尿素にょうそSCRシステム

尿素にょうそSCRシステム（にょうそエスシーアールシステム）は、排出はいしゅつガス浄化じょうか技術ぎじゅつの1つで、ディーゼルエンジンの排気はいき中ちゅうの窒素ちっそ酸化さんか物ぶつ（NO_x）を浄化じょうかする技術ぎじゅつである。SCRはSelective Catalytic Reductionの略りゃくであり、日本語にほんごでは「選択せんたく（的まと）触媒しょくばい還元かんげん」を意味いみする（選択せんたく触媒しょくばい還元かんげん脱硝だつしょう装置そうちも参照さんしょう）。尿素にょうそ以外いがいの還元かんげん剤ざいを使用しようする方法ほうほうもあるが、尿素にょうそ水すいを使用しようする方式ほうしきが主流しゅりゅうである。

尿素にょうそSCRシステム「FLENDS」を搭載とうさいしたバス車両しゃりょう（ADG-RA273RBN・昭和しょうわ自動車じどうしゃ）

「世界せかいNo.1クリーンディーゼル　このバスの排気はいきは世界一せかいいちキレイです」のステッカー

尿素にょうそSCRは、火力かりょく発電はつでん所しょなどの排出はいしゅつガス処理しょりに利用りようされていたもので、自動車じどうしゃへの実用じつよう化か例れいはなかったが、日産ディにっさんでぃーゼル工業ぜるこうぎょう（現げん・UDトラックス）が自動車じどうしゃ用ようの尿素にょうそSCRシステム「FLENDS」（フレンズ、Final Low Emission New Diesel Sytem）を開発かいはつし、2004年ねん（平成へいせい16年ねん）に世界せかい初はつの実用じつよう化かに成功せいこうした。翌よく2005年ねん（平成へいせい17年ねん）には自動車じどうしゃ技術ぎじゅつ会かい技術ぎじゅつ開発かいはつ賞しょうを受賞じゅしょうしている。

概要がいよう

日産にっさんディーゼル（当時とうじ）の開発かいはつした「FLENDS」は、尿素にょうそSCRと高こう圧あつ燃料ねんりょう噴射ふんしゃを組くみ合あわせたものである。ディーゼル自動車じどうしゃの排出はいしゅつガスに含ふくまれる窒素ちっそ酸化さんか物ぶつ（NO_x）と粒子りゅうし状じょう物質ぶっしつ（PM）は、燃焼ねんしょう温度おんどを下さげるとNOxが減へる代かわりにPMが増ふえ、逆ぎゃくに燃焼ねんしょう温度おんどを上あげるとPMが減へる代かわりにNOxが増ふえるトレードオフの関係かんけいにあるが、「FLENDS」は燃焼ねんしょう温度おんどを上あげて完全かんぜん燃焼ねんしょうさせてPMを低減ていげんし、それによって増加ぞうかしたNO_xを尿素にょうそSCRで除去じょきょするという仕組しくみである。

「FLENDS」は、SCR触媒しょくばいや尿素にょうそ水すい添加てんか装置そうち、解凍かいとう保温ほおん装置そうち付つきの尿素にょうそ水すいタンクや配管はいかん、尿素にょうそ水すいの品質ひんしつ・水位すいいセンサーなど、構成こうせい部品ぶひんにも世界せかい初はつの技術ぎじゅつが多数たすう使用しようされたもので、その技術ぎじゅつ力りょくが高たかく評価ひょうかされ、2005年ねん（平成へいせい17年ねん）に自動車じどうしゃ技術ぎじゅつ会かい技術ぎじゅつ開発かいはつ賞しょうを受賞じゅしょうした。

当時とうじ、世界一せかいいち厳きびしいと言いわれていた日本にっぽんの平成へいせい17年ねん排出はいしゅつガス規制きせいを、1年ねん近ちかく前倒まえだおしして適合てきごうしたことで話題わだいを集あつめた。「世界せかいNo.1クリーンディーゼル　このバスの排気はいきは世界一せかいいちキレイです」と書かかれたステッカーを、バス事業じぎょう者しゃによっては車体しゃたいに掲出けいしゅつしていることもある。

