十じゅう年ねん式しき手榴弾しゅりゅうだん

十じゅう年ねん式しき手榴弾しゅりゅうだん
十じゅう年ねん式しき手榴弾しゅりゅうだん
種類しゅるい	手榴弾しゅりゅうだん/ライフルグレネード
原はら開発かいはつ国こく	大日本帝国だいにっぽんていこく
運用うんよう史し
配備はいび期間きかん	1921 - 1945
配備はいび先さき	大日本帝国だいにっぽんていこく
関連かんれん戦争せんそう・紛争ふんそう	日にち中ちゅう戦争せんそう 第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん
開発かいはつ史し
開発かいはつ期間きかん	1914
諸しょ元もと
重量じゅうりょう	530グラム
全長ぜんちょう	4.9 インチ
直径ちょっけい	1.97インチ
弾頭だんとう	TNT(茶ちゃ褐薬)、塩しお斗と薬やく
炸薬さくやく量りょう	50グラム
信管しんかん	最大さいだい7.5秒びょうの遅延ちえん信管しんかん

十じゅう年ねん式しき手榴弾しゅりゅうだん（じゅうねんしきてりゅうだん）は、1921年ねん（大正たいしょう10年ねん･皇紀こうき2581年ねん）に大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐん（以下いか陸軍りくぐんという）で開発かいはつされた手榴弾しゅりゅうだんである。

概要がいよう

日にち露ろ戦争せんそう以後いご、明治めいじ40年ねんに制式せいしき化かされた手榴弾しゅりゅうだんの後継こうけいとして研究けんきゅうが進すすめられた物もので、第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん中なかにヨーロッパの国々くにぐになどで使用しようしていた手榴弾しゅりゅうだんを参考さんこうに開発かいはつが進すすめられた。研究けんきゅう当初とうしょは三さん八はち式しき歩兵ほへい銃じゅう用ようの小銃しょうじゅう擲弾（ライフルグレネード）としての使用しようが進すすめられていたが、三さん八はち式しき歩兵ほへい銃じゅうでは小しょう口径こうけい・長ちょう銃身じゅうしんのために擲弾としての使用しようは実戦じっせんには不向ふむきであることが判明はんめいした。そこで陸軍りくぐんでは、第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんでドイツ軍ぐんが信号しんごう弾だんの発射はっしゃに使用しようしていた発射はっしゃ機きを参考さんこうとし、陸軍りくぐんが開発かいはつした擲弾筒てきだんとう「十じゅう年ねん式しき擲弾筒てきだんとう」の擲弾兼用けんようの手榴弾しゅりゅうだんとして、大正たいしょう10年ねん（1924年ねん）に十じゅう年ねん式しき手榴弾しゅりゅうだんとして正式せいしき化かした。

特徴とくちょうとして十じゅう年ねん式しき手榴弾しゅりゅうだんの本体ほんたい上部じょうぶには発火はっか用ようの信管しんかんが、下部かぶには擲弾発射はっしゃ時じの推進すいしん用よう装そう薬くすり室しつ（ブースター）が装着そうちゃくされ、本体ほんたい表面ひょうめんには爆発ばくはつ後ごに生成せいせい破片はへんが十分じゅうぶんな密度みつどで飛散ひさんすることを意図いとして溝みぞが設もうけられた。信管しんかん部分ぶぶんは暴発ぼうはつ防止ぼうし用ようの真鍮しんちゅう製せい被ひ帽ぼうで保護ほごされ、さらにその上うえから安全あんぜん栓せん（安全あんぜんピン）が装着そうちゃくされていた。

