(Translated by https://www.hiragana.jp/)
ジメチルエーテル - Wikipedia

ジメチルエーテル

揮発きはつせい燃焼ねんしょうせいゆうする有機ゆうき化合かごうぶつのひとつ

ジメチルエーテル (えい: dimethyl ether, りゃく: DME) は、エーテル一種いっしゅもっと単純たんじゅんなもの。 スプレー噴射ふんしゃざい燃料ねんりょうとして使つかわれる。

ジメチルエーテル
ジメチルエーテルの構造式
ジメチルエーテルの球棒モデル{{{画像alt1}}}
識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう 115-10-6
KEGG C11144
特性とくせい
化学かがくしき C2H6O
モル質量しつりょう 46.07
しめせせいしき CH3OCH3
または (CH3)2O
外観がいかん 色気いろけ
融点ゆうてん

−141.5

沸点ふってん

−23.6

みずへの溶解ようかい 7.1g/100g(20℃)
出典しゅってん
ICSC 0454
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・つねあつ (100 kPa) におけるものである。

灯油とうゆちか燃焼ねんしょう特性とくせい液化えきか石油せきゆガス (LPG) にちか物性ぶっせいつため、近年きんねん原油げんゆ価格かかく高騰こうとうなか中国ちゅうごくなどを中心ちゅうしんとして、LPG代替だいたい民生みんせいよう都市としガス原料げんりょうプロパンに20%配合はいごう)や自動車じどうしゃよう産業さんぎょうよう燃料ねんりょう実用じつようすすんでいる。

概要がいよう

編集へんしゅう

低温ていおんメタノール硫酸りゅうさんなどで脱水だっすいするとられ(メタノール脱水だっすいほう)、物性ぶっせいもメタノールにちか[よう検証けんしょう]

  

水素すいそ結合けつごう形成けいせいするものの、分子ぶんし幾何きかがくてき構造こうぞうにより、結合けつごう強度きょうどよわいため、沸点ふってん融点ゆうてんひくいがどくせいはそれほどたかくはない[疑問ぎもんてん]

比較的ひかくてきたか温度おんど(−23.6 ℃)、低圧ていあつ液化えきかし、常温じょうおんつねあつでは気化きかすることから、従来じゅうらいスプレーかんよう溶剤ようざいけん噴射ふんしゃざいとして利用りようされてきた[1]

燃焼ねんしょう特性とくせい灯油とうゆ軽油けいゆちか[1]LPG構成こうせいするプロパン沸点ふってん −42.1 ℃)ほどひく温度おんどにせずとも液化えきかし、また常温じょうおんでもより低圧ていあつ液化えきかする(25 ℃でプロパン9.1気圧きあつたいしDME 6.1気圧きあつ)ことから、近年きんねんはLPG代替だいたい燃料ねんりょうとしての用途ようと注目ちゅうもくあつまっている。このLPGよりも液化えきかしやすい特性とくせいは、タンカータンクローリーでの輸送ゆそうにおいても低温ていおん容器ようきやよりひく強度きょうど容器ようきでの輸入ゆにゅう輸送ゆそう可能かのうにするてんで、経済けいざいせいでも有利ゆうりである。また、原料げんりょうのメタノールは石炭せきたん天然てんねんガスからだけでなく、バイオマス家畜かちく糞便ふんべん石油せきゆざん渣、廃油はいゆ廃材はいざいなどの産業さんぎょう廃棄はいきぶつなどからもることができ、石炭せきたん直接ちょくせつやすさい発生はっせいする硫黄いおう酸化さんかぶつ粒子りゅうしじょう物質ぶっしつしょうじないクリーンな燃料ねんりょうというてんでもすぐれる。

一般いっぱんてき炭素たんそかずおおエーテルるい空気くうき反応はんのうして酸化さんかぶつしょうじるが、ジメチルエーテルは安定あんていしていてしょうじないてんでも優位ゆういである。しかし、あらたな燃料ねんりょうとして使用しようするには、社会しゃかい輸送ゆそう分配ぶんぱいするためのインフラストラクチャーがまだととのっておらず、大量たいりょうかつ安価あんか製造せいぞうするためのプラントはまだ中国ちゅうごくなどにかぎられており、安定あんていした供給きょうきゅう体制たいせいつくるには多大ただい投資とうし必要ひつようである[2]