日産にっさんディーゼルの「FLENDS」開発かいはつを受うけ、日本にっぽん国内こくないでも大型おおがた車しゃメーカー各社かくしゃが尿素にょうそSCRシステムを導入どうにゅうした。国内こくないで生産せいさんされる大型おおがた車しゃに関かんしては、2010年ねん（平成へいせい22年ねん）までに全すべてのメーカーが尿素にょうそSCRとディーゼル微粒子びりゅうし捕と集あつまりフィルター（DPF）との併用へいよう式しきを採用さいようしており、排出はいしゅつガス浄化じょうかシステムのトレンドとなった。併用へいよう式しきにすることであえて燃焼ねんしょう温度おんどを調整ちょうせいすることなく温度おんどに応おうじて排出はいしゅつされた物質ぶっしつをそれぞれの装置そうちで後処理あとしょりすることが可能かのうになった。「FLENDS」を開発かいはつした日産にっさんディーゼル、および、当時とうじ業務ぎょうむ提携ていけい下かにあってその供給きょうきゅうを受うけた三菱みつびしふそうトラック・バスを除のぞいた各社かくしゃ（いすゞ自動車ずじどうしゃ・日野自動車ひのじどうしゃ）は、平成へいせい17年ねん排出はいしゅつガス規制きせいをDPFのみでクリアしたが、それは先述せんじゅつのトレードオフの関係かんけいを逆ぎゃくにした、燃焼ねんしょう温度おんどを下さげてNOxを減へらし、それによって増ふえたPMをDPFで除去じょきょする方式ほうしきであった。

また、欧州おうしゅうの自動車じどうしゃメーカーでも同様どうように、トラック・バスなどの大型おおがた商用しょうよう車しゃで採用さいようされており、ディーゼル乗用車じょうようしゃ向むけにもドイツ車しゃを中心ちゅうしんに採用さいようが進すすんでいる。

なお、尿素にょうそSCRシステム専用せんようの高こう品位ひんい尿素にょうそ水すいには「AdBlue」（アドブルー）の登録とうろく商標しょうひょうが付つけられているが日本にっぽんや欧州おうしゅう以外いがいではディーゼルエグゾーストフルード（Diesel exhaust fluid、DEF）と呼よばれることが多おおい。

HC-SCR

詳細しょうさいは「日野自動車ひのじどうしゃエンジン不正ふせい問題もんだい」および「ディーゼル微粒子びりゅうし捕と集あつまりフィルター」を参照さんしょう

HC-SCR（Hydro Carbons Selective Catalytic Reduction）は、HC-SCR触媒しょくばいとも称しょうされ、還元かんげん剤ざいに尿素にょうそを利用りようする尿素にょうそSCRとは異ことなり、ディーゼル燃料ねんりょう（軽油けいゆ）から分解ぶんかい生成せいせいした炭化たんか水素すいそ（HC）を還元かんげん剤ざいとして利用りようする方式ほうしきのため、尿素にょうそタンクが不要ふようとなることから経済けいざい面めんや省しょうスペース化かが図はかれるうえ、尿素にょうそSCRシステム自体じたいが大おおきいため搭載とうさいが不可能ふかのうであったゴミ収集しゅうしゅう車しゃや消防車しょうぼうしゃでもHC-SCRであれば搭載とうさいできるとして日野自動車ひのじどうしゃで開発かいはつされ、新しんDPRと命名めいめいされた。なお、この新しん技術ぎじゅつは2014年ねん（平成へいせい26年ねん）に経済けいざい産業さんぎょう大臣だいじん賞しょうなどを受賞じゅしょうしている。

2020年ねん（令れい和わ2年ねん）に北米ほくべいでEPAが定さだめた排はいガス認証にんしょう試験しけんにHC-SCRシステムを採用さいようした日野ひの600（A05C型がた）が通過つうかしなかったことに端はしを発はっし、2022年ねん（令れい和わ4年ねん）3月がつに発覚はっかくした日野自動車ひのじどうしゃエンジン不正ふせい問題もんだいでは、このHC-SCRシステムを搭載とうさいした車両しゃりょうは全すべて環境かんきょう基準きじゅんをクリアしていないことが確認かくにんされた。全ぜん車種しゃしゅの認定にんてい取とり消けしが行おこなわれた結果けっか、日野自動車ひのじどうしゃでは販売はんばいする車両しゃりょうが一切いっさいない危機きき的てき状況じょうきょうに陥おちいっている。

尿素にょうそ水不足みずぶそく問題もんだい

米べい中ちゅう貿易ぼうえき戦争せんそうで中国ちゅうごくに対たいする経済けいざい制裁せいさいにオーストラリアが追従ついしょうしたことで中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくでは報復ほうふく措置そちとしてオーストラリアからの石炭せきたん輸入ゆにゅうを停止ていしした。中国ちゅうごくでは石炭せきたんの半数はんすうを輸入ゆにゅうに頼たよっており、国内こくないでの採掘さいくつも自然しぜん災害さいがいによる事故じこなどの影響えいきょうから中国ちゅうごく国内こくないで石炭せきたん不足ふそくが深刻しんこく化かしたことにより、尿素にょうその主しゅ原料げんりょうとなるアンモニアの生産せいさん量りょうが激減げきげんしたことで2021年ねんから開始かいしされた輸出ゆしゅつ規制きせい（厳格げんかく化か）により、そのほぼ全量ぜんりょうを中国ちゅうごくに依存いぞんしていた大韓民国だいかんみんこくでは混乱こんらんに陥おちいり、この問題もんだいに対応たいおうするため大韓民国だいかんみんこく国防こくぼう部ぶでも、軽かる戦闘せんとう車両しゃりょうなどで使用しようするため備蓄びちくしていた尿素にょうそ水すいの半数はんすうを民間みんかんに対たいし提供ていきょうした。なお韓国かんこくでは採算さいさん性せいの問題もんだいから2011年ねんに自国じこくでの生産せいさんを打うち切きっている。

