千葉ちば孝たかし胤たね

凡例はんれい 千葉ちば 孝たかし胤たね
時代じだい	室町むろまち時代ときよ中期ちゅうき、戦国せんごく時代じだい初期しょき
生誕せいたん	長禄ちょうろく3年ねん（1459年ねん）?
死没しぼつ	永えい正ただし18年ねん8月がつ19日にち（1521年ねん9月19日にち）?
幕府ばくふ	室町むろまち幕府ばくふ
氏族しぞく	千葉ちば氏し
父母ちちはは	父ちち：千葉ちば輔胤
兄弟きょうだい	孝こう胤たね、椎崎しいざき胤たね忠ただし
子こ	勝かち胤たね、成戸なりと胤たね家か、小しょう納言なごん（臼井うすい幸みゆき胤たね？）

千葉ちば 孝たかし胤たね（ちば のりたね）は、室町むろまち時代ときよ中期ちゅうきから戦国せんごく時代じだい初期しょきにかけての武将ぶしょう。千葉ちば輔胤（岩橋いわはし輔胤）の嫡男ちゃくなん。

生なま没年ぼつねんには諸説しょせつあり、嘉吉よしきち3年ねん5月2日にち（1443年ねん5月30日にち）生うまれ、嘉吉よしきち3年ねん7月がつ18日にち（1443年ねん8月がつ13日にち）生うまれ、文ぶん安やす元年がんねん（1444年ねん）生うまれともされる。永えい正ただし2年ねん8月がつ19日にち（1505年ねん9月26日にち）に没ぼっしたとも言いわれている。

生涯しょうがい

千葉ちば氏し当主とうしゅ就任しゅうにん（僭称せんしょう）への経緯けいい

享とおる徳とくの乱らんの最中さいちゅうに康正こうせい元年がんねん（1455年ねん）11月に着陣ちゃくじんした東常縁とうのじょうえんに追おわれ、原はら胤たね房ぼうは逐電ちくでんし、馬うま加か康かん胤たねとその子こ胤たね持じも討うち取とられたが、千葉ちば氏し嫡流ちゃくりゅうの千葉ちば実みのる胤たねには下総しもうさを掌握しょうあくするだけの力ちからが無なく、東常縁とうのじょうえんも応仁おうにんの乱らんで美濃みの国こくの所領しょりょう問題もんだいを機きに文明ぶんめい元年がんねん（1469年ねん）4月がつに帰京ききょうし、文明ぶんめい3年ねん（1471年ねん）には宗祇そうぎに古今ここん伝授でんじゅを行おこなっている。

その為ため、印しるし東庄とうのしょう岩橋いわせ村むら（現在げんざいの千葉ちば県けん印旛いんば郡ぐん酒々井しすい町まち）付近ふきんを領有りょうゆうした岩橋いわはし氏し（輔胤は馬うま加か康かん胤たねの庶子しょしを自称じしょう）が千葉ちば氏し当主とうしゅを自称じしょうした。また、室町むろまち幕府ばくふは古河ふるかわ公方くぼう足利あしかが成氏しげうじを鎌倉かまくらからは追放ついほうはしたものの討伐とうばつするだけの力ちからが無なかったので、孝こう胤たねは成しげる氏し側がわに付つき勢力せいりょく拡大かくだいを図はかり、この系統けいとうも千葉ちば氏しと呼よばれている。

孝こう胤たねと享とおる徳とくの乱らん

孝こう胤たねは文明ぶんめい3年ねん頃ごろに父ちち輔胤が出家しゅっけしたため家督かとくを継まましく（この時ときに初はじめて千葉ちば氏し当主とうしゅを自称じしょうしたともされる）。同年どうねん3月がつ、孝こう胤たねらの古河ふるかわ公方くぼう側がわは堀越ほりこし公方くぼう足利あしかが政知まさともを討うつべく、伊豆いず国こく三島みしまへ兵へいを進すすめた。