用途ようと

十じゅう年ねん式しき手榴弾しゅりゅうだんは、近距離きんきょりの敵てきに対たいして手て投なげで交戦こうせんし、遠距離えんきょりの敵てきには擲弾筒てきだんとうで射出しゃしゅつするために開発かいはつされた手榴弾しゅりゅうだんである。十じゅう年ねん式しき擲弾筒てきだんとうで射出しゃしゅつされる場合ばあい、最大さいだい射程しゃていは220 mである。使用しよう用途ようととしては擲弾発射はっしゃ以外いがいにも手榴弾しゅりゅうだんとして使用しよう可能かのうであり、投擲とうてきの場合ばあいには装そう薬くすり室しつ部分ぶぶんを外はずすことも可能かのうであった。しかし装そう薬くすり室しつを外はずした場合ばあい、弾たま体たい底面ていめんのネジ部分ぶぶんから内部ないぶ炸薬さくやく部分ぶぶんまで、被覆ひふくするものがボぼール紙るがみ一いち枚まいと詰つめ物もののみという状態じょうたいであり、この事ことから投擲とうてきを行おこなう場合ばあいは装そう薬くすり室しつを付つけた状態じょうたいでの投擲とうてきが好このましいとされた。爆発ばくはつまでの遅延ちえん時間じかんは擲弾発射はっしゃの特性とくせい上じょう、6.5秒びょうから7.5秒びょうと、当時とうじの一般いっぱん的てきな手榴弾しゅりゅうだんに比くらべて長ながめに設定せっていされている。

構造こうぞう

十じゅう年ねん式しき手榴弾しゅりゅうだんは弾たま体たい、炸薬さくやく、信管しんかん、起爆きばく筒とう、装そう薬くすり筒とうから構成こうせいされる。全備ぜんび弾だん量りょうは約やく540 g。全体ぜんたいとしては炸薬さくやくを充填じゅうてんした弾たま体たいの上方かみがたから管状かんじょうの信管しんかん部分ぶぶんをねじ込こんで装着そうちゃくし、下方かほうから装そう薬くすり筒とうをねじ込こんで塞ふさいでいる構造こうぞうである。

弾たま体たいは鋳鉄ちゅうてつ製せいで外面がいめんに筋目すじめが入いれられている。生成せいせい破片はへんの形状けいじょうと大おおきさを適当てきとうとするためであった。弾たま体たいの上下じょうげ2箇所かしょには定てい心しん帯たいがあり、擲弾筒てきだんとうで発射はっしゃするとこの定てい心しん帯たいが弾たま体たいを安定あんていさせた。弾たま体たい上面うわつらと下面かめんにネジ穴あなが設もうけられているが、上面うわつらのネジ穴あなには信管しんかんを装着そうちゃくする。下面かめんのものは炸薬さくやくを充填じゅうてんするためのものである。さらにこのネジ穴あなは装そう薬くすり筒とうを螺にし着ぎ（ねじ込こむ）するためのものでもあった。炸薬さくやくには塩しお斗と薬やく75 g、または茶ちゃ褐薬65 gを用もちい、弾たま体たいに直ちょく填はま圧搾あっさくした。