また、現在げんざい商業しょうぎょうされている生産せいさん設備せつびでは、まず、天然てんねんガスなどの原料げんりょうから一酸化いっさんか炭素たんそ水素すいそのガスを分離ぶんりし、つぎにこの原料げんりょうガスからメタノールを合成ごうせいし、さらにメタノールを脱水だっすいしてDMEをつくる「メタノール脱水だっすいほう」(間接かんせつ合成ごうせいほう)がもちいられている。この「メタノール脱水だっすいほう」によって原材料げんざいりょう天然てんねんガスからDMEが製造せいぞうされるさいねつ効率こうりつは、現状げんじょうでは0.680–0.730(平均へいきん0.704)程度ていどとかなりひくい。これにたいしてLNG(液化えきか天然てんねんガス)製造せいぞうねつ効率こうりつ比較的ひかくてきたかい0.870–0.930(平均へいきん0.900)であることをかんがえれば、DMEは原材料げんざいりょうである天然てんねんガスからの(エネルギー減損げんそん)がおおきいことがわかる。その結果けっか、DMEのWell-to-TankのCO2排出はいしゅつは、LNGより30%じゃくおおくなるという問題もんだいがある。しかし、バイオマスや廃油はいゆ原料げんりょう利用りようすることで、Well-to-TankのCO2排出はいしゅつはマイナスになるうえ、Tank-to-Wheelで比較ひかくすると、LNGの利用りようよりも大幅おおはば排出はいしゅつ削減さくげん寄与きよできる[3]。このため、燃料ねんりょう利用りよう実用じつようすすんでいる中国ちゅうごくでは、天然てんねんガスを原料げんりょうとしたDME製造せいぞう原則げんそく禁止きんしされることとなった。

安全あんぜんせい

編集へんしゅう

火災かさい爆発ばくはつ危険きけんがあるが、爆発ばくはつ下限かげん液化えきか石油せきゆガス(LPG)の2ばい程度ていどとやや安全あんぜんせいたかい。

スプレー噴射ふんしゃざいとして利用りようされるが、屋内おくない多量たりょう使用しようすると事故じこ原因げんいんとなる。2018ねん12月16にちには屋内おくないで100ほん以上いじょうのスプレーかん噴射ふんしゃしたために家屋かおく倒壊とうかいこすほどの爆発ばくはつ事故じこ札幌さっぽろ市内しない発生はっせいした(札幌さっぽろ不動産ふどうさん仲介ちゅうかい店舗てんぽガス爆発ばくはつ事故じこ)。

毒性どくせいかんしては、麻酔ますいせいがあり、ヒトが154.24g/m3濃度のうどで30分間ふんかん吸入きゅうにゅうすると軽度けいど麻酔ますい状態じょうたいになることがられている。また、液化えきかDMEに気化きかねつうばわれることで、低温ていおんによる凍傷とうしょうける可能かのうせいがあり、はいると失明しつめいおそれもあるため、あつかいには保護ほご眼鏡めがね保護ほご着用ちゃくよう必要ひつようである。

LPGより引火いんかせいひくく、ドライヤー使用しようなど引火いんかしやすい環境かんきょう使つかエアロゾルスプレー溶剤ようざいけん噴射ふんしゃざい使つかわれる。ほぼ無臭むしゅうのものがおおフロンるいちがい、ややにおいがあるが、あまりにならない範囲はんいであり、オゾンそうへの影響えいきょうもわずかなので、エアダスターなどにも使用しようされる。

燃料ねんりょう

編集へんしゅう
  • 排出はいしゅつガスちゅう微粒子びりゅうしじょう物質ぶっしつ (PM) がく、硫黄いおう (S) をふくまないことから硫黄いおう酸化さんかぶつ (SOx) を発生はっせいさせないクリーンな燃料ねんりょう
  • 単位たんい重量じゅうりょうたりのエネルギー密度みつど液化えきか石油せきゆガス(LPG)の0.625ばいおとる。
  • 液化えきかさせやすいため、貯蔵ちょぞう輸送ゆそう比較的ひかくてき容易よういで、液化えきか石油せきゆガス(LPG)にじゅんじたあつかいができる。低温ていおんせんタンク貨車かしゃタンクローリー常温じょうおん加圧かあつパイプラインによる輸送ゆそう可能かのう
  • エネルギーの安全あんぜん保障ほしょうかせないジメチルエーテルの燃料ねんりょうよう規格きかくは、日本にっぽんでは2005ねん標準ひょうじゅん仕様しようしょ『TS K 0011燃料ねんりょうようジメチルエーテル』がまとめられた。中国ちゅうごくではこれを参考さんこう2010ねんに『GB 25035-2010 都市とし燃料ねんりょうようジメチルエーテル(しろ镇燃气用かぶと)』がさだめられ、2011ねん7がつから適用てきようされている。これらをけて、日本にっぽん技術ぎじゅつしゃ主導しゅどう国際こくさい標準ひょうじゅん機構きこう(ISO)での規格きかくおこなわれ、『ISO/DIS 17198 Dimethyl ether (DME) for fuels』が制定せいていされた。日本にっぽんでも工業こうぎょうよう民生みんせいよう自動車じどうしゃよう発電はつでんようをカバーする日本工業規格にほんこうぎょうきかく『JIS K 2180 燃料ねんりょうようジメチルエーテル(DME)』(1-5)が2013ねん3がつ制定せいていされた。
  • 現在げんざい、ジメチルエーテルを日本にっぽん輸入ゆにゅうするさいは、エーテルるいであるために4%の関税かんぜいかる。一方いっぽう液化えきか天然てんねんガス (LNG) やLPGの関税かんぜい無税むぜいである。