当初とうしょ政知まさともの元もとにはわずかな手勢てぜいしかなかったが、山内やまうち上杉うえすぎ家かの軍ぐんと合流ごうりゅうしたことで勢いきおいを盛もり返かえし、退却たいきゃくした孝こう胤たねらの軍勢ぐんぜいは散々さんざんに叩たたかれ壊滅かいめつ状態じょうたいとなった。さらに、4月がつには山内やまうち上杉うえすぎ家かの家いえ宰おさむの長尾ながお景信かげのぶが下野げや国こく足利あしかが庄しょうを攻略こうりゃく、6月24日にちに古河ふるかわ城しろが陥落かんらくした。この為ため成しげる氏しは行いき場ばを失うしない孝こう胤たねの領内りょうないに留とまることとなった。

文明ぶんめい4年ねん（1472年ねん）2月がつに孝こう胤たね、結城ゆうき氏し広ひろ、那な須資実みらの援助えんじょを受うけて古河ふるかわ城じょうを奪還だっかんし成しげる氏しは古河ふるかわに戻もどった。そしてその後ご、文明ぶんめい8年ねん（1476年ねん）には山内やまうち上杉うえすぎ家かの家いえ宰おさむを叔父おじの長尾ながお忠ただし景けいに継承けいしょうさせたことに怒いかり、上杉うえすぎ顕定あきさだに背そむいて武たけ州しゅう鉢形はちがた城じょう（現在げんざいの寄居よりい町まち鉢形はちがた）に走はしった長尾ながお景信かげのぶの嫡男ちゃくなん長尾ながお景春かげはるが成しげる氏し側がわに付ついたこともあり、抗こう争そうは次第しだいに全面ぜんめん対決たいけつの様相ようそうを見みせ始はじめた（長尾ながお景春かげはるの乱らん）。なお、この時期じきの孝こう胤たねの本拠地ほんきょちは平山ひらやま城しろ（現在げんざいの千葉ちば県けん千葉ちば市し緑みどり区く）と考かんがえられており、成しげる氏しも平山ひらやまに滞在たいざいしていたと考かんがえられている。

これに危惧きぐした成しげる氏しと山内やまうち上杉うえすぎ家かおよび扇谷おうぎや上杉うえすぎ家かの和議わぎが進すすめられた。しかし和議わぎが整ととのうと孝こう胤たねは千葉ちば氏し当主とうしゅを自称じしょうできなくなり、景春かげはると共ともに和議わぎに反対はんたいし、名目めいもく上じょうは成しげる氏しを主君しゅくんとしながらも古河ふるかわ城じょうへの帰き城じょうは阻止そしする方針ほうしんを固かためた。文明ぶんめい5年ねん（1473年ねん）には長崎ながさき城じょう（千葉ちば県けん流山ながれやま市し）を築城ちくじょうして本拠地ほんきょちを移うつしている。

そして、室町むろまち幕府ばくふと古河ふるかわ公方くぼう・山内やまうち上杉うえすぎ家か・扇谷おうぎや上杉うえすぎ家かの和議わぎが整ととのい、造反ぞうはん勢力せいりょくは景春かげはると孝こう胤たねらのみとなり、幕府ばくふが千葉ちば氏し当主とうしゅと認みとめた千葉ちば自じ胤たね（実じつ胤たねの弟おとうと）の、太田おおた道灌どうかんの支援しえんを背景はいけいにした追討ついとうを受うけることとなった。文明ぶんめい10年ねん（1478年ねん）12月がつ10日とおかには境さかい根原ねばら合戦かっせんで大敗たいはい、長崎ながさき城じょうを維持いじできなくなった孝こう胤たねは軍勢ぐんぜいをまとめて退却たいきゃくし臼井うすい城しろ（現在げんざいの佐倉さくら市し臼井田うすいた）に籠城ろうじょうしたが、文明ぶんめい11年ねん（1479年ねん）7月がつ15日にちに臼井うすい城じょうは落城らくじょうし、下総しもうさ・上総かずさの大半たいはんは自じ胤たねに制圧せいあつされた。