この影響えいきょうを受うけ日本にっぽんでも一時いちじ的てきな不足ふそくに陥おちいっている。原料げんりょうとなるアンモニアの自給じきゅう率りつは8割わりと高たかいが、尿素にょうその大半たいはんは輸入ゆにゅうに頼たよっており、自給じきゅう率りつは5割わり程度ていどである。規制きせい開始かいし時じに国内こくない大手おおての一いち社しゃである三井化学みついかがくが定期ていき検査けんさに入はいっていた影響えいきょうなどから不足ふそくに陥おちいったため、経済けいざい産業さんぎょう省しょうが製造せいぞう業者ぎょうしゃに対たいし最大限さいだいげんの増産ぞうさんを要請ようせいし、2022年ねん1月がつ、平時へいじにおける尿素にょうそ水すいの全ぜん供給きょうきゅう量りょうを満みたしたとして、この危機ききは回避かいひされた。

システムの原理げんり

原理げんりとしては、アンモニア（NH₃）が窒素ちっそ酸化さんか物ぶつ（NO_x）と化学かがく反応はんのうすることで、窒素ちっそ（N₂）と水みず（H₂O）に還元かんげんされることを応用おうようしたもので、火力かりょく発電はつでん所しょや船舶せんぱくの排気はいきガス処理しょりシステムにヒントを得えている。

ただしアンモニアを車両しゃりょうに積つむのは危険きけんなため、尿素にょうそ水みずをタンクに入いれて搭載とうさいし、これを排気はいき中ちゅうに噴射ふんしゃすることにより高温こうおん下かで加水かすい分解ぶんかいさせアンモニアガスを得える。

このアンモニアによりNO_xを還元かんげんし、N₂（窒素ちっそガス）とH₂O（水蒸気すいじょうき）を得える。

NO_x削減さくげん原理げんり

${\ce {(NH2)2CO +H2O->2NH3 +CO2}}$　（AdBlueに含ふくまれる尿素にょうそからアンモニアを生成せいせい）

${\ce {4NO +4NH3 +O2->4N2 +6H2O}}$　（一酸化いっさんか窒素ちっその還元かんげん）

${\ce {6NO2 +8NH3-> 7N2 +12H2O}}$　（二酸化にさんか窒素ちっその還元かんげん）

UD・FLENDS（フレンズ）システム

「竹内たけうち覚さとし」も参照さんしょう

「FLENDS」は「Final Low Emission New Diesel System」の略りゃくで、日産ディにっさんでぃーゼル工業ぜるこうぎょう（現げん・UDトラックス）が世界せかいで初はじめて、トラック・バス用ようとして実用じつよう化かに成功せいこうした。

尿素にょうそSCR触媒しょくばい、高こう圧あつ燃料ねんりょう噴射ふんしゃシステム（ユニットインジェクター式しき・コモンレール式しき）、高こう精度せいどクールドEGRを組くみ合あわせたディーゼルエンジン用よう排出はいしゅつガス浄化じょうかシステムである。PMとNO_xの大幅おおはば削減さくげんを達成たっせいし、排出はいしゅつするCO₂を削減さくげんした。

なお本稿ほんこうで述のべる「FLENDS」とは、超ちょう高圧こうあつ燃料ねんりょう噴射ふんしゃシステム（GE13系けいはユニットインジェクター、MD92系けいはコモンレール式しき燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうち）と本ほん装置そうちを組くみ合あわせたもので、誤解ごかいされがちであるが、触媒しょくばい装置そうち単体たんたいの呼称こしょうではない。

