長沼ながぬま健けん

長沼ながぬま 健けん
日本にっぽん代表だいひょう対たいベトナム代表だいひょうでの長沼ながぬま健けん（左側ひだりがわ、右みぎはデットマール・クラマー、1963年ねん10月がつ12日にち）
名前なまえ
カタカナ	ナガヌマ ケン
ラテン文字もじ	NAGANUMA Ken
基本きほん情報じょうほう
国籍こくせき	日本にっぽん
生年月日せいねんがっぴ	(1930-09-05) 1930年ねん9月5日にち
出身しゅっしん地ち	広島ひろしま県けん広島ひろしま市し袋町ふくろまち
没ぼつ年月日ねんがっぴ	(2008-06-02) 2008年ねん6月2日にち（77歳さい没ぼつ）
選手せんしゅ情報じょうほう
ポジション	FW
代表だいひょう歴れき
1954-1961	日本にっぽん	4(1)
■テンプレート（■ノート ■解説かいせつ）■サッカー選手せんしゅpj

長沼ながぬま 健けん（ながぬま けん、1930年ねん9月5日にち - 2008年ねん6月2日にち）は、広島ひろしま県けん広島ひろしま市し中ちゅう区く袋町ふくろまち出身しゅっしんの元もとサッカー選手せんしゅ・日本にっぽん代表だいひょう選手せんしゅ、元もと日本にっぽん代表だいひょう監督かんとくである。1994年ねんより第だい8代だい日本にっぽんサッカー協会きょうかい会長かいちょうを4年ねん務つとめ、その後ご同どう協会きょうかい最高さいこう顧問こもんのほか日本にっぽんフットサル連盟れんめい名誉めいよ会長かいちょう、日本にっぽんハンディキャップサッカー連盟れんめい会長かいちょう、日本にっぽん体育たいいく協会きょうかい副ふく会長かいちょう、埼玉さいたまスタジアム2002場ば長ちょう。

来歴らいれき

若年じゃくねん時代じだい

生年せいねんの1930年ねんはW杯はいの第だい1回かい大会たいかいが開催かいさいされた年としでもあった。

実家じっかは広島ひろしまの老舗しにせ電気でんき工事こうじ業ぎょう・長沼ながぬま電業社でんぎょうしゃ。祖父そふの長沼ながぬま鷺さぎ蔵ぞうは賀茂かも郡ぐん御園みその宇村（現げん・東広島ひがしひろしま市し）出身しゅっしんの広島ひろしま藩はん士しで、戊辰戦争ぼしんせんそうの際さいに結成けっせいされた「神かみ機き隊たい」の参謀さんぼう。明治維新めいじいしん後ご、廣島ひろしま県けん警察けいさつ部ぶに奉職ほうしょくし刑事けいじ係がかりを務つとめた後のち、数々かずかずの事業じぎょうを起おこしその一ひとつが長沼ながぬま電業社でんぎょうしゃであり、のち広島ひろしま有数ゆうすうの実業じつぎょう家かとなり、広島ひろしま市議会しぎかい議員ぎいんなどの要職ようしょくを務つとめた。父親ちちおや、実兄じっけいもサッカー選手せんしゅ。広島ひろしまは野球やきゅうが非常ひじょうに盛さかんな地域ちいきであるが、進学しんがくした旧制きゅうせい広島ひろしま高等こうとう師範しはん学校がっこう附属ふぞく小学校しょうがっこう（現げん・広島大学ひろしまだいがく附属ふぞく小学校しょうがっこう）には野球やきゅう班はん（部ぶ）がなく、小学校しょうがっこう時じから自然しぜんにサッカーを始はじめた。

1945年ねん15歳さいの夏なつ、原爆げんばく投下とうかの日ひには広島ひろしま市内しない中心ちゅうしん部ぶにあった学校がっこうでの防空ぼうくう当番とうばんが前夜ぜんやにあり、当日とうじつ7時じまでいて、その後ご8キロ西北せいほくの疎開そかい先さき、現在げんざい広島ひろしまビッグアーチがある付近ふきん・沼田ぬまた（現げん・安佐南あさみなみ区く沼田ぬまた）まで自転車じてんしゃで帰かえる途中とちゅう、家いえに着つく直前ちょくぜん被爆ひばくした。ちょうど山蔭やまかげに入はいったところで一命いちめいをとりとめた。30分ふん帰がえりが遅おそかったら直下ちょっかだった。1週間しゅうかん後ご、帰かえってこない村人むらびとの捜索そうさくのため市内しないに入はいり地獄じごく絵えを見みる。「あんなにたくさんの死体したいをいっぺんに見みた人ひとは世界せかいにもそんなにいないと思おもいますよ。それも誰だれが誰だれだか分わからないんだから」と話はなしていた。多おおくの知人ちじん・級友きゅうゆうを亡なくし、自みずからも亡なくなるまで白血球はっけっきゅう過多かたで苦くるしんでいた。被爆ひばく者しゃ手帳てちょうを持もっていた。後年こうねん、海外かいがい遠征えんせいすると「お前まえのネイティブタウンはどこだ」と聞きかれ「広島ひろしまです」と答こたえると、みんな原爆げんばくのことは知しっていて、「お前まえは何なんで生いきてるんだ」と驚おどろかれた。外国がいこくでは広島ひろしま市民しみんは全員ぜんいん死しんだという認識にんしきであった。長沼ながぬまや古川ふるかわ能のう章あきらたちが原爆げんばくで死しんでいたら、日本にっぽんサッカーの戦後せんごの歴史れきしは大おおきく変かわっていたといわれる。

学生がくせい時代じだい

終戦しゅうせん後ご、焼やけ野原のはらとなった町まちでグラウンドの整地せいち、食糧しょくりょう調達ちょうたつ、器材きざいの作製さくせいなどを自分じぶん達たちで行おこない、1個いっこだけのボールを縫ぬいながらサッカーに打うち込こみボールを追おった。戦争せんそうで中断ちゅうだんされていた全国ぜんこく中等ちゅうとう学校がっこう選手権せんしゅけん（現げん・全国ぜんこく高等こうとう学校がっこうサッカー選手権せんしゅけん大会たいかい）が1947年ねんに復活ふっかつ。長沼ながぬまは旧制きゅうせい広島ひろしま高等こうとう師範しはん学校がっこう附属ふぞく中学ちゅうがく（現げん・広島大学ひろしまだいがく附属ふぞく高校こうこう）のエースFWとしてチームを戦後せんご初はつの優勝ゆうしょうに導みちびいた。チームは相手あいての虚きょを突つくパスワークに抜群ばつぐんの冴さえを見みせ、ボールを両足りょうあしで自由じゆうに蹴けれるのはこのチームだけだったと言いわれている。

特とくにFWの3人にん、のち“アジアの黒くろ豹ひょう”と謳うたわれた木村きむら現げん、樽谷たるや恵三けいぞう、長沼ながぬまの速攻そっこうは当時とうじの学生がくせいレベルでは止とめられなかった。5-0、4-0、5-0、7-1と4試合しあいで21得点とくてんを叩たたき出だし、得失点とくしってん差さは+20。決勝けっしょう戦せん7-1のスコアは、戦後せんご最多さいた得点とくてん、及および大会たいかい最多さいた得点とくてん差さ記録きろくとして現在げんざいも残のこる。同どうチームの右みぎハーフバック（HB）だったのがヤンマーディーゼルサッカー部ぶ（現げん・セレッソ大阪せれっそおおさか）創設そうせつ者しゃ・古川ふるかわ能のう章あきら。この大会たいかいの初戦しょせんで、のち長ながらく盟友めいゆうとなる東京とうきょう都立とりつ五ご中学ちゅうがく（現げん・都立とりつ小石川こいしかわ高校こうこう）の岡野おかの俊一郎しゅんいちろうと対戦たいせんしている。翌よく1948年ねん、国体こくたいでも優勝ゆうしょう。

1949年ねん、長沼ながぬまら新制しんせい広島ひろしま高等こうとう師範しはん学校がっこう附属ふぞく高校こうこうのメンバー8人にんが卒業そつぎょう後ご関西学院大学かんせいがくいんだいがく入はいりし1950～1952年ねん、関西かんさい学生がくせいリーグ3連覇れんぱ、1950年ねん大学だいがく王座おうざ、関学かんがくの黄金おうごん時代じだいを築きずいた。関学かんがくへの進学しんがくは親戚しんせきの手島てじま志郎しろうのアドバイスによるもの。1950年ねんは、長沼ながぬまら現役げんえき大学生だいがくせいメンバーと鴇田ときた正憲まさのりらOBを加くわえた全ぜん関学かんがくが全日本ぜんにほんサッカー選手権せんしゅけん大会たいかい（天皇杯てんのうはいの前身ぜんしん）で慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがくを6-1で降くだして優勝ゆうしょう。