この時ときの孝こう胤たねの行動こうどうについては定さだかではないが、落城らくじょうの混乱こんらんにまぎれて行方ゆくえをくらまし、父ちちの拠点きょてんであった印しるし東庄とうのしょう岩橋いわせ村むらに戻もどったとされるが、近年きんねんでは小篠塚こしのづか城じょう（現在げんざいの佐倉さくら市し）が根拠地こんきょちであるとする説せつが有力ゆうりょくであり、なお同どう城しろを拠点きょてんして自じ胤たねと争あらそったと推定すいていされている。一方いっぽう、文明ぶんめい16年ねん（1484年ねん）頃ごろに築城ちくじょうされたとされる本佐倉もとさくら城じょうに際さいして何なにの問題もんだいが生しょうじていない（臼井うすい城じょうが自じ胤たね・道灌どうかん側がわに奪うばわれたままとすれば、紛糾ふんきゅうの一因いちいんになる）ことから、孝こう胤たねの下総しもうさの一部いちぶ地域ちいきの支配しはいは認みとめられていたと考かんがえられる（ただし、道灌どうかんも孝こう胤たねを牽制けんせいするために馬橋まばし城じょうを築城ちくじょうしている）。

また、下総しもうさ・上総かずさの将士しょうしに孝こう胤たねを支持しじする動うごきが根強ねづよかったのも事実じじつであり、彼かれらの支援しえんを受うけられなかった自じ胤たねも同地どうちに代官だいかんを置おいたのみでの長期ちょうき的てき支配しはいを確立かくりつする事ことが出来できず、文明ぶんめい14年ねん（1482年ねん）の室町むろまち幕府ばくふと成しげる氏しの和議わぎ、その4年ねん後ごに太田おおた道灌どうかんが暗殺あんさつされると、自じ胤たねは後うしろ盾たてを失うしなって下総しもうさにおける支配しはいを失うしなったまま明あかり応おう3年ねん（1493年ねん）の死去しきょに至いたったと推定すいていされる。以後いご、武蔵むさし千葉ちば氏し側がわの下総しもふさへの侵攻しんこうは発生はっせいしておらず、結果けっか的てきに古河ふるかわ公方くぼうを奉ほうじる立場たちばを保持ほじした孝こう胤たねの下総しもふさ千葉ちば領りょう支配しはいが確立かくりつしたと見みるのが通説つうせつである。

こうして享とおる徳とくの乱らんは終焉しゅうえんを迎むかえたが、応仁おうにんの乱らんに端はしを発はっした戦乱せんらんは止とまる所ところを知しらず、戦国せんごく時代じだいの幕まくが開あけようとしていた。

晩年ばんねん

その後ご、孝こう胤たねは岩橋いわせ村むらに近ちかい本佐倉もとさくら城じょう（現在げんざいの酒々井しすい町まち）を築城ちくじょうして下総しもうさ支配しはいの根拠こんきょとした。延徳えんとく4年ねん（1492年ねん）2月がつ15日にち、父ちちが亡なくなった為ため出家しゅっけ、後ごを子この勝かち胤たねが継ついだ。ただし、実権じっけんは依然いぜんとして孝こう胤たねが握にぎっていたとされている（ただし、別べつの解釈かいしゃくもある。後述こうじゅつ）。文ぶん亀かめから永えい正ただし年間ねんかんにかけて、古河ふるかわ公方くぼう足利あしかが政氏まさうじが千葉ちば氏しを攻撃こうげきしたが、勝かち胤たねとともに本佐倉もとさくら城じょうをよく守まもって和議わぎに持もち込こんだ（篠塚しのづか陣じん）。永えい正ただし2年ねん8月がつ19日にち（1505年ねん9月がつ26日にち）、孫まごの昌胤まさたねの元服げんぷく前まえに亡なくなったとされるが、それから16年ねん後ごの永えい正ただし18年ねん8月がつ19日にち（1521年ねん9月がつ19日にち）に没ぼっしたともされ、没年ぼつねんは定さだかではない。

