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折紙おりがみ数学すうがく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

折紙おりがみ数学すうがく(おりがみのすうがく)の記事きじでは、がみ関連かんれんした数学すうがくについて記述きじゅつする。また、がみ科学かがく国際こくさい会議かいぎという会議かいぎめいしめすように、がみには、数学すうがくよりもっとひろ科学かがく分野ぶんやの(れいとしては構造こうぞう力学りきがくなど。あるいは科学かがくよりもひろい「STEM」の技術ぎじゅつ工学こうがくにも)応用おうようがある。

かみげる芸術げいじゅつであるがみたいしては、様々さまざま数学すうがくてき研究けんきゅうおこなわれてきた。ふるくから関心かんしんをもたれてきた分野ぶんやは、作品さくひんいためることなく折紙おりがみ作品さくひんたいらにたたむことができるかどうか (flat-foldability) と、かみることで数学すうがく方程式ほうていしきくことができるかどうかなどである。

過去かこには自明じめい数学すうがくおう用例ようれいとくに、いわゆる初等しょとう幾何きかがくの)とられがちなこともあったが、かくさん等分とうぶんなどが可能かのうである「がみ幾何きかがく」という分野ぶんや発見はっけんや、創作そうさくがみ分野ぶんやで「設計せっけい」とばれる、完成かんせいがた想定そうていしてかたぎゃく問題もんだいとしてとらえる手法しゅほうコンピュータ応用おうよう、また離散りさん数学すうがく研究けんきゅう対象たいしょうとしてなど、ひろ研究けんきゅうされている。

折紙おりがみかかわる学術がくじゅつてき探求たんきゅう活動かつどうがみによる作品さくひんづくりと区別くべつするため、芳賀はが和夫かずおは1994ねんだい2かいがみ科学かがく国際こくさい会議かいぎにおいて世界せかい共通きょうつうであるがみ (origami) に数学すうがく (mathematics) などの学術がくじゅつ技術ぎじゅつあらわ語尾ごび (-ics) をわせてオリガミクス (origamics) という名称めいしょう提唱ていしょうした。海外かいがいでも話題わだいになったが、この名称めいしょうそれ自体じたいかみってりしてつく立体りったいorigamicの複数ふくすうがた混同こんどうされるため、定着ていちゃくしなかった。

がみ幾何きかがく

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一般いっぱんに、正方形せいほうけいから折紙おりがみで、三角形さんかっけい五角形ごかっけい六角形ろっかっけいといったいくつかの正多角形せいたかっけいつくること、あるいは、黄金おうごん長方形ちょうほうけい白銀はくぎん長方形ちょうほうけいといった、いくつかの特徴とくちょうてき長方形ちょうほうけいつくることは、初等しょとう幾何きか範囲はんい問題もんだいであり、がみでも基本きほんてきには容易よういである。

定規じょうぎとコンパスによる作図さくず問題もんだいで、ながあいだくことのできなかった問題もんだいがあるが、そのうちいくつかは不可能ふかのう証明しょうめいされた。不可能ふかのう証明しょうめいされたうち、かくさん等分とうぶん立方体りっぽうたいばいせき問題もんだいは、がみにおいては不自然ふしぜんではない操作そうさによってこと出来でき[1]。また、がみもちいた4方程式ほうていしきまでの方程式ほうていしき解法かいほう発見はっけんされている。一般いっぱん定規じょうぎとコンパスによる作図さくず対応たいおうする操作そうさがみにもあることはよくられているが[2]定規じょうぎとコンパスの範囲はんいえる操作そうさについて、考察こうさつがおこなわれており、とく藤田ふじた文章ふみあきらによるがみ公理こうりは、この分野ぶんや研究けんきゅう非常ひじょう役立やくだっている。折紙おりがみ研究けんきゅう結果けっか芳賀はが定理ていりなどの方法ほうほう正方形せいほうけい一辺いっぺんを3ぶんの1、5ぶんの1、7ぶんの1、および9ぶんの1に正確せいかくることが可能かのうとなった。

