イノセンス

攻殻機動隊こうかくきどうたい > イノセンス

イノセンス
INNOCENCE
監督かんとく	押井おしい守まもる
脚本きゃくほん	押井おしい守まもる
原作げんさく	士郎しろう正宗まさむね
製作せいさく	石川いしかわ光久みつひさ 鈴木すずき敏夫としお
出演しゅつえん者しゃ	大塚おおつか明夫あきお 山寺やまでら宏一こういち 田中たなか敦子あつこ 大木おおき民夫たみお 仲野なかの裕ひろし 竹中たけなか直人なおと
音楽おんがく	川井かわい憲次けんじ
主題歌しゅだいか	伊藤いとう君子きみこ 『Follow Me』
制作せいさく会社かいしゃ	Production I.G
製作せいさく会社かいしゃ	徳間書店とくましょてん 日本テレビ放送網にほんてれびほうそうもう 電通でんつう ディズニー 東宝とうほう 三菱商事みつびししょうじ ディーライツ
配給はいきゅう	東宝とうほう Go Fish Pictures ドリームワークス
公開こうかい	2004年ねん3月がつ6日にち 2004年ねん5月がつ20日はつか（CIFF） 2004年ねん9月がつ9日にち（TIFF）
上映じょうえい時間じかん	100分ふん
製作せいさく国こく	日本にっぽん
言語げんご	日本語にほんご
製作せいさく費ひ	20億おく円えん（推定すいてい）
興行こうぎょう収入しゅうにゅう	10億おく円えん
前作ぜんさく	GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊こうかくきどうたい

『イノセンス』（INNOCENCE）は、押井おしい守まもる監督かんとくによる日本にっぽんの劇場げきじょう用ようアニメ映画えいが。2004年ねん3月6日にちに全国ぜんこく東宝とうほう洋画ようが系けいで公開こうかいされた。押井おしいが監督かんとくした1995年ねん公開こうかいのアニメ映画えいが『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊こうかくきどうたい』の続編ぞくへんにあたり、本ほん作さくは自身じしんにとっても前作ぜんさくの公開こうかいから約やく9年ねんぶりとなるアニメ監督かんとく作品さくひんである。キャッチコピーは、糸井いとい重しげる里さとの「イノセンス それは、いのち。」

2004年ねん、第だい25回かい日本にっぽんSF大賞たいしょう受賞じゅしょう。第だい57回かいカンヌ国際映画祭かんぬこくさいえいがさいのコンペティション部門ぶもんにて上映じょうえいされた。日本にっぽんのアニメーション作品さくひんがカンヌのコンペ部門ぶもんに選出せんしゅつされるのは史上しじょう初はつであり、2017年ねん現在げんざいも唯一ゆいいつのノミネート作品さくひんである。
第だい32回かいアニー賞しょう長編ちょうへんアニメ作品さくひん賞しょうノミネート。

あらすじ

少佐しょうさこと草薙くさなぎ素子もとこの失踪しっそう（前作ぜんさく『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊こうかくきどうたい』のラスト）から3年ねん後ごの西暦せいれき2032年ねん。

巨大きょだい企業きぎょうロクス・ソルス社しゃが販売はんばいする少女しょうじょ型がたの愛玩あいがん用ようガイノイド「Type2052 “ハダリ（HADALY）”」が原因げんいん不明ふめいの暴走ぼうそうを起おこし、所有しょゆう者しゃを惨殺ざんさつするという事件じけんが相次あいついで発生はっせいした。被害ひがい者しゃの遺族いぞくとメーカーの間あいだで示談じだんが不審ふしんなほど速すみやかに成立せいりつし、また被害ひがい者しゃの中なかに政治せいじ家かや元もと公安こうあん関係かんけい者しゃがいたことから、ロボットを利用りようしたテロの可能かのう性せいを考慮こうりょして公安こうあん9課かで捜査そうさを担当たんとうすることになり、公安こうあん9課かのバトーは、相棒あいぼうのトグサとともに捜査そうさに向むかう。

県警けんけい鑑識かんしき官かんのハラウェイによると、ハダリには破壊はかい・機能きのう停止ていし状態じょうたいになるとロクス・ソルス社しゃによる執拗しつようとも言いえるほどのメーカーの機密きみつ漏洩ろうえい防止ぼうしプログラムが書かき加くわえられていることと、今回こんかいの暴走ぼうそうを起おこしたハダリは所有しょゆう者しゃ嗜好しこうによりセクサロイド機能きのうという特殊とくしゅ仕様しようが施ほどこされていた。ハラウェイ曰いわく「世間せけんに自慢じまんできる趣味しゅみではないが、違法いほうではない」と。だから被害ひがい者しゃの遺族いぞくもロクス・ソルス社しゃを告訴こくそせず、賠償ばいしょう問題もんだいや裁判さいばんなどの示談じだんも異様いようとも言いえるスピードで成立せいりつしていたのだ。結論けつろんとして、テロの可能かのう性せいがゼロになったことで本件ほんけんは、バトー・トグサの専従せんじゅう捜査そうさに切きり替かえられる。