• コモンレール式しき燃料ねんりょう噴射ふんしゃシステム - 噴射ふんしゃ前まえの燃料ねんりょうを各かく気筒きとう共通きょうつうの蓄圧ちくあつ器き（コモンレール）で高こう圧あつに保たもち、噴射ふんしゃ燃料ねんりょうの高こう圧あつ細微さいび化かによってPMを抑制よくせいし、噴射ふんしゃ時期じき・噴射ふんしゃ回数かいすう・噴射ふんしゃ量りょうをECUで制御せいぎょすることでNOxの発生はっせいを抑おさえるシステム。
• 高こう精度せいどクールドEGR - 排出はいしゅつガスの一部いちぶを燃焼ねんしょう室しつに再さい循環じゅんかんさせるシステム。
• AdBlue（アドブルー）- ドイツ自動車じどうしゃ工業こうぎょう会かいの登録とうろく商標しょうひょう。尿素にょうそSCRシステム専用せんようの高こう品位ひんい尿素にょうそ水すい。尿素にょうそ32.5%の水溶液すいようえきである。日産化学工業にっさんかがくこうぎょう、日本化成にっぽんかせい、三井化学みついかがく、新しん日本にっぽん化成かせいなどの化学かがくメーカーが製造せいぞうする。トラックステーション、日本にっぽん国内こくないの大型おおがたトラックを扱あつかうディーラー（全社ぜんしゃ）、AdBlue販売元はんばいもと拠点きょてんや大型おおがたトラック対応たいおうスタンドで補充ほじゅうが可能かのうである。運用うんようする事業じぎょう者しゃの拠点きょてんに（ほとんどの場合ばあい燃料ねんりょう（軽油けいゆ）に隣接りんせつする形かたちで）専用せんようの計量けいりょう器きを設置せっちしたり、拠点きょてんの工場こうじょう内ないにドラム缶どらむかんやバッグインボックスの形かたちで常備じょうびすることもある。また枯渇こかつ対策たいさくの応おう急用きゅうように車載しゃさいできる小型こがたパウチもある。

歴史れきし

• 2003年ねん（平成へいせい15年ねん）11月3日にち - 第だい38回かい東京とうきょうモーターショーに日産にっさんディーゼルが実機じっき（単体たんたい）および車両しゃりょうに搭載とうさいした状態じょうたいで展示てんじしたFLENDSシステムは、先述せんじゅつのように、当時とうじ世界一せかいいち厳きびしいとされた日本にっぽんの平成へいせい17年ねん排出はいしゅつガス規制きせいを1年ねん近ちかく前倒まえだおしして適合てきごうしたことで話題わだいを集あつめた。
• 2004年ねん（平成へいせい16年ねん） - 日産にっさんディーゼルがこのシステムを導入どうにゅうした新型しんがたトラック・クオンを発売はつばい。

各社かくしゃの導入どうにゅう状じょう況きょう

国内こくないメーカー

日産にっさんディーゼル（UDトラックス）

「FLENDS」を搭載とうさいした日産にっさんディーゼルの車両しゃりょう（ADG-RA273MAN・神奈川中央交通かながわちゅうおうこうつう）

「FLENDS」を自社じしゃ製せいの大型おおがたトラック・クオン、大型おおがたバス（スペースアロー・スペースランナーRA）に搭載とうさい。また、三菱みつびしふそうトラック・バスにもこの技術ぎじゅつを供給きょうきゅうすることで同社どうしゃと合意ごういし、2007年ねんに大型おおがたトラックのスーパーグレート、大型おおがたバスのエアロスター、エアロクィーンなどに導入どうにゅうした。 第だい40回かい東京とうきょうモーターショーにおいて、DPF触媒しょくばいを併用へいようした、次世代じせだい型がたの尿素にょうそSCRシステムを出品しゅっぴんした。 2010年ねん、クオンのマイナーチェンジ時じに併用へいよう式しきシステムを導入どうにゅう。同年どうねんバスにおいても併用へいよう式しきシステムに移行いこうしたがこちらは後述こうじゅつの「BlueTec」であるためUDのものとは異ことなる。 同どう2010年ねん、中型ちゅうがたトラック・コンドルのフルモデルチェンジ時じに、中型ちゅうがた車しゃでもクラス初はつのシステム導入どうにゅうを行おこなった。 UD・ふそう両社りょうしゃのAdBlue補給ほきゅう可能かのう箇所かしょを合計ごうけいするとと全国ぜんこくで1,500箇所かしょに上のぼるが、下しも述じゅつするようにさらに追随ついずいするメーカーが増ふえたこと、またそれによるシステム自体じたいの普及ふきゅうによりAdBlueを補給ほきゅう可能かのうな給油きゅうゆ所しょも増ふえたことで補給ほきゅう可能かのう箇所かしょは大幅おおはばに増加ぞうかしている。