民生みんせいよう燃料ねんりょう

編集へんしゅう
  • 石炭せきたん練炭れんたんおも燃料ねんりょうである中国ちゅうごくでは、2005ねんごろより硫黄いおう酸化さんかぶつ粒子りゅうしじょう物質ぶっしつなどの大気たいき汚染おせん物質ぶっしつ削減さくげん豊富ほうふ国内こくない石炭せきたん資源しげん有効ゆうこう利用りよう目的もくてきに、山東さんとうしょう四川しせんしょうなどで使用しよう開始かいしされた。その急速きゅうそく各地かくちひろまり、年産ねんさん100まんトン以上いじょうこう効率こうりつプラントの運用うんようはじまって、すでに全国ぜんこく生産せいさん能力のうりょくは1000まんトンにたっしている[4]実際じっさいのプラント稼働かどうりつはまだひくいが、ほとんどが民生みんせいよう都市としガス燃料ねんりょう成分せいぶんとしてプロパン配合はいごうして使用しようされている。
  • きゅうNKK(日本鋼管にほんこうかんげんJFEホールディングス)がガスコンロ使つかってジメチルエーテル単独たんどく(ニートDME)の燃焼ねんしょう実験じっけんおこなった結果けっか、LPGよう使用しよう不可ふかだった。都市としガスもちい13Aの空気くうき混合こんごうダンパーをすこしぼれば問題もんだいないが、パッキン、シールざいなどの部品ぶひんはLPGようだと劣化れっかして使つかえないため、ニチアスあらたにジメチルエーテルよう部品ぶひん開発かいはつすすめている。
  • プロパンとの混合こんごうかんしては、エルピーガス振興しんこうセンターでLPGよう器具きぐ使つかって燃焼ねんしょうテストをしたところ、20%以下いかならすべてのLPガス器具きぐ改造かいぞうしなくても使つかえるという結果けっかている[5]中国ちゅうごくでもDME混合こんごうを20%以下いかおさえて供給きょうきゅうしている。

また、混合こんごう比率ひりつげると燃焼ねんしょう速度そくどはやまり、発熱はつねつりょうがるが、若干じゃっかん機器きき改造かいぞうおこなえば、混合こんごうを40%にまでたかめられることもかった[6]

産業さんぎょうよう燃料ねんりょう

編集へんしゅう

日本にっぽんでは新潟にいがたけん一正蒲鉾いちまさかまぼこなどの工場こうじょうで、試験しけんてきボイラー燃料ねんりょうとして使用しようおこなわれている[4]れいがある。中国ちゅうごくでも雲南うんなんしょう企業きぎょうがボイラー燃料ねんりょうとして使つかうための装置そうち開発かいはつするなど、産業さんぎょうよう利用りよう実用じつようしつつある。また、プロパンにわるガス溶断ようだんよう燃料ねんりょうとしての用途ようとかんがえられる。

自動車じどうしゃ燃料ねんりょう

編集へんしゅう

セタンが55以上いじょうたかく、ディーゼルエンジンきであり、酸素さんそ含有がんゆうりつたかくろけむりディーゼル排気はいき微粒子びりゅうしすす)がないため、環境かんきょう負荷ふかすくないディーゼル燃料ねんりょうとして期待きたいされている。代替だいたいエネルギー使つかてい公害こうがいしゃのエンジンとなる。ただしオクタン価おくたんかひくいため、LPG自動車じどうしゃCNG自動車じどうしゃ同様どうようのような火花ひばな点火てんか内燃ないねん機関きかんにおいて使用しようするとノッキングきやすい。