その最中さいちゅう、ロクス・ソルス社しゃの出荷しゅっか検査けんさ部長ぶちょうが惨殺ざんさつされる事件じけんが起おきる。暴走ぼうそうしたハダリに組長くみちょうを殺ころされた指定してい暴力団ぼうりょくだん「紅べに塵ちり会かい」の犯行はんこうであると踏ふんだバトー・トグサは、紅べに塵ちり会かいの事務所じむしょを襲撃しゅうげきする。検査けんさ部長ぶちょうはロクス・ソルス社しゃから「落おとし前まえ」として紅べに塵ちり会かいに売うられたのだった。だがバトーは襲撃しゅうげきの真意しんいについて、もしもロクス・ソルス社しゃがうしろめたいものを抱かかえているのであれば、なんらかの形かたちで捜査そうさの妨害ぼうがいを仕掛しかけてくるはずだと踏ふんでいた。その帰宅きたく途中とちゅう、バトーはいつものように立たち寄よった食料しょくりょう品ひん店てんでゴーストハックされ乱射らんしゃ事件じけんを起おこしてしまう。

事件じけんの核心かくしんへと迫せまるべく、バトーとトグサはロクス・ソルス本社ほんしゃがある択捉えとろふ経済けいざい特区とっくへ向むかう。手始てはじめに二に人にんは、バトーへのゴーストハックの容疑ようぎでハッカーのキムの屋敷やしきを訪おとずれる。2人ふたりは電脳でんのうの疑似ぎじ現実げんじつのループに誘さそい込こまれてしまうが、何者なにものかからのヒントで脱出だっしゅつに成功せいこう。バトーの読よみ通どおりロクス・ソルス社しゃがキムを雇やとい、捜査そうさの妨害ぼうがいを試こころみたと確信かくしんした2人ふたりはキムを確保かくほし、バトーは公海こうかい上じょうにあるロクス・ソルス社しゃのガイノイド製造せいぞうプラント船せんへ乗のり込こむ。

トグサはキムの脳のう殻からを用もちいてバトーをバックアップするが、プラント船せんの警備けいびシステムが作動さどうし、電脳でんのう戦せんの末すえにキムは死亡しぼうしてしまう。だが、キムは自みずからの死しに連動れんどうしたウイルスを製造せいぞうプラント船内せんないに仕込しこんでおり、それによって待機たいき中ちゅうの全すべてハダリが暴走ぼうそうを開始かいしし、船内せんないのロクス・ソルス社しゃの警備けいび兵へいたちを惨殺ざんさつし始はじめる。プラント船せん中枢ちゅうすうを目指めざすバトーがそれらに応戦おうせんしている最中さいちゅう、1体たいのハダリが現あらわれ、バトーを援護えんごする。そのハダリは素子そしが自身じしんの一部いちぶをダウンロードさせたものだった。食料しょくりょう品ひん店てんでバトーに警告けいこくを発はっしたのも、キムのループを解とくヒントを与あたえたのも素子そしだった。

素子そしのハッキングによってプラント船内せんないは鎮圧ちんあつされ、バトーは捜査そうさを再開さいかいする。プラント船せんの中枢ちゅうすう部ぶにはゴーストをガイノイドに複製ふくせいする「ゴーストダビング装置そうち」が並ならんでいた。ハダリの正体しょうたいは、紅べに塵ちり会かいが密輸入みつゆにゅうした少女しょうじょたちのゴーストを犠牲ぎせいにして作つくり出だした「生いきた人形にんぎょう」であった。相次あいついで発生はっせいした惨殺ざんさつ事件じけんは、良心りょうしんの呵責かしゃくに耐たえ兼かねた検査けんさ部長ぶちょうが警察けいさつの捜査そうさによってハダリの正体しょうたいが暴あばかれる事ことを期待きたいして、ハダリのプログラムに意図いと的てきに細工ざいくを施ほどこすことで起おきたものであり、紅べに塵ちり会かいに売うられた理由りゆうもその事実じじつがロクス・ソルス社しゃに露見ろけんしたためであった。素子そしは脱出だっしゅつするバトーに「あなたがネットにアクセスするとき、私わたしは必かならずあなたのそばにいる」とい残いのこし、ハダリのデータを消去しょうきょした。

事件じけん解決かいけつ後ご、バトーはトグサの家いえに預あづけていた犬いぬのガブリエルを迎むかえに行いき、その際さいトグサに抱いだかれた娘むすめとその腕うでに抱いだかれた娘むすめへのプレゼントの人形にんぎょう、バトーに抱いだかれたガブリエルはお互たがいを見みつめ合あったのだった。