1953年ねん、関西学院大学かんせいがくいんだいがくを卒業そつぎょうするとさらに大学だいがくでサッカーを続つづけるためと、電気でんき関係かんけいの家業かぎょうを将来しょうらい継つぐためもあり、関東かんとう学生がくせいリーグで前年ぜんねん2位いであった中央大学ちゅうおうだいがくの3年ねん（学部がくぶは当時とうじの工学部こうがくぶ）に編入へんにゅう。4年ねん次じには主将しゅしょうを務つとめ100人にんの部員ぶいんを統率とうそつし、全日本ぜんにほん大学だいがくサッカー選手権せんしゅけん大会たいかい2年ねん連続れんぞく準じゅん優勝ゆうしょうに導みちびいた。

中央大学ちゅうおうだいがく時代じだいの1953年ねんには西にしドイツ・ドルトムントで開催かいさいされた第だい3回かい国際こくさい学生がくせい週間しゅうかん（ユニバーシアードの前身ぜんしん）に初はじめて日本にっぽん学生がくせい代表だいひょうとして岡野おかの、平木ひらき隆三りゅうぞうら17名めいと参加さんか、約やく2ヶ月かげつにわたってヨーロッパを転戦てんせんした。これは竹腰たけこし重しげる丸まる技術ぎじゅつ委員いいん長ちょうの提唱ていしょうで、日本にっぽんサッカーの復興ふっこうのため若わかい人ひとの視野しやを広ひろげて将来しょうらいに役立やくだててもらおうと企図きとされたもので試合しあい、ホームステイの他ほか、オペラ、美術館びじゅつかんなどを見みてまわった。しかし当時とうじの蹴球しゅうきゅう協会きょうかいには金かねはなく参加さんか費用ひようは自腹じばら（個人こじん負担ふたん+出身しゅっしん校こうや都道府県とどうふけん協会きょうかいの募金ぼきん）だった。この頃ころドイツの街まちもまだ戦禍せんかが生々なまなましかったが、あちこちに見事みごとな芝しばがあった。日本にっぽんには神戸こうべと横浜よこはまの外国がいこく人じんクラブにしか芝しばのグラウンドは無なかった。

1954年ねんには、日本にっぽんが初はじめてワールドカップ地区ちく予選よせんに参加さんかした第だい5回かいスイスW杯はい予選よせんの日本にっぽん代表だいひょう(当時とうじの名称めいしょうは全日本ぜんにほん)に選出せんしゅつされる。3月7日にち、スイスW杯はい予選よせんグループ13初戦しょせんの雪ゆきの神宮じんぐう競技きょうぎ場じょう（現げん・国立こくりつ競技きょうぎ場じょう）の対たい韓国かんこく戦せんで記念きねんすべきW杯はい予選よせんにおける日本にっぽん代表だいひょうの第だい1号ごうゴールを決きめる。この試合しあいは日にち韓かん宿命しゅくめいの対決たいけつ、サッカー日にち韓かん戦せんの第だい1戦せん、第だい1号ごうゴールでもあった。この頃ころ日本にっぽんサッカーの目標もくひょうはオリンピックであり、長沼ながぬまはワールドカップとは何なにかよく分わからずやっていたと言いう。この頃ころの日本にっぽんサッカーはそのような時代じだいであった。『東京とうきょうタイムズ』1969年ねん2月がつ11日にち付づけの記事きじにワールドカップを「オリンピックより数すう段だん上じょうのプロ・アマ合同ごうどうの世界せかい選手権せんしゅけん」と説明せつめいしている。

古河電工ふるかわでんこうへ

中央大学ちゅうおうだいがく卒業そつぎょう後ごの1955年ねん、家業かぎょうが古河電工ふるかわでんこうの製品せいひんを東洋工業とうようこうぎょう（現げんマツダ）や中国電力ちゅうごくでんりょくに納おさめる仕事しごとをしていた縁故えんこもあり、当時とうじ関東かんとう実業じつぎょう団だんリーグ2部ぶに転落てんらくしていた古河電工ふるかわでんこう（現げんジェフユナイテッド市原いちはら・千葉ちば）へ入団にゅうだん。当時とうじの古河電工ふるかわでんこうサッカー部ぶは、創部そうぶ10年ねんを経へてはいたものの、アイスホッケーの選手せんしゅも混こんじる同好どうこう会かいレベルのチーム。本格ほんかく的てきなサッカー選手せんしゅは長沼ながぬまら数すう人にんだけだった。この頃ころ、社会しゃかい人じんスポーツはまだ熱気ねっきがなく「スポーツは学生がくせいまで」という考かんがえが日本にっぽんでは主流しゅりゅうだった。古河ふるかわは他たの企業きぎょうよりもスポーツに関かんして理解りかいが深ふかく、「社員しゃいんの志気しきを高たかめるために」と社長しゃちょうが号令ごうれいをかけて、バレーボール部ぶとサッカー部ぶに力ちからを入いれることになり、サッカー部ぶの強化きょうかを一任いちにんされたのが長沼ながぬまだった。「スポーツは学生がくせいまで」という考かんがえを改あらためなくてはいけないと、毎年まいとし毎年まいとし、いい選手せんしゅを獲えってくれと会社かいしゃに要請ようせいした。社業しゃぎょうが第だい一いち、毎日まいにち5時じまで仕事しごとをして練習れんしゅうとなるが、自前じまえのグラウンドはなく、ボールは蹴けらず、皇居こうきょの周まわりを何なん周しゅうも走はしるだけ。二重橋にじゅうばし前まえの手入ていれの行いき届とどいた芝生しばふ公園こうえんを見みながら「あそこで蹴けれたら気持きもちがいいだろうな」と思おもいながら走はしった。ボールを蹴けるのは週末しゅうまつのみ、毎回まいかい違ちがう郊外こうがいのグラウンドを借かりてボールを蹴けった。ここでもエースフォワードとして活躍かつやくし、すぐに関東かんとう実業じつぎょう団だんリーグ2部ぶ優勝ゆうしょう、1部ぶ昇格しょうかくに導みちびく。「長沼ながぬまを中心ちゅうしんに何なにか始はじめるらしい」と知しった平木ひらき隆三りゅうぞうは1957年ねん、湯浅ゆあさ電池でんちを円満えんまん退社たいしゃして古河電工ふるかわでんこうへ移うつったほどであった。長沼ながぬまは古河電工ふるかわでんこうに入社にゅうしゃした1955年ねんに読売新聞社よみうりしんぶんしゃの後援こうえんで新設しんせつされた全国ぜんこく都市とし対抗たいこうサッカー選手権せんしゅけん大会たいかいに「東京とうきょうクラブ」のメンバーとして出場しゅつじょうして優勝ゆうしょうしている（翌年よくねんも）。

1956年ねん、メルボルンオリンピック日本にっぽん代表だいひょうに選えらばれたものの下痢げりを発症はっしょうして隔離かくり病棟びょうとうに拘束こうそくされ、その間あいだにチームは1試合しあいで敗退はいたいした。1958年ねん、東京とうきょうアジア大会たいかい日本にっぽん代表だいひょう。1959年ねん、28歳さいで古河電工ふるかわでんこうのプレイングマネージャーとなり同年どうねん実業じつぎょう団だん、都市とし対抗たいこうの2冠かんに輝かがやいた。

翌よく1960年ねん、古河電工ふるかわでんこうを実業じつぎょう団だんチームとして初はじめて天皇杯てんのうはいを制覇せいは、日本一にっぽんいちに導みちびく。それまでの学生がくせいサッカーの時代じだいから、社会しゃかい人じんサッカーの時代じだいの始はじまりだった。更さらに翌よく1961年ねんは史上しじょう初はつの3冠かん（全日本ぜんにほん（天皇杯てんのうはい）、実業じつぎょう団だん、都市とし対抗たいこう）を達成たっせいしこの年とし新設しんせつされた、第だい1回かい日本にっぽん年間ねんかん最優秀さいゆうしゅう選手せんしゅ賞しょう（フットボーラー・オブ・ザ・イヤー）を受賞じゅしょうした。

親分おやぶん肌はだかつ人柄ひとがらの良よさから長沼ながぬまのまわりには自然しぜんと人ひとが集あつまってきたといわれ、長沼ながぬまが関学かんがく、中大ちゅうだい、古河電工ふるかわでんこうと移うつるとともに日本にっぽんサッカー界かいの勢力せいりょく地図ちずが塗ぬり替かえられていき、古河ふるかわを強豪きょうごうにしたことによって八重樫やえがし茂生しげお、宮本みやもと征勝まさかつ、川淵かわぶち三郎さぶろう、木之本きのもと興きょう三さん、清きよし雲くも栄さかえ純じゅん、岡田おかだ武史たけしらのちの重要じゅうよう人物じんぶつが古河ふるかわ入いりすることになった。彼かれらは「長沼ながぬま一家かずや」と呼よばれた。『古河電工ふるかわでんこうサッカー部ぶ史し』は、「長沼ながぬまが古河ふるかわに入社にゅうしゃしてなかったら、歴史れきしは変かわっていただろう」と書かいている。