ディーゼル燃料ねんりょうとして利用りようするにさいして、開発かいはつ当初とうしょは 15MPa の噴射ふんしゃ圧力あつりょく一定いっていたも方式ほうしき採用さいようされた。また、DMEは常温じょうおんつねあつでは気体きたいであるため、LPG燃料ねんりょうなどと同様どうよう潤滑じゅんかつせい粘性ねんせい軽油けいゆおとる。そのため潤滑じゅんかつせい向上こうじょうざいしゅとして脂肪酸しぼうさん)を添加てんかするが、粘性ねんせい向上こうじょうざい適切てきせつなものはつかっていないこともあり、てい粘性ねんせい原因げんいん発生はっせいするリークえきれ)対策たいさくおこなわれている。

DMEを燃料ねんりょうとしたディーゼルエンジンでのぜん負荷ふか性能せいのう試験しけんで、軽油けいゆ燃料ねんりょうとする場合ばあいくらべて以下いかのような特徴とくちょうられている。

  • DMEは含酸もと燃料ねんりょうであり、炭素たんそ (C) 同士どうし直接ちょくせつ結合けつごうすることがないエーテル結合けつごうゆうする。このため低速ていそくではスモーク排出はいしゅつく、燃料ねんりょう噴射ふんしゃりょう増量ぞうりょう可能かのうとなり、てい回転かいてんいきトルク増大ぞうだいさせる。これはディーゼルエンジン最大さいだい特徴とくちょうが、軽油けいゆ以上いじょうかされることをしめす。[よう出典しゅってん]
  • 15 MPa 噴射ふんしゃでは高速こうそく負荷ふか領域りょういき噴射ふんしゃ期間きかんながくなり、排気はいき温度おんど上昇じょうしょうすることによる出力しゅつりょく低減ていげん発生はっせいする(高速こうそく回転かいてんいきでの出力しゅつりょく減退げんたい)。[よう出典しゅってん]
  • スモーク排出はいしゅついことから、大量たいりょう Cooled EGR実行じっこうすることで排出はいしゅつガスちゅう窒素ちっそ酸化さんかぶつ (NOx) が低減ていげんされる。Cooled EGR とは冷却れいきゃくはいガスさい利用りよう循環じゅんかんシステムのことで、酸素さんそ不足ふそくした状態じょうたいはいガスを冷却れいきゃくしてふたたびエンジンの吸気きゅうき利用りようすることで窒素ちっそ酸化さんかぶつ発生はっせい抑制よくせいする。[よう出典しゅってん]
  • 燃料ねんりょうちゅう硫黄いおうふくまれていないため、酸化さんか触媒しょくばいなどにより不完全ふかんぜん燃焼ねんしょうぶつ (CO)、炭化たんか水素すいそるい (HC) などが低減ていげんされる。[よう出典しゅってん]

一般いっぱんのディーゼル自動車じどうしゃよう使用しようするためには充填じゅうてんスタンドが多数たすう必要ひつようになるが、現在げんざい日本にっぽん消防しょうぼうほうこうあつガス保安ほあんほう準拠じゅんきょしてガソリンスタンド併設へいせつしようとすると、保安ほあん距離きょりるために多大ただい敷地しきち必要ひつようとなり、規制きせい緩和かんわされないと、むずかしい。 一方いっぽうタクシーなどのLPGしゃよう施設しせつへの併設へいせつはすでに類似るいじこうあつガスをあつかっているため、比較的ひかくてき容易よういである。なお、中国ちゅうごくでは2008ねん上海しゃんはい宝山たからやま世界せかいはつのバスよう充填じゅうてんスタンド(ちゅう站)が設置せっちされ、2009ねん6がつから147ごう系統けいとう路線ろせんバス10りょう使つかった運用うんようはじまり、徐々じょじょ都市としにもひろまりつつある。