キャスト

役名やくめい	日本語にほんご版ばん	英語えいご版ばん
		2005年版ねんばん	2009年版ねんばん
バトー	大塚おおつか明夫あきお	リチャード・エプカー
トグサ	山寺やまでら宏一こういち	クリスピン・フリーマン
草薙くさなぎ素子もとこ	田中たなか敦子あつこ	メアリー・エリザベス・マクグリン
荒巻あらまき大輔だいすけ	大木おおき民夫たみお	ウィリアム・フレデリック・ナイト
イシカワ	仲野なかの裕ひろし	マイケル・マッカーティ
コガ	平田ひらた広明ひろあき	ロバート・アクセルロッド	フレッド・サンダース
アズマ	寺てら杣そま昌紀まさき	エリック・デイヴィス
謎なぞの少女しょうじょ	武藤むとう寿美としみ	シェリー・リン	ローラ・ベイリー
刑事けいじ	藤本ふじもと譲ゆずる	スティーブ・クレイマー	カイル・エベール
リン	亀山かめやま助すけ清きよし	ロバート・アクセルロッド	ダグ・ストーン
ワカバヤシ	仲木なかぎ隆司たかし	リチャード・カンシーノ	スティーブ・クレイマー
用心棒ようじんぼう	立木たちき文彦ふみひこ	ボブ・パーペンブルック	ジョー・ロメルサ
突入とつにゅう隊長たいちょう	木下きのした浩之ひろゆき	リチャード・カンシーノ	デイビット・ヴィンセント
サイボーグ医師いし	平野ひらの稔みのる	ボブ・パーペンブルック	ジョン・スナイダー
トグサの娘むすめ	山内やまうち菜々なな	ステファニー・シェー	サンディ・フォックス
鑑識かんしき課長かちょう	堀ほり勝之かつゆき祐ゆう	テレンス・ストーン	ロイ・エッジ
ハラウェイ	榊原さかきばら良子りょうこ	エリン・スターン	バーバラ・グッドソン
キム	竹中たけなか直人なおと	ジョーイ・ダウリア	トラヴィス・ウィリン
ガブリエルC	Ruby
その他た	青あお羽わ剛つよし 岸田きしだ修治しゅうじ 保ほ村むら真しん 朝倉あさくら栄介えいすけ 原田はらだ正夫まさお 仁ひとし古こ泰やすし 望月もちづき健一けんいち 福ぶく笑子えみこ 木川きがわ絵理子えりこ 杉本すぎもとゆう 渡辺わたなべ明あきら乃	マイケル・マコノヒー ケヴィン・シーモア	カレン・ヒューイ ジム・ラウ ロジャー・クレイグ・スミス

スタッフ

• 原作げんさく - 士郎しろう正宗まさむね（『攻殻機動隊こうかくきどうたい』講談社こうだんしゃ刊かん）
• 監督かんとく・脚本きゃくほん・絵えコンテ - 押井おしい守まもる
• 演出えんしゅつ - 西久保にしくぼ瑞穂みずほ、楠くすのき美直子みなこ
• キャラクターデザイン - 沖浦おきうら啓之ひろゆき
• サブキャラクターデザイン・銃器じゅうき設定せってい - 西尾にしお鉄也てつや
• メカニックデザイン - 竹内たけうち敦志あつし
• プロダクションデザイナー - 種田たねた陽平ようへい
• レイアウト - 渡部わたなべ隆たかし、竹内たけうち敦志あつし
• 作画さくが監督かんとく - 黄瀬きのせ和哉かずや、西尾にしお鉄也てつや、沖浦おきうら啓之ひろゆき
• 美術びじゅつ監督かんとく - 平田ひらた秀一ひでかず
• デジタルエフェクトスーパーバイザー - 林はやし弘幸ひろゆき
• ビジュアルエフェクト - 江面えづら久ひさ、 齋藤さいとう瑛あきら
• ラインプロデューサー - 三本みもと隆二りゅうじ、西沢にしざわ正ただし智さとし
• 主題歌しゅだいか - 伊藤いとう君子きみこ／『Follow Me』 （アランフエス協奏曲きょうそうきょくを編曲へんきょくしたもの）（VideoArts Music）
• 音楽おんがく - 川井かわい憲次けんじ
• 音響おんきょう監督かんとく - 若林わかばやし和弘かずひろ
• イメージフォト - 樋上ひがみ晴彦はるひこ
• プロデューサー - 石川いしかわ光久みつひさ、鈴木すずき敏夫としお
• 制作せいさく - プロダクション・アイジー
• 製作せいさく協力きょうりょく - スタジオジブリ
• 特別とくべつ協賛きょうさん - エプソン
• 特別とくべつ協力きょうりょく - ローソン、読売新聞社よみうりしんぶんしゃ、タワーレコード
• 製作せいさく - プロダクション・アイジー、徳間書店とくましょてん、日本テレビ放送網にほんてれびほうそうもう、電通でんつう、ウォルト・ディズニー・ジャパン、東宝とうほう、ディーライツ、三菱商事みつびししょうじ
• 配給はいきゅう - 東宝とうほう

作品さくひん解説かいせつ

前作ぜんさく『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊こうかくきどうたい』の草薙くさなぎ素子もとこ少佐しょうさの代かわりにバトーがメインキャラクターをつとめる。ただし、九きゅう課かのチーフ役やくはトグサが継ついでいる。

本編ほんぺんのストーリーのベースは、漫画まんが版ばん『攻殻機動隊こうかくきどうたい』の第だい6話わ「ROBOT RONDO」。

作品さくひん世界せかい

本ほん作品さくひんは士郎しろう正宗まさむねの原作げんさくにおける『攻殻機動隊こうかくきどうたい1.5 HUMAN-ERROR PROCESSER』『攻殻機動隊こうかくきどうたい2 MANMACHINE INTERFACE』のように、前作ぜんさくで消息しょうそくを絶たった素子そしが再ふたたび姿すがたを表あらわし、主役しゅやくとして大だい活躍かつやくする作品さくひんにはならなかった。押井おしいによれば、終おわった後のちの今いまの目めで見みればそのような展開てんかいでも良よかったかもしれないと思おもえるが、当時とうじは自然しぜんと本ほん作品さくひんで選択せんたくした方向ほうこう性せい以外いがいに考かんがえられなかったと語かたっている。また、本ほん作品さくひんで直接ちょくせつは描えがかれなかった「その後ごの素子そし」に関かんしては、テーマとして容ようを変かえて押井おしいの次回じかい作さく以降いこうで語かたられるだろうとしている（必かならずしも続編ぞくへんとしての『攻おさむ殻から3』を製作せいさくするという意味いみではない）。