この頃ころ古河ふるかわのプレイングマネージャーだった長沼ながぬまは日本にっぽん代表だいひょう入いりを辞退じたいし続つづけたといわれ、代表だいひょう出場しゅつじょう試合しあい数すうは多おおくはない。1960年ねんに来日らいにちしたデットマール・クラマーが、長沼ながぬまの指導しどう者しゃとしての能力のうりょくに目めを付つけ、強引ごういんに代表だいひょう試合しあいに出場しゅつじょうさせたといわれている（1961年ねん11月28日にち、対たいユーゴスラビア代表だいひょう）。

日本にっぽん代表だいひょう監督かんとく就任しゅうにん

1962年ねん、この頃ころのサッカーはまったく人気にんきが無なく日本にっぽん代表だいひょう(当時とうじの名称めいしょうは全日本ぜんにほん)の監督かんとくといえば、ある程度ていどの年配ねんぱい者しゃが当あたり前まえだったが、同郷どうきょうで当時とうじ日本にっぽんサッカー協会きょうかい会長かいちょうだった野津のつ謙けんが大だい英断えいだんを下くだし、まだ現役げんえき選手せんしゅでありながら33歳さいで日本にっぽん代表だいひょう監督かんとく（コーチ・岡野おかの俊一郎しゅんいちろう(32歳さい)）に抜擢ばってきされる。これは日本にっぽんサッカー近代きんだい化かのスタートだった。1962年ねん12月9日にちに行おこなわれた日本にっぽん代表だいひょう対たいスウェーデン選抜せんばつ戦せんが、当時とうじまだ30代だい前半ぜんはんだった長沼ながぬま監督かんとく&岡野おかの俊一郎しゅんいちろうコーチ・コンビのデビュー戦せんで、同時どうじに最古さいこのサッカー日本にっぽん代表だいひょうのサポーター組織そしき・日本にっぽんサッカー狂きょう会かいのデビュー戦せんでもあった。新しん体制たいせい下かでは、クラマーが技術ぎじゅつ面めんや戦術せんじゅつ面めんでチームを牽引けんいんし、岡野おかのがそれを補佐ほさ。そして人望じんぼうの厚あつい長沼ながぬまが選手せんしゅを束たばねるという適てき確かくな役割やくわり分担ぶんたんが機能きのうし、日本にっぽん代表だいひょうは短期間たんきかんで見違みちがえるような進歩しんぽを遂とげた。当時とうじの日本にっぽん代表だいひょうチームは、東京とうきょうに本拠ほんきょを置おく「丸まるの内うち御三家ごさんけ」の東ひがしのグループと、東洋工業とうようこうぎょうと八幡やはた製鉄せいてつの広島ひろしま出身しゅっしん者しゃを中心ちゅうしんとした西にしのグループとがあってお互たがい仲なかが悪わるかったが、長沼ながぬまが広島ひろしま出身しゅっしんで西にしのグループにも崇拝すうはいされていたため和わが保たもたれたといわれる。

長沼ながぬまは日本にっぽん代表だいひょう監督かんとくとして1964年ねん、東京とうきょうオリンピックの対たいアルゼンチン戦せんでの勝利しょうりは日本にっぽんに空前くうぜんのサッカーブームを起おこし1968年ねん、メキシコオリンピックでも銅どうメダル獲得かくとくの偉業いぎょうを達成たっせいした。長沼ながぬまと岡野おかのは二に人にんで、代表だいひょう選手せんしゅの所属しょぞくチームとの交渉こうしょう、スカウティング、マッチメイク、広報こうほう活動かつどう等とうを行おこない代表だいひょうチームの強化きょうかとサッカー普及ふきゅうに尽力じんりょくした。クラマー-長沼ながぬま-岡野おかのの共同きょうどう作業さぎょうは、ほぼ何なにも無ない土地とちに種たねを蒔まき、開化かいかさせることに等ひとしかった。

クラマーの提案ていあんを受うけ1965年ねんから発足ほっそくした日本にっぽんサッカーリーグ(JSL)の創設そうせつにも岡野おかの、西村にしむら章一しょういち、重松しげまつ良典よしのりらと尽力じんりょく。長沼ながぬまはこの時ときもまだ現役げんえき選手せんしゅだった。さまざまな困難こんなん、解決かいけつしなければならない問題もんだいは山積さんせきしたが、「日本にっぽんサッカーを上昇じょうしょうさせるために、どうしてもやろう」という、長沼ながぬまたちの決断けつだんがあった。長沼ながぬまは1966年ねんのサッカー協会きょうかい機関きかん誌しの座談ざだん会かいで、JSL発足ほっそくの目的もくてきを「会社かいしゃ員いんとして仕事しごとを守まもりながら、高たかい技術ぎじゅつのスポーツを続つづけていけること。サッカーの普及ふきゅうに役立やくだつこと。第だい一線いっせん選手せんしゅに日常にちじょうトレーニングの目標もくひょうを与あたえ、激はげしい試合しあい経験けいけんを積つませることで、国際こくさい試合しあいへの準備じゅんびをすること」の三みっつの柱はしらを挙あげた。クラマーの提案ていあんは、ドイツの北部ほくぶ・南部なんぶ・西部せいぶ3リーグ制せいの地域ちいきリーグであるレギオナルリーガを想定そうていしていたが、新幹線しんかんせんと在来ざいらい線せんを乗のり継つげば「全国ぜんこくリーグ」が出来できると反撥はんぱつしたのは長沼ながぬまたちであったという。アマスポーツの全国ぜんこくリーグは初はじめてのケースで、他たの競技きょうぎ団体だんたいからも大おおきな注目ちゅうもくを浴あびた。アイスホッケー、バスケットボール、バレーボールの全国ぜんこくリーグが翌年よくねんから追随ついずいした。JSL創成そうせい期きの苦労くろうは現在げんざいとは比くらべ物ものにならない程ほど過酷かこくなもので、広島ひろしまなどへの遠隔えんかく地ちへの試合しあいでは「われわれには夜行やこう列車れっしゃがあります」と社業しゃぎょうに差さし支つかえると渋しぶる会社かいしゃと交渉こうしょう。週末しゅうまつに移動いどうし日曜にちように試合しあいをこなし、夜行やこうで帰かえり月曜げつようの朝あさ、東京とうきょう駅えきに着つくとそのまま丸まるの内うちの会社かいしゃに出社しゅっしゃし仕事しごとをした。部員ぶいんには「絶対ぜったいに寝ねるな」と釘くぎを刺さしたという。リーグが始はじまって社内しゃないでも「いくら何なんでもかわいそうだ」という声こえが出でて、月曜げつようの午前ごぜん中ちゅうは休やすめる会社かいしゃも出でてきた。それがセミプロ化かへの流ながれを作つくったのではないか、と長沼ながぬまは話はなしている。その後ご古河ふるかわは、サッカー部ぶを廃部はいぶするという時期じきがあったが、長沼ながぬまの存在そんざいがあったから廃部はいぶを救すくえたという。サッカーの白黒しろくろボールの日本にっぽんでの導入どうにゅうを協会きょうかい長老ちょうろうは反対はんたいしたが、長沼ながぬまたちが強行きょうこうし、1965年ねんの後期こうきリーグ戦せんから導入どうにゅうされた。

1966年ねん、日本にっぽん代表だいひょうを連つれヨーロッパ遠征えんせい中ちゅう、せっかくだから選手せんしゅにワールドカップを見みせてやろうとドーバーのインド人ひとが経営けいえいする安宿やすやどに泊とまり、ワールドカップイングランド大会たいかいを自身じしんも初はつ観戦かんせん。またドイツ遠征えんせい中ちゅう、アディダス社しゃのアディ・ダスラー（アドルフ・ダスラー）に代表だいひょう選手せんしゅのシューズを作つくってもらう。これが現在げんざい、麒麟麦酒きりんびーる（キリンビール）・キリンビバレッジと両輪りょうりんで日本にっぽん代表だいひょうを支ささえる有力ゆうりょくスポンサー・アディダスと協会きょうかいとの長ちょうきに亘わたる付つき合あいの始はじまりであった。

また、長沼ながぬまは後年こうねんキリンビールのスポンサー獲得かくとくも実現じつげんさせている。天皇杯てんのうはいの決勝けっしょう戦せんが元日がんじつ国立こくりつ競技きょうぎ場じょう開催かいさいになったのは、明治めいじ神宮じんぐうに250万まん人にんの参拝さんぱい客きゃくが来くるので、初詣はつもうで帰かえりの1％でも来きてもらえないか、と思案しあんして変更へんこうしたものという。1969年ねん、日本にっぽんで開催かいさいされたFIFA・AFC・JFA共催きょうさいコーチング・スクールでクラマーの助手じょしゅを務つとめ、世界せかい初はつのFIFAコーチライセンス取得しゅとく。1970年ねん、野津のつのお供ともでワールドカップメキシコ大会たいかいを視察しさつ。この時ときはロイヤルボックスで観戦かんせんし、当時とうじの国際こくさいサッカー連盟れんめい(FIFA)会長かいちょう・スタンリー・ラウスから話はなしが出でたというワールドカップ日本にっぽん招致しょうちの話はなしを野津のつから聞きく。ワールドカップ日本にっぽん招致しょうちを野津のつに進言しんげんしたのは長沼ながぬまだともいわれるが、長沼ながぬまは反対はんたいしていたとも言いわれ、この辺あたりの経緯けいいは不明ふめい。1960年代ねんだいから海外かいがい遠征えんせい時じにサッカー協会きょうかいには内緒ないしょで試合しあいのギャラを選手せんしゅに還元かんげんしていたという。1972年ねん、日本にっぽん蹴球しゅうきゅう協会きょうかい技術ぎじゅつ委員いいん長ちょう。1974年ねん、同どう理事りじとなり協会きょうかいの法人ほうじん化か（財団ざいだん法人ほうじん日本にっぽんサッカー協会きょうかいに名称めいしょう変更へんこう）にも奔走ほんそう。日本にっぽん代表だいひょう監督かんとくは1976年ねんまで歴代れきだい最長さいちょうの11年間ねんかん指揮しきを執とった。国際こくさいAマッチ監督かんとく通算つうさん最多さいたの75試合しあい。この頃ころの代表だいひょう監督かんとくは契約けいやくでなく、協会きょうかいの組織そしきの中なかの役職やくしょくのため無む報酬ほうしゅうだった。