三菱みつびしふそうトラック・バス

メルセデス・ベンツの「BlueTec5」装備そうび車しゃに取とり付つけられているエンブレム
（神奈川中央交通かながわちゅうおうこうつう）

当初とうしょは独自どくじに開発かいはつを進すすめていたが、リコール問題もんだいで中止ちゅうし。その後ご、日産にっさんディーゼルの「FLENDS」の供給きょうきゅうを受うけることで合意ごういした。2010年ねんより、ダイムラーグループのメルセデス・ベンツと同おなじ「BlueTec（ブルーテック） 」を導入どうにゅうした。同年どうねんに発売はつばいされたスーパーグレートと大型おおがたバス（2011年ねんまでUDにも供給きょうきゅう）に搭載とうさいされた。これも併用へいよう式しきシステムを採用さいようしている。同どう2010年ねん、小型こがたトラックのキャンターのフルモデルチェンジに合あわせ、「BlueTec」を導入どうにゅう。翌よく2011年ねん、中型ちゅうがたトラックのファイター、マイクロバスのローザ、中型ちゅうがたバスのエアロミディMKのマイナーチェンジに合あわせて、それぞれ導入どうにゅうされた。

日野自動車ひのじどうしゃ

2010年ねん、独自どくじのクリーンディーゼルシステム「AIR LOOP（エアループ）」を開発かいはつし、尿素にょうそSCRとDPRの併用へいよう式しきも採用さいようされる。同年どうねん4月がつに発売はつばいされた、大型おおがたトラックのプロフィアに尿素にょうそSCR併用へいよう型がたを搭載とうさい。その後ご、中型ちゅうがたトラックのレンジャーにも搭載とうさいした。同どう2010年ねん7月がつ、大型おおがた貸切かしきり・高速こうそくバスのセレガと、セレガとの統合とうごうモデルであるいすゞ・ガーラ（いずれも12m車くるまのみ）にも搭載とうさいされた。2011年ねん、「AIR LOOP」をセレガハイブリッドに搭載とうさいし、ポスト新長しんちょう期き規制きせいに適合てきごう。

2017年ねん7月がつから8月がつにかけて、中型ちゅうがたバスのメルファと、大型おおがた路線ろせんバスのブルーリボンハイブリッド（それぞれ統合とうごう車種しゃしゅとなるいすゞ・ガーラミオといすゞ・エルガハイブリッドも同様どうよう）、同年どうねん12月がつには小型こがた路線ろせんバスのポンチョに尿素にょうそSCR併用へいよう型がたをそれぞれ搭載とうさい。2019年ねん7月がつ、マイクロバスでトヨタ自動車とよたじどうしゃからのOEM車種しゃしゅであるリエッセIIにも尿素にょうそSCRとDPRを併用へいようしたシステムが搭載とうさいされた（なお同どう車種しゃしゅのエンジンは日野自動車ひのじどうしゃ製せいである）。

いすゞ自動車ずじどうしゃ

いすゞ自動車ずじどうしゃは、第だい36回かい東京とうきょうモーターショーに尿素にょうそSCRシステム搭載とうさい車しゃを参考さんこう出品しゅっぴんしたが、尿素にょうそ水すいの供給きょうきゅうインフラの整備せいびが充分じゅうぶんでないため時期じき尚早しょうそうと判断はんだん。第だい40回かい東京とうきょうモーターショーに、尿素にょうそ水すい噴射ふんしゃに圧縮あっしゅく空気くうきを必要ひつようとしない次世代じせだいの尿素にょうそSCRシステムを出品しゅっぴん。

2010年ねん5月がつ、DPF触媒しょくばいと尿素にょうそSCRの併用へいよう式しきによるシステムを導入どうにゅうし、大型おおがたトラックのギガ、中型ちゅうがたトラックのフォワードのマイナーチェンジ時じに搭載とうさい（フォワードは一部いちぶ車種しゃしゅのみ）。これにより、日本にっぽん国内こくないの大型おおがた商用しょうよう車しゃメーカーが全すべて尿素にょうそSCRシステムの導入どうにゅうを完了かんりょうしたことになる。同どう2010年ねん8月がつ、大型おおがたバスのエルガと、エルガとの統合とうごうモデルである日野ひの・ブルーリボンIIにもギガ・フォワードと同おなじシステムが搭載とうさいされた。2017年ねん8月がつ、中型ちゅうがたバスのエルガミオと、エルガミオとの統合とうごうモデルである日野ひの・レインボーにも搭載とうさいされた。2018年ねん3月がつ、小型こがたトラックのエルフにも搭載とうさいされた。

マツダ

マツダは、2009年ねん後半こうはんから欧州おうしゅう市場いちばで発売はつばいされるCX-7のディーゼル仕様しように、尿素にょうそSCRシステムを搭載とうさいした。しかし、独自どくじ技術ぎじゅつによりこのシステムを不要ふようとしたクリーンディーゼル「SKYACTIV-D」（2012年ねん発売はつばいのCX-5から搭載とうさい）を開発かいはつしたため、以降いこうはOEM供給きょうきゅう（ハイエース / レジアスエース→ボンゴブローニイバン、エルフ→タイタンなど）を受うける車両しゃりょうなどに限かぎられている。

