけてつくられるものがおおいが、しゅとしてつぎのようにけられる[10]。 1) 接尾せつび -an のいたもの。派生はせいした名詞めいしは「〜するもの」「〜したもの」「〜するところ」といった意味いみつ。(waca む → wacan 読物よみもの、pangan べる → panganan もの) 2) 接頭せっとう ka- と接尾せつび -an のいたもの。派生はせいした名詞めいしは「〜であること」「〜されるもの」「〜のいるところ」といった意味いみつ。(ramé にぎやかな → karamen おまつり、ana ある/いる → kahanan 状態じょうたい) 3) 接頭せっとう pa- または pi- のいたもの。おも動詞どうし名詞めいしするのにもちいられる。派生はせいした名詞めいしは「〜すること」「〜の方法ほうほう」「〜するためにもちいるもの」「〜されたもの」といった意味いみつ。pa-は語根ごこんによりpam-,pan-,pang-,またはpany-がく。(kon めいじる → pakon 命令めいれい、dol る → pangedol 売上うりあげ販売はんばい、gawé つくる → panggawé 行為こうい振舞ふるまい・つくかた) 4) 接頭せっとう pa- または pi- に接尾せつび -an のいたもの。pa-は語根ごこんによりpam-,pan-,pang-,またはpany-がく。派生はせいした名詞めいしは「〜があつまった場所ばしょ」「〜する場所ばしょ」「〜すること」「〜するためにもちいられるもの」を意味いみする。(urip きる → panguripan 生活せいかつ生計せいけい、gorèng げる → panggorèngan フライパン、turu る → paturon ベッド) 5) 語頭ごとうおとかえしが接頭せっとうしたもの。(lara 病気びょうきの → lelara 病気びょうき、lembut 上品じょうひんな → lelembut 精霊せいれい)

重複じゅうふく

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ジャワには、名詞めいし形容詞けいようし動詞どうしとうにそれぞれ以下いかのような重複じゅうふくがある[16]

1) 名詞めいし代名詞だいめいし

 a. 複数ふくすうあらわす (bocah-bocah 子供こどもたち、wong-wong 人々ひとびと)

 b. 重複じゅうふくして意味いみわるもの。接尾せつび-an をともなうものもある。(omah → omah-omah 世帯せたいつ、endi どこ → endi-endi どこでも/どこにも、bal ボール → bal-balan ボールあそびをする)

2) 形容詞けいようし副詞ふくし  a. 強調きょうちょう (enggal-enggal さっそくすぐに)

 b. 修飾しゅうしょく複数ふくすうであることをしめす (Pitiké lemu-lemu. にわとりたちはふとっている。)

 c. 物体ぶったいめいがはっきりしないもの (Kuniing-kuning kaé apa? あの黄色おうしょくっぽいものはなに?)

 d. 意味いみわるもの (ramé にぎやかな → ramé-ramé さわぐ、arang まばらな → arang-arang めったに〜しない)

 e. 〜なのに、〜であるのに (Gampang-gampang ora ngerti. 簡単かんたんなのにわからない。)

3) 動詞どうし

 a. ora をともなって「なかなか〜しない」(ora teka-teka. なかなかなかった)

 b. 「あれこれ〜する」 (omong-omong あれこれおしゃべりする)

 c. 「かわがわる〜する」「おたがいに〜する」(antem-anteman なぐりった)

 d. 接頭せっとう接尾せつびともなったもの

 e. 重複じゅうふくすると意味いみわるもの (kira かんがえる →kira-kira 大体だいたいやく、olèh る → olèh-olèh おみやげ)

 f. おと一部いちぶわるもの (theklak-thekluk こっくりこっくりする、géla-gélo あたま左右さゆうる)

語順ごじゅん

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統語とうごろんじょうジャワはSVO言語げんごであるが、口語こうごでは様々さまざま語順ごじゅん可能かのうである[4]以下いかれいげる:

(1) Bambang n-girim layang nang Tono. (S V O IO) ― 基本きほん語順ごじゅん

   Bambang active-send letter to Tono
   
   "Bambang sent the letter to Tono."(以下いか同様どうよう

(2) N-girim layang nang Tono Bambang. (V O IO S)

(3) N-girim layang Bambang nang Tono. (V O S IO)

(4) N-girim Bambang layang nang Tono. (V S O IO)

(5) Nang Tono Bambang n-girim layang. (IO S V O)

(6) Nang Tono n-girim layang Bambang. (IO V O S)