正方形せいほうけいあるいは任意にんいかみに、せんあたえられたとき、そのせん沿った折紙おりがみ可能かのうかどうか、さらにはそれが平面へいめんおさまるかどうか、は興味深きょうみぶか問題もんだいのひとつである。

マーシャル・ベルン (Marshall Bern) とバリー・ヘイズ (Barry Hayes) はやまりやたにりの指定していあたえられたとき、それが全体ぜんたいとして平面へいめんりたためるかどうかはNP完全かんぜん問題もんだいであると証明しょうめいした[3]さらくわしい情報じょうほう技術ぎじゅつてき結果けっかについてはGeometric Folding Algorithms[4]のPart IIを参照さんしょう

部分ぶぶんについてりたためるかどうかについては、いくつかの条件じょうけんがあきらかになっている。前川まえかわ定理ていりは、あるパターンがたいらにりたためるかどうかの必要ひつよう条件じょうけんしめしている。さらに川崎かわさき定理ていり川崎かわさき敏和としかずによる。en:Kawasaki's theorem[5]は、必要ひつようじゅうふん条件じょうけんが、その展開てんかいにおいてそれぞれの交点こうてんまわりにあるすべてのかく数列すうれつ条件じょうけんたすことだとしめした。いいかえると、交点こうてんかこかくひとつおきの角度かくどひとしいことである[6]

このふし参考さんこう文献ぶんけん

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  • 折紙おりがみ数学すうがく ユークリッドの作図さくずほうえて』ISBN 4627016816

その

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産業さんぎょうてき応用おうようにつながりやすいものとしては「剛体ごうたい折紙おりがみ」がある(en:Rigid origami)。かみちがってしなやかさのないかた平面へいめんを、せんでちょうつがいなどで接合はぎあわしたようなものとしてあつかうもので、げる位置いち移動いどうさせつつることが必要ひつよう操作そうさなどをできないものとする。以上いじょう制約せいやく結果けっかとして可能かのうなパターンが一般いっぱんてきがみよりも制限せいげんされる。平面へいめんあつみについても無視むししない場合ばあいもあり、そういった制限せいげんにより建材けんざいなどによる構成こうせい応用おうようできるのである。具体ぐたいれいとしてはミウラがある。ミウラりは地図ちずなど身近みぢか利用りようされているが、宇宙うちゅう構造こうぞうぶつでの利用りよう検討けんとうされている技法ぎほうのひとつでもあり、「宇宙うちゅう実験じっけん観測かんそくフリーフライヤ」の2DSAモジュールによって実際じっさい宇宙うちゅう実験じっけんされた。

ミウラりや吉村よしむらパターンは、平面へいめんどういちパターンでめる「がみテセレーション」というテーマのがみでもある。一般いっぱんにテセレーションとはくりかえし紋様もんようによるめのことであるが、がみとして成立せいりつするパターンであることが「がみテセレーション」ではまず必要ひつようとなる。ったのち様態ようたいはさまざまである。ったのち平面へいめんになるものや立体りったいになるもの、ミウラりのようにたたまれるものもある。

たいらなかみ表面ひょうめんのどのてんにおいてもガウスきょくりつが0(すなわてんめん)である。よって本来ほんらいきょくりつ0の直線ちょくせんである。しかしれたかみゆびつめでしわをつけたかみなど、たいらでなくなったかみにおいては最早もはやこのきょくりつ条件じょうけんはあてはまらない。