日本にっぽんサッカーの改革かいかく者しゃとして

当時とうじのJFAの財政ざいせいは開業医かいぎょういの野津のつ会長かいちょうの個人こじん的てきな信用しんようで借金しゃっきんを繰くり返かえす「自転車じてんしゃ操業そうぎょう」状態じょうたい。代表だいひょう監督かんとくを退任たいにんしたこの年とし、長沼ながぬまは協会きょうかいの組織そしきを近代きんだい化かするには医師いしの野津のつ会長かいちょうでは限界げんかいがあると認識にんしきし、岡野おかの・重松しげまつらと野津のつ会長かいちょう=小野おの卓たく爾なんじ専務せんむ理事りじ体制たいせいの刷新さっしんを画策かくさく。三菱化成みつびしかせい工業こうぎょう（現げん・三菱化学みつびしかがく）社長しゃちょうだった篠島しのじま秀雄ひでおに会長かいちょう就任しゅうにんを要請ようせいした。しかし篠島しのじまが1975年ねん急逝きゅうせいしたため篠島しのじまから推薦すいせんされていた平井ひらい富三郎とみさぶろう（元もと・新しん日本にっぽん製鐵せいてつ社長しゃちょう）を新あらたに担かつぎ、野津のつ会長かいちょうの後継こうけいとした。自身じしんも専務せんむ理事りじとなり平井ひらい会長かいちょう=長沼ながぬま体制たいせいとして実質じっしつ的てきに日本にっぽんサッカーのリーダーとなり、そのかじ取とり役やくを担になう。長沼ながぬまと平井ひらいとの初はつ会談かいだんは四谷よつやの料亭りょうていで行おこなわれたが、長沼ながぬまが国産こくさんのマイカーを運転うんてんして(長沼ながぬまは下戸げこ)門もんをくぐると、門番もんばんに呼よび止とめられて「お迎むかえの車くるまは裏口うらぐちでお待まち下ください」と言いわれた。高給こうきゅう料亭りょうていにマイカーで乗のり付つける客きゃくはいないことを長沼ながぬまは知しらなかったのか、お抱かかえ運転うんてん手しゅと間違まちがえられた。平井ひらいはサッカーには明あかるくなかったが、平井ひらいを迎むかえたのは財政ざいせいの確立かくりつが至上しじょう命令めいれいであったためで、財政ざいせいの確立かくりつを平井ひらい会長かいちょうに進言しんげんしたのは長沼ながぬまだった。平井ひらい会長かいちょう時代じだいのJFAの忘年会ぼうねんかいは、代々木よよぎにある新日鐵しんにってつの「山谷さんや寮りょう(現在げんざいは代々木よよぎ倶楽部くらぶ)」で行おこなわれ、1階かいの大広間おおひろまには当時とうじの代表だいひょう監督かんとくにJFAとJSLの職員しょくいんや関係かんけい者しゃ、新聞しんぶんやテレビ、サッカー専門せんもん誌しの記者きしゃら80人にん近ちかくがすき焼やきを食たべながらサッカー談義だんぎに花はなを咲さかせた。長沼ながぬまが大だい会社かいしゃのトップを間近まぢかに見みて経営けいえいの心得こころえを実地じっちに学まなんだことは大おおきな意味いみを持もった。これらはサッカー誌しなどで「76政変せいへん」「長沼ながぬまのクーデター」「無血むけつクーデター」などと呼よばれている。「無血むけつクーデター」というのは、この交代こうたいが揉もめずにすんなり行おこなわれたため。野津のつらも世代せだい交代こうたいの時期じきと考かんがえていたのではといわれている。長沼ながぬまがリーダーとなったことで、半はん世紀せいき以上いじょうも続つづいてきた大学だいがくリーグ中心ちゅうしんのサッカー協会きょうかいが日本にっぽんリーグを中心ちゅうしんとする社会しゃかい人じんチームの関係かんけい者しゃの手てに移うつるという大おおきな分岐ぶんき点てんであった。また「丸まるの内うち御三家ごさんけ」の影響えいきょう力りょくがさらに強つよまることとなった。長沼ながぬまは、平井ひらい富三郎とみさぶろう、藤田ふじた静夫しずお、島田しまだ秀夫ひでおと3代だいの会長かいちょうを立たてながら、実質じっしつ的てきに激動期げきどうきの改革かいかくを主導しゅどうした。この頃ころ、早稲田大学わせだだいがくの同好どうこう会かいでサッカーに興きょうじていた岡田おかだ武史たけしを呼よびつけ同どう大学だいがく蹴球しゅうきゅう部ぶに入部にゅうぶさせたという逸話いつわも残のこる。加茂かも周あまねの日産自動車にっさんじどうしゃサッカー部ぶ監督かんとく就任しゅうにんは、長沼ながぬまらの仲介ちゅうかいによるもの。また協会きょうかいの運営うんえいを円滑えんかつに進すすめるため、古河ふるかわの経理けいり部門ぶもんにいた小倉おぐら純二じゅんじを抜擢ばってきした。小倉おぐらが「国際こくさい派は」となるのは、1981年ねんに古河電工ふるかわでんこうのロンドン支店してんに転勤てんきんになった小倉おぐらに長沼ながぬまが「日本にっぽんサッカー協会きょうかい国際こくさい委員いいん（在ざいロンドン）」と書かかれた名刺めいしを持もたせてからである。

当時とうじの日本にっぽんサッカー協会きょうかいには財源ざいげん確保かくほという大おおきなテーマがあった。長沼ながぬまはFIFAや欧州おうしゅうのクラブ組織そしきを参考さんこうに、以下いかの3つを柱はしらとして協会きょうかいの組織そしき改革かいかくする。

• FIFAの組織そしきに準じゅんじた専門せんもん委員いいん会かいの改編かいへん。
• FIFAに先さきじた個人こじん登録とうろく制度せいど（のち年齢ねんれい別べつ登録とうろく制せいに変更へんこう）の導入どうにゅう。個人こじん登録とうろく制度せいどは長沼ながぬまが平井ひらい会長かいちょうに提案ていあんして、平木ひらき隆三りゅうぞうと共ともに計画けいかくを練ねり、大谷おおや四郎しろうにも相談そうだんして発足ほっそくさせたもの。選手せんしゅ個々ここから登録とうろく料りょうを徴収ちょうしゅうするという提案ていあんは中体連ちゅうたいれんから「子供こどもたちから金かねを取とるのか」 などと、強つよい抵抗ていこうを受うけたが1978年ねんから実施じっしした。付随ふずいして日本にっぽんのスポーツでは初はじめて、天皇てんのう杯はいを日本にっぽんのすべての加盟かめいチームに門戸もんこを開ひらいた。
• 自転車じてんしゃ操業そうぎょうともいわれた当時とうじのサッカー協会きょうかいの慢性まんせい的てきな赤字あかじ体質たいしつからの脱却だっきゃく。オフィシャルサプライヤー制度せいどを始はじめ、デサント、アシックス、プーマと契約けいやく。1977年ねんに結成けっせいした「日本にっぽんサッカー後援こうえん会かい」 の会費かいひと個人こじん登録とうろく制度せいど、国際こくさい試合しあいの興行こうぎょう収入しゅうにゅう、日本にっぽん体育たいいく協会きょうかいからの補助ほじょ金きんと合あわせ財政ざいせい基盤きばん確立かくりつをもたらした。