(7) Nang Tono n-girim Bambang layang. (IO V S O)

またジャワ関係かんけい代名詞だいめいし助動詞じょどうしは、修飾しゅうしょくまえかれる。語順ごじゅん転倒てんとうにより述語じゅつご主要しゅよう文頭ぶんとうくことで、強調きょうちょう効果こうかをもたらすことが可能かのうである。とく形容詞けいようしは、名詞めいしたいしてまえおけされるのは強調きょうちょうするさい限定げんていされる。また、語勢ごせい関係かんけい代名詞だいめいし sing やkang によってもしめされうる[17]

代表だいひょうてき文法ぶんぽう現象げんしょう

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ジャワ動詞どうしには日本語にほんごのような動詞どうし活用かつようやテンスはなく、また西欧せいおうのような動詞どうし人称にんしょう変化へんかもない。たとえば動詞どうし tangi「きる」に「すでに」といったものがあればその意味いみ過去かこがたきた」となる。反対はんたい未来みらい動作どうさは「これから〜するつもりだ」という副詞ふくし arep を付加ふかすることによってあらわ[13]

受動態じゅどうたい能動態のうどうたい

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ジャワでは、能動態のうどうたい動詞どうし鼻音びおん接頭せっとうのぞき、あらたに tak-/dak-, ko-, di-, あるいは di- といった接頭せっとうけることで受動態じゅどうたい形成けいせいされる[18]

文字もじ

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ジャワみなみインド伝来でんらいパーリ文字もじもとにしてつくられたジャワ文字もじをもっているが、現在げんざいではラテン文字もじ表記ひょうきしゅとしてもちいられている。ラテン文字もじ表記ひょうきはインドネシア共和きょうわこく公用こうようであるインドネシア表記ひょうきほうもとづいている。現代げんだいジャワはその基本きほんとなるものは ha, na, ca, ra, ka, da, ta, sa, wa, la, pa, dha, ja, ya, nya, ma, ga, ba, tha, nga の20しかない。

ジャワ文字もじ表記ひょうきするさいは、上記じょうきの20の文字もじにそれぞれの「sandhangan」とばれる記号きごうわせてもちいる。またふた以上いじょう単語たんごつづけて表記ひょうきするさい単語たんご音節おんせつが h, r, ng 以外いがい子音しいんわっている場合ばあいは、それにつづ単語たんごはじめのおとには「pasangan」とばれる記号きごうもちいる[19]

ラテン文字もじ表記ひょうき以外いがいにも、インドのブラーフミー文字もじながれをくむジャワ文字もじ、アラブ・ジャワ文字もじ、ジャワてきしたアラビア文字もじジャウィ文字もじ)でもかれる。以下いかにラテン文字もじ大文字おおもじ小文字こもじ表記ひょうきしるす。

ラテン文字もじ
大文字おおもじ
A B C D E É È F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z
小文字こもんじ
a b c d e é è f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z

以下いか文字もじはヨーロッパの言語げんごやアラビアからの借用しゃくよう使用しようされる。

挨拶あいさつ表現ひょうげん

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以下いかにジャワ基本きほんてき挨拶あいさつ表現ひょうげんしる[20]

Sugêng énjing. (スダング・エンジング) おはようございます。

Sugêng siyang(rintên). (スダング・スィヤング(リントゥン)) こんにちは。(※午前ごぜん10ごろから午後ごご2ごろまでもちいられる)

Sugêng sontên. (スダング・スントゥン)こんにちは。 (※午後ごご3ごろから午後ごご6ごろまでもちいられる)

Sugêng dalu. (スダング・ダル) こんばんは。

Sugêng saré. (スダング・サレ) おやすみなさい。

Sugêng rawuh. (スダング・ラウ) いらっしゃいませ。

Sugêng tindak. (スダング・ティンダッ) さようなら。(※旅立たびだひとに)

Sumånggå , sugêng kêpanggih malih. (スモンゴ・スダング・クパンギ・マリ) さようなら。(※のこひとに)

