子規しきと曙覧あけみ

子規しきは[曙覧あけみを評ひょうして](http://www.aozora.gr.jp/cards/000305/card46490.html)

> 明治めいじに生うまれたる我われらはかくまで貧まずしくなられ得えべくもあらず。

などと言いっている。
私わたしも最初さいしょはだまされた。
橘たちばな曙覧あけみは江戸えど時代じだいの石川いしかわ啄木たくぼくだと最初さいしょは思おもった。
しかし、曙覧あけみは別段べつだん貧乏びんぼうな家いえの生うまれではなく、好すきこのんで山やまの中なかの家いえで暮くらし始はじめたのである。
妻つまや子こまでまきぞえにして。
なので彼かれの歌うたで貧乏びんぼう陋屋などというのはジェスチャーに過すぎない。
僧侶そうりょの良寛りょうかんがそまつな庵あんに住すんで寒さむいと言いっているのとはわけが違ちがう。
ハイジのじいさんが村むらの生活せいかつをいやがって勝手かってにアルムに住すんでいるのと同おなじようなもの。

「金かねをもらってうれしい」ことを素直すなおに歌うたに詠よんだのはよい。
しかし、これまた江戸えど時代じだいには狂歌きょうかや俳諧はいかい歌かの伝統でんとうがあり、
必かならずしも曙覧あけみが初はじめてではあるまい。
尊皇そんのう攘夷じょういを憂うれえた歌うたや王政おうせい復古ふっこを喜よろこんだ歌うたなどもただのおっちょこちょいの歌うたにしか思おもえない。
孝明天皇こうめいてんのうや吉田よしだ松陰しょういんの歌うたとはまるで違ちがう。
子規しきはやはりだまされた、あるいは勝手かってにはやとちりしたのではあるまいか。