同年どうねん、組織そしき的てきに選手せんしゅを発掘はっくつし育成いくせいするナショナル・トレーニング・センター制度せいどを発足ほっそく。

1976年ねんと1977年ねんに電通でんつうと組くんでニューヨーク・コスモスのペレの引退いんたい試合しあいを国立こくりつ競技きょうぎ場じょうで開催かいさい。特とくに1977年ねん9月がつ10日とおか、国立こくりつ競技きょうぎ場じょうで対たい古河電工ふるかわでんこう戦せんの後のち、9月14日にち開催かいさいの対たい日本にっぽん代表だいひょう戦せん（ペレ、釜本かまもと邦茂くにしげ選手せんしゅの引退いんたい試合しあい）は、当時とうじのサッカー競技きょうぎ最多さいた入場にゅうじょう者しゃ数すうを記録きろくする観衆かんしゅう6万まん5,000人にんを集あつめ、国立こくりつ競技きょうぎ場じょうが初はじめて満員まんいんになったといわれ、6,000万まん円えんとも、7,000万まん円えんともいわれる純益じゅんえきを出だした。サッカー協会きょうかいが手掛てがけた初はじめての大おおきな興行こうぎょうで、1978年ねんから実施じっしした個人こじん登録とうろく制度せいど導入どうにゅうと合あわせ以降いこう、1億おく円えんあった累積るいせき赤字あかじを一掃いっそうし、日本にっぽんサッカー協会きょうかいは赤字あかじ体質たいしつから脱却だっきゃくした。しかしそれまで全日本ぜんにほんの若手わかて合宿がっしゅくやソ連それん遠征えんせいなどの費用ひようを選手せんしゅに自己じこ負担ふたんをさせていたため、アマチュア団体だんたいであるサッカー協会きょうかいが、電通でんつうと組くんで有料ゆうりょう興行こうぎょうを行おこなったことは"商業しょうぎょう主義しゅぎは是これか非ひか"議論ぎろんを起おこした。

この年としを境さかいに協会きょうかいは一いち度ども赤字あかじになることはなく、Jリーグ発足ほっそく直前ちょくぜんには40億おく円えんの金かねがあったといわれている。同おなじ年ねん、。底辺ていへん拡大かくだいのため全日本ぜんにほん少年しょうねんサッカー大会たいかいをスタートさせ、全国ぜんこく高等こうとう学校がっこうサッカー選手権せんしゅけんを国立こくりつ競技きょうぎ場じょうでの決勝けっしょうなど首都しゅと圏けん開催かいさいへ移うつし、全国ぜんこくネットのテレビ放映ほうえいで普及ふきゅうを図はかる。また日本にっぽん体育たいいく協会きょうかいにこれも先さきじて長沼ながぬまが企画きかくして始はじめたコーチングスクール開催かいさい、また、協会きょうかいの有力ゆうりょくスポンサー、のちのトレーニングセンター建設けんせつなどで、ユース世代せだいの指導しどうがスムーズに行おこなわれるようになった。日本にっぽんでもコーチのシステムをつくった方ほうがいいというクラマーのアドバイスを受うけて、コーチングスクール開催かいさい等とう、それを具体ぐたい化かしたのは全すべて長沼ながぬまだった。

長沼ながぬまが強つよい意欲いよくで長年ながねん取とり組くんだのがコーチ制度せいどの確立かくりつだった。一握ひとにぎりの代表だいひょう選手せんしゅでオリンピックで銅どうメダルは取とったが、目指めざすワールドカップは気きの遠とおくなる程遠ほどとおいという認識にんしきを持もち、釜本かまもと・杉山すぎやま級きゅうの選手せんしゅをごっそり育そだてなければならない、それには優秀ゆうしゅうなコーチを全国ぜんこくにばらまかなければならない、将来しょうらいの日本にっぽんサッカーを考かんがえると全日本ぜんにほんだけに構かまってはいられないという考かんがえを持もっていた。長沼ながぬまは1969年ねんの新聞しんぶんのインタビューで、「近ちかい目標もくひょうはコーチにライセンスを出だすようにすることだが、各かく県けんに最低さいてい1人にんでもいいからプロの専任せんにんコーチを作つくりたい。とにかく片手間かたてまではサッカーの指導しどうは出来できない。背広せびろ姿すがたで週しゅう1回かいか2回かい指導しどうするだけではだめだ。日本にっぽんにはサッカーをやっている子供こどもたちが20万まん人にんいる（当時とうじ）。同時どうじに今いま迄までチャンスの薄うすかったブルーカラーのサッカーマンとも接触せっしょくし、各層かくそうの人ひとたちにサッカーの面白おもしろさを味あじ会あわせたい」などと話はなした。その後ご実現じつげんさせたコーチ制度せいどの確立かくりつは日本にっぽんスポーツ界かいでは画期的かっきてきな制度せいどであった。岡野おかのは「財政ざいせいが豊ゆたかでないときに、とにかくやらなければ将来しょうらいの日本にっぽんはないんだということでスタートさせた、指導しどう者しゃをきちっとしたシステムの中なかで育そだてていかなければいけないんだというのが、健けんさんの一番いちばん大おおきな功績こうせきだったと思おもいます」と述のべている。また、協会きょうかいの有力ゆうりょくスポンサーにキリンビールが付ついたのは長沼ながぬまが当時とうじ、原宿はらじゅくの協会きょうかいの部屋へやの窓まどから線路せんろを挟はさんで目めと鼻はなの先さきにかつて本社ほんしゃのあったキリンビールに「ああいう（大おおきな）会社かいしゃに支援しえんをお願ねがいできないものか」と思案しあんしたのが始はじまりである。

1978年ねんから始はじめて当初とうしょ赤字あかじを出だしたジャパンカップのスポンサー探さがしに、キリンビール社員しゃいんで審判しんぱん員いんだった久保田くぼた秀一ひでかずに案件あんけんを依頼いらい。久保田くぼたの尽力じんりょくで長沼ながぬまは岡野おかのと共ともに代理だいり店てんなしで当時とうじの同社どうしゃ・小西こにし秀次しゅうじ社長しゃちょうに直談判じかだんぱんし冠かんむりスポンサーを実現じつげんさせ、同どう大会たいかいは1980年ねん第だい3回かい大会たいかいからキリンカップサッカーと名称めいしょう変更へんこうとなった。インターコンチネンタルカップ（トヨタカップ）日本にっぽん開催かいさい実現じつげんにも協力きょうりょくする。1977年ねん、セルジオ越後えちごらの提言ていげんを受うけ日本にっぽんミニサッカー連盟れんめい（現在げんざいの日本にっぽんフットサル連盟れんめい）発足ほっそく。

1981年ねんに日本にっぽん代表だいひょう監督かんとくに就任しゅうにんした森孝もりたか慈の要請ようせいに応こたえ、それまで勝利しょうり給きゅうはおろか日当ひなたさえも出でなかった代表だいひょうチームの報酬ほうしゅう金きんや宿泊しゅくはくホテルを改善かいぜん。これは1983年ねんから韓国かんこくKリーグが始はじまり、韓国かんこく代表だいひょう選手せんしゅに金銭きんせん的てき手当てあてが出でるようになった影響えいきょうがある。1983年ねん、木之本きのもとのJSL事務じむ局長きょくちょう抜擢ばってきに尽力じんりょくした。1984年ねん、日本にっぽんのサッカー界かい初はつの引退いんたい試合しあい「釜本かまもと邦茂くにしげ引退いんたい試合しあい ヤンマーディーゼル対たい日本にっぽんサッカーリーグ選抜せんばつ」（国立こくりつ競技きょうぎ場じょう）開催かいさいに尽力じんりょく。

Jリーグ創設そうせつへの舵取かじとり

1987年ねん、日本にっぽんサッカー協会きょうかい(JFA)副ふく会長かいちょう就任しゅうにん。同年どうねん、エリザベス2世せいが名誉めいよ総裁そうさいを務つとめるイングランドサッカー協会きょうかいに倣ならい、高円宮たかまどのみや憲仁のりひと親王しんのうを名誉めいよ総裁そうさいに迎むかえる。

1989年ねん、FIFAに2002年ねんワールドカップ開催かいさいの意思いしを伝つたえる。森もり健兒けんじ、石井いしい義信よしのぶ、木之本きのもと興きょう三さんらと、のちに川淵かわぶちが中心ちゅうしんとなって進すすめたプロ化か推進すいしんでは難色なんしょくを示しめす長老ちょうろうが多おおくこのままでは頓挫とんざしてしまうと判断はんだん、長沼ながぬまは協会きょうかい内ないにプロ化か検討けんとう委員いいん会かいの設置せっちを提案ていあんし自みずから委員いいん長ちょう（プロリーグ対策たいさく本部ほんぶ長ちょう）に就任しゅうにん、プロ化か反対はんたい派はに対たいする防波堤ぼうはていとなり川淵かわぶちらを強力きょうりょくにバックアップしJリーグを実現じつげんさせた。博報堂はくほうどうがJリーグを手掛てがけることになったのは長沼ながぬまからのリンクであるという。

当初とうしょ、Jリーグ加盟かめいへ難色なんしょくを示しめしていたマツダへのバックアップを広島ひろしま県けん、広島ひろしま市し、広島ひろしま財界ざいかいへ自みずから働はたらきかけ た。また愛知あいち県けんは当初とうしょ、Jリーグ参加さんかに難色なんしょくを示しめしていたが、地域ちいき性せいから全国ぜんこくリーグの格好かっこうが付つかないと、トヨタカップで付つき合あいのあった豊田とよだ章一郎しょういちろうに熱弁ねつべんを振ふるいトヨタ自動車とよたじどうしゃの出馬しゅつばを懇請こんせい、さらに名古屋なごやグランパスエイトから企業きぎょう名めいを外はずさせた事ことも極きわめて大おおきな意味いみがあった。1991年ねん、川淵かわぶちを日本にっぽん代表だいひょう強化きょうか委員いいん長ちょうに抜擢ばってき。日本にっぽん代表だいひょうのW杯はい出場しゅつじょうへの挑戦ちょうせんが、現実げんじつ的てきな目標もくひょうとなったのはこの時ときから。