課題かだい批判ひはん
編集へんしゅう
  • 液化えきかDMEは圧縮あっしゅくせいたか燃料ねんりょうであり、くちからくわえた圧力あつりょく出口でぐちにそのままつたわらないため、微妙びみょう燃料ねんりょう噴射ふんしゃ実現じつげんできず、NOx低減ていげん対策たいさく出力しゅつりょく調整ちょうせいなどできない。そして、EGRを実行じっこうすることは、エンジンの燃焼ねんしょう効率こうりつ減少げんしょうさせるためこのましくない。
  • DMEの原料げんりょうである天然てんねんガスをおも燃料ねんりょうにするDDFエンジン(ディーゼルデュアルフュエルエンジン=軽油けいゆ着火ちゃっかがた天然てんねんガスエンジン)のねつ効率こうりつは、軽油けいゆ燃料ねんりょうとするディーゼルエンジンとほぼ同等どうとうとの報告ほうこくがある[8]。このDDFエンジンの技術ぎじゅつ既知きちであるにもかかわらず、天然てんねんガスから製造せいぞうしたDMEをディーゼルエンジンの燃料ねんりょうもちいるDMEエンジンは軽油けいゆ運転うんてんするディーゼルエンジンにくらべて排出はいしゅつガス削減さくげんなどが容易よういとの理由りゆうにより、DMEエンジンの研究けんきゅうさかんにおこなわれている。しかし、このDMEエンジンは、天然てんねんガスをおも燃料ねんりょうとするDDFエンジンにくらべて「Well-to-WheelのCO2の増大ぞうだい」および「エネルギー資源しげん浪費ろうひ」をまねくためにこのましくない[9]
課題かだい批判ひはんたいする反論はんろん
編集へんしゅう
  • 圧縮あっしゅくせいたかい(体積たいせき弾性だんせいりつひくい)燃料ねんりょうであることは事実じじつである。しかし、15 Mpa レベルでの研究けんきゅう開発かいはつではそのことは指摘してきされたが、そのこうあつ噴射ふんしゃ実現じつげんするなかで、そのことのマイナスめんでの影響えいきょう指摘してきされる状況じょうきょうにはない。

DMEは体積たいせき弾性だんせいりつひくいから液体えきたい状態じょうたいではゴムかさのようで、圧縮あっしゅくするさい圧力あつりょく噴射ふんしゃあつ反映はんえいしにくいというせつを、DMEが自動車じどうしゃ燃料ねんりょうとしていていないという説明せつめい利用りようされる。

体積たいせき弾性だんせいりつのみを軽油けいゆ比較ひかくすると1/2であり、圧力あつりょくは1/3である。したがって容積ようせきの2ばい噴射ふんしゃしなければならないため、圧縮あっしゅくしなければならない容積ようせきは4/3となる。つまり、軽油けいゆたいして圧縮あっしゅくりょうえることになるが、そのりょうにするようなレベルではない。むしろ、ぎゃくにいえば、圧力あつりょくが1/3であるために、部品ぶひんたいあつ強度きょうども1/3でよいなどのメリットのほうがはるかにおおきい。

  • 排気はいきさい循環じゅんかん(EGR)実行じっこうすることでの効率こうりつ低下ていか事実じじつであるが、おおかれすくなかれガソリンしゃ軽油けいゆディーゼルしゃでもっていることであり、DMEだけがことさら批判ひはんされる事柄ことがらではない。むしろ、ディーゼル排気はいき微粒子びりゅうし(DPM)すす発生はっせいしないために、ディーゼル微粒子びりゅうしあつまりフィルター(DPF)装着そうちゃくせずにむことで、軽量けいりょうあつ増加ぞうかしないことによる効率こうりつ向上こうじょう自動車じどうしゃにとって十分じゅうぶん恩恵おんけいであるとかんがえられている。また、GTL軽油けいゆ利用りようするさいに、ディーゼルエンジンの圧縮あっしゅくを13ぶんの1程度ていどとすことが実証じっしょう実験じっけんされているというが、結果けっかとしててい回転かいてんいきトルク犠牲ぎせいにしている。GTL軽油けいゆ天然てんねんガスから合成ごうせいされる軽油けいゆさま燃料ねんりょうで、セタンが70以上いじょうあり、そのままでは軽油けいゆ代替だいたいとしての利用りよう問題もんだいがある。ただし、硫黄いおうふくまない燃料ねんりょうであることはすぐれためんである。また、たまき芳香ほうこうぞく炭化たんか水素すいそ (PAH) ふくまないため、DPM発生はっせいすくなくなる傾向けいこうにあるが、完全かんぜんではない。

このことは、ディーゼルエンジンの特徴とくちょうであるてい回転かいてんいきのトルクをげんじることであり、このことから小型こがたトラック乗用車じょうようしゃきの燃料ねんりょうとの評価ひょうかがある。軽油けいゆ中心ちゅうしん実行じっこうされてきたディーゼルエンジンにたいして、軽油けいゆ代替だいたい燃料ねんりょうとして、GTL軽油けいゆとDMEを比較ひかくした場合ばあい大型おおがたトラックやバスなどの必須ひっす条件じょうけんであるてい回転かいてんいきのトルクを軽油けいゆ以上いじょう発揮はっきできるDMEが、軽油けいゆ代替だいたい燃料ねんりょうとしてはすぐれためんであるとされる。

