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差分さぶんほう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

数値すうち解析かいせきにおける有限ゆうげん差分さぶんほう(ゆうげんさぶんほう、えい: finite-difference methods; FDM)あるいはたん差分さぶんほうは、微分びぶん方程式ほうていしきくために微分びぶん有限ゆうげん差分さぶん近似きんじ差分さぶんしょう)でえてられる差分さぶん方程式ほうていしき近似きんじするという離散りさん手法しゅほうもちいる数値すうち解法かいほうである。18世紀せいきオイラー考案こうあんしたとわれる[1]

今日きょうではFDMはへん微分びぶん方程式ほうていしき数値すうち解法かいほうとして支配しはいてき手法しゅほうである[2]

精度せいど誤差ごさ

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かい誤差ごさとは、しん解析かいせきかい近似きんじかいとのあいだとして定義ていぎされる。有限ゆうげん差分さぶんほうにおける誤差ごさ原因げんいんまる誤差ごさおよび誤差ごさまたは離散りさん誤差ごさである。

有限ゆうげん差分さぶんほう函数かんすう定義ていぎいき格子こうし離散りさんすることにもとづく

問題もんだいたいするかい近似きんじ有限ゆうげん差分さぶんほうもちいるためには、まずはじめに問題もんだい領域りょういき離散りさんしなければならない。これは普通ふつうは、その領域りょういき一様いちよう格子こうしければよい。これは有限ゆうげん差分さぶんほうがしばしば「時間じかんきざみ」な仕方しかた微分びぶんたいする離散りさんてき数値すうち近似きんじ集合しゅうごう提供ていきょうすることを意味いみすることに注意ちゅうい

.

一般いっぱん注目ちゅうもくすべきは局所きょくしょ誤差ごさ英語えいごばんで、典型てんけいてきにはこれを O-記法きほうあらわす。局所きょくしょ誤差ごさは、かくてんにおける誤差ごさについてうもので、しん f'(xi)近似きんじ f'i との

である。この誤差ごさ評価ひょうかには、テイラー展開てんかい剰余じょうよこうるのが簡便かんべんである。しき f(x0 + h)たいするテイラー展開てんかいのラグランジュがた剰余じょうよこう

から、局所きょくしょ誤差ごさ支配しはいこうもとめられる。たとえば、いちかい差分さぶん近似きんじ (n = 1) をかんがえれば

である。この右辺うへん有限ゆうげん差分さぶんほうられる近似きんじである。一方いっぽう、0かい差分さぶん近似きんじ(n=0)をかんがえれば

よって、0かい差分さぶん近似きんじでの支配しはいてき誤差ごさ

であり、この剰余じょうよこう(n=1)が局所きょくしょ誤差ごさ支配しはいこうである。この場合ばあい局所きょくしょ誤差ごさはほぼきざはば(h)の2じょう比例ひれいするということになる。有限ゆうげん差分さぶんほう近似きんじかい精度せいど計算けいさんりょう方程式ほうていしき離散りさん仕方しかたきざはばかた依存いぞんする。これらはきざはばちいさくするにつれいちじるしく増加ぞうかする[3]から、実用じつようじょう必要ひつよう精度せいど計算けいさん時間じかん天秤てんびんにかけてじゅうふん合理ごうりてき条件じょうけん近似きんじおこなう。時間じかんきざはばおおきければおおくの場合ばあい計算けいさん速度そくどはやくなるが、おおきくしすぎると不安定ふあんていせいしょうじ、データの精度せいど問題もんだいがでる[4][5]

数値すうちモデルの安定あんていせい決定けっていするために、フォン・ノイマンの安定あんていせい解析かいせきもちいるのが普通ふつうである[4][5][6][7]

簡単かんたんれい

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もっと簡単かんたんれいとして、つぎの1かい常微分じょうびぶん方程式ほうていしきかんがえる:

これをくには、差分さぶんしょう

もちいて

近似きんじする。この方法ほうほうオイラーほうという。この最後さいご方程式ほうていしきのように、微分びぶん方程式ほうていしき微分びぶん差分さぶんしょうえたものを、差分さぶん方程式ほうていしき(さぶんほうていしき、difference equation)とぶ。

れい ねつ伝導でんどう方程式ほうていしき

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へん微分びぶん方程式ほうていしきれいとして、一様いちようディリクレ境界きょうかい条件じょうけんしたがう1次元じげん規格きかくねつ伝導でんどう方程式ほうていしきかんがえる:

左辺さへん時刻じこくによる微分びぶん右辺うへん座標ざひょうによる2かい微分びぶんである。また、境界きょうかい条件じょうけんおよび初期しょき条件じょうけん以下いかとする:

境界きょうかい条件じょうけん
初期しょき条件じょうけん

これを数値すうちてきく1つの方法ほうほうは、すべての微分びぶん差分さぶん近似きんじすることである。空間くうかん領域りょういきをメッシュで、時間じかん領域りょういきをメッシュ分割ぶんかつしよう。どちらの分割ぶんかつ等間隔とうかんかくとし、空間くうかんてん間隔かんかく時刻じこく間隔かんかくとする。数値すうちてき近似きんじあらわす。

陽解ようかいほう

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時刻じこくには前進ぜんしん差分さぶんもちい、空間くうかんてんで2微分びぶんたいして2中央ちゅうおう差分さぶんもちいれば、つぎすすむしき

られる。これを陽解ようかいほうという。

つぎのようにられる:

ただしここで拡散かくさんすうばれる)である。

ゆえに、時刻じこくでのがわかれば、対応たいおうする時刻じこくでのややしきもちいてもとめられる。には境界きょうかい条件じょうけん(このれいではどちらも0)を適用てきようする。

この陽解ようかいほうは、であれば数値すうちてき安定あんてい収束しゅうそくすることがられている。

誤差ごさ時刻じこく間隔かんかくの1じょう空間くうかんてん間隔かんかくの2じょうのオーダーである:

かげ解法かいほう

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時刻じこく後退こうたい差分さぶんもちい、空間くうかんてん で2かい中央ちゅうおう差分さぶんもちいれば、ややしき

られる。これをかげ解法かいほうという。

線形せんけい方程式ほうていしきけい

けば、られる。この方法ほうほうつね数値すうちてき安定あんてい収束しゅうそくするが、時刻じこくごとに方程式ほうていしきけい必要ひつようがあるため、陽解ようかいほうよりも繁雑はんざつである。誤差ごさ時間じかんステップすう空間くうかんステップすうの4じょうとに比例ひれいする。

クランク・ニコルソンほう

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さいごに、時刻じこく中央ちゅうおう差分さぶんを、空間くうかんてんでの空間くうかん微分びぶんに2かい中央ちゅうおう差分さぶんもちいれば、ややしき

られる。これをクランク・ニコルソンほうCrank-Nicolson method)という。

線形せんけい方程式ほうていしきけい

けば、られる。

この方法ほうほうつね数値すうちてき安定あんてい収束しゅうそくするが、かく時刻じこく方程式ほうていしきけい必要ひつようがあるので繁雑はんざつなことがおおい。誤差ごさ時間じかんステップすうの4じょう空間くうかんステップすうの2じょうとに比例ひれいする:

しかし、境界きょうかい付近ふきんでは誤差ごさはO(h4 ) でなくO(h2 ) となることがおおい。

クランク・ニコルソンほう時間じかんステップすうすくなければたいていもっと正確せいかく方法ほうほうである。陽解ようかいほうはそれより正確せいかくでなく不安定ふあんていでもあるが、もっと実行じっこうしやすく、繁雑はんざつさももっとすくない。かげ解法かいほう時間じかんステップすうおお場合ばあいもっとすぐれている。

参考さんこう文献ぶんけん

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  1. ^ Joel H. Ferziger; Milovan Perić ちょ小林こばやし敏雄としお谷口たにぐち伸行のぶゆき坪倉つぼくらまこと やく『コンピュータによる流体りゅうたい力学りきがく』シュプリンガー・フェアラーク東京とうきょう、2003ねん、36ぺーじISBN 4-431-70842-1 
  2. ^ Christian Grossmann; Hans-G. Roos; Martin Stynes (2007). Numerical Treatment of Partial Differential Equations. Springer Science & Business Media. p. 23. ISBN 978-3-540-71584-9 
  3. ^ Arieh Iserlas (2008). A first course in the numerical analysis of differential equations. Cambridge University Press. p. 23. ISBN 9780521734905 
  4. ^ a b Hoffman JD; Frankel S (2001). Numerical methods for engineers and scientists. CRC Press, Boca Raton 
  5. ^ a b Jaluria Y; Atluri S (1994). “Computational heat transfer”. Computational Mechanics 14: 385–386. doi:10.1007/BF00377593. 
  6. ^ Majumdar P (2005). Computational methods for heat and mass transfer (1st ed.). Taylor and Francis, New York 
  7. ^ Smith GD (1985). Numerical solution of partial differential equations: finite difference methods (3rd ed.). Oxford University Press 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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