1993年ねん、日本にっぽん体育たいいく協会きょうかい会長かいちょう代行だいこう。同年どうねん、U-17世界せかい選手権せんしゅけん（現在げんざいのU-17W杯はい）日本にっぽん招致しょうち。古河ふるかわでの出世しゅっせのチャンスを拒こばみ長ながらくサッカー協会きょうかい会長かいちょう職しょくも固辞こじしたといわれる。関係かんけい者しゃが皆みな「健けんさんの頼たのみは断ことわれない」と口くちを揃そろえる磊落らいらく型がたの親分おやぶん肌はだで知しられた長沼ながぬまは1994年ねん、64歳さいで漸ようやく日本にっぽんサッカー協会きょうかい会長かいちょうに就任しゅうにん。日本にっぽん代表だいひょう監督かんとく経験けいけん者しゃとしては初はつの会長かいちょう就任しゅうにんとなった。

その後ごハンス・オフト、パウロ・ロベルト・ファルカンの招聘しょうへい、そして1998年ねんフランスW杯はい予選よせん途中とちゅうでの加茂かも周あまね監督かんとく更迭こうてつ、岡田おかだコーチの昇格しょうかくを英断えいだんし、ジョホールバルの歓喜かんき・日本にっぽんサッカー悲願ひがんのW杯はい初はつ出場しゅつじょうをもたらした。

また2002年ねん日にち韓かんW杯はい招致しょうちでは、世界せかい30ヶ国かこく、延のべ75万まんキロ、地球ちきゅう19周しゅうを飛とび回まわり開催かいさいを実現じつげんさせた。

1996年ねん5月31日にち、2002 FIFAワールドカップの日にち韓かん共催きょうさいが決定けっていし、直後ちょくごに試算しさんした結果けっか、2か国こく開催かいさいによって「収入しゅうにゅうは半減はんげん・支出ししゅつは不変ふへん」となることから2002年ねん日にち韓かんW杯はいは赤字あかじになると見込みこまれた。その赤字あかじの補ほてんの為ために、日にち韓かんW杯はいの収支しゅうし試算しさんが出でた直後ちょくごからJFA内ないで資金しきん(ストック)を貯ためていった。日にち韓かんW杯はいが決定けっていした4ヵ月かげつ後ごの1996年ねん9月がつ10日とおかに開催かいさいされた日本にっぽんサッカー協会きょうかい（JFA）創立そうりつ75周年しゅうねん記念きねんの席せきで、「自社じしゃビルを持もちたい」と発言はつげんし、1997年ねん、JFAは協会きょうかい設立せつりつ75周年しゅうねんを機きに「JFAアクションプラン」を策定さくていした。その中なかに、当時とうじJFA会長かいちょうだった長沼ながぬまは「自前じまえのJFAハウスを持もつ」と明記めいきした(それまでJFAの事務所じむしょは常つねに賃借ちんしゃくだった)。もちろん、長沼ながぬまもすぐに実現じつげんするとは思おもっておらず、遠大えんだいな目標もくひょうのつもりだった。ところが、実際じっさいに日にち韓かんW杯はいが終了しゅうりょうすると、日本にっぽんW杯はい組織そしき委員いいん会かい(JAWOC)は約やく130億おく円えんの黒字くろじを計上けいじょうした。その黒字くろじの一部いちぶとJFAが日にち韓かんW杯はいの赤字補あかじほてんに備そなえて貯ためていた資金しきん(ストック)を合あわせて、JFAは三洋電機さんようでんき株式会社かぶしきがいしゃが所有しょゆうしていたビルを2003年ねんに購入こうにゅうした。この時とき、長沼ながぬまは既すでにJFA会長かいちょうではなかったが、長沼ながぬまが遠大えんだいな目標もくひょうとしてJFAアクションプランに「JFAハウスを持もつ」と記しるしてからわずか6年ねん後ごに目標もくひょうが実現じつげんしたのだった。同年どうねん9月がつ、この日本にっぽんサッカー協会きょうかいビル(JFAハウス)にJFA事務じむ局きょくが移転いてんし、同時どうじに日本にっぽんプロサッカーリーグ（Jリーグ）、日本にっぽんフットボールリーグ(JFL)、日本にっぽん女子じょしサッカーリーグなど国内こくないのサッカー事務じむ局きょくや関連かんれん企業きぎょうも都内とない各地かくちなどから移転いてんし、同年どうねん12月がつ22日にちに2002年ねんW杯はいを記念きねんした日本にっぽんサッカーミュージアムを開設かいせつした。困窮こんきゅうの時代じだいのサッカー協会きょうかいを切きり盛もりしてきた長沼ながぬまにとってJFAハウスは長年ながねん「いつかは」と抱いだき続つづけた夢ゆめだった。

戦後せんご日本にっぽんサッカー史しの歴史れきしを変かえる局面きょくめん全すべてに立たち会あい、しかも重要じゅうような役割やくわりを果はたしてきた人物じんぶつ。長沼ながぬまの人生じんせいは日本にっぽんサッカーの苦悩くのうと葛藤かっとうのクロニクルそのものであった。

デットマール・クラマーは 「私わたしは日本にっぽんサッカー界かいに偉大いだいな貢献こうけんをしたと言いわれますが、それはとんでもない話はなし。ナガヌマのほうがはるかに素晴すばらしい人ひとでした」「私わたしはあくまで招待しょうたいされたアドバイザー。銅どうメダル獲得かくとくには、長沼ながぬまの貢献こうけんのほうが大おおきかった」 と話はなしている。スポーツ報知ほうちは「今いまでこそ、サッカーは野球やきゅうと並ならぶ人気にんきスポーツの地位ちいを確立かくりつしたが、長沼ながぬまは、その礎いしずえをき上ずきあげた最大さいだいの功労こうろう者しゃ」と評ひょうしている。

長沼ながぬま路線ろせんの功罪こうざい

フランスW杯はい予選よせん前まえに、川淵かわぶちに任命にんめいされた加藤かとう久ひさ強化きょうか委員いいん長ちょうが加茂かも監督かんとくでは、アジア予選よせんを勝かち抜ぬけないとして同どう監督かんとくを更迭こうてつし、後任こうにん監督かんとくをネルシーニョに決定けっていした。当時とうじのJFA規定きていでは強化きょうか委員いいん会かいが日本にっぽん代表だいひょう監督かんとくの評価ひょうかを行おこなうと明記めいきされていた。契約けいやく交渉こうしょうは最終さいしゅう段階だんかいに入はいり、残のこりは条件じょうけん面めんを詰つめるだけになっていたのにも関かかわらず、W杯はい誘致ゆうち運動うんどうから帰国きこくした長沼ながぬまは"鶴づるの一声いっせい"で加茂かも続投ぞくとうを決きめてしまった。さらに、その決定けってい過程かていを記者きしゃ会見かいけんで上手うまく説明せつめい出来できなかったばかりか「加茂かもでフランスに行いけなかったら辞任じにんする」と発言はつげんしたものの、加茂かも更迭こうてつ時じに自みずからは会長かいちょう職しょくにとどまった。更さらに契約けいやく交渉こうしょうの最終さいしゅう段階だんかいで、日本にっぽん代表だいひょう監督かんとく契約けいやくを突然とつぜん白紙はくし撤回てっかいされたネルシーニョが"日本にっぽんサッカー協会きょうかいには腐くさったミカンがいる"と長沼ながぬまを非難ひなんしたことも物議ぶつぎを醸かもし、マスメディアを大おおいに賑にぎわせた。長沼ながぬまが専務せんむ理事りじだった1984年ねんに、当時とうじ日産自動車にっさんじどうしゃを率ひきいて日ひの出での勢いきおいだった関学かんがくの後輩こうはい・加茂かもを日本にっぽん代表だいひょう監督かんとくの候補こうほに挙あげながら、梯子はしごを外はずした借かりがあり、1992年ねんのオフト招聘しょうへいの際さいも、川淵かわぶち強化きょうか委員いいん長ちょうの推おすオフトより加茂かもを抜擢ばってきしたかったといわれる。また日本にっぽん単独たんどく開催かいさいを目指めざしていたW杯はいが、政治せいじ的てき妥協だきょうの結果けっか、韓国かんこくとの共催きょうさいとなり韓国かんこくに譲歩じょうほしすぎた事ことも当時とうじ極きわめて強つよい批判ひはんを受うけた(だが、実際じっさいは、2002年ねんワールドカップの日にち韓かん共催きょうさいはFIFA内ないの会長かいちょう選挙せんきょを巡めぐる権力けんりょく闘争とうそうによって決きまったのであって、共催きょうさいは避さけられないことであった。もし、長沼ながぬまが最終さいしゅう的てきに共催きょうさいの決断けつだんを下くださねば、韓国かんこくの単独たんどく開催かいさいになるのは必至ひっしの情勢じょうせいであった)。