技術ぎじゅつ改良かいりょう動向どうこう
編集へんしゅう

エンジンの高速こうそく回転かいてんいきにおける出力しゅつりょく減退げんたい改善かいぜんすすめられている。また、様々さまざま部品ぶひん採用さいようたっては個別こべつ研究けんきゅう成果せいか将来しょうらい大量たいりょう生産せいさん念頭ねんとうにおいて、軽油けいゆとの共通きょうつうせい確保かくほすることが検討けんとうされている。

噴射ふんしゃあなかず口径こうけい研究けんきゅうぜん負荷ふか性能せいのう試験しけんおこなわれ、一律いちりつ条件下じょうけんかでは出力しゅつりょく低下ていかこすことなどがわかっている。噴射ふんしゃあつ噴射ふんしゃ時間じかん運転うんてん条件じょうけんなか変化へんかさせることによって適切てきせつ出力しゅつりょく確保かくほされることが研究けんきゅうされている。

一方いっぽう、DME燃料ねんりょう自動車じどうしゃ必要ひつようとされた燃料ねんりょう冷却れいきゃく自動車じどうしゃ運転うんてん休止きゅうしちゅう燃料ねんりょう配管はいかんちゅうからの排除はいじょパージ)なども、その必要ひつようせい有無うむについての検討けんとうがなされている。定置ていちがた産業さんぎょうよう分野ぶんやにおいては自動車じどうしゃ先駆さきがけて製品せいひんされている[10]

燃料ねんりょう電池でんち

編集へんしゅう

直接ちょくせつがたDME燃料ねんりょう電池でんちは、直接ちょくせつジメチルエーテル燃料ねんりょう電池でんち (DDFC) ともばれ、水素すいそガスをあらためしつ必要ひつようとしない固体こたい高分子こうぶんしがた燃料ねんりょう電池でんちである。おなじくあらためしつ不要ふよう直接ちょくせつメタノール燃料ねんりょう電池でんち (DMFC) の燃料ねんりょうであるメタノールより毒性どくせいひくく、安全あんぜんせいたか燃料ねんりょう電池でんちとして期待きたいされている。

脱水だっすいざいだつ油剤ゆざい

編集へんしゅう

電力でんりょく中央ちゅうおう研究所けんきゅうじょ石炭せきたん汚泥おでいといったこう水分すいぶん物質ぶっしつに、液化えきかDMEを脱水だっすいざいとして接触せっしょくさせ、水分すいぶんり、石炭せきたん汚泥おでい乾燥かんそうさせる技術ぎじゅつ開発かいはつおこなっている。圧縮あっしゅくせいたか物性ぶっせい逆手さかてにとって、DMEの凝縮ぎょうしゅく蒸発じょうはつすくないエネルギーでかえすことで、従来じゅうらい乾燥かんそう技術ぎじゅつ半分はんぶんのエネルギーで脱水だっすいできる[11]

汚泥おでい適用てきようする場合ばあいには脱臭だっしゅうもでき、利用りようエネルギーを燃料ねんりょうすることでカーボンニュートラルにつながる技術ぎじゅつ確立かくりつ期待きたいされている。また、ヘドロ適用てきようするとポリ塩化えんかビフェニル (PCB) やダイオキシン[12]常温じょうおん除去じょきょできるじょう重油じゅうゆ汚染おせんされた土壌どじょう浄化じょうかすることも期待きたいされており[13]環境かんきょう浄化じょうか技術ぎじゅつとしても検討けんとうされている。

水素すいそ輸送ゆそう媒体ばいたい

編集へんしゅう

ジメチルエーテルは分子ぶんし構造こうぞうちゅう水素すいそ原子げんしおおふくうえ穏和おんわ温度おんど圧力あつりょく液化えきかできるので、水素すいそ圧縮あっしゅくしたり、水素すいそカーボンナノチューブ吸着きゅうちゃくさせるよりも、水素すいそ輸送ゆそう密度みつどたかい。このため、水素すいそ輸送ゆそう媒体ばいたいとしての用途ようと研究けんきゅうされている。

化学かがく原料げんりょう

編集へんしゅう

中国ちゅうごくやすしなつかいぞく自治じちには2010ねん石炭せきたんからメタノール、ジメチルエーテルをて、プロピレン製造せいぞうし、さらにポリプロピレンにするプラントが稼動かどうしている。