曲線きょくせんりによる曲線きょくせんがみは、(非常ひじょうむずかしい)いくつかの課題かだいをもたらす[7]曲線きょくせんがみにより、かみ平面へいめんでないてんめんつくることができる(これは円錐えんすいめんのような、あくまでてんめんあつかがみであり、まえ段落だんらくはなしとはつながっていない)。むずかしい課題かだいの1れいとして、等間隔とうかんかく同心円どうしんえん交互こうごやまたにると、サドル(くら)に独特どくとく形状けいじょう(Curved creases)があらわれるが、その形状けいじょうがいかなる数式すうしきあらわされるべきものであるか、まだ明確めいかくにはわかっておらず研究けんきゅうちゅう、というものがある(なお、この形状けいじょう材料ざいりょう微妙びみょうちぢみにより成立せいりつしている可能かのうせいもあり、もしそうであればてんめんあつか課題かだいではないということになる)[8]曲線きょくせんりの先駆せんくてき研究けんきゅうしゃに、ハフマン符号ふごう有名ゆうめいな David A. Huffman がいる。[9]

こう次元じげんがみかんがえることもできる。通常つうじょうがみ裏表うらおもてのある2次元じげん平面へいめんを3次元じげん空間くうかんないで1次元じげん直線ちょくせんるものである。これを一般いっぱんすると、次元じげん空間くうかんないで、次元じげんちょう平面へいめんを、次元じげんめんることになる。たとえば、4次元じげん空間くうかんで、3次元じげん空間くうかんというかみるときせん役割やくわり通常つうじょう平面へいめんがなす。このような4次元じげんがみでは、その局所きょくしょ構造こうぞう球面きゅうめん平坦へいたんがみおなじものになる[10]

1方向ほうこう半分はんぶんかみるための損失そんしつ関数かんすうあらわされる。ここでかみ(もしくは素材そざい)の最小限さいしょうげんながさ、素材そざいあつさ、そして可能かのうかずである。この関数かんすう当時とうじまだ高校生こうこうせいだったブリトニー・ギャリヴァン (en) によって2001ねんあたえられた。ギャリヴァンはどんなにおおきいかみでも最大さいだいでも8かいしかげられないだろうという当時とうじ俗信ぞくしんはんし、12かい半分はんぶんげることに成功せいこうした[11]

エアバッグたたみや医療いりょうようのステントグラフトへの応用おうよう研究けんきゅうされている[12]

歴史れきし

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幾何きかがく歴史れきしなかユークリッド幾何きかがくわるあらたな作図さくずほういか研究けんきゅうされ、1896ねんスンダラ・ロー (Sundara Row) がかみ注目ちゅうもく幾何きかがく分野ぶんやでの研究けんきゅうあらわした「折紙おりがみ幾何きかがくてき演習えんしゅう」を出版しゅっぱんした[13]。このほん当時とうじ、あまり注目ちゅうもくされなかったがのちにドイツの数学すうがくしゃフェリックス・クラインまりこの分野ぶんや研究けんきゅう注目ちゅうもくあつまった[14]

1924ねんC・A・ラップの「折紙おりがみ操作そうさ」、1935ねんと1936ねんにはマルガリータ・ピアツォラ・ベロック (Margarita Piazzolla Belloc) の論文ろんぶん幾何きか問題もんだい折紙おりがみく」、「3と4方程式ほうていしき折紙おりがみく」がのちつづいたが、その研究けんきゅう一時いちじ下火したびになった[14]日本にっぽんでは1970年代ねんだいかずセミ伏見ふしみ康治こうじによる幾何きかがくがみかんする記事きじ掲載けいさいされ、1979ねん単行本たんこうぼんがみ幾何きかがく』が刊行かんこうされている(これは、幾何きかがくかんしては初等しょとう幾何きか拡張かくちょうした「折紙おりがみ幾何きかてき内容ないようはあまりあつかっていない)。1989ねん12月、イタリアでおこなわれただい1かいがみ科学かがく国際こくさい会議かいぎおこなわれたことでふたた注目ちゅうもくびることになった。このときされた会報かいほう現代げんだい折紙おりがみたいする研究けんきゅうおおきく寄与きよし、編者へんしゃベネデット・シメーミ (Benedetto Scimemi) と共同きょうどう研究けんきゅうしゃ藤田ふじた文章ふみあきはこの分野ぶんや研究けんきゅう草分くさわけとなった。近年きんねんではたて知宏ともひろ東大とうだい)、三谷みたにじゅん筑波大つくばだい)らによる成果せいか顕著けんちょである。