これら一連いちれんの出来事できごとにより、1997年ねんから1998年ねんにかけ、長沼ながぬまはとくに若年じゃくねんのジャーナリストと彼かれらを支持しじするファンからの厳きびしい批判ひはんにさらされ、「狼おおかみ少年しょうねんケン」の横断幕おうだんまくが掲かかげられたり、競技きょうぎ場じょうで大おおきなブーイングを浴あびる事こともあった。

晩年ばんねん

1998年ねんにサッカー協会きょうかい会長かいちょう職しょくを岡野おかのに譲ゆずって同どう協会きょうかい名誉めいよ会長かいちょうとなり、日にち韓かんW杯はい終了しゅうりょう後ごに最高さいこう顧問こもんとなった。晩年ばんねんはスポーツ界かい全体ぜんたいの振興しんこうにも力ちからを注そそぎ、日本にっぽん体育たいいく協会きょうかい副ふく会長かいちょうとして地方ちほうの大会たいかいにもこまめに足あしを運はこんだ。また、日本にっぽんスポーツ少年しょうねん団だん本部ほんぶ長ちょう、日本にっぽんフットサル連盟れんめい会長かいちょう、埼玉さいたまスタジアム2002の場ば長ちょう、日本にっぽんハンディキャップサッカー連盟れんめい会長かいちょうなどを務つとめる。。

1997年ねん、南米なんべいサッカー連盟れんめい大だい勲くん位い特別とくべつ頚けい章あきら受章じゅしょう。

2004年ねん、旭日きょくじつ中ちゅう綬章じゅしょう受章じゅしょう。

2005年ねん、日本にっぽんサッカー殿堂でんどう委員いいん会かい委員いいん長ちょう、及および、第だい1回かい日本にっぽんサッカー殿堂でんどう。

2008年ねん6月2日にち、前年ぜんねんから患わずらっていた肺炎はいえんのため東京とうきょう都と港みなと区くの山王さんのう病院びょういんで死去しきょ、77歳さい没ぼつ。

この日ひ、横浜よこはま国際こくさい総合そうごう競技きょうぎ場じょうで行おこなわれたFIFAワールドカップ・南みなみアフリカ大会たいかいアジア3次じ予選よせんの日本にっぽん対たいオマーン戦せんにおいて長沼ながぬまの死しを悼いたみ試合しあい開始かいし前まえに黙祷もくとうが捧ささげられ、日本にっぽん代表だいひょうの選手せんしゅ達たちは腕うでに喪章もしょうを付つけてプレーをした。試合しあいは3-0で日本にっぽんが勝利しょうりを収おさめて長沼ながぬまへの手向たむけとした。尚なお、長沼ながぬまはこの日ひ指揮しきを執とった「監督かんとく・岡田おかだ武史たけし」生うみの親おやでもあった。

日本にっぽん政府せいふも多年たねんに亙わたる長沼ながぬまの日本にっぽんスポーツ界かい並ならびにサッカー界かいへの功労こうろうを評価ひょうかし、2008年ねん7月がつ1日にちの閣議かくぎで長沼ながぬまに死後しご叙位じょい（正せい五ご位い／叙位じょい日付ひづけは死去しきょ日びの6月がつ2日にち付づけ）を親授しんじゅすることを決きめた。また同年どうねん11月がつにはアジアサッカー連盟れんめい(AFC)から生前せいぜんの功績こうせきを称となえて「アジアのダイヤモンド賞しょう」が贈おくられている。

所属しょぞくクラブ

選手せんしゅ歴れき

• 1946年ねん-1949年ねん - 広島ひろしま高等こうとう師範しはん学校がっこう附属ふぞく中学校ちゅうがっこう・高校こうこう
• 1949年ねん-1953年ねん - 関西学院大学かんせいがくいんだいがく
• 1953年ねん-1955年ねん - 中央大学ちゅうおうだいがく工学部こうがくぶ（理工学部りこうがくぶ）
• 1955年ねん-1966年ねん - 古河電工ふるかわでんこう

指導しどう者しゃ歴れき

• 1962年ねん-1976年ねん - 日本にっぽん代表だいひょう監督かんとく（一部いちぶ現役げんえき時代じだいと重複じゅうふく）
• 1972年ねん-1974年ねん - 日本にっぽんサッカー協会きょうかい技術ぎじゅつ委員いいん長ちょう
• 1974年ねん-1976年ねん - 日本にっぽんサッカー協会きょうかい理事りじ
• 1976年ねん-1987年ねん - 日本にっぽんサッカー協会きょうかい専務せんむ理事りじ
• 1987年ねん-1994年ねん - 同どう 副ふく会長かいちょう
• 1994年ねん-1998年ねん - 同どう 会長かいちょう
• 1998年ねん-2002年ねん - 同どう 名誉めいよ会長かいちょう
• 2002年ねん- 同どう 最高さいこう顧問こもん

個人こじん成績せいせき

日本にっぽんサッカーリーグ

国内こくない大会たいかい個人こじん成績せいせき
年度ねんど	クラブ	背番号せばんごう	リーグ	リーグ戦せん		リーグ杯はい		オープン杯はい		期間きかん通算つうさん
				出場しゅつじょう	得点とくてん	出場しゅつじょう	得点とくてん	出場しゅつじょう	得点とくてん	出場しゅつじょう	得点とくてん
日本にっぽん				リーグ戦せん		-		天皇杯てんのうはい		期間きかん通算つうさん
1965	古河ふるかわ		JSL		6	-
1966					2	-
1967				0	0	-		-		0	0
通算つうさん	日本にっぽん		JSL	19	8	-
総そう通算つうさん				19	8	-

出場しゅつじょう大会たいかい

オリンピック
男子だんし サッカー
銅どう	1968	サッカー

アマチュア時代じだい

• 1947年ねん 全国ぜんこく中等ちゅうとう学校がっこう選手権せんしゅけん（優勝ゆうしょう）
• 1948年ねん 国民こくみん体育たいいく大会たいかい（優勝ゆうしょう）
• 1950年ねん 全日本ぜんにほん選手権せんしゅけん大会たいかい（優勝ゆうしょう）
• 1953年ねん ユニバーシアード
• 1954年ねん ワールドカップ地区ちく予選よせん

実業じつぎょう団だん時代じだい

• 1956年ねん メルボルンオリンピック
• 1960年ねん 天皇てんのう杯はい（優勝ゆうしょう）

代表だいひょう監督かんとく時代じだい

• 1964年ねん 東京とうきょうオリンピック
• 1968年ねん メキシコオリンピック（銅どうメダル獲得かくとく）

賞詞しょうし

• 1961年ねん 日本にっぽん年間ねんかん最優秀さいゆうしゅう選手せんしゅ
• 1997年ねん 南米なんべいサッカー連盟れんめい大だい勲くん位い特別とくべつ頚けい章あきら
• 2004年ねん 旭日きょくじつ中ちゅう綬章じゅしょう
• 2005年ねん 第だい1回かい日本にっぽんサッカー殿堂でんどう入はいり
• 2008年ねん 叙位じょい（正せい五ご位い）

代表だいひょう歴れき

試合しあい数すう

• 国際こくさいAマッチ 4試合しあい 1得点とくてん(1954-1961)

日本にっぽん代表だいひょう	国際こくさいAマッチ		その他た		期間きかん通算つうさん
年とし	出場しゅつじょう	得点とくてん	出場しゅつじょう	得点とくてん	出場しゅつじょう	得点とくてん
1954	2	1	0	0	2	1
1955	0	0	0	0	0	0
1956	0	0	1	1	1	1
1957	0	0	0	0	0	0
1958	1	0	0	0	1	0
1959	0	0	0	0	0	0
1960	0	0	0	0	0	0
1961	1	0	0	0	1	0
通算つうさん	4	1	1	1	5	2

得点とくてん数すう

#	年月日ねんがっぴ	開催かいさい地ち	対戦たいせん国こく	スコア	結果けっか	試合しあい概要がいよう
1	1954年ねん3月がつ7日にち	日本にっぽん、東京とうきょう	韓国かんこく	1-5	敗戦はいせん	1954 FIFAワールドカップ地区ちく予選よせん

著書ちょしょ

• 『チームプレー』長沼ながぬま健けん 光文社こうぶんしゃ（1969年ねん）
• 『サッカーに賭かけた青春せいしゅん』講談社こうだんしゃ、1969年ねん3月がつ20日はつか。NDLJP:12173361。 
• 『11人にんの中なかの1人ひとり』生産せいさん性せい出版しゅっぱん、2008年ねん。ISBN 978-4-8201-1904-3。 （1975年ねん初版しょはん増補ぞうほ）
• 『時代じだいの証言しょうげん者しゃ13「サッカー」長沼ながぬま健けん』読売新聞社よみうりしんぶんしゃ、2006年ねん。 