トヨタ自動車とよたじどうしゃ

トヨタ自動車とよたじどうしゃは、2015年ねんに登場とうじょうしたGD型がたエンジンに、尿素にょうそSCRシステムを搭載とうさいしている（前述ぜんじゅつのハイエース / レジアスエース等とうに搭載とうさい）。2019年ねんには日野自動車ひのじどうしゃ製せいエンジンを搭載とうさいしたコースターにも搭載とうさいされ、エンジンの供給きょうきゅう元もとである日野自動車ひのじどうしゃにも同どう車種しゃしゅを供給きょうきゅうしている。

三菱自動車工業みつびしじどうしゃこうぎょう

三菱自動車工業みつびしじどうしゃこうぎょうは、2019年ねんのデリカD:5のビッグマイナーチェンジの際さいに改良かいりょうされた4N14型がたエンジンに尿素にょうそSCRシステムを搭載とうさいしている。同年どうねんにはエクリプスクロスのクリーンディーゼル車しゃにも搭載とうさいされている。

日産自動車にっさんじどうしゃ

2022年ねんに日産自動車にっさんじどうしゃから自社じしゃ製せいディーゼルエンジン開発かいはつを中止ちゅうしし、キャラバンのマイナーチェンジで、商用しょうようバンのみを三菱自動車みつびしじどうしゃから4N16型がたエンジンの供給きょうきゅうを受うける。

その他た

トラクターやホイールローダーなど、一般いっぱん道路どうろを走行そうこうする特殊とくしゅ車両しゃりょうに尿素にょうそSCRシステム化かがされている。ヤンマーやクボタや井関農機いせきのうきのトラクターの一部いちぶ車種しゃしゅや、小松製作所こまつせいさくしょのホイールローダーの一部いちぶ車種しゃしゅにも、尿素にょうそSCRシステムを搭載とうさいしている。

外国がいこくメーカー

メルセデス・ベンツ

「BlueTec」（ブルーテック）の名称めいしょうで展開てんかい。三菱みつびしふそうも同様どうようのシステムを導入どうにゅうした。2006年ねんに北米ほくべいで発売はつばいされた「メルセデスベンツ・E320 CDI」は「ブルーテック」を名乗なのるものの、大だい市場いちばであるカリフォルニア州しゅうやニューヨーク州しゅうを始はじめとする5州しゅうの排出はいしゅつガス規制きせいをクリア出来できず、それらの州しゅうでの販売はんばいは不可能ふかのうとなっている。

日本にっぽん国内こくないにおいては、乗用車じょうようしゃで2010年ねん2月がつにV6 3リッターディーゼルエンジンを搭載とうさいした「E350 ブルーテック アヴァンギャルド」（セダン・ステーションワゴン）を発売はつばいしている。2015年ねんには直列ちょくれつ4気筒きとう2.2リッターエンジン、2016年ねん7月がつから直列ちょくれつ4気筒きとう2リッターエンジン、2018年ねん9月から直列ちょくれつ6気筒きとう3リッターエンジンをそれぞれ追加ついかして展開てんかいし、主要しゅようモデルに「○200d」「○220d」「○350d」「○400d」の名称めいしょうを付ふして販売はんばいされている。2019年ねんには新型しんがたAクラスおよびBクラスに、同どう車種しゃしゅとしては日本にっぽんで初はつとなるディーゼルモデル「A200d」および「B200d」を発売はつばいした。こちらは欧州おうしゅうの排はいガス規制きせい規格きかくである「ユーロ6d」をクリアしている。商用しょうよう車しゃでは、2007年ねん以降いこうに日本にっぽんにも輸入ゆにゅうされている連れん節ぶしバスのシターロGが、ユーロ5対応たいおうの「ブルーテック5」を装備そうびし、2016年ねん以降いこうの日本にっぽん市場いちば向むけ新型しんがたモデルではユーロ6対応たいおうの「ブルーテック6」を装備そうびしている。

グループPSA（現げん・ステランティス）

グループPSA（現げん・ステランティス）傘下さんかのプジョー・シトロエン・DS Automobilesは、2013年ねん9月がつから「BlueHDi」の名称めいしょうで展開てんかい。日本にっぽん国内こくないでは2016年ねん7月がつにプジョー・シトロエン・DS Automobilesの各かくブランドで発売はつばいを開始かいしした。

フォルクスワーゲン

フォルクスワーゲンは2015年ねん、排はいガス規制きせいの不正ふせいソフトウェアを指摘してきされたため、今後こんごは全すべてのディーゼル車種しゃしゅに尿素にょうそSCRシステムを取とり付つけることを表明ひょうめいした