信管しんかんは撃げき針はりとばねを除のぞいて基本きほん的てきに黄銅こうどう製せいである。信管しんかん体たいは上うえから順じゅんに被ひ帽ぼう、撃げき針はり、ばね、雷管らいかん室しつからなり、この下したに火ひ道どうがねじ込こまれ、全体ぜんたいとしては筒つつ状じょうを成なしていた。さらに安全あんぜん栓せんと、付属ふぞく品ひんに撃げき針はりを回まわすドライバーがついた。信管しんかん体たいは中空ちゅうくうの円筒えんとう形がたである。上端じょうたん部ぶに筒つつ型がたの被ひ帽ぼうがつき、この内部ないぶには被ひ帽ぼうに押おさえられた状態じょうたいの撃げき針はりとばねがある。また被ひ帽ぼうは端はし部ぶが4つに分わかれて内側うちがわへ屈曲くっきょくしており、信管しんかん体たいの溝みぞと屈曲くっきょく部ぶが噛かみ合あって止とめられていた。ばねは撃げき針はりを上うえへ持もち上あげて位置いちを保持ほじするためのものである。これら被ひ帽ぼう、撃げき針はり、ばねを2箇所かしょで貫通かんつうして押おさえているのはU字じ型がたに似にた安全あんぜん栓せんで、通とおした端はし部ぶは90度ど開ひらかれ、容易よういに抜ぬけないようになっていた。撃げき針はりは安全あんぜん栓せんが通とおされて固定こていされており、安全あんぜん栓せんを除去じょきょしなければ動うごくことはなかった。被ひ帽ぼうを付つけた状態じょうたいの撃げき針はりは、撃げき針はりドライバー（原文げんぶんでは撃げき針はり螺にし廻まわり）で回まわすことにより、位置いちを上下じょうげ調整ちょうせいできた。撃げき針はり位置いちを完全かんぜんに戻もどすと、撃げき針はりが雷管らいかんを叩たたかない位置いちまで収納しゅうのうされ、打撃だげきしても発火はっかすることはなくなった。この撃げき針はり構造こうぞうの下したには雷管らいかん室しつを収おさめている。これは撃げき針はりの衝撃しょうげきで発火はっかし、下したに接続せつぞくされた火ひ道どうに点火てんかする。また信管しんかん体たいにはこのときの燃焼ねんしょうガスを逃にがす噴気ふんき孔あなが設もうけられていた。信管しんかん体たい下部かぶ外面がいめんはネジが切きられて弾たま体たいと結合けつごうした。信管しんかん体たい下部かぶ内面ないめんには火ひ道どうがねじ込こまれて装着そうちゃくされた。火ひ道どう内部ないぶには火ひ道どう薬やくが充填じゅうてんされ、6.5秒びょうから7.5秒びょう燃焼ねんしょうした後のち、下したに位置いちする起爆きばく筒とうに点火てんかした。火ひ道どうの下端かたんには蛇じゃの目め鉄板てっぱんが装着そうちゃくされ、管かん薬やくが抜ぬけ落おちないようはかられている。

火ひ道どう下部かぶの起爆きばく筒とうは銅どう製せいの円筒えんとうで、雷かみなり汞が0.7 g、また茗亜薬やくが1.2 g収容しゅうようされた。この爆発ばくはつにより炸薬さくやくが起爆きばくする。起爆きばく筒とうと信管しんかんの火ひ道どうとは、周囲しゅういを包つつむ中心ちゅうしん管かんで接続せつぞくし、作動さどうの信頼しんらい性せい保持ほじをはかった。ほか、起爆きばく筒とう底部ていぶにクッション（絨板）を敷しいて動揺どうよう防止ぼうしと衝撃しょうげき緩和かんわをはかった。

装そう薬くすり筒とうは擲弾筒てきだんとうで射出しゃしゅつする際さいに弾たま体たい底部ていぶにねじこんで装着そうちゃくするものであり、装そう薬くすり筒とう内部ないぶの装そう薬やくの燃焼ねんしょうガスで弾たま体たいが放射ほうしゃされる。装そう薬くすり筒とうは装そう薬くすり室しつ、底そこ螺にし（底そこネジ）、雷管らいかん室しつ、支ささえ板ばん、内うち筒とうから構成こうせいされる。構造こうぞうとしては弾たま体たい底面ていめんに装そう薬くすり室しつ上部じょうぶをねじ込こんで固定こていし、装そう薬くすり室しつ底面ていめんをくりぬいて開ひらかれた内部ないぶ空間くうかんには装そう薬やくを収おさめた内うち筒とうが圧入あつにゅうされている。内うち筒とうの底そこに支ささえ板いたと塞ふさが紙しを貼はり、さらに底そこ螺にしを装そう薬くすり室しつにねじ込こんで内うち筒とうの蓋ぶたとしている。この底そこ螺にし内部ないぶにも雷管らいかん室しつがあり、底そこ螺にしの底面ていめんに設もうけられた雷管らいかん部分ぶぶんを叩たたいて装そう薬やくに点火てんかできる。底そこ螺にし内部ないぶの雷管らいかん室しつと外部がいぶとは薄うすい錫すず製せいの底そこ板ばんで塞ふさがれている。