製作せいさく

作品さくひん名めいは当初とうしょ『攻殻機動隊こうかくきどうたい2』だったが、制作せいさく協力きょうりょくしたスタジオジブリのプロデューサー鈴木すずき敏夫としおの提案ていあんにより『イノセンス』となった。主題歌しゅだいかとして「Follow Me」を提案ていあんしたのも鈴木すずきである。押井おしい自身じしんも「彼かれ（鈴木すずき）がやったのは2つ。『イノセンス』というタイトルをつけたことと、主題歌しゅだいか」と発言はつげんしている。タイトルのロゴ・デザインも鈴木すずきの手てによるもの。

製作せいさく委員いいん会かい

本格ほんかく的てきに企画きかくが動うごいたのは2000年ねん春はる。まず取とり組くんだ作業さぎょうは、ハリウッドの会社かいしゃと直接ちょくせつ対等たいとうに組くんで、I.Gが主導しゅどう権けんを握にぎって交渉こうしょうを進すすめるために、前作ぜんさくの権利けんりを持もつ講談社こうだんしゃ・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENTの3社しゃにスポンサーを外はずれてもらう交渉こうしょうを半年はんとし掛かかりで行おこなった。

2001年ねん2月がつから、本ほん作さくの決定けってい稿こうを持もった石川いしかわと押井おしいの2人ふたりで20世紀せいきフォックス映画えいが・ワーナー・ブラザース・ドリームワークスに「やるか、やらないか」「制作せいさくスケジュールはこうで、条件じょうけんはこうだ」と広告こうこく代理だいり店てんを介かいさずに直接ちょくせつ売うり込こみに走はしった。

結果けっか的てきにドリームワークスと契約けいやくしたものの、その後ごも契約けいやく面めんで自分じぶん達たちに厳きびしい条件じょうけんを突つき付つけてくるため、石川いしかわは妥協だきょうしないで「制作せいさく費ひはこの位くらいかかりますから、高たかく出だして下ください」「投資とうし家かは参加さんかさせないでください」「期限きげん付つきのアジアを除のぞく配給はいきゅう権けんとビデオ販売はんばい権けんを売うります」と粘ねばった。その結果けっか前作ぜんさくの4倍ばいの制作せいさく費ひを確保かくほすることができ、「脚本きゃくほんには口出くちだししない」という確約かくやくも勝かち取とった。その代かわり、押井おしいに支払しはらわれる監督かんとく料りょうも当初とうしょの半分はんぶんになった。ただし、アジアでのビデオ販売はんばい権けんはウォルト・ディズニー・ジャパンが持もっていたため、当然とうぜんドリームワークスが抗議こうぎしたが石川いしかわは「アジアのことには口くちを出ださない約束やくそくだろう」と念ねんを押おした。

鈴木すずき敏夫としおは、（スタジオジブリが）製作せいさく協力きょうりょくを引ひき受うけるにあたって、「正直しょうじき迷まよいました。でも宮崎駿みやざきはやお監督かんとくが背中せなかを押おしてくれた。実際じっさいにキャンペーンが始はじまると、「ハウルの動うごく城しろのことを全然ぜんぜんやっていない」って怒おこっていたけど」と話はなす。

アメリカのメジャー映画えいが会社かいしゃは、『イノセンス』制作せいさくにあたって押井おしいとの交渉こうしょうの席せきで、大衆たいしゅう受うけを狙ねらわない姿勢しせいや、話はなしを聞きくだけではにわかに理解りかいできない作品さくひん内容ないようについて難色なんしょくを示しめした。それでも説得せっとくのため熱弁ねつべんを振ふるう押井おしいに、幹部かんぶ全員ぜんいんが退しりぞいてしまい資金しきん捻出ねんしゅつを渋しぶったという。しかし、前作ぜんさく『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊こうかくきどうたい』がアメリカでヒットしていたこともあり、一定いっていの興行こうぎょう収入しゅうにゅうを得えられるとみた映画えいが会社かいしゃは、『GHOST IN THE SHELL 2』と明記めいきすることを条件じょうけんとして最終さいしゅう的てきに契約けいやくを結むすんだ。

プロモーション

原作げんさくおよび前作ぜんさくのタイトルでもある「攻殻機動隊こうかくきどうたい」シリーズとは切きっても切きり離はなせない関係かんけいにあるが、鈴木すずきの「『攻殻機動隊こうかくきどうたい2』じゃ売うれないよ」「前作ぜんさくを見みた12万まん人にんのお客様きゃくさまはいらない」と主張しゅちょうして、押井おしいを説得せっとくして「イノセンス」として、「攻殻機動隊こうかくきどうたい」は副題ふくだいにすら入はいらなかった。国内こくない展開てんかい上じょうは『攻殻機動隊こうかくきどうたい』シリーズの新作しんさくであることは意図いとして強調きょうちょうされず、ほぼ独立どくりつしたオリジナル作品さくひんとしてプロモーションがなされた。