参考さんこう文献ぶんけん・ウェブサイト

• 唐澤からさわ富太郎とみたろう『新しん日本人にっぽんじん物ぶつ大観たいかん 広島ひろしま県けん版ばん』人事じんじ通信つうしん社しゃ広島ひろしま支局しきょく、1959年ねん。 
• 『高校こうこうサッカー60年ねん史し』全国ぜんこく高等こうとう学校がっこう体育たいいく連盟れんめいサッカー部ぶ 講談社こうだんしゃ（1983年ねん）
• 『広島ひろしまスポーツ史し』広島ひろしま県けん体育たいいく協会きょうかい、1984年ねん。NDLJP:12135628。 
• 『Jリーグ群ぐん像ぞう 夢ゆめの礎いしずえ』大住おおすみ良之よしゆき アストロ教育きょういくシステム （1995年ねん）
• 『財団ざいだん法人ほうじん 日本にっぽんサッカー協会きょうかい75年ねん史し』同どう編集へんしゅう委員いいん会かい ベべースボすぼール・マガジン社るまがじんしゃ（1996年ねん）
• 『2002年ねんのフェアプレー W杯はい日にち韓かん共催きょうさいとFIFAの政治せいじ力学りきがく』竹内たけうち浩ひろし 共同通信社きょうどうつうしんしゃ（1996年ねん）
• 加藤かとう栄二えいじ『サッカーに魅みせられた男おとこ 宮本みやもと征勝まさかつ』三さん一いち書房しょぼう、1997年ねん。ISBN 4-380-97222-4。 
• 大住おおすみ良之よしゆき、後藤ごとう健生たけお『日本にっぽんサッカーは本当ほんとうに強つよくなったのか』中央公論ちゅうおうこうろん新しん社しゃ、2000年ねん。 
• 『サッカーの物語ものがたり』田中たなか孝一こういち kkベストセラーズ（2001年ねん）
• 『新しん時代じだいへのキックオフ』仮かり野の忠男ただお 角川書店かどかわしょてん（2001年ねん）
• 『進化しんかする日本にっぽんサッカー』忠鉢ちゅうばち信一しんいち 集英社しゅうえいしゃ（2001年ねん）
• 『サッカー批評ひひょう』双葉社ふたばしゃ、10号ごう（2001年ねん3月がつ）、20号ごう（2003年ねん9月がつ）、37号ごう、38号ごう（2008年ねん1月がつ、3月がつ）、40号ごう（2008年ねん9月がつ）双葉社ふたばしゃ
• 『日本にっぽんサッカー史し』後藤ごとう健生たけお 双葉社ふたばしゃ（2002年ねん）
• 『空からっぽのスタジアムからの挑戦ちょうせん』平塚ひらつか晶あきら人じん 小学館しょうがくかん（2002年ねん）
• 『月刊げっかんグラン』中日新聞社ちゅうにちしんぶんしゃ（2003年ねん9月がつ-11月号ごう）
• 『Jリーグ風ふう―超ちょう・消費しょうひ社会しゃかいの経済けいざい学がく』栗ぐり田房たふさ穂みのる ウェッジ（2004年ねん）
• 『「Jリーグ」のマネジメント』広瀬ひろせ一郎いちろう 東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ（2004年ねん）
• 『サッカーの国際こくさい政治せいじ学がく』小倉おぐら純二じゅんじ 講談社こうだんしゃ（2004年ねん）
• 『古河電工ふるかわでんこうサッカー部ぶ史し』古河電工ふるかわでんこうサッカー部ぶ史し刊行かんこう委員いいん会かい（2004年ねん）
• 川端かわばた康生やすお『日にち韓かんワールドカップの覚書おぼえがき』講談社こうだんしゃ、2004年ねん。ISBN 4-06-212613-3。 
• 『Mr.フットボール堀田ほった哲あきら爾なんじ回想かいそう録ろく』堀田ほった哲あきら爾なんじを囲かこむ会かい アイオーエム（2005年ねん）
• 「長沼ながぬま健けん回顧かいこ録ろく」他た『サッカー批評ひひょう』（25号ごう、32号ごう、33号ごう、34号ごう）、双葉社ふたばしゃ（2006年ねん～2007年ねん）
• 『虹にじを掴つかむ』川淵かわぶち三郎さぶろう 講談社こうだんしゃ（2006年ねん）
• 『W杯はい（ワールドカップ）ビジネス30年ねん戦争せんそう』田崎たさき健太けんた 新潮社しんちょうしゃ（2006年ねん）
• 『週刊しゅうかんサッカーマガジン』2008年ねん5月がつ20日にち号ごう、ベべースボすぼール・マガジン社るまがじんしゃ
• 加部かべ究きわむ『大和魂やまとだましいのモダンサッカー』双葉社ふたばしゃ、2008年ねん。ISBN 978-4575300420。 
• 『日本にっぽんは、サッカーの国くにになれたか。電通でんつうの格闘かくとう。』濱口はまぐち博行ひろゆき 朝日新聞あさひしんぶん出版しゅっぱん（2010年ねん）
• 木之本きのもと興きょう三さん『日本にっぽんサッカーに捧ささげた両足りょうあし 真実しんじつのJリーグ創世そうせい記き』ワニブックス、2013年ねん。ISBN 4847091655。 
• 木村きむら元彦もとひこ「[21年ねん目めの真実しんじつ] Jリーグ創造そうぞう記き 森もり健兒けんじ、木之本きのもと興きょう三さんの回想かいそう」『サッカー批評ひひょう』第だい62号ごう、2013年ねん5月がつ。 
• 今子いまこ正義まさよし『W杯はいサッカー日本にっぽんの礎いしずえ 原爆げんばく少年しょうねんサッカー魂たましい』南みなみ々社しゃ、2014年ねん。ISBN 978-4-86489-019-9。 
• 賀川かがわサッカーライブラリー オリンピック代表だいひょう監督かんとくからワールドカップ招致しょうちまで 40年間ねんかんを日本にっぽん協会きょうかいとともに 長沼ながぬま健けん（上うえ）長沼ながぬま健けん（中なか）長沼ながぬま健けん（下した）長沼ながぬま健けん（続つづけ）長沼ながぬま健けんさんの叙勲じょくんを祝いわう会かいで――。第だい1回かいW杯はいの年としに生うまれ、サッカーー筋すじ74年ねん日本にっぽんサッカーの大だい功労こうろう者しゃ、長沼ながぬま健けんさんを偲しのんで
• 牛木うしき素もと吉郎よしろう&ビバ!サッカー研究けんきゅう会かい 公式こうしきサイト
• 季刊きかん サッカー批評ひひょう 半田はんだ雄一ゆういち編集へんしゅう長ちょうインタビュー
• トヨタカップを呼よんだ男おとこたち
• SPORTS COMMUNICATIONS - 第だい68回かい 生粋きっすいの“FW”気質きしつの持もち主ぬし 長沼ながぬま健けん・日本にっぽんサッカー協会きょうかい最高さいこう顧問こもん
• 伝説でんせつ－スポーツ王国おうこく日本にっぽん 歴史れきしを作つくった者ものたち－ - nikkansports.com
• NHKアーカイブス NHK映像えいぞうファイル あの人ひとに会あいたい（NHK、2008年ねん10月がつ18日にち）
• 日本にっぽんトップリーグ連携れんけい機構きこう「次世代じせだいに伝つたえるスポーツ物語ものがたり」
• キャプテン川淵かわぶちのウィークリーコラム | JFA | JFA
• アカシア会かい 公式こうしきサイト 長沼ながぬま健けんさん（39回かい）を追悼ついとうして

関連かんれん項目こうもく

• 小沢おざわ通とおる宏ひろし

外部がいぶリンク

• 長沼ながぬま健けん - Olympedia (英語えいご)
• 長沼ながぬま健けん - National-Football-Teams.com (英語えいご)
• 長沼ながぬま健けん - FootballDatabase.eu (英語えいご)
• 長沼ながぬま健けん - WorldFootball.net (英語えいご)
• 長沼ながぬま健けん - Transfermarkt.comによる選手せんしゅデータ (英語えいご)
• 長沼ながぬま健けん - Transfermarkt.comによる指導しどう者しゃデータ (英語えいご)
• 公益こうえき財団ざいだん法人ほうじん日本にっぽんサッカー協会きょうかい
• Jリーグ
• 日本にっぽんサッカーの歴史れきし
• 日本にっぽん代表だいひょう選手せんしゅ出場しゅつじょう試合しあい記録きろく
• 日本にっぽんサッカーアーカイブ 長沼ながぬま健けん
• 日本にっぽんサッカー支ささえ半はん世紀せいき 長沼ながぬま元もと会長かいちょう死去しきょ
• AFC年間ねんかんアワード AFC、長沼ながぬま氏しの功績こうせきを称たたえる
• 「長沼ながぬま健けん お別わかれの会かい」を挙行きょこう｜トピックス｜JFA｜日本にっぽんサッカー協会きょうかい
• 志こころざしの会かい
• 長沼ながぬま健けん - NHK人物じんぶつ録ろく