装そう薬くすり室しつは鋼はがね製せい円筒えんとう形がたのブロックで、底面ていめんがくりぬかれ、内部ないぶに内うち筒つつを収おさめる空間くうかんを持もつ。また中心ちゅうしん管かんを当あてて位置いちを保持ほじするためのくぼみを上面うわつらに持もつ。側面そくめんには6箇所かしょに噴気ふんき孔あなが開ひらいており、装そう薬やくを燃焼ねんしょうさせて発生はっせいしたガスはここから噴気ふんきされる。また上部じょうぶに弾たま体たいと接続せつぞくするためのネジが刻きざまれた。底部ていぶにも一部いちぶネジを切きっており、支ささえ板いたと底そこ螺にしを装着そうちゃくできる。内うち筒とうは薄肉うすにくの鋼はがね製せいで、装そう薬くすり室しつの内部ないぶに密着みっちゃくしており、装そう薬やくを収容しゅうようする。装そう薬やくとしては厚あつさ0.4 mmの無煙むえん薬やく（零れい粍みりめーとる四よん方形ほうけい薬やく）が1.1 g使用しようされた。底そこ螺にしは鋼はがね製せいである。上面うわつらに雷管らいかん室しつを収容しゅうようするくぼみが開ひらき、このくぼみの中央ちゅうおう部ぶに擲弾筒てきだんとうの撃げき針はりで雷管らいかんを叩たたくための小しょう穴あなが設もうけられている。小しょう穴あなには防湿ぼうしつのために錫すずの底そこ板ばんが貼はられた。底そこ螺にし側面そくめんにはネジが切きられており、装そう薬くすり室しつと接続せつぞくし内ない筒とうの蓋ぶたとなる。雷管らいかん室しつには雷管らいかんが入いれられ、点火てんか薬やくに小粒こつぶ薬やく0.1 gが用もちいられた。薬剤やくざいが漏もれ出だすのを防ふせぐため、雷管らいかんを覆おおうように雁皮紙がんぴし製せいの塞ふさが紙しが貼はられた。底そこ螺にしと内うち筒とうの間あいだの支ささえ板ばんは、雷管らいかん室しつがずれないよう保持ほじするためのものである。支ささえ板いたも底面ていめんに雁皮紙がんぴし製せいの塞ふさが紙しが貼はられている。

撃げき針はりドライバーはおよそ信管しんかん10個こにつき一ひとつが用意よういされた。

機能きのう

発火はっかさせるには以下いかのように取とり扱あつかった。

使用しよう方法ほうほうは信管しんかんに装着そうちゃくされている安全あんぜん栓せんを抜ぬいた後のちに被ひ帽ぼうを叩たたくことで撃げき針はりが雷管らいかんを発火はっかさせる。内部ないぶの火ひ道どうに伝つて火ひしている間あいだに投擲とうてきを行おこなう。また擲弾発射はっしゃとしては十じゅう年ねん式しき擲弾筒てきだんとう以外いがいにも、後のちに開発かいはつされた擲弾筒てきだんとう「八はち九きゅう式しき重じゅう擲弾筒てきだんとう」からの発射はっしゃも可能かのうであった。