現代げんだい自動車じどうしゃ（ヒュンダイ→ヒョンデ）

現代げんだい自動車じどうしゃは日本にっぽんに輸出ゆしゅつする大型おおがたバス・ユニバースの2011年ねんモデルより、DPF＋SCRの併用へいよう式しきを採用さいようすることでポスト新長しんちょう期き規制きせいをクリアしている。

長所ちょうしょと短所たんしょ

長所ちょうしょ

• このシステム自体じたいによる燃費ねんぴの悪化あっか要因よういんが少すくない。排はいガス対策たいさくにNOx吸蔵還元かんげん触媒しょくばいやディーゼル微粒子びりゅうし捕と集あつまりフィルター（DPF）を利用りようする方式ほうしきの場合ばあいは、元もと触媒しょくばいやフィルターの再生さいせいのために追加ついかの燃料ねんりょう噴射ふんしゃ（直接ちょくせつDPFに噴射ふんしゃする排気はいき管内かんない噴射ふんしゃ、あるいはエンジンで燃焼ねんしょう行程こうてい後ごにシリンダー内ないに噴射ふんしゃするポスト噴射ふんしゃがあるが、後者こうしゃは実質じっしつ的てきにはアフターファイアーに等ひとしい）を行おこなうため、燃費ねんぴの悪化あっかやポスト噴射ふんしゃ方式ほうしきの場合ばあいは軽油けいゆによるエンジンオイルの希釈きしゃく（潤滑じゅんかつ・清浄せいじょう性能せいのうの低下ていか）が問題もんだいになるが、尿素にょうそSCRシステムだけの場合ばあいは、そのような問題もんだいは発生はっせいしない。
• 燃費ねんぴの悪化あっか要因よういんが少すくないため、燃料ねんりょうコストと尿素にょうそ水すいのコストを合算がっさんしても、従来じゅうらい型がた車しゃと比較ひかくしてランニングコストの上昇じょうしょうはほとんどないか同等どうとうである。
• NOx吸蔵還元かんげん触媒しょくばいやディーゼル微粒子びりゅうし捕と集あつまりフィルター（DPF）と比較ひかくして、排気はいき温度おんどが低ひくい状態じょうたいからでも浄化じょうか能力のうりょくがあり、耐久たいきゅう性せいも高たかい。
• 白金はっきんなどの貴金属ききんぞくを使つかわなくてすむため、尿素にょうそSCR単体たんたいなら低ていコスト化かが図はかれる。複ふく合ごう式しきであれば、浄化じょうか能力のうりょくをそれぞれの単体たんたい式しきよりも向上こうじょうできる。