中国ちゅうごくではジメトキシエタン原料げんりょうとしての利用りよう検討けんとうされている。また、アルキルざいカップリングざいとしての用途ようとかんがえられる。

製造せいぞう

編集へんしゅう

変換へんかんユニット

編集へんしゅう

2001ねん関西電力かんさいでんりょく三菱重工みつびしじゅうこう共同きょうどうで、火力かりょく発電はつでんしょ排煙はいえんふくまれる二酸化炭素にさんかたんそ水素すいそわせて、DMEを合成ごうせいすることに成功せいこうした。これまで厄介やっかいだった二酸化炭素にさんかたんそを、再生さいせい可能かのうエネルギーとして有効ゆうこう利用りようすることを可能かのうにした。

工業こうぎょうプラント

編集へんしゅう

2003ねん、JFEをふくむ10しゃ共同きょうどう出資しゅっしにより設立せつりつされた(有)ゆうげんがいしゃディーエムイー開発かいはつにより、200おくえん投資とうしして北海道ほっかいどう釧路くしろ隣接りんせつする白糠しらぬかまちにDME製造せいぞうのためのだい規模きぼ実証じっしょうプラント(1にちあたり生産せいさんりょう100トン)が建造けんぞうされた。実証じっしょう試験しけん引受ひきうけ希望きぼうしゃにはプラント設備せつび無償むしょう譲渡じょうと予定よていであったものの、小規模しょうきぼ製造せいぞう経済けいざいせいかんしてそののエネルギー環境かんきょう変化へんかもあり、引受ひきうけさきがないまま実証じっしょう試験しけん2007ねん3がつ終了しゅうりょうし、どうプラントは撤去てっきょされた。

2008ねん6がつ新潟にいがたけん新潟にいがたきた三菱ガス化学みつびしがすかがく新潟にいがた工場こうじょうない実証じっしょうプラント(年産ねんさん8まんトン)が完成かんせいした。このプロジェクトは同社どうしゃ技術ぎじゅつもちいており、燃料ねんりょうDME製造せいぞう株式会社かぶしきがいしゃ、DME自動車じどうしゃ実用じつよう研究けんきゅう開発かいはつグループ、新潟にいがたDME研究けんきゅうかいからっている。とくに、新潟にいがたDME研究けんきゅうかいは、新潟にいがたけん新潟にいがた長岡ながおか自治体じちたい参加さんかしている。2008ねん12月、燃料ねんりょうDME製造せいぞう株式会社かぶしきがいしゃは、一正蒲鉾いちまさかまぼこ栽培さいばいセンターのDMEボイラーに出荷しゅっか開始かいしした。

2009ねん5月、岩谷産業いわたにさんぎょう産業さんぎょう技術ぎじゅつ総合そうごう研究所けんきゅうじょ共同きょうどう木質もくしつバイオマスからのDME合成ごうせい成功せいこうした。自動車じどうしゃよう家庭かていようLPGこんもえ研究けんきゅうすすめている。

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくでは、石炭せきたん資源しげん豊富ほうふであるものの、天然てんねんガス石油せきゆ資源しげんとぼしいことから、2005ねんごろより石炭せきたん原料げんりょう本格ほんかくてき製造せいぞうされている。これは、石炭せきたんをそのままやすのでは大気たいき汚染おせんはげしいことと、近年きんねん急激きゅうげき経済けいざい成長せいちょうともなう、液体えきたい燃料ねんりょう気体きたい燃料ねんりょう需要じゅよう増加ぞうか世界せかいてき燃料ねんりょう価格かかく高騰こうとうといった事情じじょうによる。中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくないでの価格かかくはLPGを下回したまわっており、急速きゅうそくにLPGからの転換てんかんすすんでいる。現在げんざいでは100まんトン/とし未満みまんのスケールのプラントはてい効率こうりつであるとして、現存げんそん設備せつび廃止はいし、および今後こんご建造けんぞう禁止きんしさだめられている。すでに、300まんトン/としのプラントの存在そんざいあきらかになっており、今後こんごは1000まんトン/とし規模きぼのプラントの建造けんぞう視野しやはいっているが、稼働かどうりつがまだひくいため、あたらしい案件あんけん凍結とうけつされている。日本にっぽん企業きぎょうでは、おも東洋とうようエンジニアリング中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくない市場いちば参入さんにゅうしている。