Sugêng tindak dumugi kêpanggih malih. (スダング・ティンダッ・ドゥムギ・クパンギ・マリ) ごきげんよう。

Sugêng taun anyar. (スダング・タウン・アニャル) 新年しんねんおめでとう。

Sugêng Natalan. (スダング・ナタラン) クリスマスおめでとう。

Sugêng ngunjuk. (スダング・グンジュッ) 乾杯かんぱい

Matur nuwun. (マトゥール・ヌウン) ありがとう。

Matur sêmbah nuwun. (マトゥール・スムパ・ヌウン) ありがとうございます。

Sami-sami, kulå inggih matur sêmbah nuwun. (サミサミ・クロ・インギ・マトゥール・スムパ・ナウン) どういたしまして。

Kados pundi kabaripun? (カドス・プンディ・カブリプン) ご機嫌きげんいかがですか。

Pangatuntên. / Nyuwun sewu. (パがプントゥン/ニュウン・セウ) ごめんなさい。

Dumugi bénjing malih. (ドゥムギ・ベンジング・マリ) また明日あした

Sampun dangu kulå boten kêpanggih sarêng penjênêngan. (サムプン・ダぐ・クロ・ボトゥン・クパンギ・サルング・プンジュヌがン) おひさしぶりです。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c d e f 亀井かめいたかし千野ちの栄一えいいち河野こうの六郎ろくろう言語げんごがくだい辞典じてん三省堂さんせいどうかん、1995ねん、209ぺーじ
  2. ^ インドネシア基礎きそデータ”. 外務省がいむしょう. 2020ねん6がつ28にち閲覧えつらん
  3. ^ ジャワ島じゃわとう”. インドネシア共和きょうわこく観光かんこうしょう. 2020ねん6がつ28にち閲覧えつらん
  4. ^ a b c Javanese” (英語えいご). UCLA Language Materials Project. 2018ねん9がつ26にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2016ねん1がつ17にち閲覧えつらん
  5. ^ a b 石井いしい和子かずこ『ジャワ基礎きそ東京大学とうきょうだいがく書林しょりん、1984ねん、1ぺーじ
  6. ^ a b c 仁平にだいら芳朗よしろう簡約かんやくジャワ文法ぶんぽう』、アジアアフリカ言語げんご文化ぶんか研究所けんきゅうじょ、1986ねん、1ぺーじ
  7. ^ a b 石井いしい和子かずこ『ジャワ基礎きそ東京大学とうきょうだいがく書林しょりん、1984ねん、2ぺーじ
  8. ^ Brown, Keith & Sarah Ogilvie. 2008. Concise Encyclopedia of Languages of the World. Oxford: Elsevier, p.560.
  9. ^ 仁平にだいら芳朗よしろう簡約かんやくジャワ文法ぶんぽう』アジアアフリカ言語げんご文化ぶんか研究所けんきゅうじょ、1986ねん、4-7ぺーじ
  10. ^ a b 石井いしい和子かずこ『ジャワ基礎きそ東京大学とうきょうだいがく書林しょりん、1984ねん、6-11ぺーじ
  11. ^ 仁平にだいら芳朗よしろう簡約かんやくジャワ文法ぶんぽう』、アジアアフリカ言語げんご文化ぶんか研究所けんきゅうじょ、1986ねん、4ぺーじ
  12. ^ 佐々木ささきたくみ『ジャワまり文句もんく南雲なぐもどうフェニックス、1994ねん、16ぺーじ
  13. ^ a b 石井いしい和子かずこ『ジャワ基礎きそ東京大学とうきょうだいがく書林しょりん、1984ねん、31ぺーじ
  14. ^ 石井いしい和子かずこ『ジャワ基礎きそ東京大学とうきょうだいがく書林しょりん、1984ねん、32ぺーじ
  15. ^ 仁平にだいら芳朗よしろう簡約かんやくジャワ文法ぶんぽう』アジアアフリカ言語げんご文化ぶんか研究所けんきゅうじょ、1986ねん、43ぺーじ
  16. ^ 石井いしい和子かずこ『ジャワ基礎きそ東京大学とうきょうだいがく書林しょりん、1984ねん、123ぺーじ
  17. ^ 仁平にだいら芳朗よしろう簡約かんやくジャワ文法ぶんぽう』アジアアフリカ言語げんご文化ぶんか研究所けんきゅうじょ、1986ねん、15ぺーじ
  18. ^ 石井いしい和子かずこ『ジャワ基礎きそ東京大学とうきょうだいがく書林しょりん、1984ねん、60-63ぺーじ
  19. ^ 石井いしい和子かずこ『ジャワ基礎きそ東京大学とうきょうだいがく書林しょりん、1984ねん、3-6ぺーじ
  20. ^ 佐々木ささきたくみ『ジャワまり文句もんく-インドネシアつき-』南雲なぐもどうフェニックス、1994、30-36ぺーじ

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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