手て投なげの場合ばあい、まず撃げき針はりドライバーで信管しんかん内部ないぶの撃げき針はり位置いちを調整ちょうせいし、安全あんぜん位置いちから発火はっか位置いちへと信管しんかん内部ないぶの撃げき針はりを突つき出だす。撃げき針はりは絶対ぜったい安全あんぜん位置いちから約やく4回かい転ころげで3.5 mm移動いどうした。この後のち信管しんかんを下したにして右手みぎてで握にぎり、安全あんぜん栓せんを抜ぬく。握にぎる際さいには信管しんかん噴気ふんき孔あなからのガスで火傷かしょうをしないよう注意ちゅういする必要ひつようがあった。左手ひだりてで安全あんぜん栓せんの索さくを握にぎり、強つよく引ひいて安全あんぜん栓せんを取とり去さる。信管しんかんを硬かたいもので叩たたいて発火はっかさせ、投なげる。被ひ帽ぼうを打撃だげきすると、被ひ帽ぼう内部ないぶの、ばねに支ささえられた撃げき針はりが降下こうかし雷管らいかんを叩たたく。火ひ道どう薬やくに点火てんかし、約やく7.5秒びょう後ごに弾たま体たいが炸裂さくれつした。

擲弾筒てきだんとうで射出しゃしゅつする場合ばあい、まず安全あんぜん栓せんを抜ぬく。装そう薬くすり室しつを下したとして擲弾筒てきだんとうに入いれる。擲弾筒てきだんとうの撃げき針はりで装そう薬くすり室しつの雷管らいかんを叩たたくと、その発火はっかが内うち筒つつ内部ないぶの装そう薬やくに点火てんかして燃焼ねんしょう、内うち筒とうを突破とっぱしてガスが6個この噴気ふんき孔あなから噴出ふんしゅつされる。ガスは手榴弾しゅりゅうだんを推進すいしんさせるが、この際さいに手榴弾しゅりゅうだんの撃げき針はりが慣性かんせいにより雷管らいかんを打撃だげきする。手榴弾しゅりゅうだんは約やく7.5秒びょう後ごに爆発ばくはつする。

安全あんぜん栓せんを抜ぬいても使用しようしない場合ばあいがあり、このときには安全あんぜん栓せんを差さし込こんだ後のちに端はし部ぶを90度ど開ひらいた。安全あんぜん栓せんを捨すててしまうとこの作業さぎょうができず、いくつかは残のこしておくことが求もとめられた。

性能せいのう

十じゅう年ねん式しき手榴弾しゅりゅうだんは、半径はんけい5 mに殺傷さっしょう力りょくを及およぼした。5 m離はなれた破片はへん生成せいせい密度みつどは1 m²あたり3.9個こで、うち重傷じゅうしょうを与あたえるものが0.3個こ、その他たの破片はへんが3.6個こである。擲弾筒てきだんとうによる射出しゃしゅつの場合ばあいのデータとして、柔軟じゅうなんな草地くさじでの5 m離はなれた破片はへん生成せいせい密度みつどは1平方へいほうmあたり5.2個こ、うち重傷じゅうしょうを与あたえる破片はへんは1個いっこ、その他たが4.2個こである。平坦へいたんな砂地すなじ、距離きょり1.5 mの条件じょうけんでは破片はへん生成せいせい密度みつどが1 m²あたり19.3個こ、うち重傷じゅうしょうを与あたえる破片はへんは2.1個いっこ、その他たが17.2個こである。平坦へいたんな堅けん硬かた地ち、距離きょりほぼ0 mの条件じょうけんでは破片はへん生成せいせい密度みつどが1 m²あたり48個こ、うち重傷じゅうしょうを与あたえる破片はへんは3.5個こ、その他たが44.5個こである。また確実かくじつな殺傷さっしょう範囲はんいは半径はんけい5 mであったが、危害きがいを及およぼす可能かのう性せいのある破片はへんが飛散ひさん可能かのうな範囲はんいは半径はんけい300 mだった。射手しゃしゅ、投擲とうてき手しゅは、使用しよう時じにこのことを予想よそうして自みずからを防護ぼうごする必要ひつようがあった。