短所たんしょ

• 実じつ走行そうこうにおいて規制きせい値ちを大幅おおはばに超こえるNO_xを排出はいしゅつすることがある。
• 尿素にょうそ水すいタンクおよび噴射ふんしゃシステムに加くわえ、システムの前ぜん後段こうだんに酸化さんか触媒しょくばいを装着そうちゃくする必要ひつようがあり、重量じゅうりょう増ぞうにより積載せきさい量りょうが減少げんしょうしたり（バスなどの乗用じょうよう用途ようとであればほぼ問題もんだいにならないがトラック等とうの貨物かもつ用途ようとの場合ばあいは積載せきさい量りょうの減少げんしょうは輸送ゆそう効率こうりつの悪化あっかに直結ちょっけつする）必要ひつような運転うんてん免許めんきょ区分くぶんが変かわったりする。
• 尿素にょうそと排はいガスの燃焼ねんしょう生成せいせい物ぶつによりマフラー内ないに堆積たいせき物ぶつが溜たまったりインジェクター（噴射ふんしゃノズル）詰つまりを起おこすことがあるため、定期ていき的てきに清掃せいそうが必要ひつようとなる。シアヌル酸さんのようなトリウレット等ひとしが原因げんいん物質ぶっしつであるため、これらを除去じょきょした尿素にょうそ水すいも発売はつばいされている。
• アンモニアが排出はいしゅつされる危険きけんがあるので、排気はいき漏洩ろうえい防止ぼうし装置そうちの取とり付つけが必要ひつよう。またそれでも構造こうぞう上じょう排気はいき臭しゅうにある程度ていどはアンモニア臭しゅうが混まざってしまう。
• メーカー指定してい以外いがいの尿素にょうそ水すいを入いれた場合ばあい、NO_x浄化じょうか率りつの低下ていか、フィルターの目め詰つまり、尿素にょうそ水すいが凍結とうけつした際さいにウォーニングランプが点灯てんとうするなどのトラブルが発生はっせいすることがある。
• 一般いっぱん車両しゃりょうは走行そうこう中ちゅうに尿素にょうそ水切みずぎれを起おこすと継続けいぞく走行そうこうは可能かのうとなるが、エンジン停止ていし後ごの再始動さいしどうは不可能ふかのうである。噴射ふんしゃ制御せいぎょにECUを利用りようしているため仮かりにその状態じょうたいで再始動さいしどうが可能かのうだとしても、後述こうじゅつのようにシステム破損はそん等とうの恐おそれがある。
• 乗用車じょうようしゃに使用しようする場合ばあいは大型おおがた車しゃと違ちがい、尿素にょうそ噴射ふんしゃに圧縮あっしゅく空気くうきが使つかえない、また小型こがた乗用車じょうようしゃでは尿素にょうそタンクや追加ついかされる触媒しょくばいの取とり付つけスペースの確保かくほが困難こんなんである。
• 排気はいき温度おんどが低ひくいと触媒しょくばい作用さようが弱よわく、動作どうさを停止ていしすることがある。低温ていおんの浄化じょうか作用さようについては他たの触媒しょくばいでも同様どうようの問題もんだいを抱かかえる。低温ていおんでも効果こうかを発揮はっきするように改良かいりょうが進すすめられている。
• 尿素にょうそ水すいの補充ほじゅうが持続じぞく的てきに必要ひつような為ため、運転うんてん者しゃの負担ふたんとなる。
• 尿素にょうそ水すいを切きらしたり尿素にょうそ水すいタンク内ないに異物いぶつが混入こんにゅうしたり等ひとしの原因げんいんでシステムが破損はそんした場合ばあい、修理しゅうり費用ひようが高たかくつく事ことがある。100万まん円えんほどかかる事例じれいもある。
• システム自体じたいに塗装とそうや油脂ゆし類るいの塗布とふを行おこなうことは厳禁げんきんとなっている。これらを行おこなった場合ばあい、耐久たいきゅう性せいの低下ていか、機能きのう不良ふりょうを引ひき起おこしたり、故障こしょうの原因げんいんとなる。
• 尿素にょうそ水すいを誤あやまってボディや他たの部品ぶひんにこぼした際さい、尿素にょうそ水すいは金属きんぞくに影響えいきょうを与あたえるため損傷そんしょうの原因げんいんとなる。個人こじんユーザーの場合ばあい、トヨタ自動車とよたじどうしゃのように販売はんばい店てんにて尿素にょうそ水すいを補充ほじゅうするように推奨すいしょうしているメーカーもある。
• 2021年ねん、韓国かんこくでは尿素にょうそ水すいを中国ちゅうごくからの輸入ゆにゅうに頼たよっていたが、中国ちゅうごくが原材料げんざいりょうとしていた石炭せきたんの不足ふそくから輸出ゆしゅつを制限せいげん。韓国かんこく国内こくないの尿素にょうそ水すいが品薄しなうすとなり、物流ぶつりゅうに大おおきな影響えいきょうが生しょうじた。

脚注きゃくちゅう

関連かんれん項目こうもく

• UDトラックス（旧きゅう社名しゃめい：日産ディにっさんでぃーゼル工業ぜるこうぎょう）
  • 竹内たけうち覚さとし - 日産ディにっさんでぃーゼル工業ぜるこうぎょう（当時とうじ）の技術ぎじゅつ役員やくいんで、尿素にょうそSCRシステムを開発かいはつを指揮しきした人物じんぶつの一人ひとり
• 自動車じどうしゃ排出はいしゅつガス規制きせい
  • 平成へいせい17年ねん排出はいしゅつガス規制きせい
  • 自動車じどうしゃNOx・PM法ほう
  • ディーゼル車しゃ規制きせい条例じょうれい
  • 低てい排出はいしゅつガス車しゃ認定にんてい制度せいど / 重量じゅうりょう車しゃ燃費ねんぴ基準きじゅん
• ディーゼル自動車じどうしゃ
  • ディーゼルエンジン
  • 噴射ふんしゃポンプ - ディーゼルエンジンの高こう圧あつ燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうち（ユニットインジェクター式しき、コモンレール式しきなど）
• 排気はいきガス処理しょり
  • 選択せんたく触媒しょくばい還元かんげん脱硝だつしょう装置そうち
  • 三さん元げん触媒しょくばい / NOx吸蔵還元かんげん触媒しょくばい
  • ディーゼル微粒子びりゅうし捕と集あつまりフィルター (DPF)
• 日本にっぽんの自動車じどうしゃ技術ぎじゅつ330選せん

外部がいぶリンク

• 日本にっぽんの自動車じどうしゃ技術ぎじゅつ330選せん　尿素にょうそSCRシステム(FLENDS) - 公益社こうえきしゃ団だん法人ほうじん 自動車じどうしゃ技術ぎじゅつ会かい
• Quon：燃費ねんぴ - UDトラックス公式こうしきサイト（FLENDSについての記述きじゅつあり）