映画えいが公開こうかいに先立さきだち、東京とうきょう都と現代げんだい美術館びじゅつかんで、押井おしい監修かんしゅうの「球体きゅうたい関節かんせつ人形にんぎょう展てん」が開ひらかれ、キムのモデルとなった四谷よつやシモン作品さくひんなどが展示てんじされた。

鈴木すずきの主導しゅどうによってスポットCMはもちろんのこと、宅配たくはいピザの箱はこ・カラオケの歌うたの本ほんまで宣伝せんでんを仕掛しかけ、配給はいきゅう元もとの東宝とうほうは300スクリーンを確保かくほした。

脚本きゃくほん

作中さくちゅうには、以下いかに示しめすように多数たすうの箴言しんげんの引用いんようが登場とうじょうする。

これについて押井おしい守まもるは、Yahoo!ブックスが2004年ねんに行いったインタビューの中なかで、「ダイアログをドラマに従属じゅうぞくさせるのではなく、映画えいがのディテールの一部いちぶにしたかった」のが動機どうきであるとし、「言葉ことばそれ自体じたいをドラマのディテールにしたかった。ちょっとした人物じんぶつが吐はくセリフも何なに物ぶつかであってほしい」「可能かのうならば100％引用いんようで成立せいりつさせたかった」「これまでは引用いんようした言葉ことばに自分じぶんの解釈かいしゃくを加くわえていたが、それは言葉ことばを劣化れっかさせるだけ。引用いんようは飽あくまでも引用いんようとして、正確せいかくに伝つたえたい」と語かたっている。

釈迦しゃか　『法ほう句く経けい - 23章しょう330節せつ(釈迦しゃかの言行げんこう録ろくとして残のこされたもの)』

孤独こどくに歩あゆめ。悪あくをなさず、求もとめるところは少すくなく。林はやしの中なかの象ぞうのように。

月つき菴宗光こう　『月つき庵あん和尚おしょう法語ほうご』

生死せいしの去来きょらいするは棚頭たながしらの傀儡かいらいたり一線いっせん断だんゆる時とき落落磊磊。

斎藤緑雨さいとうりょくう

鏡かがみは悟さとりの具ぐならず、迷まよいの具ぐなり。『霏々刺とげ々』

鳥とりは高たかく天上てんじょうに蔵ぞうれ、魚さかなは深ふかく水中すいちゅうに潜ひそむ。『霏々刺とげ々』

鳥とりの血ちに悲かなしめど、魚さかなの血ちに悲かなしまず。聲こえある者ものは幸福こうふく也。『半文はんもん銭ぜに』

本ほん月本つきもと日びを以もって目出度めでた死去しきょ仕つかまつ候こう間あいだ此段広告こうこく仕つかまつ候こう也。『萬まん朝あさ報ほう(緑みどり雨う斎藤さいとう賢けんの名義めいぎで残のこされた死亡しぼう広告こうこく)』