擲弾の命中めいちゅうしやすい場所ばしょに大量たいりょうの手榴弾しゅりゅうだんを保存ほぞんすることは禁きんじられた。また坂さかの下したから早はやすぎるタイミングで投なげると、十じゅう年ねん式しき手榴弾しゅりゅうだんが戻もどってきて爆発ばくはつすることがあった。これは爆発ばくはつまでの秒びょう時じが比較的ひかくてき長ながいことによる。

火ひ工こう作業さぎょう

十じゅう年ねん式しき手榴弾しゅりゅうだんを組くみ立たてて使用しようできるようにするためには、火ひ工こう作業さぎょうが必要ひつようであった。

装そう薬くすり室しつ

装そう薬くすり筒とうを組くみ立たてる手順てじゅんは以下いかの通とおりである。底部ていぶから上方かみがたへと作業さぎょうが行おこなわれた。まず薄うすい錫すず製せい底そこ板ばんの底面ていめんに、ベルニーと呼よばれる油脂ゆしを厚あつく塗ぬり、底そこ螺にしの雷管らいかん室しつ孔あなの底そこに貼はった。底そこ板ばんが固着こちゃくすると、さらに接触せっしょく部分ぶぶんにベルニーを塗ぬり込こみ、水分すいぶんの侵入しんにゅうを防止ぼうしした。次つぎに雷管らいかん室しつ側面そくめんにベルニーを厚あつく塗ぬり込こみ、雷管らいかん室しつを底そこ螺にしに押おし込こむ。ベルニーがやや乾かわいたらさらに上うえからベルニーを塗ぬり込こみ、接触せっしょく部分ぶぶんの空隙くうげきを完全かんぜんに密閉みっぺいした。底そこ螺にしと一体化いったいかした雷管らいかん室しつに、点火てんか薬やくとして小粒こつぶ薬やく0.1 gを入いれる。塞ふさが紙しにベルニーを塗ぬって底そこ螺にし上面うわつらに貼はる。支ささえ板ばんにもベルニーを塗ぬった塞ふさが紙しを貼はる。ややベルニーが乾かわいたら塞ふさが紙し同士どうしにベルニーを塗ぬって貼はり合あわせる。こうして支ささえ板いたと底そこ螺にしを接合はぎあわした。この作業さぎょうでは中心ちゅうしんを合あわせる必要ひつようがあった。次つぎに、底そこ螺にしの底面ていめんにある撃げき針はり孔あなにベルニーを塗ぬった。底そこ螺にしの準備じゅんびが終了しゅうりょうしたら、内うち筒とう外面がいめんに多量たりょうにベルニーを塗ぬって装そう薬くすり室しつに押おし込こむ。内うち筒とう下面かめんと装そう薬くすり室しつの隙間すきまにもベルニーを漏もれなく塗ぬり込こんで入念にゅうねんに防湿ぼうしつした。こののち、内うち筒とうに装そう薬やくを1.1 g入いれる。底そこ螺にしの上面うわつらに貼はった支ささえ板ばんが確実かくじつに固着こちゃくするほどベルニーが乾かわいたら、底そこ螺にしのネジ部分ぶぶんに黒くろワニスを塗ぬり込こんで装そう薬くすり室しつに結合けつごうする。結合けつごう後ごにも隙間すきまに黒くろワニスを塗ぬり込こんだ。

弾たま体たい

弾たま体たいに炸薬さくやくを充填じゅうてんするには、火ひ工こう作業さぎょう用ようの小ちいさな台だいと漏斗ろうとを用もちいた。台だいは直径ちょっけい50 mmで高たかさ85 mm、漏斗ろうとは直径ちょっけい55 mm、高たかさ36 mmである。これら黄銅こうどう製せいの台だいおよび漏斗ろうとは、弾たま体たいに設もうけられた上面うわつらと下面かめんのネジ部ぶでそれぞれ接続せつぞくする。台だいは、中央ちゅうおう部ぶに信管しんかん中心ちゅうしん管かんと同様どうようの大おおきさを持もつ中心ちゅうしん管かんが立たっている。