逸話いつわ

• 篠塚しのづか陣じんでの戦たたかいの和議わぎの席せきにおいて、古河ふるかわ公方くぼうの使者ししゃが千葉ちば氏しの実権じっけんを握にぎっていた孝こう胤たねに対たいして、勝かち胤たねに古河ふるかわ公方くぼうから一いち字じ拝領はいりょうを受うけることを勧すすめた。これに対たいして孝こう胤たねは千葉ちば氏しの当主とうしゅは代々だいだい千葉ちば妙見みょうけん宮みやで元服げんぷくして籤くじで一いち字じを定さだめるので不要ふようと答こたえた。それならば、次男じなんに一いち字じ拝領はいりょうをと勧すすめられたが、これも「次男じなんは嫡男ちゃくなんから一いち字じ拝領はいりょうを受うけるもの」だと答こたえて、拒絶きょぜつした（『千せん学がく集しゅう抄しょう』）。これは、馬うま加か康かん胤たねを祖そとする下総しもうさ千葉ちば氏しが朝廷ちょうていや室町むろまち幕府ばくふから正当せいとうな千葉ちば氏し当主とうしゅと認みとめられず、また、応仁おうにんの乱らん以後いごの朝廷ちょうてい・幕府ばくふの衰退すいたいや在ざい倉くら制せいの崩壊ほうかいによって関東かんとう公方くぼうに出仕しゅっしすることもなくなった下総しもうさ千葉ちば氏しは仰あおぐべき明確めいかくな主君しゅくんを持もたなくなった。このため、当主とうしゅの権威けんいを一族いちぞくの精神せいしん的てきな支ささえであった妙見みょうけん信仰しんこうに求もとめるとともに、下総しもうさ国主こくしゅとして地元じもとに根ねづいた下総しもうさ千葉ちば氏しの姿すがたを示しめした逸話いつわと言いえる。ただし、この逸話いつわについて勝かち胤たねの嫡男ちゃくなん・昌胤まさたねの元服げんぷくに際さいしての一いち字じ拝領はいりょうであるとする黒田くろだ基樹もときの説せつがある。また、黒田くろだは永えい正ただし元年がんねんに原はら胤たね隆たかしが娘むすめ婿むこの木内きうち胤たね治ちを「誅殺ちゅうさつ」する事件じけんを起おこすなどこの時期じきに千葉ちば氏し家臣かしんの誅殺ちゅうさつが相次あいついでいることに着目ちゃくもくした上うえで、長ちょう享とおるの乱らんに関連かんれんして扇谷おうぎや上杉うえすぎ氏しに味方みかたする千葉ちば孝こう胤たね・原はら胤たね隆たかしと古河ふるかわ公方くぼう・山内やまうち上杉うえすぎ氏しに味方みかたする千葉ちば勝かち胤たねの間あいだで内乱ないらんが発生はっせいし、孝こう胤たねが当主とうしゅとして常つね輝てる（法名ほうみょう）名義めいぎでの文書ぶんしょを発給はっきゅうし、勝かち胤たねが足利あしかが政まさし氏しの援助えんじょを仰あおいだことで篠塚しのづか陣じんの戦たたかいが始はじまったとしている。なお、永えい正ただし5年ねんに山内やまうち上杉うえすぎ氏しの勝利しょうりが確定かくていしていることから、最終さいしゅう的てきには父子ふし間あいだの和睦わぼくが成立せいりつしたとみられている。

外部がいぶリンク

• 千葉ちば氏しの一族いちぞく