信義しんぎに二に種しゅあり、秘密ひみつを守まもると、正直しょうじきを守まもると也。両立りょうりつすべき事ことにあらず。『長者ちょうじゃ短たん者しゃ』

秘密ひみつなきは誠まことなし。『長者ちょうじゃ短たん者しゃ(の中なかの一いち篇へんの冒頭ぼうとうを改変かいへんしたもの)』

人ひとの上うえに立たつを得えず、人ひとの下したに就つくを得えず。路辺ろへんに倒たおせるるに適てきす、ってやつで。『大だい底そこ小しょう底そこ』

尾崎おざき紅葉こうよう　『徳田とくた秋声しゅうせいの原稿げんこうについての添そえ書がき』

柿かきも青あおいうちはカラスも突つき申もうさず候こう。

中村なかむら苑子そのこ　『俳句はいく』

春はるの日ひやあの世よこの世よと馬車ばしゃを駆かり。

高尾たかお太夫たゆう (二に代目だいめ)　『恋文こいぶみ（として伊達だて綱つな宗そう公こうへ宛あてたもの）』

忘わすれねばこそ思おもい出ださず候こう。

孔子こうし　『論語ろんご(孔子こうしの言行げんこう録ろくとして残のこされたもの)』

寝ねぬるに尸しかばねせず。居いるに容ようづくらず。

未いまだ生せいを知しらず。焉いずくんぞ死しを知しらんや。

理非りひ無なきときは鼓つづみを鳴ならし攻せめて可かなり。

プラトン　『名言めいげん（プラトンの言葉ことばとしてプルタルコスが著書ちょしょにて残のこしたもの）』

神かみは永遠えいえんに幾何きか学がくする。

ダビデ　『旧約きゅうやく聖書せいしょ - 詩篇しへん139篇へん17，18節せつ(ダビデが神様かみさまに宛あてた信仰しんこう告白こくはく)』

その思念しねんの数かずはいかに多おおきかな。我わがこれを数かぞえんとすれどもその数かずは沙すなよりも多おおし。

ジョン・ミルトン　『失しつ楽園らくえん』

彼かれら秋あきの葉はのごとく群むらがり落おち、狂乱きょうらんした混沌こんとんは吼ほえたけり。

作者さくしゃなし　『西洋せいようの諺ことわざ』

ロバが旅たびにでたところで馬うまになって帰かえってくるわけではない。

ラ・ロシュフコー　『考察こうさつあるいは教訓きょうくん的てき格言かくげん・箴言しんげん』

多おおくは覚悟かくごでなく愚鈍ぐどんと慣なれでこれに耐たえる。

ニコライ・ゴーゴリ　『検察官けんさつかん』

自分じぶんの面めんが曲まがっているのに鏡かがみを責せめてなんになる。

マックス・ヴェーバー　『理解りかい社会しゃかい学がくのカテゴリー』

シーザーを理解りかいするためにシーザーである必要ひつようはない。

ロマン・ロラン　『ジャン・クリストフ』

人ひとは概おおむね自分じぶんで思おもうほどには幸福こうふくでも不幸ふこうでもない。肝心かんじんなのは望のぞんだり生いきたりすることに飽あきないことだ。

リチャード・ドーキンス　『延長えんちょうされた表現ひょうげん型がた―自然しぜん淘汰とうたの単位たんいとしての遺伝子いでんし』

個体こたいが創つくりあげたものもまた、その個体こたい同様どうように遺伝子いでんしの表現ひょうげん型がた。

ジュリアン・オフレ・ド・ラ・メトリー　『人間にんげん機械きかい論ろん』

人体じんたいは自みずからゼンマイを巻まく機械きかいであり、永久えいきゅう運動うんどうの生いきた見本みほんである。

映像えいぞう手法しゅほう

押井おしい守まもるは『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊こうかくきどうたい』の際さいに既すでにアニメ映画えいがの方法ほうほう論ろんは決けっしたとして、アニメをこれ以上いじょう作つくろうとは考かんがえていなかったが、『Avalon』でアニメの方法ほうほう論ろんを実写じっしゃに取とり込こみ、実写じっしゃの方法ほうほう論ろんをアニメに持もち込こんでこの映画えいがを制作せいさくしようと考かんがえた。即すなわち、3Dでモデリングされた空間くうかんにカメラを持もち込こみ、それを切きり出だして（ロケーション・ハンティング）映像えいぞうを制作せいさくしようとした。

だが、3D担当たんとう者しゃはそれは不可能ふかのうであると言いい、テスト段階だんかいのコンビニエンスストアのシーンにおいて、想像そうぞう以上いじょうのデータ量りょうの前まえにその目論見もくろみは崩くずれ去さった。現げんに公開こうかいされたものでもこのシーンは分割ぶんかつしてレンダリングしたものを後のちに合成ごうせいするという方法ほうほうでレンダリング時間じかんを短縮たんしゅくしている。本編ほんぺん映像えいぞう、特とくに中盤ちゅうばんの大祭たいさいのシーンは、カメラマップと呼よばれる手法しゅほうを利用りようした映像えいぞうとなっている。

また、アニメはキャラクターをセルで描えがくため、画面がめんをセル画がが占拠せんきょすると画面がめん内ないの情報じょうほう量りょうが失うしなわれがちだが、江面えづら久ひさを筆頭ひっとうとするエフェクトチームがAfterEffectsなどを駆使くししてそれに対処たいしょし、処理しょり速度そくどが停滞ていたいすればPower MacG5の大量たいりょう導入どうにゅうでこれに対処たいしょした。

以上いじょうの紆余曲折うよきょくせつもあり、アニメ映画えいがでは初はじめて、全編ぜんぺんにわたってDominoによる映像えいぞう処理しょりが施ほどこされたが、それによってセル画がが浮ういて見みえるという評価ひょうかもあった。これについて押井おしい守まもるは認識にんしきしていたが、CGによって描えがきこまれたディテールを損そこなうフィッティングをあえて行おこなわなかったことを後ごのインタビューで述のべている。ちなみに、IMAXシアターで公開こうかいされた際さいにはオープニングのガイノイドの眼球がんきゅうに表示ひょうじされる文字もじ列れつなど細部さいぶを見みることができた。

前作ぜんさくのコンピュータ画面がめんが「緑みどり」で統一とういつされていたのに対たいし、今いま作さくでは「橙だいだい」で統一とういつされていたり、前作ぜんさくの舞台ぶたいが「夏なつ」に対たいして今いま作さくは「冬ふゆ」と、映像えいぞうに差別さべつ化かが見みられる。なお、季き節ぶしの違ちがいによって差別さべつ化かを図はかる手法しゅほうは、押井おしいが以前いぜんに監督かんとくした『機動きどう警察けいさつパトレイバー the Movie』（「夏なつ」）と『機動きどう警察けいさつパトレイバー 2 the Movie』（「冬ふゆ」）でも採用さいようされている。

音響おんきょう手法しゅほう

本ほん作さく以前いぜんより劇げき伴とも作曲さっきょく家かとして押井おしい作品さくひんに関かかわってきていた川井かわい憲次けんじによる、本ほん作さくの第だい2のメインテーマともいえる「傀儡かいらい謡うたい（くぐつうた）」のコーラスは75人にんの民謡みんよう歌手かしゅ（西田にしだ和枝かずえ社中しゃちゅう）を集あつめ（前作ぜんさくでは3人にん）、更さらにクライマックスに使用しようされた傀儡かいらい謡うたいではコーラスを4回かい収録しゅうろくし、それを同時どうじに流ながす事ことによって音おとに厚あつみを持もたせた。和かず太鼓たいこに茂しげ戸ど藤ふじ浩司こうじが起用きようされた。