作業さぎょうにあたりまず弾たま体内たいない部ぶを清掃せいそうする。次つぎに弾たま体たいを逆さかさにし、漏斗ろうとを弾たま体たい下面かめんに、台だいを弾たま体たい上面うわつらに取とり付つける。このとき弾たま体内たいない部ぶには信管しんかん体たいが本来ほんらいある位置いちに、台たいの中心ちゅうしん管かんが通かよっている。この中心ちゅうしん管かんにはあらかじめ専用せんようのボぼール紙るがみが巻まかれており、作業さぎょう後ご、中心ちゅうしん管かんを抜ぬいた際さいに炸薬さくやくが漏もれないようになっている。塩しお斗と薬やく75 g、または茶ちゃ褐薬65 gを少すこしずつ漏斗ろうとの中なかへ入いれ、弾たま体たい下面かめんの、中心ちゅうしん管かんと弾たま体たいの輪状りんじょうの隙間すきまから炸薬さくやくを入いれる。入いれた炸薬さくやくを棒ぼうで突つき固かためながら均質きんしつに填はま実みする。終了しゅうりょう後ご、弾たま体たいから漏斗ろうとを外はずし、中心ちゅうしん管かんの上うえから炸薬さくやくがのぞく箇所かしょに専用せんようのボぼール紙るがみを当あて、炸薬さくやくが漏もれるのを防ふせぐ。台だいを外はずし、弾たま体たいのネジ部ぶを掃除そうじする。この際さいに炸薬さくやくがわずかでもついていないよう注意ちゅういする必要ひつようがあった。掃除そうじ後ご、弾たま体たい底部ていぶに装そう薬くすり室しつを結合けつごうする。このとき黒くろワニスを塗ぬり込こんで防湿ぼうしつした。次つぎにボぼール紙るがみで覆おおわれた中心ちゅうしん部分ぶぶんを掃除そうじしてクッション（絨板）を装そう薬くすり室しつ上面うわつらに入いれる。その上うえに起爆きばく筒とうを静しずかに挿入そうにゅうする。次つぎに管かん薬やく脱落だつらく防止ぼうしの蛇へびノ目め鉄板てっぱんを入いれ、装着そうちゃくする。信管しんかんネジ部ぶに黒くろワニスを塗ぬり込こんでから火ひ道どうを信管しんかん中心ちゅうしん管内かんないに接合せつごうする。接触せっしょく部ぶにも黒くろワニスを塗ぬり込こむ。

保管ほかん、輸送ゆそう

十じゅう年ねん式しき手榴弾しゅりゅうだんは火薬かやく、雷管らいかん等とうの火ひ具ぐ、弾丸だんがん部品ぶひんなどに分解ぶんかいして保管ほかんした。一線いっせん部隊ぶたいへ交付こうふする際さいには、兵器廠へいきしょうで完成かんせいさせてから輸送ゆそうした。この際さい、撃げき針はりは絶対ぜったい安全あんぜん位置いちにされ、ベルニーを塗ぬって勝手かってに撃げき針はりが回まわらないよう保護ほごした。

派生はせい型がた

演習えんしゅう用ようとして十年式手投演習用曳火手榴弾、擲弾筒てきだんとうでの射撃しゃげき訓練くんれん用ようとして十年式発射演習用曳火手榴弾が用意よういされた。

参考さんこう文献ぶんけん

• 兵器へいき局きょく銃砲じゅうほう課か『１０年ねん式しき擲弾筒てきだんとう弾薬だんやく説明せつめい書しょ送付そうふの件けん』昭和しょうわ４年ねん１２月じゅうにがつ～昭和しょうわ５年ねん２月がつ。アジア歴史れきし資料しりょうセンター C01003913900

関連かんれん項目こうもく

• 大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐん兵器へいき一覧いちらん