参考さんこう文献ぶんけん

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  1. ^ Origami Geometric Constructions(英語えいご
  2. ^ たとえば伏見ふしみの『がみ幾何きかがく』を
  3. ^ The Complexity of Flat Origami(英語えいご
  4. ^ Demaine, Erik; O'Rourke, Joseph (July 2007), Geometric Folding Algorithms: Linkages, Origami, Polyhedra, Cambridge University Press, ISBN 978-0-521-85757-4, http://www.gfalop.org 
  5. ^ なお、1970年代ねんだい伏見ふしみ康治こうじとハフマン(ハフマン符号ふごうられる)がこの問題もんだいかんして検討けんとうしている。
  6. ^ ジョセフ・オルーク ちょ上原うえはら隆平りゅうへい やくがみのすうり : リンケージ・がみ多面体ためんたい数学すうがく近代きんだい科学かがくしゃ、2012ねんISBN 978-4764904217 
  7. ^ Siggraph: "Curved Origami"
  8. ^ http://physicsworld.com/cws/article/news/2012/sep/18/physicists-unfold-the-mechanics-of-origami
  9. ^ この分野ぶんやは、三谷みたに曲線きょくせんがみデザイン 曲線きょくせんる7つの技法ぎほう』( ISBN 978-4-535-78866-4 )により概観がいかんできる。
  10. ^ 川崎かわさき敏和としかずこう次元じげん平坦へいたんがみについて,佐世保工業高等専門学校させぼこうぎょうこうとうせんもんがっこう研究けんきゅう報告ほうこくだい25ごう,187--195(1988)
  11. ^ Weisstein, Eric W. "Folding". mathworld.wolfram.com (英語えいご).
  12. ^ http://wired.jp/wv/2008/01/15/%e3%80%8corigami%e3%80%8d%e3%82%92%e3%80%81%e5%8c%bb%e7%99%82%e5%99%a8%e5%85%b7%e3%82%84%e6%9c%9b%e9%81%a0%e9%8f%a1%e3%81%ae%e6%8a%98%e3%82%8a%e7%95%b3%e3%81%bf%e3%81%ab%e5%bf%9c%e7%94%a8/
  13. ^ T. Sundara Row, "Geometric exercises in paper folding", (1896) [1], [2]
  14. ^ a b 折紙おりがみ数学すうがく―ユークリッドの作図さくずほうえて(ゲレトシュレーガーしる深川ふかがわ英俊ひでとしわけ森北もりきた出版しゅっぱん、2002ねん4がつ30にちISBN 978-4627016811
  • 伏見ふしみ 康治こうじ, 伏見ふしみ 満枝みつえがみ幾何きかがく』(増補ぞうほ新版しんぱん日本にっぽん評論ひょうろんしゃ、1984ねんISBN 4535781397 
  • 多面体ためんたい折紙おりがみせい多面体ためんたいじゅんせい多面体ためんたいおよびその双対そうつい-(川村かわむらみゆきしる日本にっぽん評論ひょうろんしゃ、1995ねん12月10にち
  • オリガミクスI【幾何きか図形ずけいがみ】(芳賀はが和夫かずおちょ日本にっぽん評論ひょうろんしゃ、1999ねん10がつ10日とおか
  • オリガミクスII【かみったら,数学すうがくえた】(芳賀はが和夫かずおちょ日本にっぽん評論ひょうろんしゃ、2005ねん8がつ30にち
  • 折紙おりがみ数学すうがく ユークリッドの作図さくずほうえて』ISBN 4627016816
  • Kazuo Haga edited by Josefina C Fonacier and Masami Isoda. Origamics: Mathematical Explorations through Paper Folding, World Scientific, NJ, 2008. ISBN 978-981-283-489-8

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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