日本にっぽん国内こくないでは、石油せきゆざん渣(重油じゅうゆ)の産業さんぎょうよう消費しょうひ都市としガスされ、在庫ざいこ増加ぞうかするいちぽうである。ジメチルエーテルは石油せきゆざん渣や製鉄せいてつしょふくなまガスからも製造せいぞう可能かのうであり、日本にっぽん国内こくないコンビナートにジメチルエーテル製造せいぞうプラントが建設けんせつされることに期待きたいせられている。国内こくないでジメチルエーテルのプラントを建設けんせつすれば、LPGの価格かかく抑止よくしができ、エネルギーの安全あんぜん保障ほしょうにもつながる。

直接ちょくせつ合成ごうせいほう

編集へんしゅう

水素すいそ一酸化いっさんか炭素たんそ原料げんりょうに、エタノールをず、直接ちょくせつジメチルエーテルを合成ごうせいする方法ほうほう

日本にっぽんではJFEホールディングス試験しけんプラントを建設けんせつし、アメリカデンマーク中国ちゅうごくなどの企業きぎょう産業さんぎょう目指めざしている。

出典しゅってん

編集へんしゅう
  1. ^ a b 藤元ふじもとかおる大野おおの陽太郎ようたろう、「DMEエネルギーの開発かいはつ展望てんぼう」『化学かがく経済けいざい』2013ねん1がつごうp77、2013ねん東京とうきょう化学かがく工業こうぎょう日報にっぽうしゃ、ISSN 0453-0683
  2. ^ 藤元ふじもとかおる大野おおの陽太郎ようたろう、「DMEエネルギーの開発かいはつ展望てんぼう」『化学かがく経済けいざい』2013ねん1がつごうp80、2013ねん東京とうきょう化学かがく工業こうぎょう日報にっぽうしゃ、ISSN 0453-0683
  3. ^ 藤元ふじもとかおる大野おおの陽太郎ようたろう、「DMEエネルギーの開発かいはつ展望てんぼう」『化学かがく経済けいざい』2013ねん1がつごうp81、2013ねん東京とうきょう化学かがく工業こうぎょう日報にっぽうしゃ、ISSN 0453-0683
  4. ^ a b 藤元ふじもとかおる大野おおの陽太郎ようたろう、「DMEエネルギーの開発かいはつ展望てんぼう」『化学かがく経済けいざい』2013ねん1がつごうp78、2013ねん東京とうきょう化学かがく工業こうぎょう日報にっぽうしゃ、ISSN 0453-0683
  5. ^ 家庭かてい業務ぎょうむよう消費しょうひ機器きき燃焼ねんしょう実験じっけん”. エルピーガス振興しんこうセンター. 2013ねん8がつ22にち閲覧えつらん
  6. ^ 平成へいせい19年度ねんど作業さぎょう概要がいよう”. エルピーガス振興しんこうセンター. 2013ねん8がつ22にち閲覧えつらん
  7. ^ 技術ぎじゅつ開発かいはつ事業じぎょう”. エルピーガス振興しんこうセンター. 2013ねん8がつ22にち閲覧えつらん
  8. ^ 環境かんきょう負荷ふかから環境かんきょう浄化じょうか」『クリーンディーゼル開発かいはつ要素ようそ技術ぎじゅつ動向どうこう』 エヌ・ティー・エス、2008ねん11月14にちだい5しょう7こう、425–435ぺーじ
  9. ^ http://www.jari.or.jp/Portals/0/jhfc/data/report/2005/pdf/result_main.pdf#search='JHFC総合そうごう効率こうりつ検討けんとう結果けっか
  10. ^ 製品せいひん情報じょうほう ダイハツディーゼル株式会社かぶしきがいしゃ
  11. ^ Kanda, H.; Makino, H.; Miyahara, M. (2008). “Energy-saving drying technology of porous media by using liquefied DME”. Adsorption 14: 467-473. doi:10.1007/s10450-008-9120-2. 
  12. ^ Oshita, K.; Takaoka, M.; Kitade, S.; Takeda, N.; Kanda, H.; Makino, H.; Matsumoto, T.; Morisawa, S. (2010). “Extraction of PCBs and water from river sediment using liquefied dimethyl ether as an extractant”. Chemosphere 78: 1148-1154. doi:10.1016/j.chemosphere.2009.12.017. 
  13. ^ Kanda, H.; Makino, H. (2009). “Clean up process for oil-polluted materials by using liquefied DME”. Journal of Environment and Engineering 4: 356-361. doi:10.1299/jee.4.356. 

関連かんれん項目こうもく

編集へんしゅう

外部がいぶリンク

編集へんしゅう