劇げき中ちゅうで使用しようされたオルゴールの曲きょくは、予あらかじめオルゴールから機械きかい録音ろくおんしておいたものを、大谷石おおやいし採掘さいくつ場じょう跡あとの地下ちか空間くうかんで再生さいせいし、再度さいど録音ろくおんしたものが使つかわれた。

また音響おんきょう効果こうか編集へんしゅうは『Avalon』同様どうようスカイウォーカー・サウンドで行おこなわれ、迫力はくりょくの音響おんきょう世界せかいが創造そうぞうされた。サウンドデザインはアカデミー音響おんきょう編集へんしゅう賞しょう受賞じゅしょう者しゃのランディ・トムが担当たんとうした。この関与かんよは「プリミックス」であり、音楽おんがくやセリフ素材そざいを含ふくむ整せい音おんは日本にっぽん国内こくないで行おこなわれている。

同社どうしゃの音響おんきょう製作せいさくの可能かのう性せいに感銘かんめいを受うけた押井おしいは、『Avalon』で組くんだサウンドデザイナーで『ローレライ』や『少しょう林はやし少女しょうじょ』も手てがけたスカイウォーカー・サウンドのトム・マイヤーズに『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』のサウンドデザイン、2008年ねんの『攻殻機動隊こうかくきどうたい2.0』の音響おんきょうリニューアルを委ゆだねている。

興行こうぎょう成績せいせき

封切ふうきり前まえの目標もくひょうは興行こうぎょう収入しゅうにゅう50億おく円えんを目指めざしていたが、興行こうぎょう収入しゅうにゅう10億おく円えん・観客かんきゃく動員どういん数すう70万まん人にんに終おわった。

押井おしい・石川いしかわは0号ごう試写ししゃの段階だんかいで「これはお客きゃくさんが入はいる映画えいがじゃない」と確信かくしんし、石川いしかわは「押井おしいさん、製作せいさく費ひの回収かいしゅうに10年ねんかかるよ。もう腹はらくくったから」と呟つぶやき、押井おしいは「『すまない』と思おもった反面はんめん、『よくぞ覚悟かくごしてくれた』とも思おもった。あの時ときは『スケジュールをかけて、クオリティを上あげれば、観客かんきゃくを動員どういんできて、製作せいさく費ひも回収かいしゅうできる』という選択肢せんたくししかなかった。脚本きゃくほんを書かいた時ときから薄々うすうす感かんづいていて、ダビングの辺あたりでそれがあからさまになった時ときには石川いしかわに借かりを作つくってしまったことが決定的けっていてきになったから、『必かならず返かえさなければ』と思おもった」と振ふり返かえっている。

アメリカでは「GHOST IN THE SHELL 2 / INNOCENCE」というタイトルで全米ぜんべい50スクリーンで公開こうかいされた。最終さいしゅう的てきな興行こうぎょう収入しゅうにゅうは104万まんドル（約やく1億おく2千せん万まん円えん）だった。

受賞じゅしょう

• 第だい25回かい日本にっぽんSF大賞たいしょう
• 第だい10回かいデジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー/AMD Award グランプリ／総務そうむ大臣だいじん賞しょう
• 第だい10回かいデジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー/AMD Award Best Music Composer賞しょう
• 第だい8回かい 文化庁ぶんかちょうメディア芸術げいじゅつ祭さいアニメーション部門ぶもん 審査しんさ委員いいん会かい推薦すいせん作品さくひん
• 東京とうきょうアニメアワード2005 劇場げきじょう映画えいが優秀ゆうしゅう作品さくひん賞しょう
• 東京とうきょうアニメアワード2005 原作げんさく賞しょう
• 東京とうきょうアニメアワード2005 脚本きゃくほん賞しょう
• 東京とうきょうアニメアワード2005 キャラクターデザイン賞しょう
• 第だい4回かい日本にっぽん映画えいがテレビ技術ぎじゅつ協会きょうかい 映像えいぞう技術ぎじゅつ賞しょう
• 第だい19回かいデジタルコンテンツグランプリ ヒットコンテンツ部門ぶもん優秀ゆうしゅう賞しょう
• 第だい37回かいシッチェス・カタロニア国際こくさい映画えいが祭さい　オリエント・エキスプレス賞しょう

評価ひょうか

庵あん野の秀明ひであきは「あんなに面白おもしろいと思おもわなかった。押井おしい守まもるさんの最高さいこう傑作けっさくですよ。そして、日本にっぽんのアニメは世界一せかいいちだと感かんじましたね。あの物量ぶつりょう、あの心意気こころいきやよし!ですよ。押井おしいさん、今いままでも自分じぶんの好すきなことをやっていたけど、ようやく混まじり気けなしで純粋じゅんすいに自分じぶんの好すきなものだけをやれるようになったんだと思おもう。そこが『イノセンス』のいいところですよね。何なん年ねんも何なん年ねんも好すきなことをやっていると、ここまで行いきつくんだという」と絶賛ぜっさんした。

紀きの里谷さとや和明かずあきは「『ニューヨーク近代きんだい美術館びじゅつかんにそのまま入いれて欲ほしい』と思おもいました。1個いっこの美術びじゅつ品ひんに見みえたんです」と絶賛ぜっさんした。

情報じょうほう学がく研究けんきゅう者しゃのドミニク・チェンは「ユーモアに溢あふれ、楽観らっかん的てきですらある士郎しろうの原作げんさくとは大おおきく異ことなり、押井おしいが言いわば『テクスト主義しゅぎ的てきに独自どくじの世界せかいを展開てんかいしている』という意味いみで、通常つうじょうのアニメ化かとは呼よべない様相ようそうを呈ていしている作品さくひんである。強しいて言いえば、兵器へいき・メカニクスの緻密ちみつな描写びょうしゃに見みられるフィチシズムと博覧強記はくらんきょうき的てきな台詞回せりふまわしでは士郎しろう・押井おしいは共通きょうつうしていると言いえるだろう。最もっとも大おおきな相違そういは士郎しろうが『徹底的てっていてきなまでにデジタルな虚構きょこうの構築こうちくを楽たのしんでいる』のに対たいし、押井おしいが『どこまでも映画えいが的てきリアリティを求道きゅうどう的てきに追及ついきゅうしている』点てんにある」「重層じゅうそうな質量しつりょうのモデリングが施ほどこされた3DCGによる背景はいけい描画びょうがやエフェクトが大おおきな比率ひりつを持もって登場とうじょうし、作画さくがによるキャラクター・背景はいけいとのシームレスな統合とうごうに成功せいこうしている。この辺あたりは同おなじくSF的てきな都市とし描写びょうしゃを行おこないつつも、飽あくまでも3DCG的てきな表層ひょうそうの前景ぜんけい化かに終始しゅうしした『メトロポリス』『ファイナルファンタジー』に対たいし、都市としというそれ自体じたいが大おおいにノイズを含ふくむ現実げんじつ空間くうかんを志向しこうしている結果けっか、立たち表あらわれる映像えいぞうがアニメとCGの混合こんごうによる特殊とくしゅなマチエールの生成せいせいを促うながし、『映画えいが以上いじょうに映画えいが的てきな空間くうかん描写びょうしゃ足たりえている』という事態じたいを生うんでいる」と賞賛しょうさんしている。

Wiredのアメリカ人じん記者きしゃによると前作ぜんさくにあたる「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊こうかくきどうたい」と比くらべ「優雅ゆうがで完成かんせい度どが高たかく、まとまりがあり、じっくり見みても美うつくしいのだ。」と述のべている。

思想家しそうかの東あずま浩ひろし紀きは、本ほん作さくがアニメ技術ぎじゅつの最高峰さいこうほうに位置いちする見みる価値かちのある作品さくひんであることを認みとめながらも、押井おしい守まもるのそれまでの作品さくひんにみられた「過剰かじょうな記号きごうや意味いみ」が煩雑はんざつに盛もり込こまれているという特徴とくちょうが本ほん作さくでは欠落けつらくしていると指摘してきしている。そして、主題しゅだい（人間にんげんと人形にんぎょうの差異さい）と物語ものがたりの結むすびつきも弱よわく、監督かんとくの映像えいぞう作家さっかとして力量りきりょうに感嘆かんたんはするもののそれ以上いじょうの感想かんそうは抱いだけないと述のべている。

ソフト

DVD発売はつばい時じのTVCMには藤原ふじわら竜也たつやと宮崎みやざきあおいが起用きようされている。また、2018年ねん6月がつ22日にちに、2019年ねん6月がつ30日にちまでの期間きかん限定げんてい生産せいさんとして『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊こうかくきどうたい』&『イノセンス』 4K ULTRA HD Blu-ray セットが発売はつばいされた。なお、バンダイナムコアーツ（現げん：バンダイナムコフィルムワークス）がウォルト・ディズニー・ジャパンと関かかわるのは、1987年ねんにバンダイがウォルト・ディズニー・カンパニーと映像えいぞうソフト販売はんばい契約けいやくを結むすんでいた以来いらいとなる。

小説しょうせつ

2004年ねん、山田やまだ正紀まさきによって前日ぜんじつ談だんに当あたる小説しょうせつ「イノセンス After The Long Goodbye」が発表はっぴょうされた。

脚注きゃくちゅう

参考さんこう文献ぶんけん

• 梶山かじやま寿子ひさこ『雑草ざっそう魂たましい 石川いしかわ光久みつひさ アニメビジネスを変かえた男おとこ』日経にっけいBP、2006年ねん9月がつ。ISBN 978-4-8222-2064-8。 

関連かんれん項目こうもく

• 攻殻機動隊こうかくきどうたい
• GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊こうかくきどうたい
• 球体きゅうたい関節かんせつ人形にんぎょう

外部がいぶリンク

• 川井かわい憲次けんじ公式こうしきサイト イノセンス レコーディング風景ふうけい（トップページ→Gallery→イノセンス レコーディング風景ふうけい）
• イノセンス - allcinema
• イノセンス - KINENOTE
• INNOCENCE - オールムービー（英語えいご）
• INNOCENCE - IMDb（英語えいご）